この性感地獄と比べれば、地獄の大釜も生ぬるくさえあるだろう。膣内をおおう快楽の
業火がオネロスの精神をさいなみ、削り取っていく。その様をあざ笑うかのように、ヘレ
は腰を揺り動かす。灼熱の名器とは対称的に、その動きは緩やかで焦らすようなものだっ
たが、もちろん必死で耐えるオネロスを憐れんでのことではない。今のオネロスにはねっ
とりとした責めのほうが、過激な技の何倍もつらいのを見透かしているのだ。そして、そ
の苦悶の表情を見ながら悠然と唇をゆがめる。
「ねえ、もう、降参したら? もう十分に、戦ったじゃない。降参したって誰も責めない
し、立派にやったから、殺しはしないよ」
小悪魔さながらに囁く。しかし、オネロスは無言で腰を振り続けた。目は血走り、全身
の穴という穴から汗が噴き出てくる。一方、ヘレは余裕しゃくしゃくといった様子で自ら
の豊かな乳房をぐりぐりと胸板にこすりつけ、首に腕を、臀部に足をまわして逃げられな
いように固定した。
「君のかわいいモノ、僕のなかでびくびく震えてる……出したくなったら、いつでも出し
ていいんだよ」
オネロスは必死でペニスを抽迭するが、ヘレの中のヒダヒダは弱るどころかますます盛
んに律動し、精液を吸い出そうと情熱的なダンスを踊る。
「強情なんだね……ふふっ、そういう男、嫌いじゃないよ」
そう言いつつも、オネロスの動きにあわせて腰をひねらせ、容赦なく性感をたたき込む。
熱くてぬめった感触だけでも強烈なのに、膣壁のつぶつぶが亀頭を刺激してくるからたま
らない。電撃のような射精感が全身を貫いたかと思うと、一気に玉袋が上がり、発射寸前
まで追いやられてしまった。
だが、それしきのことでイかされるオネロスではない。ペニスの「竿」を強くにぎり、
呼吸を整えることによって精液を無理矢理押し戻した。スクイズと呼ばれるこの方法は早
漏防止法としてもっとも一般的なものであり、一時的に射精感を消すことができる。とは
いえ、焦燥感まで消すことはできない。難攻不落のヘレに対してオネロスは焦りはじめて
いた。
決め手がなければ負ける。オネロスは、ペニスがより深く突き刺さるように体勢をすこ
しずらし、猛然と律動をはじめた。ねらいは膣の奥の奥、ボルチオという性感帯だ。ボル
チオは子宮の入り口付近に存在し、普通の女性なら刺激されても痛いだけでほとんど快感
などはないが、経験を積んだ女性ならGスポット以上の強烈な性感を味わうことができる
という、性技におけるいわば「奇手」だ。ヘレほどの猛者なら、きっとボルチオ性感も開
発されているに違いない。オネロスは逆転への望みをかけ、深く深くペニスを沈めていく。
やがて、ペニスの先端になにかがぶつかる。子宮膣部に到達したのだ。
「うはっ……ああああっっ」
耳をつんざく叫声。ヘレの躰の深奥から、ボルチオ性感をえぐり出したのである。こう
なってしまえば、あとはひたすら責め立てるだけだ。オネロスは連続的にペニスを打ち込
み、とどめをさそうとした。
「んっ、うう……ああんっ、はあ、はあ」
ともすれば苦悶のように聞こえるが、もちろんそれはかみ殺したあえぎ声だ。オネロス
の読みは当たり、難攻不落の要塞はその門を開いたかに見えた。しかし、そのわずか後に
早くもオネロスは作戦の失敗に気づくのだった。
「う……」
思わずオネロスはうめいた。ヘラは感じるがままに豊かな肢体をくねらせ、艶めかしく
膣を蠢かしてきた。その動きは、激しく締め付けるだけで技巧に乏しかった先ほどまでと
比べ、緩やかだが貪欲であった。全体を柔らかく包み込んだかと思うと、根元を締め付け、
つづいて亀頭をなぶり、幹を締め上げる。あたかも膣が意志をもってオネロスから精液を
絞り出そうとしているようでさえあった。うつろな目で虚空を見つめてはいるが、その足
と腕はオネロスをしっかりとらえて放さない。しかも、ボルチオに届くぐらい深く挿入し
てしまったためオネロスは容易にペニスを抜くこともできない。そうして快楽にうちふる
えている間に、ヘレが抱きついたまま体を反転させオネロスの上に乗っかり、深い挿入を
維持したまま、尻を振り回してラストスパートをかけてきた。騎乗位になってしまえば、
挿入角度の決定権を失ったことによって、ボルチオに到達したことによるアドバンテージ
