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捨て淫魔(後編)


リリとの出会いから半年が過ぎた。リリの人語も大分上手くなり、
(口は悪いが)人間の常識も少しは飲み込めてきたようだ。精子
バンクでの食事にも慣れ、俺を半死に追い込むような事はあれっ
きりない。驚くかもしれないが、最初の日以降は、まるで兄と妹
のような慎ましい関係を保っているのだ。
 問題があったとすれば、一度だけだ。俺が彼女の両親のことを
訊ねると、彼女は突然不機嫌になり2、3日口もきいてくれなか
った。おそらく、思い出したくないような過去があるのだろう。
背中の怪我も関係しているのかもしれない。俺はそう思い、それ
以来その話題には触れていない。
「ご飯が出来たぞ」
リリが、豪快に切られ盛り付けられた野菜の炒め物だと思われる
ものをもってテーブルに近づいてくる。彼女は今、料理にはまっ
ている。勿論食べるのは俺で、彼女は味見さえしないので(人間
の味覚は全くわからないらしい)最初頃は正直食べれたものでは
なかったが最近は少しましになって来ている。
「うん、美味しい」
俺は一口食べて言う。何故かかなり辛いが味に致命的な問題は無
い。リリはそれを聞くと嬉しそうに笑い、自分の食事である擬似
精液(ゼリー状のもの)をストローで啜った。
 俺は彼女を拾ってからも例の仕事を続けている。生活に必要な
ので仕方ない。リリもわかっているようだったが何も言わない。
それはかなり意外なことだった。
リリの俺に対する独占欲は異常と言っても過言じゃない。以前、
俺が野良犬を見つけ例の如く、家に連れて帰ろうとしたところ
彼女は躊躇うことなくその犬を殺そうとした。俺は、激しく怒
ったが彼女は
「黙れ!裏切り者め!!」
と言ったきり俺の方から謝るまで拗ねたままだった。命の大切さ
を説こうとしたが、淫魔の概念でそれはたいして重要なものでは
なかったため中々伝わらず苦労した。恐らく、相手が他の人間で
も彼女は同じ事をしただろうと思うと怖い。
他にも、本を読んでいて彼女の話をうわの空で聞いていたら本を
ビリビリに引き裂かれたりととんでもない目にあった。俺は相当
愛されているらしくそれは俺としても嬉しい事だが、そんな彼女
が仕事とは言え俺が他の女と寝るのを黙ってみているのが不思議
でならなかった。そんな疑問を抱きつつも俺達は何不自由なく暮
らしていた。だが、ある日その疑問が解けると共に俺達の関係は
一変したのだ。
 ある日の事だ。俺の仕事もなく暇だったので俺達は夜の散歩に出
かけた。当然だが、淫魔であるリリは夜の方が元気だ。俺の一歩
は彼女の2歩と半分もあったが彼女は遅れるどころか元気よく俺
の先を歩いていた。街が見下ろせる丘まで行くと俺はごろりと横
になった。リリは眠っている動物を捕まえて遊んでいる。
「フォルス、これ見ろ。面白いだろ?」
リリは小鳥の首根っこを捕まえて、苦しんでもがいているそれを
見て無邪気に笑っている。
「やめろ」
俺はリリの手を強く掴むと無理矢理小鳥を奪い逃がした。
「?面白くなかったか?」
リリは全く悪びれることなく言う。それが俺は無性に腹立たしか
った。そして、その怒りの勢いで今まで聞くに聞けなかったこと
を言葉にしてしまった。
「リリ、お前人間殺した事あるか?」
言ってからしまったと思った。リリの顔が強張り、涙目になる。
リリは何も言わず背を向けて走り出した。
「くそっ!」
今度は自分に腹を立てていた。こうなることはわかっていたはずだ。
そして、最初に日に思ったはずだ。『彼女がどういう過去を持って
いようが守ってやろう』と。

「あらあら、随分荒れてるわねぇ?」
突然背後から声をかけられ振り返る。だがだれもいない。
