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As long as we love each otherwe will be all right!


最初に・・・設定としていくつかの注意をば。
※1 この世界ではハンターはおらず人間はスタンガンのようなも
ので、電気信号を送り強制的に快楽中枢を刺激することで淫魔と渡
り合っている。だが、その電気信号は首の付け根あたりの小さな場
所をピンポイントで狙わなくてはならないので、圧倒的に淫魔が優
勢なのである。
※2 淫魔同士のSEXでも絶頂に達したら淫魔は消えてしまう。だが
この世界では人間の精で傷(?)を埋めることが可能なのでイッて
から消えるまでの間に精を補給すれば死ななくてすむ。
では、どぞー。



 私には好きな男がいる。実際には会った事も三回しかないし、
話した事も無い。名前もわからない。本当のことは何も知らない。
でも、私の心はその男でいっぱいなのだ。最初に彼に会ったのは私
が散歩をしていたときだった。四日間も雨が降り続いた後の秋晴れ
に、思わず私は飛び出したのだ。雲ひとつ無い空を自由に飛びまわ
っていたその時、私は彼を見つけた。彼は池で魚を釣っていた。
「何であんなものを食べれるんだろう?」
最初はそんな興味しかなかった。少しすると彼は小さな魚を釣り上
げた。しかし、その後は1匹も釣れず彼は家路へとついた。帰る途
中、彼は1匹の野良猫に出会った。傷だらけで、薄汚れた猫だった。
彼と目があうと、猫は低く唸った。この世の全てが敵だというよう
な、そんな目をしていた。彼はその猫に黙って一匹だけの魚を差し
出し、自分の家へと帰っていった。きっと、彼は今夜お腹をすかし
たまま眠るのだろう。1匹の野良猫の幸せを祈りながら眠るのだろ
う。
『こんな、生き物がいるのか』
そう感じたとき、私の胸に小さな痛みがあった。私はその不思議な
感覚の正体などわからず戸惑うばかりだった。

二度目と、三度目は狩りの時に出会った。狩りの最中にもかかわ
らず彼を見つけると私の胸は高鳴り、どうにもいたたまれなくなる
のだ。こんな私を見ないで欲しい。本当の私は、こんな、こんな女
ではないのだと叫びたかった。本当の私がどんなかなんて、私は知
らない。
私に出来ることは、さり気無く仲間を誘導し、彼が仲間に狩られな
いようにするくらいしかなかった。
 この恋が叶わぬものなのはわかっている。彼は、私達の餌に過ぎ
ないのだから。私は淫魔で、彼は人間。私と彼の立場は、彼と彼が
釣り上げた魚と同じだ。それはわかっている。わかっていて、それ
でもどうしようもないから、恋なのだ。

私には血の繋がった姉がいる。私のいる群れを率いている立派な淫
魔だ。赤い燃えるような腰まで伸びた長髪も、鋭くとがった耳も、
小さくて高い可愛い鼻も、見ているだけで吸い尽くされてしまいた
くなるような唇も、男を骨抜きにする大きな胸も、吸い付くような
肌も、スラリと伸びた長い足も、全てが私にそっくりで、私はそれ
がとても誇らしかった。
私は昔から、とても狩りの下手な淫魔だった。淫魔は子供といえど
自分の餌は自分でとらなくてはならない。昔からの掟だ。男を捕ま
えられなかった時、いつも姉さんが餌をこっそりと分けてくれた。
とてもいい姉さんだ。私の憧れで、理想で、全てだった。何度か人
間の武器から命を救ってくれたこともある。
「アリナはそそっかしいからねぇ」
淫魔の世界では足手まといは切り捨てられるだけだ。でも姉さんは、
いつもそう言うだけで私を責めることは無い。姉妹だと言うだけで、
何故こんなにも無条件に愛しあえるものなのだろうか?姉さん、教
えてください。