がなくなってしまう。オネロスはなすすべもなく追いつめられ、豊かな乳房に顔をうずめ
たまま、あっさりと精液をうちはなってしまった。といっても、さすがに濃くはなくほと
んど透明色で、量も常人並みだったが。
「あ、ああ……僕のなかで、びくびく震えてる……これで、八回目の射精だね。あと何回
耐えられるかな」
うっとりとヘレは言う。その一方で、腰をゆっくりと動かしながら、ふたたびオネロス
のペニスを苛めはじめた。オネロスもさすがは誉れ高い勇士といったところで、これだけ
射精してもなお萎えることなく猛然と反撃をはじめる。下から突き上げ、体を起こして座
位に持ち込み乳房と背中を執拗に愛撫する。しかし、やはりヘレの絶妙な腰技にはかなわ
ず、また射精感が体の奥底からこみ上げてきた。あたりに霞がかかり、ヘレが何人もいる
ように見えた。
そんなオネロスの耳になま暖かい息を吹きかけながら、ヘレは囁いた。
「勝てないのがわかってるのに、なんでそんなに必死なの? プライド? それとも愛国
心ってやつ?」
馬鹿にしたような口調。オネロスも憎まれ口の一つでも叩いてやろうかと思ったが、ど
うやっても声が出ない。それどころか、手も足もしびれて動かない。できることと言えば、
血が出るほど強く唇をかみ、痛みによって快楽から精神を守ることだけだった。ヘレは、
オネロスの唇から流れ出た血をなめながら、
「血の味でまぎらわせられると思ったら、大間違いだよ。ひ弱な男の分際でアマゾネスに
挑んだこと、僕のナカでたっぷり後悔させてあげる」
誰が後悔などするものか、と言おうとしたが言葉にならない。もぐもぐと動かした口に
するりと舌を入れられ、唾液をしたたらせながらくちゃくちゃと舌を弄ばれる。キスに関
してもヘラは巧者であった。普通より舌が長く、上手くつかまえてもぐるり逆にとつかま
えられるかたちになる。オネロスが解放されるころには、ペニスの怒張は限界に達してい
た。
「えっ、もしかして、もう出すの? まだ僕、ぜんぜん気持ちよくなってないのに? 馬
鹿じゃない? もっと我慢してよ」
と言いながら、言葉とは裏腹にぎゅっとペニスを締め付け、腰を動かし始める。熱い膣
壁に押しつけられ、擦りあげられて、オネロスは思わず少し出してしまった。
「あはっ……我慢汁だけでニンシンしちゃいそうだね」
絶体絶命のオネロスだが、実はボルチオ性感の他にもうひとつ起死回生の策を持ってい
た。背中を愛撫していた手を、そろりそろりと下の方へはわせていき、菊門のまわりをや
んわりとさわった。
「ひゃんっ」
ヘレはそれまでになかったような、かわいらしい声をあげた。クリトリスやボルチオよ
りも、アヌスのほうが感じるらしい。もの欲しげにひくひくとアヌスが開閉する様は、お
ねだりをしているようにさえ見える。
アヌスは本来排泄のために使われるものであり、性感帯としての能力は劣っているよう
に思える。だが実際には、内側から性感帯を刺激するため、開発が進んでいれば肛門ぐら
い強力な快感を得られる部位はない。もっとも、女性も男性と同じく、それ単独で絶頂に
至ることはないが、ヴァギナへの愛撫と組み合わせればきわめて有効な性技になりうる。
ヘレの反応に気をよくした、オネロスは手に付着した精液や愛液をたっぷりと塗り込め、
ゆっくりとアヌスに指を沈めていく。奥へ進むたびに、ヘレは大げさなぐらい身を震わせ、
反応する。第二関節まで埋まるころには、ヘレは責めに転じる余裕もなったようで、ただ
切なげに身を震わせている。
「すごい締め付けだな。そんなに気持ちがいいのか?」
残り少ない体力をふりしぼり、陵辱の言葉を口にする。もっとも、声はかすれてしまっ
ていたが。
指をくねらせて腸壁を刺激するたびにアヌスだけでなく、膣内もきゅっとすぼまる。感
じている証拠であり、技巧のないただの締め付けではオネロスのペニスはなんともない。
「さっきまでの威勢はどうしたんだ。腰の動きが、止まってるぞ」
ヘレは答えるかわりに、ぎっとオネロスをにらみつける。だが、その気丈な仕草とは裏
腹に、躰はアヌスとヴァギナにくわえられる刺激への歓喜に震え、喉の奥からはかみ殺し
てもかみ殺しても小娘のようなあえぎ声がわき出す。
ヘレはアマゾネスの性技師範だ。性知識にとぼしい戦士達に、男に恥辱を与え精を搾り