「何処見てるの、上よ、上」
声の主は俺のほぼ真上に浮かんでいた。燃えるような赤い髪の女…
間違いなく淫魔だ。水着のような服の下から押さえきれないフェロ
モンが漂ってくる。
「娘・・・じゃないわよね?まさかロリコンってわけじゃないだろ
うし・・・あんな小娘より、あたしと遊ばない?」
淫魔にも人間と共存している者と依然、人間を餌として狙っている
者と二種類いるが間違いなくこいつは後者だ。
「怖い顔しちゃって・・・でもあたしそんな男の顔を快楽で歪ませ
るのが大好きなのよねぇ・・・名前も知らずにHするのもあれね、
あたしは見ての通り淫魔のアミルよ。あんたは?」
「フォルス・カミュだ・・・」
「フォルスね。あんた勇気あるのね?大抵の男は淫魔を見ると慌て
て逃げ出すのに。逃げる男を追いかけるのが楽しいんだけど・・・
たまにはこう言う男もいいか!」
アミルは獲物を狙う猛禽類の如く急降下して俺を組み敷こうとする。
が、俺は間一髪でそれに対応する。スピードはあるが粗野で芸の無
い攻め方だ。たいした実力は無かったとは言え淫魔ハンターに通じ
るものではない。
「かわした!?あんたまさか・・・」
「ああ、ハンターさ。『元』だがな」
「それなら本気にならなきゃいけなそうだねえ、ハンターの精を喰
らうのは久しぶりだよ」
アミルの目つきが変わる。これからが本番だと言うわけだろう。
(まずいな・・・)
淫魔との戦いで重要なのは攻撃力だと、素人は間違えやすい。淫魔
はイカせないと消えないのだから淫魔をイカす性技こそ最も重要な
はずだと、だが実際は違う。大切なのは防御力の方なのだ。防御が
ままならないと、何と言うか、同じ土俵にすら立てないのである。
淫魔と言う生き物は生まれつきいくつかの特殊な能力を備えて生ま
れてくる。視線で男の意思を溶かす『魅惑の眼差し』や、催淫効果
のある吐息『誘惑の吐息』、直接脳に命令を送ることのできる『悪
魔の囁き』などがそうだ。それはライオンに強力な爪や牙があった
り、鳥が空を飛べると言ったような本能的なものだ。どんな淫魔も
須らくこれらの力を有している。淫魔ハンターはそれらを『お守り』
のようなもので防いでいる。耐性と呼ばれる力を付加してくれるア
クセサリーだ。これがあれば淫魔が生まれつき持っている能力程度
なら楽に防げる。だが、逆に言うとそれがないとどんなに優れたハ
ンターだってイカされてしまう危険性があるのだ。時々、熟練の淫
魔ハンターが名も無い淫魔に犯されるのはそのためである。
 まさに今のこの状況がそれに当たるわけだ。ハンターをやめている
上に、散歩中にそんなアイテムを持ってきているわけが無い。
(目線もあわさず、呼吸も最低限に・・・そして攻める時は一気に決
める・・・やれるか?)
俺は覚悟を決めた。アミルが次の行動を起こす前に低い体制でタック
ルに入る。性技勝負に持ち込むために敢えて避けなかったのか、ただ
避けられなかっただけかのかはわからないがタックルは綺麗に決まり
俺はマウントポジションを取ることに成功した。アミルは構うことな
くズボンからペニスを取り出そうと股間に手を寄せてくる。その手を
俺は振り払う。迂闊に触れられるわけにはいかない。ちょっとでも隙
を見せると危険だ。右手でアミルの両手を頭の上で押さえつけると、
俺は左手をアミルの秘所へと滑らした。常に熱く滑って男を狂わせる
そこはあっさりと俺の指を受け入れる。
「あぁっ・・・ちょっと・・・いいっ!感じちゃ・・・うんっ・・・」
アミルは嬌声を上げる。どうやら実力はたいしたことはないようだ。
隙さえ見せなければ勝てない相手ではない。俺は慎重に、そして時に
大胆に指を動かし、アミルのGスポットを探り当て容赦なくそこを攻
め抜く。アミルは歓喜の声で絶叫しビクビクと体を仰け反らせる。
(いける・・・!)
