本作は 苦行! 新たなるBFへの道 read.cgi?no=907
の続きです。
「どうだい、調子は?」
「ふぅー、ふぅー」
新人戦の会場である市民体育館。受付を済ませた僕は、部長に付き添ってもらいながら試合の時を待っていた。
「随分血走った目をしていたが、眠れなかったのかい?」
「ふぅー、ふぅー」
「おっ、なかなか雰囲気のある子がいるねぇ。見てごらんよ」
「ふぅー、ふぅー」
「くくっ、いい具合に集中してるじゃないか」
「ふぅー、ふぅー」
今の僕に、会話に意識をさく余裕はなかった。目を閉じ、深呼吸を続けて、己を保つ他ない。BFの試合会場だけあって、中には刺激的な調整をする学校もあるからだ。
「まあ、そのままでいいから聞きたまえ」
「ふぅー、ふぅー」
「今日の新人戦の相手は、無名校の一年生だ。実力的には、はっきり言って、君の足元にも及ばない」
「ふぅー、ふぅー」
「だが、今の君は特別な状態にある。責められればイカされる可能性は高い」
「ふぅー、ふぅー」
「だから、君は確実に勝つために、愛撫だけで決めてしまおう、と考えているはずだ」
「ふぅー、ふぅー」
「それは、許さない。必ず挿入して勝ちたまえ」
「ふぅー!?」
「当然、負けてもいけない。約束を守らなければ、私が部長の間は君を試合に出すことは無い。つまり君の目的は果たせない」
「ふぅーー!!」
「さあ、順番が回ってきたようだ、行きたまえ」
部長の指示にショックを受けたまま、僕はスクエアマットへと歩を進めた。
対戦相手は、少し明るめのショートヘア、パッチリとした瞳が印象的な小柄な女子だった。やや幼げな起伏と長めの手足が、小鹿のような軽快な愛らしさを醸し出している。
スクエアに入るやブレザータイプの上着を脱ぐ。リボンタイを緩める細い指先は、かすかに震えていた。脱衣籠を前にして戸惑いがないあたり、中学BFである程度の試合をこなしてきたようだが、高校初の試合ということで緊張も見て取れる。
スカートのホックが外れ、ストンと落ちた。下着は水色の――
(目が、目が離せない)
なんということはない、普通の脱衣に僕は目を奪われてしまっていた。
気が急く。
僕は対戦相手――名前の確認すら忘れていた――を凝視しながら、あっという間に裸になっていた。
*
強い視線を感じて、後ろに視線を向けると、対戦相手の男子、泉選手がすごい形相でこっちを見つめていた。素っ裸で。
(なに、なんなの? っていうか、なんでギンギンなの?)
これが高校BFの洗礼なのだろうか。
私は戸惑いを覚えたまま、脱衣を終え、開始線へと進んだ。
*
対角線から歩み寄ってくる裸体。昨晩の地獄のような禁欲を強いられた僕の目に、対戦相手の体は輝いて見えた。
胸に湧き起る、畏敬にも似た感動。対戦してくれる相手への圧倒的感謝。
「よろしくお願いします」
自然と挨拶がでた。
*
(???)
開始前の握手で挨拶された。異様に真心のこもった挨拶だった。
(紳士なの?)
意味が分からなかった。
*
試合開始のコール。
少女はわかりやすく自己主張する僕の弱点へめがけ、一直線に右手を伸ばしてきた。
なかなかに素早い動き。
だが素直すぎて読みやすく、まして研ぎ澄まされた僕の感覚の前ではスローモーにさえ見えた。
僕は腰を引きつつ右足を下げ、懐を深く構えた。
少女の右手が僕の股間へと誘い込まれ、重心が前に泳ぐ。
瞬間、僕は彼女の右手首を掴み、引き込みつつ、横をすり抜けるようにして背後に回った。
*
(えっ?)
重心を崩されたと思った時には、すでに背中にぴったりと密着されていた。
不利を悟り、前転して逃げようとしたものの、すでに腰から回されていた左手に、鼠径部をロックされ動きを止められてしまう。
「んんっ」
太腿の付け根に添えられた掌は、的確に位置を定め、股間に潜り込ませた中指の先で正確に陰核を捉えていた。
(は、迅すぎる!)