とる術を教えてきた。その身が、隣国の英雄とはいえ男から陵辱され、恥辱に震える時が
くるとは。そう思うと、もどかしさと情けなさでどうにかなってしまいそうだった。
「あーんっ、はあ、あっ、あああっ……チクショウ、ううっ、チクショウ!」
ぎちぎちっ、と音がしそうなぐらいアヌスにいれた指が強く締め付けられる。
「あんっ、ううっ、男なんかに……僕が負けるものかっ」
ヘレは大きく息を吸い込んだかと思うと、大喝した。神殿のなかの空気が一瞬震えた。
と同時に、信じられないぐらいの力でアヌスが指を締め上げる。
「ぎゃあっ」オネロスはたまらず悲鳴を上げた。指の骨が折れそうなぐらいの力だ。これ
では愛撫はおろか、動かすことも抜くこともできない。痛みでひるんだオネロスを、ヘレ
は見据えて、
「僕は負けない。今度は、僕がお前をなぶる番だ」
燃えるような眼光。オネロスは体が震え、得体の知れない感覚に全身が支配されるのを
感じた。それが恐怖なのか、なぶられることへの歓喜なのかはわからなかったが。
オネロスの上で、ヘレはひたすら腰を振った。オネロスも下から突き上げて抵抗するが、
巧みな腰技で軽く押さえつけられてしまう。じゃじゃ馬を乗りこなす騎士のごとく、力任
せの騎乗位にオネロスはなすすべもなく絶頂へと追い上げられてしまう。尻と腰がぶつか
る乾いた音は、馬にふるう鞭のようで、その音にせき立てられて射精へと全速力で走らさ
れる。
「ううっ……あっ、もう駄目だ……でるっ」
「いけっ、いけよっ、ほらほらほらっ」
びくっ、びくりっ、ペニスが二三度わななくと、ごく少量の透明な液体がこぼれ落ちた。
それとともにヘレが括約筋をゆるめたため、オネロスの指がぽろりとアヌスから抜け落ち
た。
「はっ、情けないね。もうこんなちょっぴりしか出ないんだ。これでも君はクニじゃ英雄
なんでしょ、信じらんない……君の国ってみんなインポなんじゃないの?」
いよいよ激しくなじりはじめたヘレに応じる体力は残っていなかった。
「もっと動きなよ、ほらほらほら、勝つんでしょ、アマゾネスに勝って英雄になりたいん
だろ……なら、もっと真剣に責めなよ。こんなフニャチンじゃ百年たっても逝かないよ」
時々動くのをやめ、激しい罵声をあびせる。ヘレの目の色が変わっていた。こちらのほ
うが本性なのだろう。ヘレのほうも、いつまでやってもつきないオネロスの精力に焦り始
めたのかもしれなかった。
「足が震えてるよ。ほら、キンタマも上がってきた」
腰の動きをとめて、玉をやわやわと揉みしだく。そうして焦らしたかと思うと、また激
しく責めはじめる。体をそらし、下になっているオネロスに見せつけるようにして豊かな
胸を揺らしながら、上下運動をさらに速める。
「情けなくイッてしまえ、早漏野郎!」
根元と亀頭部分が強く締め付けられる。意識的に膣の締め付けを操り、もっとも感じる
部分だけを締め上げるという妙技だ。
「くそっ、ああ、イク……イ……ううあああっ」
ペニスが激しくわななく。
「あは……あははは……」
その動きを膣で敏感に感じ取ると、ヘレは声をあげて笑った。
「もう一滴もでないんだね。オネロス。僕の勝ちだよ……」
ふるえるばかりでなにも出さないペニス。萎えて戦闘不能になるのも時間の問題であっ
た。しかし、無情にもヘレは動くのをやめない。
「このまま君が枯れるまでやって、再起不能にしてあげる。アマゾネスにたてついたこと
を後悔しながら腎虚にでもなるんだね!」
狂ったように腰を動かし精を貪るヘレは、もはや人間というよりも搾精器械であった。
全身汗だくになり、強烈な雌の淫臭をはなちながら、ただひたすら、もはや精液の絞りか
すでしかないペニスをなぶり、絞り上げる。
責めのむごさに、二人の戦いを見ているまわりのアマゾネスからオネロスへの同情を示
す嘆息すら聞こえはじめた。
ヘレは気にもとめず――というより、もうまわりのものはなにも見えていないのかもし
れないが――狂操のように腰をふる。摩擦熱でペニスから発火するかと思うほどのピスト
ン運動だ。オネロスはうなり、そして精液のでない射精をした。しかし、オネロスのペニ
スは、それでも固さを保っていた。
「し、しぶとい……なんてやつ……何十人、何百人と相手にしてきたけど、君みたいな男、
はじめてだ。底なしというのは、君のことを言うんだろうね」