俺はそう感じてアミルの手首を離し右手も乳首へと走らせた。アミル
も素早くズボンからペニスを引きずり出すと巧みに扱き反撃を始めた。
「うっ・・・くっ!」
思わずアミルの手が紡ぎ出す快感に腰を引きそうになるが何とか堪え、
乳首とクリトリスを同時に捻る。
「あふぁっ・・・あぁ・・・もう・・・ダメっ・・・」
アミルの手がペニスから離れた刹那、俺は一気にアミルを抱き起こし
そのままペニスで秘所を貫いた。アミルの膣は確かに恐ろしい威力で
俺の我慢を削り取っていく。だが最早アミルはイク寸前だ。このまま
ピストンで押し切れる。そう考えた俺は、座位の状態のままピストン
を行うため、アミルの背中に手を回そうとし、一瞬躊躇した。アミル
の背中に生えた羽を見た瞬間、怯えたリリの顔が浮かび、そして突然
体を襲った身を焦がすような疼きにかき消されて消えた。

一瞬の隙をついて口内に侵入したアミルの舌は容赦なく俺の舌を、
歯茎を蹂躙する。同時に甘い吐息・・・誘惑の吐息が流しこまれ体内
を犯していく。・・・体が急激に疼き、痺れていく。
「ふ・・・ふふ、あはははははっ、危なかったわ・・・正直もうダメ
かと思ったけど油断したわね?勝利を目の前にしてってやつかしら?」
汗やら唾液やらで淫靡に光る体を呼吸のたびに揺らしながらアミルは
俺を見下ろした。さっきとはまるで逆の立場になっていた。俺は地面
に寝かされ、頭上で腕を固定されている。
「随分と好き勝手してくれたじゃない・・・流石は淫魔ハンターね。
イキそうになるほど気持ちよかったわ。お礼にあたしにしてくれたこ
とをそのまま、いえ、何倍にもして返してあげる!」
マウントを取ったアミルは乳首を指で弄びながら手首のスナップを効
かせて手コキを始める。アミルの愛液でヌルヌルの上に先程まで勝利
を確信し、猛り狂っていたペニスはその激しすぎる手コキに翻弄され
る。
「ぐあぁっ・・・あぁぁぁぁっ!!!」
「あたしの手コキ気持ち良いでしょう?オチンチン、ビクビクしてる
わよぉ!ほらほらほらほら!!もう射精しちゃいそうよ!?いいの?
イッちゃダメなんでしょう!?」
アミルは俺の悲鳴を聞くと更に攻撃の手を強める。
「さあ、あたしの目を見なさい・・・お前の意思を溶かしてあげる。
お前をあたしの虜にしてあげるわ。もう抵抗なんて無駄なのはわかる
でしょ?このオチンチンはもう私の物!あはははははははっ!」
アミルは上目遣いに俺の目を見つめてくる。その濡れた瞳に見つめら
れれば見つめられる程、俺の心はアミルに犯されていく。
 ダメだ・・・イキたい・・・でも、ここでイクわけには・・・あぁ、
でも・・・
「ちっ、これだけ攻めてもまだ心は墜ちないか・・・中々強情ね。元
淫魔ハンターって言ってたけど結構才能あったんじゃないの?
・・・まあいいわ。それならまずは外堀から埋めていくだけよ。先に
体を徹底的に犯し抜いて、それから心まで快楽に墜としてあげる」

アミルは手コキを止めると、体をずらして上体を脈打つペニスへと近
づける。そして自らの手を巨大とも言えるほどのボリュームを持つ胸
へと添えると、乳首を捻り大量の母乳をペニスへと発射した。そして、
間髪いれず胸の谷間にペニスを閉じ込めるとゆっくりと胸を左右に揺
らし出す。
「淫魔のミルクたっぷりのパイズリはど〜お?フォルスのオチンチン
ぜぇんぶ隠れちゃってるわよ?」
「ふぁあっ、あっ、ああっ!や、やめっ!!ああぁっ!!」
「『やめろ』?オチンチンはこんなに気持ちいいって喜んでるのにねぇ?