夜はいつも姉さんと共に眠る。性技を磨く訓練をしながら眠るのだ。
私は姉さんの体の全てを知っている。姉さんも、私の体の全てを知
っている。
私の手が姉さんの綺麗な胸に触れる。堪らない感触だ。同じ淫魔で
もこれ程に感じるのだ。人間の男など一分と持たないだろう。
「アリナ・・・下も、触って・・・」
姉さんが言い終わらないうちに空いていた私の左手は姉の秘所を責
める。
「あっ・・・くぅ・・んっ・・・」
姉さんの翼が快楽で震える。私より少し大きな翼。私との外見上の
違いは、そこくらいだろう。
「ふふ、今度はこっちの番よ」
私が翼に見とれていた隙を突いて、姉さんは体を反転させ私の攻撃
から逃れる。と同時に、唾液で滑った長く淫らな舌が私の秘所を責
める。余りの快感に思わず体が硬直する。そこ見逃さず、長い足で
私の顔を挟むと自分の秘所を私の顔に擦りつける。私の鼻腔はたち
まち、雌の匂いで一杯になる。淫魔の体から出る体液は全て催淫効
果がある。同じ淫魔といえど理性を保たなくてはすぐに快楽に飲ま
れてしまう。私は反撃にでようと、姉さんと同じように舌を伸ばし
た。
「オイタは、止めなさい。」
優しく言うと、姉さんは私のアナルに唾液をたっぷりと塗した中指
をツプリと突き刺した。
「あぁ・・・はぁ・・・」
私は思わず快楽の吐息を吐き出してしまう。
「可愛いわ・・・私の大好きなアリナ・・・」
姉さんはその瞳に淫らな炎を灯し、ラストスパートを駆けるかのよ
うに私を責める。こうなるとどうしようもない。姉さんのペースに
引きずり込まれてしまう。
「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あっ・・・あぁぁぁっっ!!」
私の秘所に自分の秘所を擦りつけながら、姉さんもまた昂ぶって行
く。交差された長い足が艶かしく動く。快感でピンク色に染まって
まともな思考が出来なくなった頭で、私はぼんやりと考える。
『まるで鏡を見ているようだ』
と。それでは、この行為は自慰と変わらないのか、そこに愛は無い
のだろうか。馬鹿になった私の頭も、同じように惚けた顔をしてい
る姉さんもまた、答えてはくれない。
「も・うっ・・・駄目っ・・・アリナ・・・一緒にっ〜〜っ!!」
「ねえ・・さっ・・・私も・・・イク・・・あぁぁあっ!!」
そして、私達は同時に果てるのだ。

姉さんはこの世界で一番私を愛してくれて、私を一番理解してくれ
ているのだろう。でも最近は、私はこの姉さんが嫌いで仕方ない。
私との行為が終わって、男から精をすすっている時、跨って腰を振
り嬌声を上げている時の顔を見るのが、辛い。ああ、姉さん、どう
か、どうか、そのように浅ましい顔を私に見せないで下さい。まる
で鏡を見ているかのように似ているから、辛いのだ。いや、違う。
本当は、私自身が餌を食べているときも同じ顔をしているのを知っ
ているから、辛いのだ。自分の浅ましい姿を見せられているようで
辛いのだ。
私が嫌っているのは私。
彼にこの姿だけは見られたくないと考えるから、辛くて身が引き裂
かれるような思いをするのだろう。


私達はいつものように狩りに出た。子供の頃はこの狩りが楽しみで
仕方が無かった。私は下手糞だったが、それでも私が餌を捕ると姉
さんはいつも褒めてくれた。それが嬉しくて仕方なかったのだ。で
も、今は憂鬱で仕方ない。不安でどうしようもないのだ。彼が仲間
の誰かに捕まってしまうのではないかと。私の中で、いっそのこと
自分で彼を捕らえて犯してしまえばいいんではないか、そうすれば
この苦しみからも解放されるのではないかと言う、黒い考えが浮か
んでは、消える。私も生きるために、今日もまた彼の仲間を殺さね
ばならない。仕方が無いのだ。それは彼も、いや全ての生き物がし
ていることだ。それはわかっている。でも、堪らない。そんな考え
で自分を誤魔化そうとしている自分が、憎たらしくて仕方ない。
 それでも仕方なく私が適当に餌を探し始めた、その時だった。私
の不安は的中した。彼が捕まってしまったのだ。捕まえたのは姉さ
んだった。姉さんは彼の服を引き裂くと恐怖でまだ硬くなりきって
いないペニスを無理矢理挿入し、腰を振り始めた。姉さんと彼の顔
が快楽に染まる。
『やめて!』
そう叫ぼうとした私の首筋に痛みのような、痺れのような甘い感覚
が走った。振り返ると鬼のような形相の大男が武器を手に立ってい
る。しまった。強制的にもたらされた絶頂間に震える足で、私は駆
けた。そのまま、姉さんを突き飛ばすと私は彼を抱え上げ飛び去っ
た。一瞬、姉さんと目が合った。何が起こったのかまるでわかって
いない顔だ。
「アリナ?」
姉さんがまだ何か言おうとしていたが、私は構わず羽ばたいた。ご
めんなさい。姉さん、本当にごめんなさい。あなたの事も、愛して
いました。


私は夢中で飛んだ。とにかく遠くへ、遠くへと。そして私は何処か
もわからぬうち捨てられた山小屋へと辿り着いた。倒れこむように
そこに入る。限界が近い。すぐにでも精を補給しないと私はこのま
ま消えてしまう。怖い。どうしようもなく怖い。だが・・・彼から
奪う事は出来ない。せめて、それならばせめて彼の傍で死にたい。
そう思い、私は彼に近づいた。すると、
「この・・・汚らしい化け物め!!殺すなら殺せ!!」
彼の口から出た言葉は私を突き刺した。違う、違うのだ。私は、あ
なたの事が。私の喉はまるで潰れてしまったかのようで、全く声が
出てこない。私は無言のまま、馬乗りになると彼を飲み込んだ。姉
さんに責められたままだった彼のペニスは何の抵抗も無く私の中に
飲み込まれた。挿れただけでビクビクと脈打っている。もう限界な
のだろう。私達は所詮相容れぬ存在だったのだ。憎み、殺しあうし
かない関係だったのだ。
あなたが裏切ったのだ。私を、私の思いを。
理不尽な事とわかっていながらも私はそう思わずに入られなかった。
無言で、彼の顔を見ないように腰を振り続ける。快楽など感じない。
あるのはただ味の無い砂を噛む様な感触だけ。私は顔を見ないよう
にしながら、彼の体を引き寄せてを強く抱きしめた。

