この話は 苦闘! バトルファック新人戦! read.cgi?no=908
の続きです。
「竜子、準備はできているかい?」
「おう、やっといたぜ」
部室に戻った僕と部長を、緋崎の声が迎えた。
「さあ、控室の方にいくよ」
部長に促されるまま、僕は部室の奥にある控室へのドアを抜けた。
控室はシャワーブースやロッカーの他、仮眠用のベッド――BF部らしく巨大なキングサイズ――が置いてある。今は、そこに緋崎が視聴覚室から借りてきたらしい、テレビとDVDデッキが用意されていた。
「泉君、非常につらいだろうが、我慢のしどころだよ。これで最後だからね。君には今からこれを見てもらう」
部長はそう言って僕をベッドに座らせると、一枚のディスクを取りだした。
「それは……?」
「なに、見れば分かるさ」
ディスクがデッキにかけられ、テレビのスイッチが入れられる。部長と緋崎は僕の視界に入らないよう、部屋の隅に移動した。
「こ、これは……」
僕の心に、甘く苦い思い出が甦った。
「紗江子先輩……」
ディスクは、僕がまだ鳳にいた去年の関東大会決勝、紗江子先輩が“帝王”山本天膳に負けた試合を映したものだった。
***
試合は、“帝王”がじわじわと掛けてくる圧力を、紗江子先輩が華麗にかわしながら進んでいく。
とにかく刺激に強い“帝王”は、先輩の愛撫をかわそうともせず、相打ちの形で女体を一撫で、二撫でとしていき、時折隙をついてホールディングを狙っている。
対する紗江子先輩は、持ち前の柔軟性と体のバネで“帝王”の腕から逃れつつ、着実にポイントを稼いでいく。
やがて鉄面皮を誇る“帝王”の表情にも、興奮の色が浮かび始める。当然だ。先輩のような美少女が相手ならば、体をぶつけられるだけでも男は嬉しいものだ。
当時、観客席から試合を見ていた僕は、この時点で先輩の有利を疑わなかった。
だがルチアナでパワーファックという概念に触れた今、先輩の苦悩に気付かされた。
(あんなに息があがってる……)
必死で平静を装ってはいるが、紗江子先輩はかなり疲労しているようだ。
それもそのはず、防御らしい動きをせず、抱きかかってくる男子選手を全力でかわし続けているのだ。しかもその相手が“帝王”となれば……。
画面の中の二人は、急に動きを止め、スクエアの中心で抱き合うと、濃厚なキスを交わし、どちらからともなくテイクダウンに至った。
当時の僕には不思議な光景だったが、今ならば分かる。
快感が積み重なりつつある“帝王”と、疲労しつつある紗江子先輩、両者の考えが、インサートセックスによる早期決着という所で、折り合いがついたのだ。
挿入に至っても、先輩は優雅に舞い、“帝王”は朴訥に動き続けた。
少しでも有利な体勢になるよう、先輩は身をくねらせ体位変換を主導していく。一方の“帝王”はどんなに不利な体勢になろうとも動きを止めず、腰を振り続けている。
技と精神力のぶつかり合い、そんなふうに見える。が――
(なんだ? なにか違和感が……)
何かに気付いた気がした。だが、僕の思考を待たずに、場面は進んでいく。
均衡が突如崩れ、紗江子先輩が一方的に乱れ始めた。
艶やかな黒髪を振り乱し、汗を飛ばして身を捩り、よがり声をあげる先輩。
挿入からの脱出を図ってか、両足が何度もマットを蹴り、つっぱる両手が“帝王”の肩を突き放そうとする。最後まで抵抗を試みる先輩の姿に、当時の僕も感動を覚えたものだ。
だが“帝王”は怯まず、先輩が下がった分前に出続け、突きこみも止むことはなかった。
