ヘレ・アーニャ戦を終えたオネロスは、痛烈な喉の乾きを感じていた。喉や舌が乾燥し
てへばりつき、一滴の唾液もでない。長距離走などとおなじく、セックスはいちじるしく
水分を消耗するため、長時間水分を摂取せず続けていると腎虚の前に脱水症状をおこす。
そのうえ、乾いた舌で愛撫すると、スムーズに肌のうえを滑らないため威力がはげしくお
ちてしまい、最後にはすりきれて血がにじみ、舌が使いものにならなくなってしまうのだ。
疲労した体からはとめどなく汗が流れ落ち、貴重な水分がどんどん失われていく。この
ままではいけないとは思うが、対処のしようがない。音をたててはぜるたいまつ、乾燥し
た石畳、すべてがオネロスの体から水分を抜き取ろうとしているかのようだった。
焦燥を押さえ、ひざまずいたまま司祭をにらみつけた。はやく次の相手と戦わせろ、と
いう意志をこめてだ。それを見た司祭はなにも言わず、つかつかとオネロスに歩み寄って、
ふところから革袋をとりだす。それをオネロスにつきつけ、言う。
「戦士オネロスよ。貴様の勇戦にはアルテミスもいたくお喜びであろう。これは私からの
……いや、アルテミスからの手向けだ。受け取るがいい」
革袋のなかには、澄んだ水がなみなみとたたえられていた。オネロスは、革袋の中身を
むしゃぶりつくようにして飲み干した。
「どうだ、オネロス? 全身に力がみなぎるであろう」
そういわれてみれば、そうだった。体の芯から熱がわきだし、つま先から頭のてっぺん
まで熱伝導していくような、奇妙な感覚があった。水分が全身に染み渡る心地よさとはま
た別の、強烈な活力が充ち満ちていく。
「それは、ただの水ではない。われらアマゾネスに伝わる精力剤が混ぜられている。ふふ
……生半可な効果ではないぞ。一度服せば、枯れ果てた老人でも少年のような性欲が蘇る。
精を吸い尽くされた貴様とて、これであと二、三度の射精には耐えられるだろう」
「……なぜそんな情けをかける?」
体力も精力も限界に達していたのだから、次の相手にすこし責められれば倒れてしまっ
ていただろう。わざわざ精力剤を飲ませ、敵に力を与えるというのは道理にかなわない。
が、司祭はふん、と鼻で笑い、オネロスの疑問に答える。
「たわけが。疲労困憊した男をなぶったあげく勝者を気取ったとあれば、誇り高きアマゾ
ネスの名折れよ。まして慈愛あふれるヴィーナスのしもべがかようなことをできるわけが
なかろう」
しもべ? オネロスは聞き返した。
「左様。勇敢なる戦士オネロスよ」
司祭の背後にあるたいまつがはじけ、飛び散った火花が満月を背景に舞い踊った。
「汝の次なる相手は、ヴィーナスの敬虔なるしもべ、ウェヌス……この私だ」
そう宣言すると、司祭ウェヌスは静かにローブを脱ぎはじめた。
ウェヌスの裸体は、アーニャやヘレのそれとは対照的に、抜けるような色白であった。
あまりに白すぎて、月明かりで血管がすけて見えるほどだ。
「ふふ……私の躰はどうだ」
どうと言われても、というのがオネロスの正直な気持ちだった。たしかに、大理石のよ
うな純白の肌は美しい。しかし、体つきの方はきわめて貧弱であった。胸は、磨きぬかれ
た神殿の床のように平坦であり、背丈も寒村の少女のそれである。アーニャやヘレの豊満
な躰を相手にしたあとだけに、その貧しさがいっそう際だってみえる。
だが、その容姿は美少女としての要件は十分すぎるほど満たしていた。なめらかに流れ
る金髪、かわいらしい顔立ち、そしてなによりも強い意志力を示す切れ長の目。美をつか
さどる女神ヴィーナスの司祭というだけあって、容貌に関してはたいそう厚い加護を受け
ているようだ。
「では、勝負をはじめようか。まずは貴様の逸物を拝見するとしよう」
軽やかな足取りでオネロスとの間合いをつめ、素早くかがんでペニスを手にとった。さ
すがはアマゾネスの司祭といったところか、その身のこなしは電光石火だ。
「ふん、これがアタランテとアーニャとヘレを倒したのか。たしかに逞しくはあるな」