ま、イキたくないならイキたくないでもいいわよ?勝手に我慢すれば
いいでしょ?ほんとにイキたくないなら淫魔のパイズリぐらい我慢で
きるでしょ、淫魔ハンターさん!!」
アミルはパイズリのリズムを急激に早めていく。異常な潤滑力を与え
られたアミルの胸は瞬く間に俺の限界を打ち破った。
「あぁぁぁっ、ダ・・・メだっ!!イッちゃ!出し・・・ちゃ・・・
あぁっ、イ、イクゥッッッッ!!!」
「いい声ね、もっと鳴きなさい!アンアン喘ぎながらイクのよ!必死
に我慢して、耐えて、それでもおなたはあたしにイカされちゃうのよ!
ほぉら!お漏らししちゃいなさい、オッパイでイッちゃいなさい!!」
ビュッ、ブビュッ、ドピュビュビュル〜!!!!
アミルの胸の谷間からまるで噴水のように精液が噴き上がる。それを、
恍惚の表情で浴びながらもアミルはパイズリを全く緩めようとはしない。
「あはははっ!イッた!!無様ね!!!これでもうあなたは、あたし専
属のミルクタンク君ってわけ!!嬉しいでしょ?どうなの!?」
アミルは一度イって射精の勢いが弱まってきたのを見ると今度はペニス
を咽喉の奥まで飲み込み縦横無尽に舌を巻きつけて射精を促してくる。
舌が亀頭に巻きつくたびに、裏筋を這い回るたびに、俺は一瞬とて耐え
られずアミルに搾られるままに精液を吐き出していく。
「っぁあ・・・くそぉ・・・」

「まだ墜ちない・・・ホントに恐れ入るわね。」
勝利と敵のプライドを踏みにじる快感に彩られた表情だったアミルの顔
が一瞬曇り、またすぐに何かを企む悪どい顔になった。
「ねえ、フォルス?あなた本当はあたしにもっと責めて欲しいんじゃな
いの?」
アミルの言ってる事が全く理解でききず、俺は何も言う事が出来ない。
「本当はとっくに墜ちちゃってるんだけどもっと凄い事して欲しいから
強がってるだけ・・・ね、そうなんでしょ??」
「ち・・・ちが・・・う」
アミルはフェラを止めると俺を背後から抱きかかえ、自らを椅子の背も
たれのようにしてろくに動けない俺を寄りかからせると、腰に美しく長
い脚を巻きつけ、精液と唾液と母乳でグチャグチャのペニスを足裏で優
しく弄りはじめた。
「ほらぁ、今度は足でいじめてあげるわよ。違うって言うならまさか足
でなんて感じないでしょう?・・・あらら?どうしたのかしらぁ、急に
我慢汁がまた噴き出してきたわよ?」
アミルは限界まで敏感になってしまったペニスに、射精まではいたれな
いギリギリの刺激をゆっくりと、細心の注意を払いつつ塗り付けてくる。
「・・・く・・・ぁ・・・」
我慢の限界をとっくに超えてしまっているのに射精出来ないもどかしさ
が俺の精神を削り取っていく。そして、耳元で聞こえてくるアミルの声、
『悪魔の囁き』が俺に最後の一線を越えさせようと直接脳に呼びかけて
くる。
「ほんとに卑しい男。ねえ、そうでしょ?いいように責められて、イカ
されて、それでもまだ足りないって言うんだものねぇ?それに足でされ
てるのにこんなに感じちゃってさ・・・あれぇ?どうしたのかなぁ?
オチンチンが足に擦りつけられてくるよ?」
腰がガクガクと、少しでもアミルの足にペニスを擦りつけようと動いて
いる。実際にはアミルが巧みに背後から動かしているのだが『悪魔の囁
き』でアミルの言葉が自分の考えのように思えてしまっている俺には、
思うような快感が得られず自ら浅ましく腰を動かしているようにしか感
じられない。
「あぁぁ!!嘘だ!!!嘘だぁぁ!!!!」
浮かんでくる疑心に満ちた考えを必死に否定する為、俺は叫び声をあげ
る。
(大分参ってきたみたいね・・・もう一押しってとこか)
「嘘じゃないでしょ!?足コキされてよがり狂ってるのは何処の誰よ!
