淫魔と人間が共存するようになって、もう数年が経つ。何でも、最
強のハンターと言われた男が乳魔の姫との間に子を設けた事が人間
の、そして淫魔の認識を変えるきっかけになったそうだ。正直、厄
介なことをしてくれたものだと思う。人に敵対する淫魔が減ったお
陰で、俺のような下っ端のハンターには仕事が回ってこなくなった
のだ。勿論、人間との共存を拒んだ淫魔もいる。だが、それらを相
手にするのは何も生存率の低い未熟者である必要も無い。今までは、
淫魔達の圧倒的な物量を前に仕方なく未熟なハンターを前線に送り
出していただけだ。今、人が平和を守っていくには一握りのトップ
クラスのハンターがいればそれでいいのだ。
で、今現在、俺フォルス・カミュはと言えばハンター時に培った
腕で淫魔、人間を問わない情夫のような事をしている。一晩、30G。
それが俺の値段だ。男一人が食っていくには十分すぎるくらいだ。
だが、俺の人生はまるで味気の無いいつ死んでも構わないようなど
うでもいいものになっていた。そう、あの日までは。
その日、俺は太陽が昇りだす前の町を家路へと急いでいた。「仕事」
をした日は帰って熱いシャワーを浴びて寝るに限る。体に染み付い
た淫臭が堪らなくうざったかった。近道をしようと俺は人通りの少
ない細道へと入って、そこで彼女に出会った。まだ、10か11歳
と言ったところだろう。美しい。見た瞬間そう思った。10かそこ
らの少女に抱く感想としてはおかしかった。だが、その時俺は確か
に美しいと思ったのだ。伸ばし放題になった金髪、ぼろ布を巻きつ
けただけの服の下で、少しだけ膨らんだ胸が彼女が女であることを
主張している。この地域では珍しい褐色の肌をしていた。だが、俺
が何より、見惚れてしまったのは彼女の蒼い眼だった。まるで、少
女の眼ではない。生きる事の辛さ、汚さを知り尽くして尚、それら
全てを敵に回してでも生き続けてやると言わんばかりの意思力に満
ち溢れた眼。氷のようなその眼に希望は無い。だが、絶望の全てを
追い払うかのような力強さがあった。背中にぞくりと、凍るような
感覚があった。この子は、俺が捨てて来てしまった「何か」を必死
に守っているんだ。そう感じた俺は何かに突き動かされるように彼
女の前に行き、手を差し出し訊ねた。何故だろう。普段の俺はこん
な輩相手にしないのに・・・この時既に彼女の魅力に飲まれていた
のかも知れない。
「行くとこないのか?俺のとこに来るか?」
「同情?」
まるで何かの楽器かと思う程に透き通った可愛らしい声で彼女は
聞いた。また、背中を何かが通り抜ける。
「さあな。嫌なら、構わないさ。」
自分でも何故こんな事を言ったかわからなかったから、俺は正直に
自分の気持ちをそのまま述べた。
「・・・行く。お腹空く。食い物、食うしたい」
彼女のたどたどしい答えを聞いてハッとした。
「お前・・・淫魔か?」
彼女はこくりと頷く。人語を聞き取るのは問題ないようだが、流暢
に話せる程ではないようだ。
「まいったな・・・食事か、精子バンクなんていったこと無いぞ。」
俺はひとりごちながら彼女の手を握る。俺より少し体温が低いからか、
長いこと外にいたかからかはわからない。その手は少し冷たかった。
「そうだな、まずは・・・俺はフォルスと言う。お前名前は?」
「お前、名前フォルス・・・リリの名前、リリ!」
リリはキュッと俺の手を握り返した、とても小さな手で。
精子バンクで買ったカプセル状の「食事」を携えて、リリと共に帰宅
する。精子バンクが夜間も営業していて良かった。淫魔が夜行性な為
だろう。何も無い狭い部屋だが、子供一人増える程度なら問題は無い。
「俺はシャワー浴びてくるから、これ勝手に食ってな。」
買い物袋を押し付けるように渡し、俺は風呂場へと向かった。上半身
だけ脱ぐと、歯磨きを咥え少し熱めの湯を湯船へと注ぐ。歯磨きが終
わる頃には湯船に半分程度湯が溜まっていた。俺はズボンごと下着を
洗濯機に放り込むと湯船に使った。体に熱さがジワジワと染込んでく
るような感覚が気持ちいい。
「フォルス?」
突然、扉が開きオズオズとリリが覗き込んでくる。
「何だよ、どうかしたか?」
少し驚いたが、淫魔と言えどこんな子供だ。恥ずかしい事も無い。そ
う考えた俺は極めて冷静に尋ねた。