まじまじと見ながら、冷静な口調で批評を続ける。
「えらそうに傘をはっておるわ。カリ首も無駄に大きい。これでアマゾネスの膣壁をこすって
あえがせてきたのか」
そう言いながら、尿道口やカリ首など、ペニスにまんべんなく指をはわせてきた。性的
な刺激を感じるような強さではなく、あくまでさわるだけといった感じであるが、それが
逆にオネロスにとってはもどかしく、焦らされているような気分になった。
「玉袋も重そうに垂れておる」
そう言いながら、鼻をくっつけてくんくんとにおいをかいできた。息が袋にかかり、妖
しい快感につながる。
「男臭いな。汗のにおいと、すえた樹液の香だ」
さらに、するりとオネロスの股下をくぐり、アヌスにまで鼻を押しつけてくる。
「くんくん……ふん、臭いな。貴様の糞だけでなく、アーニャとヘレの唾液のにおいも混
ざって、なんともいえん香りだ」
鼻息が尻の穴に入り、くすぐったいとともに押さえがたい羞恥心があった。反撃しよう
にもウェヌスの背が低すぎて有効な性感帯に手がとどかず、一方的に責められるがままに
なる。すべてウェヌスの狡猾な計算のうちなのだろう。
「こんな生意気なペニスには、まず身の程を思い知らせる必要があるな」
背後からやにわにペニスをつかむと、しごきだした。
「すぐに足腰立たぬようにしてやる」
片手で玉を揉みしだき、もう片手を巧みにうごめかして竿を愛撫してくる。その動きは
的確で、すばやい摩擦による快感はどんどんオネロスを追いつめていく。それまでの戦い
で愛液や精液がべっとりと付着していたため、細く華奢な指が白いミミズのようにペニス
を蹂躙し、徹底的に快楽を引きずりだす。
「なるほど、くくく……ここが弱いのか、ここも弱いんだろう? ん?」
いやらしく笑いながら、カリ首をつめで刺激したり、裏筋をなめらかな上下運動で刺激
する。戦いが始まってからのみじかい間に、ウェヌスはオネロスの弱点をすべて見抜いて
しまったようで、その責めはいちいちオネロスの弱点をついてきた。そして、気がつけば、
オネロスはその巧みな愛撫に身をまかせ、いいようになぶられるがままになっていた。
「先端から汁があふれてきたぞ。玉袋もふくらみすぎて破裂しそうだ」
「い、いちいち言わなくてもいい」
「恥ずかしいのか? ふ、意外とうぶなんだな」
そういいながら、玉袋をいじっていた手で、今度はわき腹や下腹部をくすぐってきた。
「くう……なんのつもりだ、やめろ」
オネロスがくすぐったさに身をよじらせていると、もう片方の手が亀頭にあてがわれ、
激しくこすりはじめた。強烈にすぎる刺激にあらがえず、腰を震わせて感じる。次の瞬間
にはウェヌスの指先と亀頭の間から白い塊が飛び出し、神殿の床をぬらした。
「もう我慢汁でお漏らしか。臭いうえに早漏とは、まったく救いようのないペニスだな」
「う、うるさい。今にそんな口が聞けないようにしてやる」
「ほう、そうか。しかし、さっきからひいひいあえいでおるのはオネロス、貴様のほうでは
ないか」
ウェヌスがぴん、と尿道口を人差し指ではじくと、痛みにちかい快感が走り、またして
もひっ、と悲鳴のような声がこぼれた。なにもかもウェヌスの言うがままになっている。
一回りも背丈の小さい女に、手だけでこんなに感じさせられれば、オネロスならずとも
屈辱で歯がみするところだろう。ウェヌスの外見は可憐なる処女神ヴィーナスの司祭であ
るが、なんのことはない、中身は淫魔そのものであった。
「おいおい、今からそんなに感じていたら、先が思いやられるぞ。私の指技など、口唇愛
撫のほんの余技に過ぎないんだからな」
「な……」
「そうだな、そろそろ口でしてもいい頃合だろう。ふふ……私の口のなかで己が無力をか
みしめるがいい」
言うが早いか、オネロスの正面に回りこむと、あっという間にペニスを口のなかに収めた。
「うあっ……ぐ、あ……舌が、からみついて……ううっ」