やがて上気した頬を、悔恨とも歓喜ともとれる涙がとめどなく流れ落ちるようになり、嬌声は悲鳴の響きを帯び始める。
疲労困憊の四肢はダラリと力を失い、抵抗力を失った先輩が“帝王”に抱き寄せられる。
密着対面座位。それがフィニッシュの型だった。
憧れの先輩のあられもない敗北風景に、心の奥の切ない痛みと、股間の激しい疼きを感じた。
気付くと無意識のうちに股間に伸びていた自分の右手が、猛る分身を握りしめようとしていた。
「緋崎!」
僕は慌ててベッドの柵を掴むと、ちょうど視界に入った彼女を呼んだ。
「縛ってくれ!」
「お、おう……」
緋崎は面食らった様子だったが、僕の意図を察して、ガウンの帯を使って僕の両手首をベッドの柵に固定してくれた。
(こうでもしないと、無意識にオナニーしてしまいそうだからな……)
手が思うように動かせないのを確認してから、僕は左手に持っていたリモコンの再生ボタンを押した。
映像を見返しながら、僕は新人戦の時に感じた超感覚が、映像に対しても有効であることを実感した。
絡み合う二人の姿に全意識が引きこまれ、他は一切消えてなくなっていく。
いつしか僕の意識は画面の中の“帝王”に同調し、空想の中で美しい先輩の体を抱いていた。
懐かしい紗江子先輩の体臭、張りのある肌の感触が思い起こされた。
無意識のうちに、腰が画面に合わせて動く。
そして、気付いた。主導して体位変換をする先輩の、嫣然とした笑みの向こうに隠された、焦りに。
(さっきの違和感はこれだったのか!)
一見、積極的な先輩の体位変換は、その実、必死に“何か”から逃れようとする、防御行動だったのだ。
紗江子先輩は挿入を受けてから、ずっと、“何か”をされ続けていたのだ。
それが分かれば、急に始まる先輩の嬌態にも納得がいった。我慢の限界が来ただけなのだ。
そして僕は、“何か”を探って、また映像を見なおした。
まだ正体は分からない。
だが、新たな発見と感動があった。
密着対面座位で揺すられる先輩。ラストシーンでの、逝き体だと思われた彼女は、必死の抵抗をしていたのだ。残ったわずかな体力で、膣穴を締め、最後の最後まで闘い続けていたのだ。
映像の中に、超感覚を持って没入した僕には、それが分かった。
何度も巻き戻し、映像を見返す。瞳には画面が映るものの、僕の意識は脳内に繰り広げられる、仮想の関東大会にトリップしたままだ。
先輩の、筋肉のうねりや関節の軋みが聞こえてくるような感覚の中、僕は気付いた。
僕の――“帝王”の先端が、紗江子先輩の中の一点だけを突いていることを。
(これか、これだったんだ!)
紗江子先輩が必死に逃げようとしていた“何か”を確信した瞬間、現実の僕の体が叫んだ。
「見えた!!」
******
「見えた!!」
目の焦点が合っているのか心配になるほど、無心に画面を凝視していた泉の奴が、いきなり叫んだ。あたしも、見応えのある試合映像に集中していただけに、かなり驚いた。
「どうやら目的は達成できたようだね。竜子、彼の手を解いてあげてくれるかい」
お嬢はそう言いながら、デッキとテレビの電源を落とした。
あたしは言われたとおり、泉の手首を縛った紐を解いてやった。
泉はされるがまま大人しくしているが、股間は見苦しいほどにいきらせ、瞳を妖しく光らせている。正直、不気味だ。
「ほら、もう手が使ぇんだから、自分でなんとかしろよ。外に出ててやっからよ」
あたしは近くにあったティッシュの箱を放ってやった。
*
投げられたティッシュの箱が近くに落ちた。
だが、僕はティッシュに手を伸ばさなかった。