フォルス・カミュ、あんたでしょ?ほぉら、今度は私の足に出しなさい!
この変態が!!」
羽で撫でる様に動かしていた足で、今度は一気に押しつぶすように強く
カリ首と玉を同時に挟み、アミルは容赦なくとどめの一撃をペニスに与
えた。
「ぐぁぁっ!!!ま、またイクぅ!!!」
堪える事など出来ない俺は、ただ叫ぶしかない。ペニスからは精液が飛び
散る・・・はずだった。しかし、出てこない。射精の寸前、そのさらに限
界の寸前で俺はイクことを許されなかった。
「あら、出ないわね?あたしったら失敗しちゃった?うふふ、ごめんなさ
いね。もう一回最初からやってあげる。」
アミルは嘲るような笑みをその顔に湛えながら、また羽で撫でるようにゆ
っくりと足コキを始める。そのもどかしさと、股間部を中心に体全体に広
がる喩えようも無い疼きとで俺は気が狂いそうになる。
「今度はちゃんと射精出来るといいわねぇ、ふふ・・・あ、射精したく無
かったんだっけ?それじゃ良かったじゃな〜い、あははははは・・・」

 どれくらい時が過ぎたろうか。もう何十年も経過したような気がする。
が、実際には俺たちが戦い始めてからまだ数十分も経っていないのだろう。
俺は既に時間の感覚を失っていた。アミルはあれからずっと寸止めを続け
ている。
「それ!今度こそイッちゃえ!!・・・あれぇ?あたしったらまた失敗?
ちょっと自信なくすわぁ。フフフ・・・」
アミルの足の指の間で俺のペニスはなすすべなく戦慄き、異常な量の我慢
汁を撒き散らすだけである。俺はもう喘ぎ声を出す事も出来ない。
(どうやら取り込んだわね。さてと、今度こそ心の底まであたしに屈服し
て貰うわよ・・・)
「よし、こうなったらもう本気でイクわ」
アミルは再び俺を地面に寝かし立ち上がる。アミルは横たわった俺を跨ぐ
と熱い蜜がしたたる秘所を見せ付けるようにして突き出してくる。
「さぁ、今度こそトドメをさしてあげる。あたしのココであなたのオチン
チンを食べてあげるのよ・・・くふふ、じゃ、いただきま〜す・・・」
アミルの腰が降りてくるのを俺は黙って見つめる。『やっとイケる』と言
う安堵感が恐怖や敗北感を殆ど覆い尽くしてしまっている。
チュプ・・・ヌププッ・・・
燃えるような熱さの秘所に俺のペニスが徐々に飲み込まれていく。まるで
ペニスが溶けてなくなってしまうような感覚に俺は声も鳴く悶えるだけだ。
「〜〜っっ!!・・・・!!!」
アミルは舌なめずりしながらそんな俺を見下ろしている。
「さぁ、挿いっちゃったわよ。膣でビクンビクンって喜んでるわよ?あなた
のオチンチン・・・くふふ、もうとっくに限界なんて超えちゃってるもん
ねぇ?あと一擦りも持たないでしょうね・・・」

ズププププ・・・
アミルはゆっくりと腰を上げる。その上昇に伴って、俺の中の理性や、精神
力と言った物がアミルの中に吸い込まれていくような感覚に陥る。でも、
それでもいい・・・どうせ、アミルが腰を下ろせばもう俺は終わりだ・・・
射精さえ出来ればそれで・・・口には出してはいないが既に俺の心はアミル
の責めに屈していた。口には出さずに済んだことで俺の敗北的感情に塗れた
自尊心は安堵していた・・・しかし、アミルはそんな俺の自己満足すら許し
てはくれなかった。腰を下ろさない。秘所の入り口でクチュクチュと亀頭の
先端を舐め回すだけで一向に腰を下ろしてこないのだ。再び、俺はアミルの
寸止め地獄に落とされたのだ。
「さぁフォルス、どうする〜?そろそろ素直になってもいいんじゃないかし
ら?ホントはずぅっとわかってたのよ?あなたの心が私に屈してたこと。
でも中々素直にならないからこんなに苛めてたってわけ。ホントはあたしだ