かわいらしい桃色の唇に捕らえられたペニスは、口内でウェヌスの舌による熾烈な攻撃
にさらされた。その巧みさたるや舌が二枚、三枚あるかのように錯覚するほどで、気を抜
けばあまりの快感に腰が抜けてしまいそうである。吸引力は強すぎもせず、弱すぎもせず、
とろけるような感覚がペニスを包み込んでいる。
脊椎を快感信号が電撃のように駆け上がり、全身がぞくぞくとふるえた。亀頭からはと
めどなく我慢汁があふれ出し、ウェヌスの舌に垂れる。ウェヌスは容赦なく無防備な亀頭
にそれを塗りつけ、尿道口をぐりぐりとさいなむ。オネロスは強すぎる刺激にびくりと腰
を引かせるが、そうなることをあらかじめ読んでいたウェヌスは、両手で尻を押さえて腰
を固定してしまう。逆に、逃げようとしたお仕置きとばかりに深くくわえ込み、追い詰め
られたペニスに強力なバキュームをかけてきた。
その強烈なテクニックにはさすがのオネロスも耐え切れず、ついに腰が抜けて床にへた
りこんだ。息をあらげ、無意識のうちにウェヌスの頭をかかえて快楽をむさぼるようになって
いた。ウェヌスの口淫に完全にやられ、骨抜きになってしまっていた。
「まだまだ、はじまったばかりだぞ。もう限界なのか?」
オネロスがイキそうになったまさにそのとき、ペニスからすばやく口を離して、ウェヌ
スは言った。
「ふふ。どうやら、私の舌技に耐えさせるのは、酷だったようだな。よろしい。慈悲深き
ヴィーナスに免じて、手加減をしてやろう」
そう言うと、ウェヌスはオネロスのペニスに顔をよせ、少しだけ口をあけた。
手加減してやるなんていいながら、結局くわえてフェラするんじゃないか、とオネロス
は思ったが、次の瞬間に感じたのは、唇の柔らかい感覚ではなかった。
「ふう〜」
ペニス全体を生暖かい気流がなで上げる。ぞわぞわとした微妙な快感があった。ウェヌ
スが、息を吹きかけてきたのだった。
「ふざけるな」
「ふざけてなどいない」
そう言うと、また、はあ〜、と今度は亀頭に的をしぼって熱い吐息をまぶす。熱いといっても、
しょせんは息なのだからたいした温度ではないはずだが、オネロスには炎のブレスがペニ
スを焼いているようにさえ感じられた。
「はあ〜……ふう〜……」
尿道口にたまった先走りの汁が波うつ。敏感なそこを空気が摩擦していく。見えない手
でほじくられているような、感覚。普段ならくすぐったいだけなのだろうが、先刻までの
フェラチオでビンビンのギンギンになっている敏感なモノには、吐息でさえ十分な刺激と
なっていた。
「う……うぐぐ」
「どうした、オネロス。体が震えているぞ」
ウェヌスは妖艶に微笑んだ。
さくらんぼのように可憐な唇からわきだす微風だけで、オネロスの全身は嵐に見舞われ
たかのように震わされ、いいようにコントロールされている。
「息でイクのか? オネロス、ん? ふふ……はあ〜」
今度は玉袋に息がかかる。毛が息になびき、おどろいたように袋が縮こまる。と同時に、
尻の穴にまで生暖かい感覚がつたわり、狂おしい快感をいっそうかきたてた。
「ふう〜……はあ〜……」
息がかかるたびに、より強い快感を求めようと、腰が勝手に動き、ペニスが物悲しそう
にひくひくとわななく。どんなじらしよりも残酷で、容赦がない。
「もっとほしいと言うのなら、口技の続きをやってもいいぞ? ……いや、息でイクほう
がオネロスの好みかな?」
そういいながら、またふう〜、と亀頭に息を吹きかける。寸止めで敏感きわまりない状
態になっているペニスは、どんなに弱い刺激でも快楽として感じとってしまう。まして、
息とはいえ、計算されつくしたウェヌスの技だ。本当に息だけで空中爆発してしまったと
しても、なんら不思議ではない。いや、どころか、ペニスは甘美な吐息につつまれながら
暴発することを望むように、膨張し、自己主張していた。
だが、理性は、プライドは、それを否定している。息などでイッてたまるか。耐えて、
耐え抜いてやる。
「やめてほしいか?」