実は、オネロスの精力はとっくに底をついていた。オネロスのペニスの固さを保ち、意
識を維持しているのは、気力であった。ヘレが指摘したようにプライドであり、愛国心な
のかもしれず、性豪とうたわれた男の本能なのかもしれなかった。
一方、ヘレのほうもオネロスの名刀をひたすら擦りつづけてきたため、そうとう感じて
きているし、体も疲れはじめていた。アマゾネスとはいえ女であり、膂力はともかくとし
ても基礎体力の面ではオネロスに劣る。熱っぽい息と全身をおおう汗がそれを如実にあら
わしていた。
ヘレは、焦った。はやく決着をつけなければ、責めるだけの体力がなくなってしまう。
体を休めれば、オネロスのほうにも休憩をとらせることになり、人間離れした精力と体力
をここまで削ったのが無駄になってしまう。速攻しかない。ヘレはすばやく判断し、オネ
ロスの上半身を押し倒して騎乗位に体勢変更をしようとした。
ここで、一瞬の隙が生まれた。
オネロスはそれを見逃さず、ヘレをはねのけて女性上位の体勢を覆し、すばやく体の一
を入れ替えて逆に背後をとった。
が、ヘレは余裕で、
「後ろから入れるの? ふふふ……ほら、来なよ」
と、わざわざ二本の指でヴァギナを開いて見せつけた。ヘレの名器がぬらぬらと妖しく
律動し、その凶悪さをアピールしている。
後背位というのは、一見すれば男性が主導権を握れ、有利に見える。しかし実際には両
足が閉まり、筋肉が左右からなかを圧迫するようなかたちになるため、ペニスをしめつけ
るのにきわめて便利な体勢である。まして名器自慢の女相手には自殺行為以外のなにもの
でもない。速攻を企てるヘレにとってはまことに好都合でもある。
もちろん、オネロスもそれはわかっていた。自らのペニスをつかみ、ヴァギナとは別の
穴――アヌスにそれをあてがった。
「馬鹿? 指さえ折れる僕のアヌスにそれを入れる気? 君が枯れ死ぬまでアヌスで搾り
取ってやるよ」
言葉こそ強気だが、声は震えていた。ヘレもわかっているのだ。強力な攻撃力をもつ部
位は時として弱点である場合がある。ヘレの場合はたまたまそれがアヌスであり、そのこ
とはさきのアヌス責めでオネロスにもわかっていた。
それにしても。オネロスは思った。乳房の印象に隠れて気づかなかったが、なんて色っ
ぽい尻をしてやがるんだ。興奮でうっすらと赤みがかり、豊かな曲線を描くその美尻は果
汁したたる桃のようであった。オネロスは桃にナイフを入れるように、ゆっくりとペニス
を沈ませていった。
「うはっ……あああっっ、ひいいっ」
悲鳴のようなヘレの声。瞬間、オネロスのペニスにも凄まじい圧力がかかる。
このなかでイッてしまえば、搾汁器のようなヘレの腸内で枯れ果ててしまうだろう。オ
ネロスに残されたチャンスは一回だけだ。
アヌスの締め付けをもろともせずに、オネロスは抽迭を開始する。はじめから全速力で
一気に決着をつけるつもりだ。たぷんたぷん揺れる巨乳をつかんで壊れんばかりに突きま
くった。
意外なことに、ヘレの締め付けはどんどんゆるくなっていった。快感のあまり力が入ら
なくなったのだろう。獣のようにあえぎながら快楽をむさぼるばかりで、もはや技巧を凝
らす余裕さえもなさそうだ。
「あっ、あひいっ……イイッ……ああ、もっともっと……ぐううっ」
オネロスが乳首を集中して責めはじめたとき、ヘレは電撃に打たれたかのように二、三
度震えた。その瞬間、ペニスが折れんばかりに締め付けられ、オネロスも絶頂においやら
れる。視界が一瞬真っ白になったかと思うと、下半身からしびれるような快楽がはしり、
果てた。
激戦の勝利は、オネロスのものになったのである。
絶頂の余韻からさめたヘレは、アヌスから抜きたてで湯気が立ち上るペニスを、ためら
うことなく口にふくんだ。イきすぎて勃起しづらくなったオネロスのペニスも、この倒錯
した行為であっというまにもとに戻った。
「アマゾネスのヘレを倒した男は君が初めてだよ。……誇りに思うんだね」
ぷいと目をそらし、吐き捨てるようにそう言った。負けたのが悔しかったのだろうか、
あるいは考えにくいことだが、照れているのかもしれない。
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