●2002年5月号報告書●


先月号のラストで再登場した保険屋さんコンビのメリルとミリィ。
少しやつれた感じはありますが、基本的には元気そうです。
(ただし状況が状況なのでその表情は決して明るくはありませんが)
メリル少し髪の毛伸びたかな。前髪のあたりが気持ちほど。
彼女たちの勤め先であるベルナルデリ保険協会自体、他都市との通信が断絶したこんな状況下で業務を 継続しているのかどうかは甚だ疑問ではありますが、もともとが外回り(?)の外交員であったメリルと ミリィなので本社の状況は分からないままで各地を渡り歩いていたってことかも。
(連絡とろうにも通信はまともに機能してないし、治安が悪化の一途を辿る中では郵便も無事に届く保証は ないだろうし・・・)

台風氏の故郷ともいえるSHIPを訪れた彼女たちは自分たちが見てきた各地の状況をSHIPの住民に報告します。
そしてSHIPの住民はといえば、この危機を目の前に手をこまねいてはいませんでした。
独自の技術で小型空戦艇を開発していたのです。
「・・・戦うん・・・ですか?」
「最小の機体に最強の装備」を備えたその機体を見上げながら不安げな眼差しを向けるメリル。
成層圏まで一気に届くような攻撃にどこまで対抗できるか分からない。
それでもただ黙って殺されるわけにはいかないという人間たちの意志と意地の現れがこの小型空戦艇ともいえるんでしょうね。
台風氏の働きに期待を寄せるSHIPの住人にメリルは重慶ビル戦で聞いた台風氏の過去、
そして垣間見たロストジュライでの出来事についてを語ります。
それを聞いたSHIPの住人の間から不安の呟きが漏れます。
「ヤツをどこまで信じたらいいのか」
しかしその不安の呟きを指導者であるルイーダが制します。
「信じようと信じまいと私たちに出来ることは限られているわ。生き残るために今はそれを行いましょう」
その声に背中を押されるようにそれぞれの仕事の持ち場へと戻っていくSHIPの住人たち。
佇むルイーダさんの背中を見つめるメリルの複雑な表情。
その時ルイーダさんの目から涙が一筋流れました。
「私、一瞬考えたわ。再びジュライのようなことがおきればナイブズを止められるかも知れないって・・・・・・・
非道い女でしょう。怯えているばかりで・・・・・」
そう呟くルイーダさんの背中を見ながらメリルが呼びかけます。
「ルイーダさん・・・私も・・・同じです・・・」

台風氏の能力を目前にみて恐慌状態となったメリルがあれからどう心の整理をしていったのかはずっと気になっていたところでした。
やっぱりまだ割り切れていないんかなぁって思います。
一個の人格として台風氏を見たときにはその優しさや誠実さを疑う余地なく好意的に思っていても、 使い方を一歩間違えば一瞬で地上にあるすべてのものをなぎ払ってしまいかねない巨大な力はやはり ただの人間にとっては脅威にしかなりえないんだよね。
そこを乗り越えるのは並大抵のことではないと思います。
ましてやこんな切羽詰まった状況でホントに信じていいのか。
例え台風氏自身にそのつもりはなくても、極限状態に追い込まれて力を暴走させることになればロストジュライか、 あるいはそれを上回る規模の破壊を生み出すことになりかねないわけだし。
牧師もずっとその狭間で揺れてたしね。
それでも最後には台風氏を信じてくれればいいな。
「全幅の信頼」というのは無理でも、迷いながらでも構わないから信じてあげて欲しいと思うのです。
人は自分が信じたいものを信じる生き物だし、信じられて強くなれる生き物でもあるはずなので。

場面はいきなりかわります。
ちいさな男の子と若い母親がそろってこちらを見上げています。
どうやらこれはプラントからの視点のよう。
私たちが生きていけるのもプラントのお陰と子供を諭し、一緒に頭を下げる親子。
プラントを見上げつづけていた男の子が嬉しそうに母親に呼びかけます。
「ママ、見て。お姉ちゃんが笑ったよ」