動きの速さと正確性。実力の違いは明らかだ。
「やっ、ああっ!」
腰に甘い疼きが広がった瞬間、背中から押さえこまれ、膝をついた四つん這いの姿勢をとらされてしまった。
無防備になった乳房が素早く右手におさめられる。もう逃げられない。
*
(や、柔らかい。なんて抱き心地だ)
僕の心身は、抱きとめた女体の感触で歓喜に震えた。
(分かる。全部分かるぞ)
密着した対戦相手からはいろんな情報が伝わってきた。震え、体の硬直、声にもならないような微細な喉の鳴り具合、体温の変化、汗。全てを貪欲に感じ取る僕の感受性が、彼女がどう感じているのか、どこを触って欲しいのか、何もかもを明らかにしてくれていた。
*
「や、だめ、ああっ、なんで分かるの、そこ、ああっ」
(暴かれちゃう。恥ずかしいこと、全部知られちゃう)
泉選手の触り方は信じられないほど的確だった。まるで心を読んだかのようなタイミングで、私の弱いところを、弱い触り方で責めてくる。
重力に引かれた乳房が、重さを計るようにして下から優しく支えられ、痛いほどに尖りきった乳首が指の間に捕えられている。陰核にとりついた中指は、微妙に振動しながら、指の腹を上手く使って、敏感な粘膜を執拗に摩擦してくる。
股間の刺激に耐えかね、せめて膝を閉じようとすると、お尻に体重がかけられ、膝を動かせないようにされてしまう。快感に抗い身を固くしようとすると、乳房から離れた右手が、スッと腋の下に差し込まれ、くすぐったさで強制的にリラックスさせられてしまう。
何をしようとしても先を越され、無防備なところに快楽を擦りこまれる。
抵抗なんて、できるわけがなかった。
*
対戦相手が戦意を失ったのが伝わってきた。
こうなれば、あとはフィニッシュに持ち込むだけだ。下手に長引かせるのは可哀想だし、なにより相手への侮辱になる。
だが、僕には部長との約束があった。“必ず挿入して勝つこと”。
――いや、それより、なにより
(が、我慢できん!!!)
挿入を思いとどまれるような、身体状況ではなかった。
(あ、穴! 入れる! ここだ!!)
肉の穂先にクチュリと湿った感触があった、その瞬間、僕は腰を一気に突き出した。
*
「くはあああぁぁっっ!!」
すさまじい、獣のようないきおいのインサートの後、いきなり背後の泉選手が吠えた。
(な、なに、なんなの?)
てっきり指でイかされるものと覚悟を決めていた私は、突然のことに頭が真っ白になった。
「はあっ、はぁっ、くっ……」
泉選手は私の中に肉茎を埋めたまま、私の背中に覆いかぶさるようにして動きを止め、荒い息をついている。
(なんで動かないの? もしかして、チャンス?)
手指による愛撫が止み、私にも余裕が戻ってきた。
理由は分からないものの、泉選手に何か異変があったらしい。
そう判断した私は、思い切ってお尻を振る反撃を試みようとした。が、――
パンパンパン
「んはああっ!」
凄まじいスタッカートが結合部で響いた。
動き出しの機先を制され、予期せぬ快感を叩きこまれた私は、マットに突っ伏してしまう。
すると、圧倒的有利な状況にも関わらず、泉選手もまた動きを止めた。
(な、嬲る気!?)
実力差がある相手を、辱めてみたり、性処理の道具のようにして扱う選手がいることを私は知っている。先輩男子にもそのタイプがいるからだ。弱いのが悪いと言われればそれまでだが、マナー違反だし非道いと思う。この泉選手もそういう人間なのか。
私は怒りと落胆の入り混じった気持ちで、肩越しに振りかえった。
「えっ?」
思わず声が漏れた。
(な、なんて顔してるの……)
意地の悪い先輩男子と同じような、獣欲に満ちた汚い表情を予想したのに、全く違う見たことのない表情が泉選手の顔に浮かんでいた。
上気した頬は快感に緩んでいるのに、音が鳴るほどに歯を食いしばっている。微笑むように目じりを下げた目つきには好意が籠っているのに、瞳は闘志に燃え上がっていた。
*
(う、動かれたら、イく!)
