以前読み逃した牧師外伝「FREED BIRD」の再録ということで、結構ドキドキしてました。
ストーリーの時間軸としてはおそらく台風氏を捜索して大陸を流してた頃の話かと思います。
とある街で葬儀の依頼を受けた牧師が街外れの古ぼけた屋敷を訪れ、そこでかつて孤児院で赤ん坊の頃
面倒をみたことのある女性と偶然再会するというお話。
冒頭ガタゴト揺れるトラックの荷台でナイフ片手に木彫り細工の鳥をこしらえている牧師の姿で、
手先が意外に器用なことが判明しました。
彼女が孤児院から引き取られて行ったのは1歳かそこらの頃。
当然牧師のことを覚えているはずもなく、牧師の方も会ったところで分かるなどとは思っていなかったん
だろうけど、顔を会わせた瞬間なぜか牧師の方は分かってしまっていました。
ぐずってばかりの赤ん坊が彼が抱けば泣きやむからと、世話役を押し付けられた少年時代。
面倒くさそうにしながら、それでも離乳食から絵本の読み聞かせまで律儀にこなしてるあたり
牧師らしいといえば牧師らしい情景でして。
この頃から作っていた手彫りの鳥をおもちゃ代わりに与えたりしています。
そんな生活が1年ちょっと続いたある日、彼女は裕福な老夫婦の家へ養女として引き取られていきます。
別れの朝、牧師にもらった手彫りの鳥を握り締め泣きつづけていた赤ん坊の姿が牧師には
忘れられなかったのでしょう。
「かれこれもう18年くらいか…」
って呟いてたから…牧師、現在26〜28歳くらいってことでしょうかね。
それより上ってことはあってもそれより下ではないだろうな…。
さすがに30歳にはなってないと思うけどね。(^_^;)
さて、そんな彼女の現在の身の上はといえば、養父母が小さいながらも生産プラントを保持していたため、
それなりの生活を送っていたのが「死」にかけたプラントを調整するために少なくない借金を地元の有力筋
である高利貸しに作り、二人暮しを続けてきた年老いた養父が亡くなってプラントの権利が彼女自身のものと
なると、高利貸しの一人息子からその権利を譲るかさもなくば権利を持ったままでいいから自分と結婚するよう
せまられている、といった状態。(長いよ1文…)
相手が昔、自分の面倒をみてくれていた人物だと知らないままに彼女、メイリーンは牧師に問い掛けます。
「私ね、孤児だったの。ずっと他人の都合の中で生きてきたわ。
…牧師さん。自分で明日の征き方を決める生き方をすると世界はどんな風に見えるの?」
空を飛ぶ鳥の姿を眼で追いながらそう呟いた彼女に対して牧師の答えは明確でした。
「やめとき。・・・・・よく見てみいな。あの鳥ボロボロや。あいつは心底望んどるやろな、
懼れなく眠れる場所を、十分な食事を、平穏な毎日を。カゴが立派ならなおさらなん違うんかな」
人間は地上から鳥を見上げて憧れを口にする。
でも空を飛ぶ鳥は身を隠す岩陰があり、羽ばたき続ける苦しみもない地上を見下ろして毒づいているかもしれない。
空を飛ぶ鳥を見上げ多くの人と同じように憧れを抱いていた少年は大人になるにつれいつしかそう考えるように
なっていたわけです。
それでも、すでに習い性としての意味しか持たないと自分自身に解釈しつつ、木彫りの鳥を彫りつづけているところが
牧師らしい部分だなって思いますね。
シニカルな中にもまだ乾ききらない心の一片をのぞかせる、そういうところが。
さて、葬式の打ち合わせも一段落し、酒場で物思いに耽っていた牧師のもとに、高利貸しの一人息子オレカノが現れます。
物騒な装備の手下をつれて。
深夜、ボコボコにやられた牧師がフラフラになりながら宿屋の部屋に帰り着くと、そこにはメイリーンの姿が。
ライフルを背負い、武装した格好で呆然と傷だらけの牧師を見詰めるメイリーンに、牧師が詰め寄ります。
「何故・・・断った!?」
おそらくは牧師が屋敷を去ったあとでしょう。メイリーンはオレカノの申し出を正式に断るとともに
身の危険を察して、顔見知りの宿屋の娼婦頭に頼んで牧師の泊まっている部屋へ匿ってもらっていたのです。
(まあ、ここら辺お約束ですが)
そのオレカノなる人物かなりキテる性格で、メイリーンに良からぬことを吹き込んだのは牧師に違いない
と思い込みリンチにかけたわけです。
一対多数、しかも相手は武器を持っている。
殺意を感じるならともかく痛めつけることが目的であるなら下手に抗わない方が得策と判断したのか、
ほぼ一方的にやられっぱなしの牧師。
それにプラスして口は減らずに余計なことを言うものだから自分で自分の首締めてるところもあるんですが…。
そうこうするうち、オレカノ一味によって部屋に打ち込まれた銃弾で宿屋は半壊状態。
瓦礫を避けて頭を伏せていたメイリーンの目の前に、宿の崩壊に巻き込まれた男性の死体が晒されます。
思わず声を立てて息をのみ、眼を閉じるメイリーンに牧師のキツイ言葉が飛びます。
「アホウ、今さらなんや!!ええか、おマエが選んだ結果がこれや!!