「これの仕方、わからない」
リリの手にはさっき精子バンクで買ってきた袋が握られている。
「わかんないってお前・・・食べた事無いのか?」
困った顔で頷くリリを見てまた、さっきの様に俺の背筋が凍る。じゃ
あ、今まで彼女は何を食べて生きてきたのだろうか・・・?自分の頭
に浮かんだ恐ろしい考えを慌てて消す。もしそれが真実ならこの子は
ハンター達に狙われる事になる。
「待ってな。出たらすぐやってやるから」
俺の言葉を聞いたリリは少し何か考えているような顔をし頷くと、ぼ
ろ布を脱ぎ去り裸になると湯船に飛び込んできた。
「汚い、リリ。洗う」
怒ろうかと思ったが、良く見ると確かにかなり汚れている。仕方ない。
俺はリリを摘み上げ洗い場に下ろした。
「先に体洗ってからな。洗ってやるから後ろ向きな。」
シャンプーを手に取り、良く泡立ててからリリの髪を洗い始める。リ
リは目を瞑って素直に動かない。良く洗い、お湯で流すと彼女のブロ
ンドの髪は見違えるように輝きだす。洗っていて思う。淫魔だけある、
子供とは思えない色気だ。勿論俺がその色気に負けて襲い掛かるよう
なことは無い。こう見えても元淫魔ハンターで、ついでに言うとロリ
コンでもない。
背中を流そうとして俺は息を飲んだ。背中に大きな傷跡があった。小
さな羽が一枚しかない。この傷は、無理矢理引きちぎられたものだろ
う。もう治癒しているが、これは・・・酷い。こんなことが出来るの
は淫魔ハンターしかいないだろう。通常は淫魔に傷を負わせる事は出
来ないが淫魔に快感を与えると物理的な防御能力が減少し、傷つけら
れるようになる。だが淫魔が怪我で死ぬ事は無いためそんなことをし
ても無意味だ。だが、ハンターの中には淫魔が血を流し傷つくのを見
て楽しむ屑もいる。生きる為ではなく、己の快楽のためにだけ他者を
傷つける。そんなことが許されるはずが無い。
俺は思わずそっとその傷跡に触れた。それがいけなかった。
「フゥゥゥゥッッ!!!!」
突然、リリは飛び上がると俺の首筋に噛み付いた。しまった、と俺は
思った。体の傷は治っていても彼女の心の傷は治ってはいなかったの
だ。傷に触れられた事で恐怖が蘇ったに違いない。俺はリリの牙が肩
に喰い込むのも構わず。彼女を強く抱きしめた。
「すまない・・・すまない・・許せなんて言う資格ないよな、俺もハ
ンターだった。だから憎んでもいい、でも・・・人間の全てを憎むの
はよしてくれ・・・お前の為にも!!」
俺の口から搾り出すような声が出る。悔し涙が零れる。この子をこん
な目にあわせた者達と、自分が同じ種族であると言うだけで、死んで
詫びても良いと心から思った。
どれくらいの間そうしていただろう。リリは、そっと口を離した。
「優しい。リリ、嬉しい。人間嫌い。・・・フォルスは好き」
リリは頬を染めて俺に体を預ける。会って間もない。全くお互いを知
らない。だが、彼女が愛しくてならなかった。捨て猫に情が移るのと
同じかもしれないが、それでも良かった。
「フォルス洗う。リリが」
胸元でリリの声が聞こえたと思った途端、胸の付近で燃えるような疼
きがあった。と、同時に四肢が強張り動けなくなってしまった。それ
が余りにも強烈な快感によるものであると理解するのに数秒かかった。
リリの小さな指先が乳首を挟んで弄んでいる。
「フォレスの匂い、リリ以外の女、ダメ。リリを、染み込ませる」
リリは体にシャンプーを垂らすと自分の体にお湯をかけ、ヌルヌルに
なった体を擦り付けてくる。勿論その間も片手で乳首を責めるのを忘
れない。
「ふあっ・・・!?」
思わず喘ぎ声を上げてしまった。淫魔とは言えまだ子供だ、しかも俺
は淫魔ハンターだった男だぞ、と頭の中で色んな思いが浮かぶたび、
快感のノイズに掻き消されていく。
「リリの、私だけの物、なれ」
体を器用に滑らせてリリは俺の体を壁にもたれかけさせ、自分はだら
しなく開かれた俺の股の間に入る。そして、リリの両手がペニスを覆
うように近づいてくる。俺の頭に最悪に事態が浮かぶ。リリはそれを
悟ったのか屈託の無い顔でニコリと笑った。
「平気。殺す、ない。」
情けなくも安心してしまった俺にリリは続けていった。
「リリじゃない女に溜めた精液。全部捨てる」
それは、殺すと、同意義じゃないのですか、リリさん?
