●2001年5月号報告書●


今回はナイブズメインのお話でした。
テレビシリーズでは全く出てきてないんだけど、原作ではナイブズの協力者として一人の博士風な 人物が登場しています。(プラントを使ってナイブズの肉体を蘇生させたりした人です)
名前もナイブズとの関係もはっきりしなかった正体不明のこの中年男性がレブナント・ヴァスケス伯で あることが今回明らかとなります。
(トライガン世間的には台風氏が殺害したことになっています。手配書の罪状にもそう書かれてたし)
彼はもともとはビル・コンラッドという名前で移民船に乗船していたプラント技師でした。
そして同じ船にはまだ幼かった双子の兄弟、ヴァッシュとナイブズがいたのです。
「大墜落」からすでに百年以上が経過して、当時の関係者が老人としてではなく生きているということに 微妙な違和感を感じるかもしれないけど生き残ったもの全員が同時に冷凍睡眠から目覚めたのでなければ、 そういうこともありうるということでしょう。
(現にヴァッシュが故郷と親しむあのSHIPの住民の多くは未だ冷凍睡眠の中にいるわけだし)
「大墜落」を生き延び、自慢のプラント知識を生かして劣悪な環境の中においても「伯」といわれるだけの 成功をおさめた彼の前に、ある日突然ナイブズが現れてこう告げます。
「お前の脳が必要だ」。
おそらくそれまで彼はナイブズの正体がプラントであることを知らなかったのでしょう。
なぜ彼はナイブズに協力するようになったのか。
彼自身の述懐の言葉を借りるなら
「いい知れぬ恐怖もあった。負い目ともいえる感情があった。だが告白しよう、 私は何よりも自立するプラントに対する好奇心にこそ負けたのだ」ということになります。
ロストジュライとフィフスムーン事件という2度にわたるカタストロフを目前にして 自分がとんでもないものに手を貸したことを自覚するレブナント伯。
けれど今更引き返すわけにも行かず、ナイブズの傍らに留まりつづけていたのです。
それこそ「恐怖と負い目と好奇心」の故に。

そしてとある街を訪れるナイブズとレブナント伯とエレンディラの3人。
彼らが目指した先は街の大動脈にあたる巨大なプラント施設。
何十基という生産プラントがひしめくその片隅に彼らの、正確にはナイブズの目指す場所はありました。
それは機能停止寸前となった末期状態のプラント。
ナイブズは弱まりつつある彼女の鼓動を感じ取り、彼女を治すためにレブナント伯を伴ってここを訪れたわけです。
(プラントはなぜか皆女性天使形。何かを生み出す象徴としてそうなってるのかもしれないけど)
ところがそんな彼の眼の前で始まったプラントの「ラスト・ラン」。
それは末期状態でこれ以上の「収穫」を望めないプラントに対し意図的に暴走状態におち入らせて行わせる 最大の大生産のことを指します。

「見ていてあまり気分のいいもんじゃない」
不法侵入である彼らを見咎めて追い払いにきたプラント施設の職員が口にしたとおり、それは凄惨な光景で、 末期状態にあったプラントは絶叫とともに骨と皮だけの干乾びた姿となって崩れ落ちます。
後に訪れた恐ろしいような静寂。
その一瞬後にはナイブズの腕から伸びた鋭利な刃がプラント施設内を縦横無尽に駆け抜け、悲鳴をあげる暇も あたえず職員達の命を奪っていました。

働きづめに働かされた揚げ句安らかな「死」さえも保障されない。
それがこの星のプラントたちの辿る末路だとすれば搾取する人間に対して憎悪を抱くナイブズの感情の方が 同種という立場に立てば当り前な気もするのです。
(プラントがなまじ人間型なだけに事態の醜悪さが際立って 見えるというのもあるんだけど、やってることは 現社会を生きる私達も実は同じなんだよなぁ)
意志もつ者としてのナイブズやヴァッシュの存在がクローズアップされるあまり本来のプラントの立場と いうものをついつい忘れがちになるのですが概念的には生物としてすら扱われない存在な訳で、その中で 自我に目覚めてしまうというのはある意味非常に悲劇的なことなのかもしれません。
ナイブズに弱まりつつあるプラントの鼓動が感じられたのであれば、ヴァッシュも当然それらを感じとる 能力があるってことになるのだろうけど、もし彼がこの「ラスト・ラン」の場面に立ち合ったら、 それでも人間を庇おうとするのかしら、守るべき存在だと思うのかしらと考えてみたりして。

そして事態は思わぬ方向へと転がって行きます。
プラント施設内を席巻しつくしてなお収まらぬ感情の激しさを表すかのように天高くもたげられた鋭い刃が フイに掻き消えます。
肩で息をつくナイブズ。
その前髪の一部が黒く変色しています。
「疲弊がたまり劣化が進んでいる」と指摘するレブナント伯。
プラントにとっての寿命のバロメータとなるのがこの「黒髪化」の現象で、髪全体が漆黒に染まればもう それはプラントとしての機能停止、つまり「死」を意味するとのこと・・・・・・・・・・・・・
っっってちょっと待って、マキシマム編に入ってから台風氏の襟足が黒かったのってそういうことですかっっ チラチラとは噂話で聞いてはいたけどここまではっきり書かれるとやっぱりショックだ〜〜〜〜(T_T)
日常生活を送る上では差し障りはないって言ったって、ナイブズみたいに破壊工作に力は発動させてなくても 台風氏は自己治癒だけでかなり消耗してるってば〜〜〜〜。
大体あのお兄ちゃんがこのまま静かにほっといてくれるわけないし・・・・。
黒髪化については何も知らなかったらしいナイブズ。
ヴァッシュの黒髪化をエレンディラの口から確認するとそのままレブナント伯の体に刃を突き立てて暴走モード突入。
暗がりにこだまするナイブズの慟哭は無念の叫びかそれとも・・・・。

なんだか物語が一気に加速しそうなこの展開。
救いのないラストだけは見たくないけど、かといって八方丸くおさまる大団円も想像しがたい。
この物語がどういう結末に向かうにせよ最後までキチンと見届けたいという決意に変わりはないけど・・・・
もう少しだけこの旅が続けばいいと真剣に祈ってしまう今日この頃なのでした。



■前の報告書へ■  ■戻る■  ■次の報告書へ■