●2001年7月号報告書●


6月号で一回お休みしまして、新展開に向けたスタートとなるこの回。
冒頭、「青空お絵かき教室」なミリィ嬢の様子から始まります。
メリルに台風氏の行き先を聞かれて、教会に入った旨を伝えながら何か釈然としない ものを感じている様子のミリィ。
いつもと同じように笑い、いつもと同じように子供に間接技をかけられている台風氏。
だけど何かが以前とは違う気がする。
何がと言われれば具体的ななにもないんだけど…。
にぶいようでいて、意外と勘のよいミリィ嬢。
その「何か」の正体がつかめずに少々お悩みのようです。

しかし、悩みといえば台風氏の方が深刻で。
教会の中で罪の許しを説く牧師の(←こちらは一般名詞の牧師さん。ウルフウッドじゃありません)
説法を聞きながら、自分に対する許しを否定する台風氏。
重慶ビル戦の際に呼び覚まされたロスト・ジュライの記憶。
自分に優しくしてくれた人々を自らの手で消してしまった事実は重く、やっぱりそう簡単には 整理のつくものではないということですね。
自分自身の罪が許されるとは欠片も思っていない台風氏。
それならなぜ教会に行ったのか?
単純に救いを求めてでないことは確かだけれど、無意識のうちにというのであれば、 やっぱり心のどこかに救われたい、許されたいと思う気持ちがあるんだと思うのです。
だからこそかな。
救われたいと望むことさえ自分には許されていないと言い聞かせるような台風氏の述懐は痛々しくもあります。

しかし天下無敵のお尋ね者、ヴァッシュ・ザ・スタンピードにはゆっくり物思いに沈む時間も 満足には与えられません。
教会の後ろの席から昔なつかしの600億$$の手配書とともに銃口をつきつけられます。
ひっぱりだされた教会前の広場には賞金稼ぎがいたりして。

中央保安局はとっくの昔にヴァッシュ・ザ・スタンピードを賞金首からはずし、災害認定を 下している旨をいいつのりかけたメリルの言葉を遮るようにして賞金稼ぎは叫びます。
「賞金をかけてるのはお上じゃねえ!個人だ!」
それは10年前に息子夫婦と孫娘をロスト・ジュライで失った老婦人がかけたものでした。

さて、その頃牧師はウドン屋さんでお食事中。
遠くで響く銃声を聞いてきかぬフリでウドンの論評なぞしております。
しかし牧師、麺類すきやね。
この人の食事シーンは、飲んでるかドンブリもって麺食べてるかのどっちかなんだよな。
暖簾に「SANUKI」って書かれてるもの。そりゃうまいでしょ。
野次馬の会話でどうやら台風氏がまたトラブルに巻き込まれたらしいことを察知した牧師。
一瞬の間のあと、机を叩いて立ち上がります。
(彼が食べかけのウドンに未練があったのは想像に難くないかと…)

で、第1弾の攻撃をなんとかかわした台風氏。その足元には割れた酒瓶が落ちていたりして。
割れた酒瓶はコートの中に忍ばせていたものらしく、酒に濡れたコートの裾を掴んだ手を 笑いながら舐める台風氏。
なんだか普段の彼らしくないやさぐれた雰囲気が漂っています。
物陰からその様子を観察していた牧師がつぶやきます。
「…酒?あいつがか?昼間から?…ありえんやろ?」
元賞金首のくせにどこまでも健全な空気をもっているのが台風氏の台風氏たる部分でもあり その辺りは牧師も認識しているようです。
賞金稼ぎに「ヨユウ」と言われ曖昧な笑顔を浮かべたまま、
「めそめそ不景気ふりまくよりかはまだ正解だ」と呟いた台風氏。

力強い中に壊れてしまいそうな痛さを感じてしまうのは私だけでしょうか?

その呟きの余韻が消える前に衛星放送から臨時ニュースが流れだし 4月号でのナイブズの暴走事件がここにきてようやく台風氏たちの耳にはいります。
(タイムラグ2ヶ月か…)
「5分で街を出るで」
そう言ってパニッシャー片手に参戦する牧師。
どこまでもおいしい人です、この人。
銃撃戦の最中、賞金稼ぎの放った弾丸が台風氏の真芯をとらえ、あわやという瞬間、 腕からのびた異形の翼の片鱗が顔面すれすれで弾丸をくいとめます。
その様をみていたメリルが重慶ビル戦でのプラント能力の暴走を思い出し、悲鳴をあげて 完全に恐慌状態に陥ります。

頭では納得したつもりでいても、異形のものに対する本能的な恐怖は簡単に消えるものでは ないということなのでしょうね。
それはその場に野次馬として集まっていた街の人々も同じで。
その場を取り囲む群衆の中から次第にざわめきが立ち上り、やがて投石が始まります。
投石を避けて逃げるばかりの台風氏に変わり牧師が一言。

「いわれんでもすぐ出てくわドアホ!くそ、おどれらたいがいにせえよ!」

かばってる。
かばってるよ、牧師が。
ここ最近あんまりこういうシチュエーションがなかったから結構嬉しいかも。
こんな時にもかかわらず、曖昧な笑みを頬に刻んだままの台風氏にミリィ嬢が問い掛けます。
「なんでこんな時も…そうやって笑っていられるんですか!?」
困ったような笑顔を浮かべたまま、台風氏は答えます。
「もう分からないんだ。どんな表情すればいいのか」
・・・・・・・その穏やか過ぎる笑顔がキツイよう…
泣いてる台風氏より笑ってる台風氏の方が悲しいなんてツライです…。

謝りながらメリルに差し伸べた手は、名前を呼んだ瞬間怯えるようにビクッと震えた背中に阻まれて、 触れずじまいに別れを告げます。
投石の続く中、去っていく2人の後姿を見送りながら、ミリィ嬢は抱きつづけていた違和感の 理由を理解します。
あの辛くてしかたない笑顔は無理やり上塗ってみせた精一杯の明るい色なのだと。

今回は台風ファンにはなかなかツライ笑顔の連発される回でした。
心の底から笑ってる台風氏には、いつになったら会えるのかしら…



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