本作は 始動! 聖ルチアナ学院BF部 read.cgi?no=811
の続きです。
心の整理をつけ終えた僕は、BF部のドアを叩いた。
「御堂寺部長、先日は失礼な態度をとって、すいませんでした。もう、あんな態度はとりません。ご指導よろしくお願いします」
「そうか、私達と一緒にやってくれる気になったか。すっきりした顔をしているが、目指すバトルファックが見えたということかな?」
「いえ、それはまだ分かりません。正直なところ、部長や緋崎さんの言うパワーファックには反感を覚えないでもないですし、鳳のバトルファックも大切にしていきたいと思っています。でも、部長達のバトルファックには、僕の知らない、理解できない力があった。僕はそれを学びたい! そして自分のバトルファックを見つけたいんです。力を貸して下さい!」
「その言や良し! 大いに力を貸そう。いや、貸し借りなど無粋なことは言わない。君ももうルチアナの生徒、BF部の部員なのだから、共に学ぼうじゃないか!」
女性にしては力強い掌が僕の肩を叩いた。
「部長!!」
バトルファックにかける熱い思いが伝わってきて、僕は不覚にも目がしらに熱いものを感じてしまった。
「よし、では早速だが、君専用に組んだ特別メニューを実行してもらおう」
部長はそう言うと、机の引き出しからA4のプリントの束を取り出した。十数ページといったところか。
「特別メニューですか?」
「うむ。先日の竜子とのやり取りで分かったが、君は指や舌を使うテクニックは十分なものをすでに持っている。もちろん助言はさせてもらうが、当分は君なりの練習や調整を続けてくれればいい。だが、一方で君は線が細い」
「線が……細い……」
「ああ、だからもっと“強く”なってもらうために、特別メニューを組んだ。詳細はここにまとめてあるから試してくれ」
「いつの間に……」
僕はプリントを受け取りながら尋ねた。すると、少しだけ照れくさそうに部長が言った。
「ふふ、君はきっと部に来てくれると思っていたからね。2日程徹夜して仕上げたんだ」
見れば部長の目は少し、いやかなり赤くなっていた。
「……部長、ありがとうございます……」
僕は視界が滲み、彼女の顔を直視できなかった。
捨て台詞を残して部室を飛び出していった、戻ってくるかも分からない転校生のために2日も徹夜して……。この期待は絶対に裏切れない。そう思った。
「じゃあ、早速やりますね! よし、まずは動きやすい服に着替えるんだな……」
「ああ、頑張ってくれ」
プリントに目を落としながら更衣室に向かう僕を、部長は笑顔で見送ってくれた。
** 一カ月後 **
「部長……。すいません、もう限界です。もう少し軽い練習メニューを組んでもらえませんか?」
約一カ月、なんとか特別メニューを続けてきたものの、心身共に疲れ果ててしまった僕は、情けなく思いながらも部長に直談判した。
「ん? なんのことだい?」
いつもの湯呑でお茶を飲みながらにこやかに答える部長。
「部長の特別メニューのことです。10kmマラソンオナニーと全裸訪問ですよ」
ちなみに10kmマラソンオナニーとは勃起状態を保ったまま――萎えてきたら物陰で擦る――10kmのジョギングをすることであり、全裸訪問とは全裸の状態で他の部活を見学させてもらうことである。
部長に貰ったプリントには、試合中の勃起力養成――バトルファック中に精力不足が原因で萎えてしまうとペナルティが科せられる――と持久力増強のために10kmマラソンオナニーを。試合度胸を養い、またいろんなスポーツに触れて人体への理解を深めるために全裸訪問をせよとあったのだ。さらにその後はウェイトトレーニングをし、休憩の合間には、部長と緋崎の他に5人いる女子部員の導精練習に付き合い、1日3回以上の射精が義務付けられた。
女子の練習に付き合うのは当然大事なことだし、導精は気持ちいい。全裸訪問はどうにも恥ずかしかったが、しっかりお願いすればどの部の人も理解を示してくれたし、他のスポーツを見学することは刺激になった。ジョギングのおかげで運動能力も勃起力も鍛えられた。目指すところは分かる。が、体も心も疲労困憊の極みにあった。
僕がそう告げ、練習メニューの見直しを願いでると彼女の表情が一変した。
「なに!?」
部長は手に持っていた湯呑を机に叩きつけるように置くと、額に手をあて大仰に天井を仰いだ。
やはり失望――いや、呆れさせてしまったのか。僕は自分の心の弱さを呪った。
しかし、よく見れば彼女の肩が細かく震えている。――笑っている?