(か、体が……)
部長達が部屋にいるから恥じたわけではない、手が動かせなかったのだ。
想像の関東大会へと飛んでいた僕の意識は、そのまま肉体から乖離したままとなり、驚くべきことに、まるで臨死体験のように、部屋を見下ろしている。
この現象が、今日感じ続けた超感覚の行きついた先であることは、感覚的に分かっていた。肉体のフラストレーションさえ解消されれば、自然と納まるであろうことも予想ができた。だが、そのためには体をどうにかしなければいけないのだが……。
そんなことを考えていると、意識の端で部長が部屋を出るのを感じた。
*
パタン。
部屋のドアが閉じる音がした。
「お嬢、まだあたしがいるっての……」
言いながら、あたしもお嬢に続いて部屋を出ようとした、瞬間――
カチャン。
鍵が閉まる音がした。
「おい、なんで鍵閉めんだよ! こいつのオナニーなんか、見たくねぇよ!」
あたしはドアノブを捻ったが、鍵が開けられることはなかった。
*
ドアのところで部長ともめている緋崎の方へ、僕の視線が向いた。
ゆらりと幽鬼のように立ち上がる僕の体。
*
気配を感じて振りかえると、泉の奴が立ち上がっていた。
――完全に目がイっている。
「お、おい、お嬢! 開けろって、シャレんなんねぇよ!!」
あたしがドアを叩きながら叫ぶと、目の高さにある覗き窓――いつの間につけたんだ?――がスライドし、部屋の外にいるお嬢と視線があった。
「泉君のトレーニングに、随分付き合ってもらったからね。竜子、君にプレゼントさ」
「プレゼントだぁ?」
意味が分かんねぇ。
「前々から愚痴ってたじゃないか。個人リーグじゃ、骨のある相手と当たらないから、つまらない、と」
「え?」
一瞬ギクリとした。
あたしの所属する『個人リーグ』は、実力別に分かれたリーグの中で、男女がマッチングし、成績優良者が昇格する仕組みになっている。そのマッチングの際、選手を適正リーグに誘導するため、強者同士のマッチングは避けられる傾向にある。星の食い合いを避けるためだ。
そんなマッチングにあたしは不満を感じていたのは事実だ。自分より弱い相手との公式試合が続き、半分嫌気がさしていたのだ。そしてそんな状況は、十分昇格する――2年の後半ぐらい――まで続くと思っていた。
「だから、用意してあげたよ。骨のある相手を。今の彼なら、どんなBFにだって、限界まで付き合ってくれるよ!」
「げ、限界まで……」
脳裏にさっき見たビデオの映像が甦り、視線がガウンを脱ぎ捨てた泉の体に吸い込まれた。確かにヤりごたえはありそうだが……。
(くそっ、何考えてる?)
冷静になろうとしたが、体の反応は正直だった。下着の中の湿度が上がり、喉がなった。
燃え上がる自分を感じる。久しぶりの高揚感だ。
「ち、ちくしょう! やってやらぁ!!」
あたしは一声叫ぶと、素早く脱いだスカートを泉の顔に投げつけた。
*
顔面に軽い衝撃。同時に視界が奪われ、いい匂いがした。
不思議な感覚だ。肉体が感じた五感は全て伝わってくるのに、部屋を見下ろす第三者の視点も保たれている。おそらく、今置かれている第三者の視点は、音や気配を頼りに脳内で合成されたものなのだろう。
棒立ちになった僕に向かって、姿勢を低くし、ほとんど四つん這いになった緋崎が、飛びかかる狼のような勢いで、顔から突っ込んできた。
「クハアァツ」
腰を捻り躱わした僕の横を、緋崎が通り抜けていく。勃起した分身だけは、腰の動きに遅れたために、緋崎の端正な顔面に掠られてしまった。
*
(これをかわすかよ!)