ってこんなことしたくなかったのよ?」
優しげな表情で、しかしその内面には底無しの淫猥さを湛えたアミルが俺に
最後の一線を越えるよう迫ってくる。俺にはもう耐えるだけの力とプライド
は残されていなかった。
「私に言いたい事があるでしょう?言って御覧なさい?恥ずかしい事なんて
ないのよ、あなたは良く頑張ったわ。でも、ほんの少しだけ私のほうが強か
っただけなの。さぁ、言っちゃいなさい。楽になれるわ・・・そしてイッち
ゃいなさい!」
俺の口がわなわなと震える。もうほとんど意思なんてない。むしろ、本能が
口を開かせた。
「イ・・・イカせ・・・て・・・くれ・・・」
俺はついに、完全に負けを認めた。
「ふふ・・・いい子!」
アミルは唐突に、無造作に腰を下ろした。そして今までとはうって変わって、
獣のように腰を振りたくる。
「・・っぁぁ・・・イ・・・ク・・・イグゥゥゥ!!!!」
ブビュッ、ドビュル、ビュルビュルビュクビュクビュクブビュウッ・・・!!
「はははははっ!ついに、ついに墜ちたわ!!これであなたは身も心もあたし
の物!どんな気分かしら?ハンターなのに敵である淫魔に犯されて、搾り殺さ
れていく気分は!嬉しいわよねぇ、射精したくて堪らなくてその通りにして貰
えるんだから!!」
アミルの膣に俺の命の全てが吸い取られていく。だが、どうでも良かった。既
に、俺の心は快楽に屈して射精する事以外の感覚はなくなってしまっていたか
ら。
「美味しいわ、最高よ!心の底まで快楽に屈した人間の出す精液の味は・・・
ハンターなんて言っても所詮はあたし達淫魔の餌にすぎないのよ!さぁ、イキ
なさい!もっとイクのよ!あはははは・・・」

「ふふ、あなたの命ももうあと一搾りってとこね。楽しかったけどもうお仕舞
いよ。それじゃあね、フォレス。」
アミルは腰をゆっくりと持ち上げる。もう俺の意識は快楽に塗りつぶされ殆ど
闇に沈んでいる。
『やってくれたな、貴様!』
遠くで聞きなれた声が聞こえた気がした。ここ半年毎日、幾度となく聞いてき
た可愛らしい声。だが、その意味を理解する事は俺には出来なかった。
『誰?いいとこで邪魔しないでくれないかしら・・・ってさっきの小娘じゃな
いの』
俺に跨っているアミルも理解できない言葉を話す。
『あんたも淫魔だったのね。悪いけどもうこの男は私が貰ったわよ』
(リリ・・・そう、リリだ。・・・って誰だっけ、関係ない。早くイカせてく
れ・・・)
リリは俺の方を一瞬見ると下唇を噛んでアミルに向き直った。

『下級淫魔風情が・・・誰の物に手を出したかわかっているのだろうな!!』
リリの目が蒼く燃えている。凍りつくような冷たい炎宿したその瞳を見た瞬間、
俺はリリの事を完全に思い出した。同時に、僅かながら判断力が戻ってきた。
『小娘が何を言って・・・!?』
初めてリリと会ったとき、彼女はこの瞳をしていた。まるで、少女の眼ではな
い。生きる事の辛さ、汚さを知り尽くして尚、それら全てを敵に回してでも生
き続けてやると言わんばかりの意思力に満ち溢れた眼。氷のようなその眼に希
望は無い。だが、絶望の全てを追い払うかのような力強さを持った・・・
『蒼氷の瞳・・・何故お前が!?お前は一体!?』
アミルの恐怖が飲み込まれたペニスを通じて伝わってくる。昂ぶった感情が風
船のように一気に萎んでしまった感じだ。
『もう一度言う、誰の物に手を出しているかわかっているのだろうな!!この
リリス・フォウ・ハートの物に手を出していると、わかっているのだろうな!』
『ひっ・・・滅んだ・・・淫界の皇女が、何故!!』