「部長……?」
訝しく思い、問いかける。
すると部長はいかにも耐えきれぬとばかりに吹き出した。
「くっくっくっ、くはははっ! ま、まさか、あのメニューをまだ続けていたのかい?」
「……はぁっ?」
とても嫌な予感がした。
「あ、あのメニューを……ひっ、くくくっ……ひっ、いっ、一か月も……ぷくくくっ。き、君……君は、おかしいと思わなかったのかい?」
「だ、だって部長が5、6時間続く試合もあるからって、大観衆にのまれて勃たなくなるかもって……」
プリントには、僕も知らなかったの事例なのだが、8時間にもわたる死闘の例や、W杯で10万人の観衆を前にどうしても勃たず、泣きながら棄権を宣言したイギリス代表の例などが事細かに、まるで見てきたかのように書かれていたのだ。
「信じる馬鹿がいるか!」
胸を張って言いやがった。
「君は5時間も6時間も、まして8時間も腰を振ってる試合を見たことがあるのかい? W杯とまで言わない、全国レベルの、いや地区代表レベルだとしたって、バトルファッカー相手に勃たないなんてことがあると思うのかい? 常識で考えたまえよ、常識で……ぷっ」
最低だ。人間の底辺がいる。
「いやあ、道理で他部の生徒から苦情がくるはずだ。でもね、安心したまえ。君はなかなか見た目がいいし、振る舞いも紳士的だ。ストーリーキングに対する好意的な意見も多かったよ。……まあ、試合でもないのに全裸で校内をうろつけば、立派に変態だがね」
苦情がきてたなら止めてくれ……。
「それにしても、毎日10kmも走っていたとは。がんばったねぇ」
机の上に崩れ落ちた僕の頭を、よしよしと撫でてくる部長。その手を振り払う気力もない。背中に突き刺さる他の部員の視線。同情、愉悦、好奇心、種類は違えどみんな知っていたみたいだ。
不意にその中の一人が声を上げた。緋崎だ。
「んっ? 待てよ、お嬢。マラソンオナニーって嘘なのか?」
馬鹿だ。底抜けの馬鹿がいた。
僕のささくれだった心は、自分より下がいたことを知って少しだけ癒された。
*
「まあ、冗談はさておき――」
僕と違って一年間、女子版マラソンオナニーをやりとおしたらしい緋崎は、ショックのあまり部室の隅で膝を抱えてしまっている。部長はそれを華麗にスルーすると、一カ月前と同じく机の中からプリントの束を取り出した。
なんとなく部長の人となりが分かってきた僕は、怒っても拗ねてもしょうがないのだと判断し、大人しく彼女に向き直った。
「君には、三週間後のこれに出てもらおう」
そう言って差し出された一枚目には、『バトルファック新人戦参加申込書』とあった。
「新人戦……ですか?」
意外な提案だった。各校の推薦以外、参加条件がない新人戦は、公式戦の雰囲気に慣れるために出場する初心者がほとんどで、僕が今さら出場する意味はないように思えたからだ。
「もちろん普通に出場しても、君が得るものはないだろうね。だから、条件をつけてもらおう」
「条件ですか?」
「そうだ。君にはこれから三週間、射精禁止を実施してもらう」
「射精禁止? 禁欲生活を送れってことですか?」
「いや、禁ずるのは射精だけだ。部の練習には参加してもらうよ」
「それは……」
なかなかに厳しそうだと思った。女子部員の確かなテクニックは、この一カ月で十分に味わっている。
だが、意味はありそうだ。バトルファックを始めてから、3週間も射精しなかったことなどない。善し悪しを別にすれば、部長は確実に新しい発想をもたらしてくれる。
「いいね、とにかく射精は厳禁だ。少しも漏らしちゃいけない。ちょっとでも危ないと思ったら、相手に伝えて動きを止めてもらうんだ」