完全に不意を突いたはずの低空タックルがかわされる。
(咥えちまえば、簡単そうなのにな)
頬を掠めた鈴口は、先走りですでに湿っていた。だが、一筋縄ではいきそうにない。
「うおっっと」
短パンに泉の手が伸びてきた。あたしは勢いのまま駆け抜け、逃れる。
(こっちが服着てるうちに、2、3発イかしとかねぇと、こいつが何発イクか分かんねぇからな)
*
(素早い……)
これだけ素早い緋崎を相手に、剥衣から始めるとなると、大分骨が折れる。そう僕が感じた瞬間、僕の肉体は後ろ向きに大きく跳躍し、ベッドの上に飛び乗っていた。
*
(ちっ、考えてやがる)
ベッドの上に立つ泉の姿に、あたしは背中に汗が伝うのを感じた。
段差があると、さっきのようなタックルは仕掛けられない。かといって、ベッドの上に昇ってしまえば、いくら大きいベッドとはいえ、地面の上のようには動き回れない。あたしを捕まえて服を脱がせるためには、最適の場所と言える。
瞬時にそれを思いつく判断力もさることながら、今にもイキそうな状態で冷静に距離をとる泉に、脅威を感じざるをえない。
(こんなになっても、勝ちにくるのか……。とは言え、あたしが付き合わなきゃ、それまでなんだが……)
あたしが思案しながら見上げると、泉と目が合った。瞳が燃えていた。
「安心しろよ! 付き合ってやるぜ!」
逃げるという選択肢は、あたしにはない。
*
スクエアマットと違い、ベッドのマットは柔らかく、僕達は互いに瞬発力を失った。そのため、どちらも急所をカバーするため、自然と姿勢が低くなる。
ほとんど膝をついているような状況にも関わらず、緋崎は相変わらず素早い。華麗なマットワークで僕の背後に回り込もうとしてくる。
だが――。
*
「くっ、さすがに、無理か……」
着衣が災いし、泉に掴まってしまった。男の力で服を掴まれては、振りほどくことはできない。
向かい合う形のまま、あたしの腿のあたりを蟹ばさみすると、泉はあたしのブラウスのボタンを手品のような速さで外してしまった。
(マ、マジか!)
ボタンが外れてしまうと、ブラウスは拘束に利用されかねず、かえって邪魔になる。あたしは急いで自分から脱ぎにかかった。
その隙に泉は胸の谷間に顔を埋め、ひしっ、としがみついてくる。
(ちぃ、しくじったぜ!)
背中でホックを探られる感触。顔面を使ってブラがずらされ、乳首が唇に挟まれた。
「あうっ」
*
固く尖った、色素が薄めの乳首を舐め転がす。唇の間で硬度と体積を増していく、なんともいえぬ心地よい感触。
緋崎のブラウスを脱ぐ動きを邪魔しながら、徹底的に舐めしゃぶってやる。
*
「くっ、いいかげんにっ、しろっ!」
ブラウスを脱ぎ終えたあたしは、泉の口と乳房の間に手を入れ、乳首を隠した。と、同時に、泉の頭を胸の谷間に抱き寄せてやる。
口の中で虐められていた突起は、ジンジンと甘く痺れていたが、かまっている暇はない。
「おらっ、今度はこっちから行くぜ!」
あたしは泉の顔を胸で挟み、奴に抱きつかれたまま、体を揺すったり波打たせたりして暴れてやった。これだけ密着していれば、肌が擦れ合って十分気持ちいいはずだ。
しばらく動き続けていると、抱きつく力が弱まってくるのが感じられた。
(今だ!)