多少逡巡した後、オネロスは無言でうなずいた。たとえどんなイキかたでも、息でイカ
されるよりは何倍もましだ。
「そうか、なら……やめてやろう」
といいながら、ひときわ強く、ふう〜っ、と息を吹きかけてきた。突然の刺激に、一気
にイキそうになったが、括約筋を全力でしめ、耐えた。
「おっと、すまないな」
ウェヌスはわざとらしく、笑った。
そして、おもむろにペニスをふくむと、ものすごい力で吸い上げた。じらしにじらされ
たペニスに強力な刺激がくわえられ、全身にさあーっ、と鳥肌がたった。
「ふぐ、あ、あ、あ……うああっ」
じゅぽっ、じゅるるるっ、じゅる、じゅぽっ、と激しい音をたてながら、唇でペニスを
すりたてる。口内が真空になったような吸引力で、あっというまに精液が竿をかけのぼり、
発射体制が整った。
ずるるるるっっ、じゅるっ。根元まで完全にくわえ込み、舌をまきつけ、搾りだす。精
液がどっと先端に殺到し、オネロスは軽いめまいを覚えた。熱い塊が竿を通過したかと思
うと、ものすごい勢いで精液が吹き上がった。
「うぷっ、ん、ん、ごく……ごく……んん」
ただの一滴もこぼれることなく、すべてウェヌスの胃袋におさまっていく。ひとしきり
出しおわると、さすがのオネロスも強い倦怠感でぐったりとした。
しかし、ウェヌスはオネロスの休憩を許さない。尿道の残りかすを掃除するかのように、
鈴口にぴったりと舌を張りつかせ、吸い上げてきた。イッたばかりで敏感になっているペ
ニスを刺激されたため、腰ががくがくとふるえ、なすすべもなく一滴残らず吸い取られて
しまう。
「ん、ごくっ……ふふ、たくさん出したな」
ペニスをなでながら、得意げに言う。事実、この一回で二発分の精力を吸い取られてし
まったように感じる。
「まだ、終わらないぞ。さらに強く……」
言いながら、ぱくりとペニスをくわえる。間髪いれず、活発で巧みな動きの舌が再びオ
ネロスをなぶり始めた。だが、さすがに感覚は鈍く、オネロスにも反撃する余裕ができて
いた。すかさず体をかがめてウェヌスを責められるような体勢をつくろうとした。
「ん、んぐじゅ……じゅるるるるるるっ」
オネロスが動いた瞬間、股間に鋭い快感がはしった。ウェヌスが舌をすぼめ、尿道口を
つついてきたのだ。うっ、とオネロスはうなり、体勢を崩してしまった。
だめだ、このままではウェヌスの術中にはまってしまう。そうオネロスが思ったときに
は、遅かった。オネロスのヒップをつかんだかと思うと、ウェヌスはすぼめた舌をドリル
のように高速で回転させながら鈴口えぐってきた。すさまじい感覚。通常なら痛みしか感
じないような愛撫も、強烈な愛撫を受けつづけてきたオネロスには純粋で生々しい快感と
なっていた。
「じゅるるるっ、じゅるっ、……じゅぽっ、ずるっ」
体が言うことをきかない。腰がとろけてしまいそうだった。速さを増していく唇のピス
トン運動と舌の螺旋運動は、容易にオネロスの我慢を決壊させた。いや、もはや我慢する
ほどの精神力は残っていなかった。感覚の麻痺した下半身に、熱せられた鉄棒を抜かれる
ような鈍い痛みが走ったかと思うと、いつの間にか射精がはじまっていた。
「んぐっ、ん……」
口内に入った少量の精液を吐き出すと、にやりと笑ってウェヌスは、
「オネロス、射精の最短時間更新だな。これだけ出したのに……こらえ性のないやつだ」
屈辱的な嘲弄の言葉。だが、それはあまり腹が立たなかった。次の瞬間、さらに衝撃的
な言葉を耳にしたからだ。
「とうとうお前の精液に血が混じりはじめたぞ……もうそろそろ限界のようだな」
そう言われて見てみると、ウェヌスの手のひらにたまった半透明の液体には、うっすら
と赤い塊が浮いていた。
「一気に勝負をつけてあげる」
感覚の麻痺したペニスを含み、巧みな舌技で勃起させると、とどめとばかりに激しく舌
と唇で摩擦してきた。痛烈な快感。抗おうにも体に力が入らず、なすがままになるしかない。
すぐに熱い塊が腹部を通過してペニスの竿を駆け上がってきた。そう、熱い塊が……。