「一応確かめさせてもらいますが、これは真面目な練習なんですよね?」
「ふっ、私はいつだって真面目だよ。まあ、やれば分かるさ」
少しだけ不安になった。
***
――3日目――
「うん、そうそう。上手だよ」
「ホントですか? なんか分かってきたかも。泉先輩、優しくて教えるの上手ですよね」
「そ、そう? あっ……そこ……」
僕の膝の間に跪き、僕のモノを握っているのは、一年生の佐伯さんだ。
高校からバトルファックを始めたこともあって、挿入無しのスポーツファックルールを志向している。今は手コキの練習中だ。
手つきはたどたどしいものの、教えてあげた弱点を素直に責めてくるので、かなりの快感だ。小柄な子なので、手指が細く雁首に絡んでくるのもポイントが高い。
「うっ、……ふぅ。そう、その調子。あとは自分で考えてみて」
「はい!」
元気な返事を聞きながら、僕はアドバイスをストップし、耐える姿勢に入る。
アドバイスにはどうしても僕の個人的な嗜好が混ざるので、自分なりに考えてもらう時間が大切になるのだ。――もちろん初心者の子には、最後までアドバイスが必要なこともあるので、そのあたりがバトルファック指導の醍醐味の一つだろうか。
「あっ……、ま、待った」
腰のあたりにこみ上げてくるものを感じ、僕は慌てて彼女の手を押しとどめた。
――6日目――
足を大きく広げ、ソファに腰を前に突き出す形で、行儀悪く座る僕の膝の間に、ブラウスの上半分だけボタンを外し、乳房を露出させた三年の野村先輩が跪いている。
彼女は恵まれた豊乳で、僕のモノをみっちりと包み込むように挟み、乳塊をぽよんぽよんと弾ませるようにして上下に動かしている。
きめ細かな乳肌による摩擦はもちろんのこと、重量感のある乳肉が肉棒の付け根に衝突する度、精嚢に甘い響きが伝わってくる。
「ああぅ、先輩、ストップです!」
僕は声を上げながら、パイズリ練習をしている野村先輩の肩を押しとどめた。
「んっ、……ふふ、もう限界?」
野村先輩は泣き黒子のある目元を緩ませながら、見上げるようにして聞いてきた。
「はい、はっ、ふうっ」
「じゃあ、落ち着くまでよわ〜くするね」
先輩はそう言うと、豊満な胸の間に挟んだままの僕のモノに、ゆるめていた圧力をかけ直してくる。
「と、止めてくれないんですか?」
「それはそうよ。ギリギリで我慢し続けるトレーニングなんだから」
上下運動は無くとも、心地よい圧迫感触は止まない。
(くぅ、これはキツイ。ただのオナ禁と違うのは分かっていたけど、ここまでとは……)
僕が深呼吸しながら耐えていると、腰かけたソファの後ろから部長の声がした。
「どうだい、試されている感じだろう?」
試されている、しっくりくる表現だ。そして、やる気を奮い起してくれる言葉だ。
快楽を味わいつつ、己の欲望をコントロールする。単なる禁欲よりも一段上のレベル、高みへと導いてくれそうな実感がある。
「ま、本番はこれからだ。がんばりたまえよ」
そう言って肩を叩くと、部長は他の部員の指導へと向かった。
――11日目――
一昨日ぐらいから、僕の練習パートナーは緋崎で固定されている。
理由は僕の暴発を防ぐためだ。僕の制止が間に合わない事態を防ぐため、確実な判断力とテクニックを持った、エースがあてがわれたということだ。
そして、今日、僕は彼女の足の下にいる。
「お嬢、こいつはいいとして、これで、あたしの練習になんのかよ」
緋崎はマットの上で身を捩らせ、もがく僕の局所を踏みつけながら、呆れた様子で言った。確かに全く反撃してこない相手を嬲っても、張りあいがないことこの上ないだろう。
「そう言わないでおくれよ。なに、ソフトタッチや射精気配を探る練習には、ぴったりの相手だろう?」