あたしは泉の腰が引けた瞬間を狙って、蟹ばさみされていた足を曲げ、足裏をベッドにつけると、泉の頭から手を放し、ブリッジで奴を持ち上げた。
一度持ち上げてしまえば、体を入れ替えることも比較的容易になる。
あたしはブリッジの勢いを生かして、横に回転し、泉を組み敷く体勢に持ち込んだ。
*
互いの上下が入れ替わった瞬間、凄まじい振動が股間を襲った。
緋崎が上位の優勢を生かして、電気アンマ気味に、無理やり足を抜きにきたのだ。
「ウオオォ、ッオォ」
僕はたまらず蟹ばさみを解き、自分がされたようにブリッジを仕掛けた。
*
「甘い!」
あたしは泉が跳ねあがろうとする力を逆に生かし、素早く上体を起こした。
結果、ブリッジで腰を突き上げる泉の足の間に、正座をしたあたしが位置する状況ができあがる。
泉はすぐに逃げようとしたが、当然あたしが逃がすわけもない。
*
腰を逃がす間もなく、怒張が掌握されてしまった。
柔らかな二つの掌が、激しく僕を擦りたてる。
一気にイカせる動き。
我慢は不可能。
僕は逃げるのを止め、さらに高く腰を突き上げると、背筋と腹筋に渾身の力を込め、反動をつけて一気に立ち上がった。
*
「なっ!?」
泉はブリッジから強引に立ち上がると、あたしの頭を両手で捕まえた。
そして、あたしが反応するより早く、手の中の怒張が弾け、奔流がほとばしった。
「うわっ!?」
眼前で起きた白濁した爆発に、あたしは思わず目を瞑ってしまった。
普通の射精なら怯みはしないが、いくらなんでも量と勢いがありすぎた。
(し、しまっ)
あたしの視界が奪われた瞬間、掌からにゅるつく感触とともに、肉竿が引き抜かれた。精液の滑りを利用したエスケープだ。
思わずあたしが前に向かって追いかけると、後頭部が上から手で押さえつけられた。
(まずい)
あたしの頭は泉の股の間に挟まれていた。
泉はそのまま、あたしの背中越しに手を伸ばし短パンを掴むと、あたしの腰を引っこ抜くように持ち上げながら、後ろに尻もちをついた。
それに伴い、あたしは頭を下、尻を上にした前転を途中で止めたような形、いわゆるまんぐり返しの姿勢を取らされてしまった。
「あふっ」
体位変換の途中でずり下がっていた短パンとショーツが膝のあたりまで脱がされ、無防備な股間に泉の顔が埋まった。
*
クンニからの脱出を試みる緋崎。僕は彼女の体を両脇から三角座りの要領で立てた膝で挟み、ウエストを抱き寄せることで制すると、襞の薄い、繊細な作りの秘裂に口づけた。
射精を眼つぶしに使うという、本来の試合ではありえない奇襲が功を奏した。完全な勝勢。――だが、緋崎は粘りを見せた。
「なめんじゃねぇよ」
窮屈な姿勢をものともせず、後ろ手に回した右手でペニスを掴んできたのだ。
竿を扱きながら、自分の背中と亀頭の先が擦れるよう、器用に調整してくる。
スペース不足のため、竿擦の威力はさほどではなかったが、すべらかな肌の感触が十二分にそれを補っている。
「ウウゥ」
だが手淫の手を払うことは僕にはできなかった。
なぜなら緋崎のもう一方の手、左手がウエストのクラッチを解こうと、抵抗してくるためだ。片手ではまんぐり返しのポジションは維持できないだろう。
*
異様な責め合いはしばらく続いた。
(顔色が読めねぇ……。でも、焦ったら負けだ)
未だ理性を失ったままならしい泉は、無心の表情でクンニを続けている。
だが、手の中に握りこんだ奴のモノは、固く張りつめ、時折ビクビクと震えている。常道から外れた方法ではあるものの、あたしの責めも十分な威力があるようだ。
泉の状態を考えれば、勝機はある。
そう自分を奮いたたせ、焦りを押さえ、我慢の責め合いを続ける。
だが、体勢の不利はいかんともしがたい。
(畜生、上手ぇ。舌の動きが、やべぇ)
理性を失っていても、泉の舌技は精緻を極めた。