彼を殺して、その後私も死のうと思った。涙が溢れる。しかし、そ
の涙は零れ落ちる事は無かった。私の頬を伝わる途中で、優しく拭
われたのだ。ハッとして私は彼を見る。彼はとても、どうしようも
なくやさしい顔で私を見ていた。あの時、始めてあった時に汚い野
良猫に見せた表情だった。唐突に、全てを理解した。彼は私を助け
てくれようとしたのだ。酷い言葉を吐かねば私が出来ない事を知っ
ていたのだ。私が全てを悟ったその瞬間、彼は私の中に全てを吐き
出した。
「ダメっ!!」
思わず私は叫んだ。だがどうする事も出来ないまま私は彼を飲み干
していく。離れようとするが間に合わない。私は神に祈った。神な
ど信じてはいない。それに私は淫魔で、神とは敵同士だ。それでも、
祈らずにはいられなかった。
神様、あぁ、神様。どうか、この人だけは。
彼の体から力が抜けていく。私はどうする事も出来ないまま、更に
強く彼の体を抱きしめる。すると彼はそっと体を起こし、私に優し
くキスをした。快楽を与えるためではない、まるで恋人同士のよう
な優しいキス。それは、私に今までに感じた事の無い絶頂感を与え
た。頭の天辺から爪先まで突き抜けるように幸福が広がっていく。
今までに幾度も絶頂に達した事はある。だがそれらを全て足し
合わせたとしても、今の感覚には遥かに及ばない。何故か、初めて
姉さんに抱かれた時の事を思い出した。
 魔法のキスは私から、力を奪いとって行く。だがこれでいい。私
も彼と共に逝けるのだ。私はもう一度、今度は自分から彼に口付け
し、静かに目を閉じた。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

目を覚ます。いったいどのくらいの時間がたったのだろう。凄く短
かった気もするし、永遠の眠りから醒めたようでもある。私は・・
・死んでない。体もいつも通りだ。
「目が覚めた?」
背後から声がする。振り向くと、そこに彼がいた。何故だろう。彼
は、私が。もしかして、私もイッたから吸い取りきれなかったのか、
それとも同時にイクと、どちらも死なずに済むのだろうか、理由な
ど幾つでもあるようで確信的なものは何一つ見つからない。いや、
そんなことどうだっていい。彼が、生きている。それだけで他に何
もいらなかった。涙が止め処なく零れ落ちる。
「僕の名はレイズ。君は?」
レイズはあの優しい笑顔で私に問い掛けた。
             ・
             ・
             ・

不思議な少女を見た。その子は人間ではない。淫魔と言う人間の精
を啜って生きる僕達にとって忌むべき存在だ。だが、僕は以前から
考えていた。殆ど同じ姿をしていて、同じ言葉を使う。それなのに
何故分かり合えないのだろうかと。前に一度そのことを友人に話し
たことがあった。彼は言った。
「お前はいかれていやがる。」
確かにそうなのだ。淫魔に慈悲などは無い。僕らが食事をするのと
変わらない感覚なのだろう。でも彼女は違った。淫魔達が襲って来
た時、彼女は仲間達を僕から遠ざけていた。最初は偶然だと思った。
しかし、心配そうに常に僕を追う彼女の目を見て、それは偶然では
ないと感じた。僕はそれ以来、暇があると彼女のことを考えるよう
になっていた。会って話がしてみたいと思った。二度しかあってい
ないのに、しかも殺されるかもしれないと言うときだったのに、僕
は本当にいかれているのかもしれないと思い、苦笑した。あるいは、
淫魔の使う魅了の術にかかったのかもしれない。でも、そんなこと
はどうだっていい。僕を見る彼女のあの目が嘘だとは思えない。機
会があれば彼女に話し掛けてみよう。殺されるかもしれないが、そ
の時は仕方ない。だって彼女がいなければ僕はとっくの昔に他の淫
魔に殺されていただろうから。彼女と話すことを考えると胸が高鳴
る。何を話せばいいのかもわからない。そうだ、とりあえず名前を
聞こう。・・・それは恋だったのかもしれない。


暗い夜に三つのマッチを一つ一つ擦る
はじめは君の顔を一度きり見るため 
つぎは君の目を見るため
最後は君の唇を見るため
残りの暗闇は今の全てを思い出すため
君を抱きしめながら
 

     
  『As long as we love each otherwe will be all right!』完
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