曖昧な殺人 その男が捕まったのは、ある春の日曜。恋人を殺した罪で捕まった。 「殺したことは?」 「認めますよ」 男はあっさりと罪を認めた。 「どこで?」 「どこだったかな…。公園…いや、林?」 「夢の島とか?」 若い刑事が口をはさんだ。 「まさかそんなはずないだろう!」 年配の刑事が怒鳴りつけた。 「ああ、そうだ」 男が手をぽんと叩いて言った。 「確か黒猫が通る道だ。あの黒猫はよくあの道を通る」 「どこだ!?」 「えーと、彼女の家に行く途中のちょっと細い道から右に入るとゴミ捨て場があって」 「…それから?」 刑事たちが厳しい顔をして問いつめる。 「そのゴミ捨て場を乗り越えてつきあたりのマンホールに入って124メートル進んだところで地上に出て…」 男は考え込んだ。 「確かそこで和人と入れ代わったんだ」 「?お前が和人だろう?小田切和人」 怪訝な顔をした刑事が、男に尋ねた。 「僕は新田ですよ。和人はまだ寝てます」 男はあっさりと言った。刑事には何がなんだかわからなかった。 「じゃあ、小田切はどこで寝てるんだ?」 「僕の中ですよ。ちょっと待って下さい」 そう言って男はゆっくりと目を閉じた。次に彼が目を開けた時、彼が言った。 「小田切和人です」 刑事は二人して顔を見合わせた。結局この事件は迷宮入りとなったらしいが、後でわかったこと は、容疑者・小田切和人が多重人格だったことである。 終 |
これは、高校3年受験真っ只中でに友人・如月葵と結成した
幻のサークル・MAD ANGELSで出す本に載るはずだった話。
(結局ちゃんと活動しないまま現在に至る)
自習時間先生がいないのをイイことに、ラクガキやらしてました。
これは二人で3〜4行ずつリレー式で書いた話です。
機会があったら、如月の小説も載せたいですね。