力を入れ尖らせた舌先が、つま先立ちのステップを踏むバレリーナの様に、あたしの敏感な粘膜の上を滑る。
接地面積が少ないため、性感への刺激は柔らかく、しかし強くなるのだ。
(やべぇ。……く、イ、イクッ)
何度目かのクリトリスへの集中口撃。あたしの忍耐が限界に達し、愛液の飛沫が飛んだ。
――と、同時。
「ウォオッ」
泉の熱い奔流があたしの背中に浴びせかけられた。
*
「フゥー、フゥー」
僕の体は一旦、緋崎を捕まえていたクラッチを解いた。
勝勢と思えたポジションで同体に終わったこと、あまり苦しい姿勢を続けさせると相手の快感が薄れてしまうことを考慮したのだ。
僕が後ろに少し下がると、緋崎のお尻が落ちていく。その途中、目の前に来た膝を抱き捕まえ、緋崎の両足を抱きしめた状態で、僕は腰を突き出した。
*
「させねぇよ!」
屈曲位気味のインサートを狙ってきた泉の肉槍を、腰の捻りでかわし、素股で受ける。
一挿し、二挿し。気付いた泉が腰を引いて逃げた。
*
「まあ、慌てんなよ」
僕が離れると、緋崎はベッドに仰向けになり脚を高く上げたまま、膝のあたりに残っていた短パンとショーツを自ら脱ぎ捨てた。
緋崎は脚を開きながらゆっくり降ろすと、挑発するように手招いた。
「来いよ、じっくり相手んなってやる」
僕の体は当然のように飛びかかっていた。
*
(くぅ、固っぇ)
泉の怒張は、締まりに自信のあるあたしの関門を一気に抜けてきた。滑りが良くなっているとはいえ、角度を合わせる技術と固さが両立している証拠だ。
(二回出したくせに、ガチガチじゃねぇか……)
さっきまで握っていたのと全く変わらない固さの肉棒が、あたしの膣中を掻き回してくる。
「んっ、んむっ、んはっ」
覆いかぶさってきた泉に唇を奪われる。腋から手が差し入れられ抱きしめられた。
(くそっ、やっぱ、キスも上手ぇ。感じちまう……)
むやみに口中を舐めまわしてくるリーグ戦の対戦相手と違い、基本的にソフトでありながら、時折舌先でツボを突いてくる泉のキスは、気を抜くと頭がぽー、となってしまいそうな優しさがある。
インサート後の動き方も、抜き差しより角度変化やグラインドを多用し、膣全体へのマッサージ効果による性感増幅を狙っているようだ。これをされるとされないとでは、後のピストン運動での女側の感じ方が違う。
つまり、我を忘れていても、その状態で女に挿入していても、泉は女の性感を優先しているのだ。
(狙ってんのか、体に染みついてんのか、分かんねぇけど、とことんバトルファッカーなんだな、おまえ……)
なんだか胸の奥がじんわりと暖かくなった気がした。
(とは言え、大人しくやられてはやんねぇけどな!)
「んっんんっ、んうぅ」
あたしは口の中に入ってきた舌を思いっきり吸ってやりながら、泉の腰の動きに合わせ、下から強く腰を突き上げた。
*****
「はっっ!!」
緋崎に挿入してから3回目、計5回目の射精によって、ついに浮遊していた僕の意識が体に戻った。
「んんっ、くっ、あああっ! ……ん、ふぅ……。うん? おっ、戻ったのか?」
僕の胸に手を付き、騎乗位で跨ったまま、絶頂の余韻に震えていた緋崎が、こちらを覗きこむようにして聞いてきた。
「ああ、……って、分かるのか?」
『戻る』という僕の状態にふさわしい表現に僕が驚くと、緋崎はこともなげに言った。
「そりゃ、さっきまでは『ウオオ』とか『オオッゥ』とか言ってたからな」
確かに。
「ちっ、結局3回もイカされちまった」
「僕は5回だし……」
「そりゃ、おまえ、あの状態で同点だったら、あたしがショックだっての。もっと一方的にイカせる気だったのに……。ま、ともかく、こんでお役御免だな。もう、結構な時間だし、帰ろうぜ」
そう言って緋崎は僕のモノを抜くと、ベッドから降りようとした。
