●2001年12月号報告書●


ナイブズが左手をプラントと融合させたその頃。
台風氏と牧師はいまだ旅の途中におりました。
但し台風氏が相変わらず元気がない。
前の街でナイブズが破壊したプラント施設見学に行ってた時も元気だったとは言えませんでしたが、牧師の輪ゴム突っ込みにも反応ゼロだし。
相方のキレの悪さに苛立つ牧師。
台風氏相手に一方的なドツキ漫才を繰り広げております。

辿り付いた街では今まさに公開処刑が行われようとしているところ。
かつて悪党として名を馳せたと思われる二人の男が縄を巻かれて広場に引き出されております。
小柄な一人の男の首には縄がかけられ、大柄で腕力はありそうだけどドコか抜けてそうなもう一人の大男の頭を土台に絞首刑の柱の下。
どことなく余興じみたなぶり殺しムードが漂う中、いつものようにといえばいつものごとく(ただしどこか投げやりっぽい感じの←いい意味でいえば肩の力の抜けた、悪い意味でいえば どこか惰性的な習い性ともとれる)台風氏の手出しによって二人の男は処刑を免れます。

その代償に村を追い出された台風氏一行ともと悪党2人組。
行き着いた先は荒野に一軒立つ寂れたスタンド。
助けられた礼を言う男に、相変わらず半分泣き出しそうな笑顔を浮かべる台風氏。
立ち直ってない。やっぱり立ち直ってないよ、この人は。
それでも酒の飲み比べを始めると、やや陽気なムードで盛り上がってまいります。
そんな台風氏の様子を端でみながら「仕方のないやっちゃ」という感じの牧師。
「まあええやろ。最後かも知れん。楽しんどき」
って・・・牧師様、最後の慈悲にはまだ早すぎますで・・・(ヒヤヒヤ)

サテライトからの放送が流れるなか、酒宴もたけなわを過ぎマッタリムード。
台風氏の罪の告白を聞いたもと悪党の一人が言います。
「眠って忘れろ、それ以外ねえ。おまえのことなんて、みんなすぐ忘れる。
忘れてゆく。時間がお前を救う。ひとりぼっちになっちまうが、それはもとからだ」
それができたら台風氏こんなに苦しんでいないでしょう。
思い出してしまった罪の記憶。忘れていたという事実そのものが彼にとっては重荷であるだろうに今さらもう一度忘れることなんてできないでしょうね。
そんなことを話していると、唐突にサテライトからの放送が途切れます。
何かを感じてスタンドの外によろめき出る台風氏。
見上げた夜空の先には天高く空を横切る白い光。
その先は地平の彼方、うすぼんやりと見える巨大な建造物へと吸い込まれています。
成層圏の外まで伸びるそれは、ナイブズの腕から発した巨大な刃。
他のプラントとの融合を果たすことで巨大さを増したその刃によって、小さな乾いたその星を囲むように回る幾十もの衛星が次々に切り刻まれ、世界を繋ぐほぼ唯一と いってよいタイムリーな通信手段が封じられていきます。

束の間の安息の終わり。
旅の終着点に向けて歩き出すその前に台風氏が口にした言葉。
「最後にこんな酒が飲めるなんて、僕は今夜のことをきっとしつこく思い出す」
愚かといわれようと頑固といわれようと、やっぱりそれが台風氏なんだよね。
この星で出会うすべての人との思い出、そして名前を記憶しながら生きていく。
ながい時間を生かされて背負う荷物と傷を増やしながら歩いていく。
「悪いことばっかりじゃないさ」って言いながら。
彼らの旅の終着点に待っているものが、終わりではなくて始まりとなるものであって欲しいと切実に思うのでした。


<今月の迷言集>
夜空を横切る白い光をみながら台風氏が牧師に一言。
「・・・・ウルフウッド・・・おまえ・・・本当に案内人だったんだな」
「・・・・ああ、そうや。最初にゆうたやろ」

台風氏・・・・あんた牧師をなんやと思うて着いてきてたん?(^^;)
最初に「ついてこい」って言って「ドコへ?」と聞かれ「最終的にどこへゆーたらそら分からん」 と答えたまんまでひっぱってきた牧師も牧師だけどさ・・・・
連れてく場所も目的も明言しないまま「ナイブズ」の名前だけでほとんど一本釣り状態だったもんな・・・
釣られる台風氏も台風氏だけど・・・
ホントいいコンビだわ、この2人。



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