近づいてくるリリを見てアミルが飛びのく。何を言ってるか俺には全く理解で
きないが、二人の間に横たわる圧倒的な力の差は理解できた。
『消えろ。本来なら悶え殺してやるところだが今はフォルスを助けるのが先だ。
見逃してやる・・・二度と私たちの前に姿を現すな!!』
アミルは叫び声にもならない恐怖の声をあげ、飛び去っていく。俺は訳がわか
らずただ見ているしかなかった。

「フォルス・・・ごめん。今からすることを許せとは言わない。でも、助け
るにはこうするしかない」
リリは衣服を脱ぎ捨てると、先程アミルがしていたように俺に馬乗りになる。
アミルの其処よりも小さく、幼い秘所が俺のペニスに向かって降りてくる。
「フォルス・・・愛している。嫌われてもいい。憎んでもいい。でも、ホント
にホントに愛しているぞ。心の底から・・・今なら私にも人間の心がわかる。
愛してる、フォルス・・・フォルスゥ!!」
俺のペニスに何かを突き破るような感触があった。リリの顔が一瞬苦痛に歪む。
と、同時にリリの中に俺の最期の一滴が吸い上げられた。急速に意識が消えて
いく。リリの中に溶けていく。
「フォルス!フォルスが・・・入ってくる!フォルス!!」
リリはうわ言のように俺の名を叫ぶ。
「リリ・・・」
(あぁ、俺はリリと一つになるんだ)
最期に俺はそう思った。快楽ではなく、清らかな何かが体を満たしていく。と
ても満ち足りた気分だった。
・・・リリの夢を見た。彼女は酷く寂しげな、儚げな顔で俺を見つめている。
「フォルス・・・リリはね、人間を殺した事、あるよ。何人も、何人も。数え
きれないくらい、殺したよ。生きるために、必要だったから。リリの親は、人
間のハンターに殺されたの。それでそのハンターを、リリが殺した。自分が生
きるために・・・仕方が無いとは言わない。でも、やめる事は出来なかった」
リリの心が流れ込んでくる。どうしようもない悲しみと、絶望と、ほんの一握
りの決意。
「ねえ、フォルス。起きたらお前はなんて言うかな?やっぱり私を罵るかな?
それでもいい。お前が生きてくれるなら・・・でも、もし・・・もしも私を許
してくれるなら・・・」
リリの言葉が遠くなっていく。光の奔流が俺の体を、精神を飲み込んで・・・

そして目が覚めた。リリが俺の上に跨り、恍惚とした表情で俺を見つめている。
なんだかいつもの数倍艶っぽく見える。恐らく、俺が気を失っていたのは一瞬
の事だったのだろう。
「・・・生きてる?」
自分の意思と、体を埋め尽くす疲労感が俺に生の実感を与えている。俺は精を
吸い尽くされて死んだんじゃ・・・答えの出ない疑問の答えを表情でリリに求
める。すると彼女は、サッと俯いて俺から眼をそらした。
「・・・もう、大丈夫だよ・・・でも・・・」
「でも、何だ?」
歯切れの悪いリリの言葉を俺は思わず急かしてしまう。そんな態度にリリは、
俺の体の上で益々体を縮めた。
「・・・フォルスの体は、もう人間じゃない。私達に近い存在になってしまっ
た」
リリの言っている事がわからない。俺の体は、どう見てもいつもと変わらない。
「フォルスの心は、さっきの下級淫魔に壊されて、殆ど吸い取られてしまった。
だから私は残ったフォルスの魂を吸収して、私の膣で私の力と共に新たに精製
して、フォルスに戻したの。でもその方法は本来、淫魔が人間の女を同属にす
るために行う方法で・・・男を淫魔にすることは出来ない。ただの餌にするし
かないの」
俺は黙ってリリの話を聞いている。リリは話の間一度も俺と目を合わせること
が出来なかった。
「淫魔は殆どの場合、殺すまで人間の男から精を吸うけど、極稀に自分が凄く
