北海道の思い出




 私が初めて北海道に行ったのは昭和63年(1988年)のことだ。夏の北海道に2週間、ガイドブックを見て、きちんと予定を立て、宿泊予約は事前に往復はがきで行い、車を使って回る旅だった。
 でもなんか計画に振り回され、観光地を回るだけのつまらないものだった。

 そして次の年の冬(1989年2月)、今度は予定などあいまいなまま、周遊券を手に流氷を見る旅に出た。その頃の周遊券は往復の急行込みで、38,600円。20日間も有効だった。
 初めての夜行列車『北斗星』に乗り、翌朝、海峡のトンネルをワクワクしながらくぐり、札幌から網走へ。そしてオホーツク海側の『小清水』という所に行った。到着したのは夜10時近くだった。24時間以上もかけてやっと到着。宿泊は『小清水ユースホステル』。駅まで『ペアレント』(=親)と呼ばれる宿主が迎えに来てくれ、本来ならば風呂の時間は終わっているのだが特別に入れてくれた。その後お菓子までいただいてしまった。流氷は風で沖に流されてしまってそこにはなかった。翌日宿の主人が車で知床のウトロまで乗せていってくれた。そこでやっと流氷が見れた。このときは初めてオジロワシ、タンチョウなどを見て感動。
 せめてこの感動を残せたらと思うのは当然のことだった。そしてバカチョンのカメラでは物足らなくなり、友人からCanonの古い一眼レフを譲ってもらった。これが写真を撮り始めるきっかけだった。
 冬の北海道は夏と違い、旅行者も少なく、北海道ならではの動物や風景が見られ、これこそ本物の北海道という印象を受けた。人が少ないから宿泊予約も前日でも間に合う。このときから計画に縛られない気ままな旅を楽しみだしたと思う。そして夏は忙しくて事務的な対応だけで終わっていた宿の人たちも暖かく接してくれ、暇があると車を出してくれて近くの穴場を案内してくれた。外気はマイナス15℃という寒さにも関わらず人の暖かさにまいってしまった。それから私の北海道通いが始まった。多い年は8回も行っていた。
 初めての体験、初めて見るもの、感動するものはいくらでもあった。そして広い北海道。四季折々、年々違う。何回行ってもあきない。
 まだまだ金銭的に余裕がないときだったので、飛行機なんかは使わずに周遊券を買って、急行『八甲田』、『海峡』、『北斗』を乗り継いでという旅が続いた。でも夏は休みがちょっと長いので、フェリーに車を乗せて行った。フェリーも『大洗』までだったら2時間もあれば着くが、わざわざ新潟まで一晩かけて行って新潟−小樽の『新日本海フェリー』で。そのころ片道17,100円で運転手の2等運賃込みだったので高速を使ってガソリン代をいれても大洗から行く(片道35,000円位)よりも安かった。
 宿はユースホステル。その頃の北海道ではまだユースが全盛期。1泊2食で3,000円くらいで安い。しかもガイドブックになんか載っていない穴場情報がいっぱい。同じような旅人がいっぱいいるので、『夜のミーティング』での情報交換がすごく役にたったし、意気投合して何日か行動を共にしたりして友人も増えた。

 今では交通手段は飛行機&レンタカーに変わり、宿も民宿などに変わった。もうあの頃のような、体力勝負の旅はできないなぁ。




● 初めての冬の北海道 ('89.2.15〜19)

● 秋の北海道 ('89.10.7〜11)