リリは竿をしごき上げながら亀頭を、手の平を円をかくように動かし
刺激する。早くも我慢汁が溢れ始め、リリの手はさらに威力を増して
行く。
「チュ・・・ネバネバ。フォレス気持ちいい。リリもいい。」
手の平に着いた我慢汁をベロリと舐め上げるその姿を見るだけで、俺
はさらに高められていく。今までも思っていたが、今度は心から思っ
た。この子は淫魔だ。それも飛び切り優秀な。リリが心を開いてくれ
て本当に良かったと思う。思えば何度か感じた寒気は、彼女が俺を「餌」
として見ていたからではないだろうか。
「我慢する、良くない。リリじゃない女に溜めた精液、出す、嫌か?
フォレス、リリ嫌い?」
心から心配した表情だ。俺が嫌いだと言ったらその場で命を絶ってし
まうんじゃないかと思うくらい真剣だ。くそう、どこまで可愛いんだ。
これが淫魔の本能なのか。苦悶している俺に腹を立てたのか、少し拗
ねたような顔になったリリはベロっと舌を出して言った。
「もういい、我慢、無理にする」
そして俺のペニスに長い舌をクルリと巻きつけ、舌の先端で尿道をこ
じ開けるとペニスを一飲みにするほどの勢いで一気に精液を吸い上げ
た。
「ぐぁぁっ!!イイっ!!」
ドピュ、ピュッ、ビュビュ〜・・・
「んん〜・・・じゅぱっ・・・んっ、美味・・・」
まるで睾丸から精を直接吸い取られたのかと思うほど、まさに根こそ
ぎ俺の精液は吸い取られた。リリは恍惚とした表情で俺を見上げてい
る。
「また、聞く。フォレス、リリ嫌い?」
「・・・は?」
息も絶え絶えの俺にリリは悪戯っぽい微笑みを浮かべながら聞いてく
る。正直俺はそれどころじゃない。『淫魔の呪縛』にかかり、動けな
い上に体中が敏感になってまるで早漏で童貞以下になってしまってい
るのだ。
「好き、言わないと、もっとする」
リリは上機嫌で俺の悲しくもギンギンに勃ったペニスを指で弾いた。
「うふぁっ!」
「変な声。好き?嫌い?」
それだけで俺の愚弟は悲鳴を上げ、涙を流す。
「ん。いい考え、出来た」
リリはそう言うと、自分の親指を鋭い歯でほんの少し傷をつける。そ
の後俺にも同じ事をして(不覚にもその痛みで感じてしまってまた射
精させられてしまった。)薄く血の滲んだ俺の指に吸い付いた。
「リリ、フォレス好き。フォレスもリリ好き言う」
さらに機嫌が良くなったのか、目を輝かせながらリリは自分の指を俺
に向けてくる。自分と同じようにしろと言うのだろう。何がなんだか
全くわからない。だが、少しでも俺が迷う素振りを見せるとリリはそ
の小さく白い指先で俺のペニスを弾くのだ。俺にはもう従うしかなか
った・・・さっき言った事訂正。俺、ロリコンかもしれない。
その後、俺は『好きです』と数え切れないほど連呼させられ(一度言
ったら余程嬉しかったのか何度も要求してきた)数え切れないほど射
精させられてから解放された。後でわかったのだが、お互いの血を飲
ませあう行為は淫魔にとって『永遠の愛の誓い』なのだそうだ。
道で拾った淫魔に気に入られ、愛の誓いまでさせられて・・・まあ、
後悔はしてないが。これから俺の暮らしはどうなるのだろう。あと、
冷静に考えると淫魔と言えど子供とこんなことしてよかったのだろ
うか、などと悩みつつ物語は半年後に、続くのだ。
『捨て淫魔』 後編に続く
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