目を覚ましたナイブズにレムはテスラ誕生や過去の実験のことも含め、全てを話して聞かせます。
キョトンとした目をして話を聞くナイブズ。
話を聞き終えてもいつもと変わらないナイブズの態度にレムは逆に不安感を覚えます。
「ナイブズ、あなた何か独りで抱え込もうとしていない?テスラのことショックだったはずよ。
悪いけど私…あなたがそんなに平然と受け入れられるのは無理があるんじゃないかって…」
そう尋ねるレムに少し悲しそうに笑いかけるナイブズ。
「無理?してるさ。ショックだったよ…ショックだったけど…僕らは先に進まなきゃならないんだ。
…そうだろう?」
うっすらと涙をにじませながらそう言ったナイブズをレムは何も言わずに抱き締めてやります。
「もう二度とこんな事がおこらない様に、やらなければならない事が沢山ある。」
そう言って一度だけ強くレムに抱きついてから静かに身を離すナイブズ。
背を向けた肩越しに寂しそうに笑いながら
「…レム…ありがとう」
といったナイブズの言葉が、その後の彼の行動を知る私の耳には「さようなら」にしか聞こえなかったのですが…。
そのまま部屋を出て行くナイブズを入り口で入れ違いに部屋に入りかけたヴァッシュが見咎め後を追います。
ナイブズの向かった先はコールドスリープで多くの人が眠る場所。
後を追いかけてはきたものの、その部屋に入ることをためらうヴァッシュを振り返り、ナイブズはいいます。
「…怖いのか?そんなんじゃ駄目だぜ。そんなんじゃ駄目だ」
ひどく遠い目をしてコールドスリープの部屋で独り佇むナイブズ。
その彼の元に勇気を振り絞ってヴァッシュもやってきます。
「君のいう通りだ。僕も前にすすむよ…」
青ざめた顔色でようやくそれだけ言ったヴァッシュに笑いかけながら
「うん、いんじゃないか?」
と言ったナイブズ。
この時点で2人の目指す先にそれほど大きな違いがあったとは思えないのです。
望んだのは「今よりも良い方向へ」。
一度は絶望し、不信感や怖れを持ちながらそれでも人間との共存の可能性を信じたのがヴァッシュであるならば、
共存の可能性そのものに絶望していったのがナイブズということになるのでしょうか。
それからしばらくは何事もなかったかのように日々は過ぎて行きます。
ただ深夜起き出したナイヴズがレムもヴァッシュも知らないうちにコンピュータをいじり始めたこと以外は。
コンソールを見つめるナイヴズの瞳に宿る暗い影。歪んでいく表情。
ただそれは嗜虐的な笑みという種類のものではなく、悲しみと恐れを糧とした自分でも抑えがたい憎悪と怒りに
苦しんでいる、そんな表情に感じられました。
この時点までどちらかといえば聞き分けのよい「いい子」であったのはナイブズの方である、という前提を踏まえて
考えると、純粋さの持つ時として凶暴な一面を彼は体現していることになるのかなと思うわけです。
そして訪れる「大墜落」の瞬間。
推定死傷者数2千万人、行方不明者6千万人の大惨事は引き起こされるのです。
時間は現在へと戻り、多くのプラントを前にひざをつくナイブズの姿。
「懺悔しよう。あの頃の俺が性急すぎたことを…多くの仲間をも犠牲にしてしまった」
その後、彼がとった行動はと言いますと、一基のプラントと左腕を融合させることでした。
「力を貸してくれ。俺ひとりでは無理らしいんだよ」
と言っています。
確かに黒髪化が始まって自身の寿命ないし力の限界を自覚し始めたということは分かりますが自身の性急さを
詫びた後でその仕儀はいかがなものかと…
お兄ちゃん、やっぱりせっかちです。
ヴァッシュは黒髪歴もう2年以上ですよ。
そんな焦らなくっても…
(ってヴァッシュの方はそれが劣化だとは知らないんだからフェアじゃないですが…)
融合した左手から立ち上がる桁外れの刃。
その刃先が切り刻むものは一体なんなのでしょうか。
―その瞬間を機に世界は混乱の時代に入る―
というモノローグで次号へと話は続いていきます。
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