ん? それにはどことなく違和感があった。これは、違う。この感じは射精感じゃない
……尿意だ。
勝負の前に飲んだ水のせいだった。それも、幸か不幸か、ウェヌスが尿道口を執拗に愛
撫してくるため、尿意の到来が早まったのだった。
ウェヌスが尿道口を舌でちろちろと愛撫し始めると、ついに我慢しきれなくなり、オネ
ロスはたまりにたまった小尿を放出した。噴水のような勢いで薄黄色の液体がウェヌスの
口内に殺到し、のどをしたたかに打った。さすがにフェラチオの名手ウェヌスといえど、
小尿に対する対策はできていないようで、たまらずペニスを吐き出した。
「うっ、ごほっ、ごほっ、げええっ……」
激しく咳き込むウェヌスに、残りの尿がかかった。晴れやかな爽快感とともに、いいし
れぬ罪悪感がオネロスに押しよせてくる。
「はあ、はあ、オネロス……このウェヌスに……げほっ、よくも、しょ、小尿を、味あわ
せてくれたな……げほっ、はあ、はあ、この屈辱は……」
せきこみながらのセリフには、先刻までの迫力はなかった。混乱しているのかもしれな
い。これはオネロスにとって絶好のチャンスだった。口技をさけて挿入戦に持ち込めば、
勝てる。オネロスは意を決して、動けないウェヌスをとらえると、強引に後背位の体勢に
もちこんだ。
「げほっ……オネロス、膣には入れるなよ」
ウェヌスの声。いまだに咳き込みながらも、その口調は冷静だった。
「世迷いごとを……」
それでも強引に入れようとするオネロスに、ウェヌスは、
「私を誰だと思っている。ヴィーナスの使徒だぞ。よもや、いくら無教養とはいえ、ヴィーナス
が処女神であることを知らないなどとは言わぬだろうな」
そうだった。オネロスは言葉の意味に気がついた。ヴィーナスは男の精液を見るだけで
気を失うほど純真な処女神。そして、信じられないことだが、この淫乱なアマゾネスたち
はそのヴィーナスを信仰しているのだった。もちろん、ヴィーナスに使える司祭が男と交
わることが許されるわけがなく、ウェヌスは処女でなければならないのだ。
処女に挿入するというのは、一見有利なようだが、よく考えれば明らかに不利である。
処女は痛みのあまり、まずイクことはない。痛みに慣れるまで延々と戦いを続けるという
のは、あまりに非現実的だ。その前に精根尽き果てるのは間違いない。
オネロスは作戦を切り替えた。指に唾液をつけて湿らせ、アヌスに挿入した。
「ん……」
意外にも、ウェヌスのアヌスは指をすんなり受け入れた。そして、腸壁は指をきゅっきゅっと
力強く、リズミカルにしめつけ、指からなにかを搾り出すような動きを繰り返す。おそらく、
ヴァギナが使えないぶん、アヌスを使い込んでいたのだろう。ヘレのアヌスよりもさらに
開発されていた。開発されすぎて、軽い愛撫ではまったくウェヌスは動じず、逆にそれを
からかうかのようにアヌスをしぼって指を奥に導くのだった。もしこのままアヌスに挿入
していたらと思うと、オネロスの背筋をつめたいものが駆け上がった。アヌスのなかでむ
ちゃくちゃに絞られ、精を吸い取られ、そのまま気を失っていただろう。
あわててアヌスから指を引き抜き、ヴァギナに指をはわせた。ぴくり、とウェヌスは敏
感に反応する。どうやら、こちらのほうは完全に未開の地らしい。オネロスもウェヌスの
尻の高さにあわせてしゃがみこむと、本格的にヴァギナを愛撫しはじめた。
丸みを帯びたまろやかなヒップにはしる、サーモンピンクの亀裂。処女というのは本当
らしい。かわいらしいクリトリスはまだ半分皮をかぶっていた。オネロスが包皮を舌で剥
こうとした、そのとき
「ぶっ」
オネロスは突然の衝撃に、うめいた。ウェヌスのヒップアタックが顔面に炸裂したのだった。
そして、ウェヌスの手にペニスが握られる。
「勝負だ、オネロス。決着をつけるぞ」
体勢は、シックスナインだった。両方が両方を同等の条件で愛撫できる、もっともフェ
アな状況。