「あっ、待ってく……」
僕は思わず手を掴み彼女を止めていた。
「なんだよ?」
「いや、その……」
咄嗟に出た行動のため、自分でもなぜ引き止めたか分からず、僕は言葉を失ってしまった。
*
あたしの手首を掴んだまま、泉は俯いてしまった。
その目線を追うと、奴のモノはまだ硬度を保ったまま、そそり勃っていた。
「おいおい、まだ勃ってんのかよ……。でも、我に返ったんなら、自分でなんとかしろよ」
あたしがそう言うと、泉は慌てた様子で手を放した。
「そ、そうだよな。ごめん、いきなり手、掴んだりして……」
そう謝ったかと思うと、泉は切なげな顔をして、近くに落ちていたティッシュに手を伸ばした。
(なんだぁ? すぐ始める気かよ。でも辛そうっちゃ、辛そうだしな……)
泉の怒張は、脈に合わせて上下に揺れている。
(冷静になったらなったで、体の方のスイッチが入ってるから辛いのかもな……)
「ちっ、しゃあねぇな。もう少し、付き合ってやんよ」
「ほ、本当か!?」
(ったく、嬉しそうな顔してんじゃねぇよ……)
あたしは顔を明るくさせた泉に、心の中で嘆息しながらベッドに再び手をついた。
*
緋崎に勃起を指摘されたことで、体に残った官能の余熱が急に意識され、切なさでたまらなくなっていたところに、緋崎の嬉しい申し出があった。
彼女には悪いとも思ったが、背に腹は代えられず、僕は厚意に甘えることにした。
「あれ?」
てっきり緋崎がこちらを向いてくれると思ったら、彼女は背を向け、四つん這いになった。
「バックをとらせてやるから、好きに責めろよ」
「いいのか?」
「ああ、ちょっと疲れたしな。……せっかく付き合ってやんだから、あたしが感じるようにやれよな」
「あ、ああ! 頑張るよ!」
僕は緋崎の方へにじりよった。
**
………
……
「おい、馬鹿、ひっぱるなよ」
「でも、こうして、こうすると……」
「あっ、……マジか。やばっ、あんっ」
………
……
「緋崎の背中、すべすべだよな」
「こら、重てぇよ。乗るんじゃねぇよ」
「でもさ、くっついてると気持ちいいんだよ……」
「だから、甘えんじゃねぇよ、……ぅ、んっ、……しょうがねぇな……ぁ……」
………
……
「はぁ、はぁ、はぁ」
「あっ、あっ、あっ、あんっ」
「イ、イキそう……はぁ、はぁ、はぁ」
「えっ、ダメだって、もっと、頑張れ、よ、っ、あんっ、あっ、あっ」
「だ、駄目だ、もう……」
「あっ、おい、バカ、あっ」
「うっ」
………
……
「どうしてくれんだよ、まだ途中だろ!」
「で、でも……」
「あん? お! なんだ、まだ、できそうじゃん」
「えっ……」
………
……
「んんんんぅううぅ! ……ふぅ、んっ、おい、もういいぞ」
「そ、そりゃないよ! こっちにだって都合が!」
「終わり、終わり……、って、こらっ」
「は、放さないからな!」
「わ、分かった、分かったから。……ったく、しょうがねぇな」
「あ、ありがとう」
「でも、次はタイミング合わせようぜ」
「ああ、そうだね。いつまでも続けるわけにいかないもんな」
「よし、じゃあ、……」
………
……
「あああああっっっ!!!」
「くうぅっ!!」
「っ、あっ、はあっ、はあっ」
「うくっ、くはぁつ、はあっ」
「……やっべぇ、今のすごくなかったか?」
「ああ、普段はタイミング合わせたりとか、希望を言ったりとかしないからなぁ」
「あたし達、テクはあるしな! ……、なあ」
「うん?」
「もう一回しねぇ?」
「えっ、さすがに……」
「なんだ、もう限界か? だらしねぇの」
「なっ、ま、まだ、やれるさ!」
「おっしゃ、その調子だ!」
………
……
…
――こうしてルチアナの夜は更けていった
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