「まあ、そうだけどよ……。しっかし、お前、いくらなんでも、イキそうになりすぎだろ。もっと耐えろよ」
言いながら足裏の圧力が弱まる。僕がイキかけたからだ。
「ふふ、それは仕方がないよ。そうなるように、プログラムを組んだのだから」
部長は僕の顔の近くにしゃがみ、顔を覗きこんでくる。
「泉君。君も不思議に思っているんじゃないかい? 10日やそこらの射精禁止で、今みたいな状態になるのが」
たしかにそうだ。ここまでの射精欲求は、人生の中で感じたことがない。
「超回復という言葉を知っているかな? スポーツ用語だ。酷使し弱った肉体能力が、回復する過程で、以前より強くなる現象だね。君は今まさにその状態なのだよ」
「え?」
「一カ月間、毎日3回射精したね。走り込みや筋トレもした。その疲れがようやく癒されてきたのさ」
徐々にボルテージの上がってきた部長は、満面の笑みを浮かべ、キスができそうな距離に近づいてきた。
「さあ、楽しくなるよ! これからの10日間は! 絶対に君の知らない世界だ! 君はねぇ、人生で一番精力のあるこの時期に、今までで一番体力がある状態で、精子を限界まで溜めたまま、バトルファックの練習をするんだよ!! でもねぇ、イっちゃだめなんだよ。あぁ! なにが見えるんだろうねぇ。なにが感じられるんだろうねぇ……」
部長は、途中から完全に一人の世界に入って陶酔し始めていたが、その言葉は僕に畏敬の念を抱かせた。
(やりとげれば、なにかが掴める!)
自分では思いつきすらしないBFの深淵を覗きこんだ気がした。
――14日目――
緋崎を膝の上にのせて、後ろから触る愛撫練習を行うことになった。
「ちっ、これ、嫌いなんだよな」
悪態をつきながら、無造作に腰を下ろす緋崎。バトルファック志向の強い彼女は、一方的に触られるこの練習があまり好きでないらしく、この練習のときは機嫌が悪い。
そのため、僕の方もやりづらさを感じるのだが、今日はいつもと勝手が違った。
「……おい、どうした、さっさと始めろよ」
緋崎が訝しげな声を出す。
だが、僕は思いがけない衝撃に見舞われていて、動くことすら忘れていた。
「……緋崎」
「あん?」
「お前って、いい匂いするんだな……」
「……はぁあ??」
顔全体を歪ませ、疑問符を表現する緋崎。だが、そんなへんてこな表情も、今は愛らしく感じる。
柄の悪い彼女の表情も、近くで見れば、形のよい自然な眉と薄めの唇、スッととおった鼻筋の繊細な美人顔だと分かる。
一度意識し始めると止まらない。
手を回した腰はよく引き締まって細く、膝に乗ったお尻はとろけそうに柔らかい。鼻先を擽る細い毛先からは爽やかだが甘い香り。掌に吸いつく太腿の皮膚。緋崎の体はこんなにも――
「緋崎、緋崎ぃ」
僕はたまらなくなって、彼女の背中に頬ずりした。
「ひいぃい!」
バッと、緋崎が跳ね上がる。
「き、きめぇよ!」
確かに気持ち悪かったかもしれない。だが、僕は自分が押さえきれなくなっていた。
「う、うわぁぁ!」
僕に飛びつかれ、緋崎がマットに倒れ込む。
だが、次の瞬間、僕は襟元を後ろから掴まれ、引き起こされていた。
「おっと、そこまで。ちょっと落ち着きたまえ」
僕を止めてくれたのは、部長だった。女性とは思えない力で、僕を釣り上げるようにして立たせてくれる。
「理性を失ってはいけない。理性をなくせば、それはバトルファックではなくなるよ」
優しく、言い含めるように部長は言った。
「す、すいません」
自分でもどうかしていたとしか思えない。
「まあ、それも仕方がないのかもしれないがね……。ところでどうだい、落ち着いたところで、私の顔を見てなにか思わないかい?」