「この私に小尿を飲ませてくれたのは、貴様がはじめてだ。返礼に、私のもっている最高
の技で葬ってやろう」
言うや否や、おもむろにペニスを含み、舌を猛烈な勢いで動かし始めた。亀頭と、カリ
首と、根元に、それぞれ一枚ずつ舌が這っているかのような、すばやく、生々しく、巧み
な動き。それだけでオネロスの意識は飛びそうになった。
血が出ているペニスは、もう長くは持つまい。おそらく、あと一回でも射精したら、そ
のままノックアウトされてしまうだろう。だが、負けるわけにはいかない。勝利もすぐそ
こなのだ。眼前にはウェヌスの弱点であるヴァギナがある。オネロスはむしゃぶりついた。
「ひゃあんっ」
聞いたこともないような、かわいらしい声。異性と手をつないだこともない生娘とて、
こんな声はあげまい。それがウェヌスの声であることに気づくまで、時間がかかったほどだ。
「ひっ、ひっ、ひぐうっ……」
責めれば責めるほど、声は高く小刻みになっていく。これまでの威厳のある声は司祭と
いう職責のための作り物で、これこそが地声なのかもしれなかった。
「あっ、ああっ、そんなあ……いく……かも?」
膣が愛撫にあわせてぬらぬらと動き、クリトリスは完全に勃起しきっていた。それを、
オネロスは思いっきり吸い上げた。ウェヌスはひときわ高い声をあげる。だが、まだイッ
たわけではなかった。
オネロスの下半身におぞましいほどの快感が走る。ウェヌスの三枚に分裂した(ように
感じる)舌が、いっせいに亀頭に群がった。そのまま、唇もわずかながら上下運動をはじ
め、竿を愛撫する。突然のウェヌスの反撃に、オネロスはあっという間に追い込まれてし
まった。我慢するのに必死で、ウェヌスへの愛撫に力が入らない。根元にたまった精液が
今にも先端へ駆け上がりそうだった。
「じゅるるるっ……ぽんっ」
亀頭を強くバキュームすると、こっけいな音とともにペニスを解放した。真空状態の口
内から引き抜かれるときの気圧による刺激によって、ペニスは発射寸前まで高められる。
「死ね」
ウェヌスの死刑宣告。死刑囚に斧を振り下ろすように、尖らせた舌を鈴口にあてがった。
だが、そこに生まれた一瞬の隙を、オネロスは逃しはしなかった。
きれいにつめを切った指を、クリトリスにあてがい、圧迫する。その瞬間、ウェヌスは
大げさなほどのけぞり、嬌声をあげた。ペニスは魔の口唇愛撫から解放され、完全に自由
になった。湿った指でクリトリスをすばやく摩擦し、なぶりあげ、弄ぶ。ウェヌスはその
動きにいちいち敏感に反応し、声をあげる。もう、ペニスに攻撃する余裕は残っていなかった。
ひときわ強くクリトリスを指ではじいたとき、やかましいほどの嬌声とともに、どばっ
と愛液があふれ出た。絶頂したのだった。
「き、気持ち……よかった」
かわいらしい声のまま、ウェヌスは言った。目は視線が定まらず、うつろだった。
「もしかして、イッたの、はじめてなのか?」
下手な男ばかりを相手していたか、それとも彼女がうますぎて絶頂する前に男をイカせ
ていたのか……両方かもしれない。
だが、オネロスの声を聞くと、ウェヌスは魔法が解けたかのように、
「……そんなこと、関係なかろう。ま、少なくとも、小尿を飲まされたのははじめてだな」
元の声色でそっけなくそう言うと、手早く祭服を身に着け、立ち上がった。
司祭は、アマゾネスすべての宗教行事、精神行為をたばねる、重職だ。ウェヌスはその
責任の重さに耐えるため、声や態度を硬くして、本当の自分を隠しているのかもしれない。
そう思うと、小憎らしい態度も逆にかわいらしく思えてきた。
「まあ、負けは負けだ。気持ちよかったこと、貴様の愛撫の巧みさ、認めてやらんでもないぞ」
そう言いながらオネロスに近寄ると、額にキスをして、
「汝の行く手にヴィーナスの加護があらんことを」
と耳元でささやいたウェヌスの声は、また地声に戻っていた。
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