性闘士 第一章
人間と魔族は長きに渡り全面戦争を繰り広げていた。
その闘争も、突如終わりをむかえた。
さかのぼること20年前、それまで大した力を持っていなかった淫魔が突如前線に立ったのだ。
彼女たちはどんな方法を用いたのか、物理的なダメージは全く受け付けなくなっていた。
淫魔を消滅させるには性技を用いて戦うしかないのだが、それが判明するまでに人間が降伏するのは戦局から見ても当然だった。
前線で戦っていた殆どの戦士たちは淫魔の下僕となった。
完全敗北を喫した人間には人権などなかった。
ここは孤児街。
精の質を重要視する淫魔にとってはここの者は対象外なため、淫魔による被害が出る事はほとんどない。
その日を生き抜くだけでも精一杯な者ばかりが集う場所、それがこの街である。
「おかえりなさい、コウ兄さま!」
出迎えたのは、俺の義妹のトウカだ。
彼女は俺の2つしたで18歳、彼女が生まれた時からずっと生活を共にしている。
血は繋がっていないが、この地獄のような世界で一緒に生きてきた、最後の家族だ。
「ただいま、トウカ。
さっそくで悪いんだけど、試合の後で疲れているんだ、もう休むな。」
彼女の肩で切りそろえられた綺麗な黒髪に手をおく。
「うん、おつかれさま!
あんまり無茶しないでね?」
彼女の大きく綺麗な瞳が潤む。
俺は無言で涙を拭い、寝室へ向かう。
彼女、トウカは原因不明の病に冒されている。
それは5年前の事だった。
俺の育ての親であり、トウカの実の父であるナオさんが何者かに殺されたのだ。
精が枯渇して死んでいた事から、犯人が淫魔の類であることは明白だった。
つまり、その時点で俺は怒りを食い殺すしかなくなったのだ。
ナオさんが亡くなってから俺とトウカはこの孤児街に来たが、それからのトウカはみるみるやつれていった。
医者に見せる金もなく途方に暮れていた俺たちの前に、サキュバスが現れ言った。
「その娘、助けてあげよっか?」
淫魔なんか恐怖の対象でしかなかったが、身よりもなく金もない俺がとれる選択肢など始めから決まっていたのだ。
サキュバスがトウカを助ける代わりに出した条件は以下のものだった。
・多額の金がかかる、全て俺持ち。
・研究材料として精子を差し出せ。
要約するとこの2点だ。
淫魔のもちかける条件だ、俺は自分の身を諦める気概だったため、拍子抜けしてしまった。
だが一つ問題がある、金のことだ。
「そーんなこと分かってるよ!
だからね、君に割のいいお仕事の話、教えてあげる」
この怪しいサキュバスが持ちかけてきたのはなるほど、割のいい話だった。
この孤児街から少し離れた賭け事の盛んな街で、人間と淫魔が戦う闘技場があるという。
淫魔には性技しか通じないので必然、バトルファックになるわけだが。
性技に特化した淫魔とバトルファックなど、一方的になるのは目に見えているので、挑戦者を募るべく多額のファイトマネーで釣っているというわけだ。
あの5年前からずっと、俺はこの闘技場で俺とトウカが生きるための金を稼いできた。
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