おマエがおとなしく納まる所へ納まっとってれば、こんな事にはなれへんかった!!」
牧師の言葉に、見開いた意志の強そうな瞳から涙がこぼれ落ち、無力な自分を呪うようにメイリーンの華奢な
コブシが地面に叩きつけられます。
そのかすかな振動で崩れかけていた障壁が倒れ、居並んだオレカノ率いる武装集団の前にその姿をさらすこと
になります。
武装集団に向かって一人銃を構えるメイリーン。
その足元に威嚇射撃の銃弾が降り注ぎます。
オレカノがメイリーンに最後の銃弾を浴びせようとしたその時、牧師のパニッシャーからランチャーが射出され、
事態はひとまずの収束をみるわけです。
「これが最後や、おマエの世話焼きは」
結局、面倒みちゃうんだよね。
因果な性格してるよ、牧師。
彼を子守役に選んだナイブズってばナイス人選。適材適所ってやつですね。
ラスト、まだ夜明けきらぬ街外れの丘に佇む牧師とメイリーンの姿。
「他人のスキ間を埋めるだけの私にはなりたくなかったの」
と呟くメイリーン。それに対して牧師が漏らした感想は、
「・・・・・・・ガキが…それもまたひとつの大事な生き方や」
牧師の言ってる「それ」って他人のスキ間を埋める生き方のことを指しているんだろうな。
互いが互いのスキ間を埋めあうことで補完され、満たされる生き方もある。
自分を主張し生きていくのは、端からみれば格好よくても孤独や不安を常に抱え、疲弊して立ち止まることを
恐れ続けることに他ならない。
空を飛ぶ鳥と同じように。
それを分かっているのか、それでも選ぶかという問いかけは厳しいものだけど、そういう問いを発すること自体は
思いやりだと私は思うんですが・・・・
ただ、それを本当の意味での痛みとして理解しないからこそ、思い切って動き出せるというところに若者で
あることの強みもあるんじゃないかな。
それだって大事な生き方だよって考える時点で、私もまだガキってことでしょうかね?
別れ際、自分の手作りだといってメイリーンがお守り代わりに首からさげていたものを牧師に投げて渡します。
咄嗟に掴んだそれをてのひらの中、見下ろせば翼を広げた小さな木彫りの鳥。
幼いころ、牧師がメイリーンに与えたそれとよく似た鳥を見下ろしながら、牧師は一言
「下手クソめ、40点てとこや」
と呟くのでした。
メイリーンが牧師のことを覚えていたとは思わないし、それは牧師もそうなんだろうけど、人生はこんな形でも
繋がっていくものだということを暗示しているのかもしれません。
今回の話はテキストの読み解きと解釈がいつもより難しかった気が。
あと思ったのは、牧師単品だとガクッと地味になるな〜ってこと。
ストーリーも妙に渋いというか。
外伝読みつつ「やっぱ私って台風ファンなのね」と再認識。
よくよく考えればウットリショット大放出の3月号以来、台風氏にまともにお眼にかかっておりません。
お兄ちゃんだのミカエルの眼のおじさん達だの牧師だのばっかりで・・・ぐっすん。
今月末に出る7月号では人間台風の面目躍如で新展開へはずみをつけてください。
内藤さん頼みますよ!
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