フッと意識を現実世界に引き戻されたのは引き上げた大量のプラントを我が身に取り込んだナイブズ。
そしてその余波を受け同じ光景を見ていた台風氏。
「・・・・・?・・・今のは・・・?」
「・・・・・・夢・・・・・・?」
それは引き上げられたプラントたちの体験した記憶だったのでしょうか。
それとも幸せな人間との共存を夢見たプラントたちの思いが作った幻だったのでしょうか。
(それとも神が与えた一時の戯れなのか・・・・)
例えどちらであったにせよ、それは意志を伝える言葉をもたない原始的な生命体であるプラントからの メッセージであることは間違いありません。
ナイブズが謳うプラントの解放と人間の殲滅が他のプラントたちの総意ではないことのこれは証かな。
そう思うと少し救われた気分になりますね。
そして何に対しても感謝の心を忘れてはいけないということでもあるんでしょうね。
「感謝」ってすごく積極的にその存在を肯定する気持ちだと思うのです。
そこに喜びが生まれ、思いやりが生まれ、そうやって相互作用で生み出されていくプラスの感情が 互いの関係をより良いものへと導いていくってことじゃないでしょうか。

そして「方舟」は憲兵隊の一斉攻撃が予定されている場所へと差し掛かります。
各地を巡り大量のプラントを回収した「方舟」はもうすでに船体自体がプラントと一体化して いるといっても過言ではないような状態で。
そして始まる憲兵隊との極めて一方的な戦い。
圧倒的パワーを武器に優勢に立っていたナイブズの意識の中に突如プラントたちの記憶が流れ込んできます。
出会い優しくしてくれた無数の人々の記憶。
(私的にはプラントのガラス拭いてあげてるおばちゃんと、ケーキでお祝いしてくれてるおじちゃんの姿が好きなんですが)
そして大墜落の瞬間の記憶。
それらが奔流となってナイブズを襲い、たまらず彼はひざをつきます。
そこに攻撃を免れた憲兵隊からの砲撃と、それに乗じたSHIPの民の小型空戦艇による砲火が降り注ぎますが、 ナイブズの脇を固めるエレンディラ姐さまの堅牢な牙城はなかなか切り崩すことができません。
その時、「方舟」の内部から爆発の火の手が上がります。
起爆スイッチを押したのは牧師の手。
「トンガリ・・・・・・・・・聞こえてるか?トンガリ・・・ちょっと、でかい音するで。耳塞いどれ」
その声とともに台風氏が監禁されている部屋の分厚い鋼鉄の扉が内側に向かってはじき飛ばされます。
当然その部屋には不眠不休で台風氏の拘束を続けるよう命じられたレガートがいるわけで。
内側にはじきとばされた鋼鉄の扉は間髪いれず再度穴の開いた入り口を塞ぐ形ではじき返されます。
ただしその時、レガートの背後にはすでに牧師が回りこんでて。
大波乱の予感を胸に5月号は幕となります。

というわけで、ラスト2ページで牧師が台風氏の救出作戦を始動してしまいました。
しかし目下の相手はレガートとはいってもまだエレンディラさんもミカエルの眼の方々もついでにザジ嬢も 健在なこの状態での造反はかなりハイリスクであること間違いなく、牧師完全に命の危機です。
多分牧師はそのことを十分承知してると思うのです。
もしかしたら死ぬこと覚悟しちゃってるかも。
自分の身の安全と引き換えに人類の希望となる台風氏を解放することで、間接的に孤児院の人たちを守ることが できる、って彼が考えてたとしたら本気で命投げ打ってくる可能性大ですよ。
なんにせよ、牧師は意志を固めて腹くくったってことだと思われます。
この状態では台風氏が「選択」を迫られるのは必至かな、と思いその想像にのたうってしまいました。

目の前の牧師を助ければこの星の他の人間を救うことができなくなるかもしれず、結局最終的には牧師も 殺されることになるでしょう。
かといって放っておけば牧師は極めて近い未来において確実に造反者として殺されます。
なんて酷薄な選択肢。

客観的に見たら明らかに選ぶべきは後者の道なのですが、台風氏にそれができるだろうか?
できればどちらも選んで欲しくない。
欲張りでもいい、両方失わない方法を示して欲しい。
うわ〜ん、牧師の未来につながる希望をくれ〜〜〜!!
彼が迷いながらでも生き続けることが、台風氏の救いにもつながるんだよ〜〜!!
んじゃないとガントレット氏の二の舞じゃないすかっっ(立場はかなり違いますが・・・)
それに命日祈るのはテレビ版の牧師の分だけでいいです・・・・・。



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