自室で待機中だった台風兄弟に内線通信でレムからの連絡が入ります。
「自室に鍵をかけてけして表に出ないで」
「?」
「外から誰かの声が聞こえても話しては駄目よ!!」
それだけ言い置いて通信を切ったレムの反応に何が起きているのか分からないといった表情を浮かべるナイブズ。
そのナイブズにヴァッシュがいいます。
「きっとレムは慎重になってるんだよ…僕等と人間の初めての対面に…」
そうこうしているうちにコールドスリープを解除された乗組員が起きだしてきます。
運行システムのエラーは立ち上がり時に若干の遅れを見せたものの無事に収拾され、事後ミーティングも問題なく
終了し、乗組員たちはコールドスリープに戻る前の一時の談話の時間を持つわけですが、エラー改修時、
システムの立ち上がりに若干のタイムラグが発生したことに疑問を抱く乗組員が存在し、誰かの手が入ったのではないか
という話題になります。
(実際、タイムラグが発生したのはナイブズが自室で小型端末を用いて事態の成り行きを見ていた際に立ち上げに
関係するコントローラを開いてたことが原因だったようですが…)
「誰かの」といっても乗組員の意識の中では現在起きて活動しているのはレム一人のはず。
「……レム、あれからは何も起こっていないよな?」
そう尋ねる乗組員の一人に「何も起こっていない」とレムは告げます。
そして再び乗組員達がコールドスリープについたのを見届けてからレムは台風氏たちが待つ自室へと向かいます。
「ナイブズ!!あなた何かやったでしょ」
叱られて頭抱えながら涙目で「ごめんなさい」と謝るナイブズの可愛いこと。
その場面にコールドスリープについたはずの一人の乗組員が現れます。
ビル・コンラッド乗組員。
のちのレブナント・ヴァスケス伯ですが、この時レムは彼を「ウィリアム」と呼んでいます。
ウィリアムの略称なら「ウィル」とか「ウィリー」かなと思うんですがそこら辺の突っ込みは重箱の隅なので
やめておきましょう。
兎にも角にも思わぬ事態で台風兄弟はレム以外の人間と対面することになるわけです。
場所をSHIP内のジオプラント(緑地帯みたいなもの)に移してレムとコンラッドの対話が続きます。
「重大な規約違反だぞ。」
「分かっています、でも…」
直前の乗組員の「あれからは何も」発言とあわせて、何かあったらしい気配は濃厚に漂っていますが
この時点ではそれがなんであったのかははっきりとは分からない状態です。
レムとの会話を一旦打ち切り、ナイブズとヴァッシュに歩み寄るコンラッド。
不安気な面持ちでコンラッドを見上げるナイブズとヴァッシュ。
最初に口を開いたのはナイブズの方でした。
「コンラッドさんは、ぼくたちのこと……どう思いますか?」
震えるコブシを握り締め顔を伏せたまま尋ねるナイブズ。
彼らにとってレム以外に初めて接する人間であるコンラッドが自分達を受け入れてくれるか
どうかということが、これから先、他の人間と共存していくことができるのかという指針になるわけで、
やはりそこにはとてつもない不安が潜んでいるわけでです。
「君たちはレムの事が好きかい?」
質問の答えの変わりに逆に質問を投げかけられて、一瞬きょとんとしながらそれでも「はい」と答えた
二人にコンラッドは答えます。
「こころを持っていて誰かを大切に思える。なら大丈夫さ。共に…歩んでゆこう」
その言葉に抱えていた不安と緊張の糸がふっつり切れたのか、ナイブズの目から涙がポロポロ溢れてきます。
またその泣き顔が可愛いのなんの。
内藤さん…狙ってますよね。
現在の超危険人物と化したナイブズからは想像できない可愛さです。
そして後のことをレムに託し、コンラッドがコールドスリープに戻ったあと、いつものように台風兄弟は
コールドスリープの中にいるSHIPの人々の様子を見に行きます。
「少しくらいの違いはなんとかなるよ。沢山話して理解しあう、僕達のこころとヒトのこころに差なんて
無いんだから・・・・そうだろ?ヴァッシュ」
コンラッドとの対面によりヒトとの出会いに希望を抱いたナイブズの無邪気な期待。
ヒトとの出会いが単なる不安から楽しみへと変化を遂げはじめたその時、見慣れない女の子のが目の前に出没します。
この子も先月号のレブナント伯同様幻というか残留思念というか、その類な感じなのでやっぱり異世界交信は
プラント種族特有の能力みたいです。
その女の子の幻に誘われるようにして二人はまだ足を踏み入れたことのない区画へと足を踏み込みます。
独立した医療ブロック。
そこにある端末をいじっていた二人は思いがけないデータに出くわすことになります。
自分たちをここへと誘導した女の子のデータ。
読み進めるうちにテスラと名づけられた彼女が自分たちと同じようにプラントから生まれたこと、
彼女をもとにあらゆる実験が行われたことが明らかとなっていきます。
凄惨で生々しい実験の記録。
驚愕と衝撃の中で彼らが見たものは標本化されたテスラの姿でした。
…ドコかで落としがくるとは思ってましたが、まさかこんな形とは…。
急降下は心臓と脳に負担がかかってイカンです。
人のもつ「好奇心」の功罪は、古今問わず取り沙汰される問題ではあります。
生命への倫理感が揺らぐようなことの多い昨今、私たちにはドコまでを許されているんだろうかとも思います。
生物を使った実験や分析を完全に否定してしまうことは、その恩恵に預かっている以上困難であるのも事実で。
しかし、この実験は明らかに行き過ぎ。
あまりにも性急であり過ぎたとしか言い様がないでしょう。
実験100日目に起きてる倫理問題によるトラブルは、クルーの間でも意見が分かれたってことの表れですね。
やっぱり中心人物はレムとかかな。(もしかするとコンラッドあたりかも)
異なる存在の自分たちが受け入れられるという希望が見えてきたその直後、自分たちが異質であること、
人とは違う生き物であるということが意味する負の部分を見せつけられた彼らがこの事実をどのように
受け止めていくのかが今後の大きな焦点となっていきそうです。
しかしテスラは何を彼らに訴えたくて彼らを導いたんだろう。
闇に葬られた自分の存在を同族である彼らに知って欲しかったのか。
人間に対する信頼感だけを増幅させていく彼らに対し警告を発したかったのか。
・・・・両方かな。
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