もし意識しない刺激を受けたら、間違いなくイってしまう。逆に自分の意思による快感なら、まだ耐えられる。そんな確信がある。
だが、挿入している以上、刺激から逃げることはできない。勝負に勝つには、常に先手を打って、相手の攻撃の芽を摘み続ける他ない。
僕は絶望的な状況の中、全神経を対戦相手に集中させ、覚悟を決めた。
*
「あっ、あんっ、ああっ!」
泉選手の瞳の光が一際強くなったかと思うと、リズミカルなピストンが始まった。心が浮き立つような、心地よい間隔のリズムだ。
*
深くつながったことで、体の表面に現れない、深部筋のうねりまでもが伝わってくるようになった。
彼女の反応が最も良くなるペースで前後に動き、膣壁のひくつく箇所に亀頭をぶつけ、コリをほぐすようにしてあげる。
無論、抵抗はさせない。腰の動きは、反射的なものは手で押さえつけ、意識的なものは子宮口近くのグラインドや浅瀬での高速ピストンのような強い刺激で意志をくじき封じていく。
逃げようとしたなら、抱きつき、引き寄せ、決して結合を解かせない。これは本能に任せるだけでも、造作もないことだった。
*
「んっ、あっ、あっ」
「ふっ、ふっ、ふっ」
私の喘ぎ声と同じタイミングで、興奮した息使いが聞こえてくる。
「んん〜〜!」
「ふぅぅぅ!」
なんとか反撃に移るため、私が体に力を入れ快感をやり過ごそうとすると、泉選手も動きを止め、息を整えてくる。
そして私が動きだすより一瞬早く、彼が動きだし、正確で魅惑的なリズムが刻まれる。
(感じているはずなのに、すごい!)
主導権を握られ、いいようにされているにも関わらず、私は悔しさよりも敬意を抱いた。
動きを止めている間も、膣奥で狂ったように跳ねまわるペニスの動きから、彼がイキそうなのは確実なのだ。それでも、勝つために、動き続ける彼の技量と精神力に感服してしまったのだ。
(多分勝てない。でも、最後まで耐えよう。そして、気持ち良くしてもらおう……)
はるかに上手の相手と、切迫した状況で技を競える幸せを知った私は、奇妙に充実した、心地よい敗北感に包まれた。自分の両肩を抱き、身を丸くして後ろからの突きこみに身構えた。
*
深く繋がり、触れあった粘膜から、対戦相手の奥底で、なにかが柔らかく解けるのを感じた。
僕は勝負を決めるため、細く華奢な彼女のウエストをしっかりとホールドし、ピストンの密度を上げた
*
「あっ、あっ、あああああぁぁっ!!」
***
『そこまで。勝者、聖ルチアナ学院、泉貴明選手!』
朦朧とした意識の中、僕は審判の声を聞いた。
***
「はぁ、はぁ、……ふぅ」
絶頂の波が過ぎ去り、背中から泉選手の気配が離れた。
一抹の寂しさを感じながら、呼吸を整えていると、強い視線を感じた。
(?)
振り向くと拳が真っ白になるほどマットを握りしめ、股間をいきり立たせた泉選手が、血走った眼で私を見ていた。
(こんなに追いつめられていたの?)
視線の向く先から察するに、射精したくてたまらないのに、勝負が終わってしまったために欲求をもてあまし、必死で自制しているのだ。
――ここまで切実な空気を纏った人間を見たことがない。
「あ、あの……、出させてあげようか?」
ついそんな言葉が口をついて出た瞬間、
パアアァァ
泉選手の表情が光り輝くほどに明るくなった。
――ここまで嬉しそうな顔をした人間を見たことがない。
「くすっ」
なんだか彼が可愛らしく思えた私が、彼の分身に手を伸ばした、その瞬間――
「ちょっと待った!」
横から疾風のような速さで、一人の女性が割り込んできた。
「ありがとう、優しいね。でも、それには及ばないよ。さっ、泉君、試合は終わったよ。立とうか」
女性は早口でまくしたてると、泉選手を強引に立たせた。
「あ、あの、貴女は?」
彼が可哀想に思えた私は、少し険のある声で聞いた。
「私はルチアナの部長、御堂寺だ」
「か、彼、大丈夫なんですか? 出させてあげた方が……」
「せっかくここまで仕上がったのに、無体なことを。彼の闘いはまだ終わっていない。最後の仕上げが待っているのさ」
そう言うと、御堂寺という女性は、泉選手にガウンを着せた。どうやらズボンを穿くことすら難しいらしい。そんな彼に、彼女はまだ何かをさせる気でいるらしい。
「さあ、泉君。タクシーを呼んでおいた。部室に行くよ」
「……待って下さい、部長」
先を促す御堂寺さんに泉選手が抗った。
彼女の手を振り切って、こちらに歩いてくる。
いくらなんでも限界なんだろう、やっぱり出させてあげよう、と考えた私を衝撃が襲った。
「ありがとう、君のおかげでいいBFができた」
なんと泉選手は私にお礼を言いに来たのだ。そして固く握手をすると、強い決意を込めた瞳と共に踵を返した。闘う者の目だった。
聖ルチアナ学院BF部。彼らは私の心に消えぬ思い出を残して、会場を後にした。
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