「部長の顔、ですか?」
言われて、彼女の顔をまじまじと見つめていると、変化に気付いた。
「あ、あれ? 部長、きれいになってませんか?」
鋭い目つきの奥には子供のような瞳の輝き、ゆるい弧を描く唇はぽってりと柔らかそうで艶めいている。毛先まで手入れの行き届いたお下げの流れを追っていくと、くっきりと浮き出た鎖骨。女性らしい細やかな首筋は、冷たいほどに白くきめ細やかで……。
「もちろん私は美人なのだが、今の君の目には特別魅力的に映っているのだろうね。さあ、部室を見渡してごらん」
――ああ、なんてことだ。桃源郷じゃないか。
僕は今さらながらに、自分が置かれた状況の素晴らしさに気付いた。今まで平気でBFの練習ができていたことが、信じられないくらいに、部員の皆は魅力的だった。
「君の体は、今とにかく射精したくてたまらないのさ。だから、そのための情報を、貪欲に吸収しているんだ。脳がね。感受性というやつだよ。君は今、とてもセンシティブなのさ」
部長は僕の耳元で、息を吐きかけるようにして囁いてくる。
「さあ、続きだ。楽しみたまえ、今の感覚を。そして学びたまえ、自分の体に……」
背中をトンと押され、僕は前に一歩踏み出した。
「……緋崎、さっきは取り乱してすまなかった。練習、つきあってくれるかい?」
マットに尻もちをついている緋崎に手を差し伸べると、彼女は少し照れたようにしながら手を握り返してくれた。
「お、おう。まあ、いいぜ」
僕は鋭敏になった神経の全てで、その後の練習を堪能した。
――17日目――
ここ3日間の学園生活は、天国であり地獄であった。
極限まで研ぎ澄まされた僕の感受性は、BF部だけでなく、学園全体の女子に向けられるようになっていたからだ。
今日に至って、授業中の閉めきられた教室では、充満するフェロモンが見えるような気さえするようになっていた。
――20日目――
「ヒィーースーー、ヒィィーースゥーー」
「怖ぇよ!」
練習に入った瞬間、興奮のあまり、おかしな呼吸音をたて始めた僕から、緋崎が飛びのいた。
「お嬢、いくらなんでも、もう無理だよ」
「……確かに、そのようだね。よし、泉君。今日は、もう終わりだ。明日は休みの土曜日だから、部にも出なくていい。明後日の朝7時に校門で会おう」
「お、お嬢。こいつ、このまま明後日の新人戦にだすのかよ」
緋崎が震えた声で言った。
「当然だろう? なんのために、ここまでさせたと思っている」
「で、でもよ……」
話中の二人を尻目に、僕は帰宅の準備を急いだ。このまま刺激の多い部室にいると、それだけでどうにかなりそうだったからだ。
「だ、大丈夫かよ」
柄にもなく心配そうな表情で、緋崎が僕の肩に手を置いた。
その手のぬくもりですら、今の僕には危険な刺激だった。
コクコク。
僕はなんとか頷くと、逃げるようにして部室を後にした。
――21日目――
「くうぅ、……ふぅ、ううぅぅ」
寮の自室で迎えた射精禁止最終日の夜。
一時的に女性との接触を断たれたことで、僕の性への渇望は禁断症状のレベルにまで達していた。
眠ろうと目を閉じれば、部室での練習光景が瞼の裏に甦り、勝手に分身が昂ぶりだす。
枕や布団の感触に、部員の抱き心地やぬくもりが思い出され、いかんともしがたい衝動が湧き起る。
(だめだ、眠ったら)
眠ってしまえば、おそらく素晴らしい夢見とともに、溜めこんだものを放出してしまう。そんな予感があった。
僕は横にならぬよう、ベッドに座り頭から毛布をかぶって虚空を見つめ続けた。
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