気に入った男を『保存』しておく事がある。人間でも、淫魔でもないただの遊
び道具、玩具として・・・この体にされた男は主である淫魔に逆らう事が出来
なくなってただ、言われるままに精を貢ぐだけの存在になる・・・」
「は、はは、そんなまさか・・・」
俺の声は思わず裏返ってしまう。リリの話は信じられない。だが、リリが嘘を
ついているとも思えない。
「・・・射精しろ」
「は?・・・う、ぐぅっ!??」
ドプッ、ビュクビュッ・・・
「嘘じゃない。フォルスの体はもうフォルスの物じゃない。リリが、フォルス
の魂を犯してしまったから」
リリの言葉通りにビクビクと脈打つペニスが真実を物語っていた。リリの言う
事に間違いは無い。俺は人間としては死んでしまったのだ。ここにいる俺は、
フォルスと言う名の人形にすぎない・・・
「憎んでもいい。お前がいなくなるよりは、いい。怒りでも、憎しみでも絆に
なるんだったら・・・・・・フォルス、私は・・・」
リリの身を引き裂くような訴えを、俺は手を上げて制した。
「くくっ・・・ふふっ・・・はははははははっ」
勝手に笑いがこみ上げてきた。自暴自棄になったのでもなければ、おかしくなっ
たのでもない。
「フォルス・・・?」
「いいさ、別に」
笑いながら言う俺を、今度はリリが理解できないようだ。
「今までと変わらないさ、何も。お前の我侭はみんな聞いてやってただろ?」
「でも、でも・・・それとこれとは」
「いいんだ。俺も、お前がいればそれでいい」
心からの言葉だった。リリと出会って半年足らず、そしてお互いの全てを知って
いる訳ではない。でも、今は言える。こいつと共にいたいと。例え、それがリリ
に魂を犯されたからであっても構わなかった。俺は死ぬ直前確かに思ったのだか
ら、リリを愛していると。
「フォルス・・・我侭全部は聞いてくれてないぞ?時々、私じゃない女を抱きに
行くじゃないか」
少し拗ねたような、ふざけたような口調だ。だがリリの蒼い眼には大粒の涙が光
っている。
「・・・それは、お前何も言わなかったじゃないか?」
「何も言わなくてもやめて欲しい事はある・・・でも、いいんだ。フォルスが誰
を抱こうと。心がリリの物なら、それでいい」
リリは先程以上に恍惚とした表情で顔を上げると、そのまま俺の胸にくたりと倒
れこんだ。そんなリリが堪らなく愛しくて、俺は優しく抱きしめる。
「フォルス?」
「何だ?」
「私な、今回が・・・その、初めてだったんだぞ?」
言われてみると、俺の腰のあたりに一筋の血が流れているのがわかる。俺は気恥
ずかしさもあって、リリの金色の髪を軽く撫でた。リリは幸せそうに俺の胸に頬
擦りする。
「これからが大変だぞ?淫魔は処女を失うと急激に成長するから・・・胸も大き
くなるだろうし、背も伸びるかな?性欲も膨れ上がるから、これからは毎日する
ぞ?大丈夫。フォルスも精力は無限になったから。私を責めることは出来ないけ
ど・・・代わりに私が一杯責めてやるからな」
「・・・・・・」
思わず絶句する。淫魔の処女を貰うという事の重大さを初めて知った。リリの顔
は先程とはうって変わって満面の笑顔だ。
「愛してるぞ、フォレス。さ、もう一回しよ?」
俺の『愛してる』と言う言葉は、リリの腰の動きと、俺自身の喘ぎ声と悲鳴に消
されてしまった。

『もし私を許してくれるなら、その時は私を娶ってくれ。お前の、妻になりたい』
・・・道で淫魔を拾ってから半年。俺は、まあ幸せに暮らしている。


                            捨て淫魔 完
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