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10戦目

 控え室で待つ時間というものは嫌いではない。
 考えや気持ちを整理できるからだ。
 今夜の相手について、自分のランキングについて、様々な思考が男の脳内を駆け巡る。
 そして一段落が着くと、深呼吸をし、男はただその時を待っていた。
 暫くして、扉をノックする音が聞こえた。
「ナナシ選手、時間です」
 スタッフが控え室のドアを開け、そう男に告げた。
 控え室で待つ時間は嫌いではないが、このリングネームには今だ慣れない。
 選手として登録手続きを行った際に、あろうことか名前を書き忘れてしまったのが原因だった。
 ともすれば書き直しとなるが、名前の欄の空白を「なるほど、そういうことか」と解された結果、男の登録名はナナシとなってしまった。
(・・・行くか)
 立ち上がり控え室を出ると、スタッフから指示された部屋へと向かった。
「ナナシさん!10連勝、期待してますよ」
 道中、通りすがったスタッフに声をかけられる。
「・・・あぁ、そうだったな」
 今夜勝てば、デビュー以来無傷の10連勝。
 今年度の新人王も俄然近づく。
 だが、あくまでも勝てばの話だ。
 気負わずにいきたいものだ、とナナシは独りごちる。
(ここだな)
 部屋の前に立ち、ドアに手をかける。
 まだデビューして日が浅いせいか、ドアを開けるこの瞬間はどうしても緊張してしまう。
(・・・!)
 決意を新たにドアを開ける。
 
 
 視界に一人の女性が入る。
 今日の対戦相手だ。
 ドアを閉めつつ、部屋に入ると向こうから声をかけてきた。
「お、キミが対戦相手のナナシ君か」
 彼女はスタスタとナナシに近づきながら、手を差し出す。
「アタシはルキ。今日はよろしく」
「あ、ああ・・・よろしく」
 ナナシが差し出された右手を握ると同時に彼女の左手がナナシの右手をガシリと包んだ。
「最初から全力でいくから、そのつもりでね」
 そう告げたルキの表情には満面の笑みが浮かんでいた。
「・・・受けて立とう」
 挨拶を済ませ、2人は所定の位置へと向かう。
(試合前に真っ当な挨拶を交わしたのは初めてだな)
 試合前といえば、お互い無言か挑発をし合うのみの経験しかない。
 それ故、ナナシには少々面食らう出来事だった。
(さて・・・)
 とはいえ、これでペースを奪われるわけには行かない。
 ナナシは視線をストレッチを行っているルキへと向ける。
 ショートカットの黒髪、整った顔立ち。
 背丈は自分と同じか、やや低いか。
 女性の中では高身長といって良いだろう。
 明るい雰囲気も相まって年上のお姉さんという具合だ。
 が、その肢体はそんな可愛らしい言葉では形容できない。
 注目すべきは豊満な乳房と尻、そして太腿。
 特に乳房に関しては、フロントホックのブラジャーに無理矢理押し込んでいるレベルのモノ。
 見れば見るほどに武器としての「肉」が際立つ。
 しかしながらウエストは一定ラインを保っているところを見ると、全ては勝利の為の計算づくのモノなのだろう。
「む?・・・ニィ!」
 こちらの視線に気がついたのか、ルキが笑顔を向ける。
(・・・)
 そんな彼女に釣られるように、ナナシにも僅かだが笑みこぼれる。
(ふむ・・・)
 どちらかと言えばスレンダーな身体を好むナナシだが、だからといって無視は出来ない。
 各パーツを駆使した責めには、十分な警戒が必要になるだろう。
 
 次にナナシは部屋を見渡した。
 特にこれといって目に付くものはない。
 自分の左隣、ルキの右隣にベッドがそれぞれあるのみだ。
 部屋によっては、ローションの様な各種アイテムや何かしらのギミックが施されていたりするものもある。ドアを開ければ本物のリングが用意されていたという話すら聞く。
 ナナシ自身もそういったモノに随分と苦しめられてきた。
(これなら気にせず目の前の相手に集中できるな)
 懸念事項の1つが無くなり、安堵するナナシ。
 そんな時、聞きなれた音声が耳に入る。

―試合開始3分前です―

 アナウンスが終わると、ナナシとルキは下着を脱ぎ、試合開始の合図を待つ。
(・・・む?)
 準備が終わり、改めてルキを見やると彼女は未だにブラジャーを外していない。
 時間が来れば外すのだろうか、それともあのまま試合を行うつもりなのか。
 一昔前、脱衣させるのが一苦労な下着を着用する選手が多くなり、ルールが改正された。
 それ以降は下半身に着衣された下着は試合開始前に脱ぐこととなっている。
 故にルキがブラジャーを外さないことはルールに反してはいない。
 だが、肩紐を掴まれる等の不利を抱えることになる。
(何か・・・あるのか・・・?)
 いずれにせよ、警戒を厳とするに越したことはない。

―試合開始1分前です―

 ナナシは深呼吸を行い、目を瞑って今一度集中力を高める。
 10連勝や新人王といった雑念が頭の中から消えていく。

―試合開始10秒前・・・9・・・8・・・―

 心身共に臨戦態勢へと移る。
 今まで一番の精神状態だ。
 後は、ただ・・・。

―試合、開始ですー

 アナウンスと共に試合開始を告げるブザーが鳴り、ナナシは目を見開く。
(・・・!?)
 ナナシの両目に飛び込んできた最初の映像は、既に眼前に迫っているルキだった。
「最初から全力で行くって言ってたの、忘れちゃった?」
 ルキの両手がナナシの後頭部に回る。
 身体を密着させ、豊満な身体を押し当てる。
「・・・ん」
 同時にキス。
 ルキの舌がナナシの口内に侵入し、その中を這いずり回る。
 彼女の表情には、先程とは別人のような色香を漂わせていた。
(やられた!)
 ナナシはいきなりの責めに後手に回らざるを得ない。
 当初の予定では自分が先手を取るハズだったのだが、こうなっては仕方がない。
 頭を切り替え、舌戦に集中する。
 侵入してくるルキの舌に自身の舌を絡ませ、反撃を試みる。
 互いに譲る気配はなく、淫靡な音を部屋に響かせる。
「・・・ん、んん」
 暫くしてルキから声があがる。
(・・・行ける)
 開幕こそペースを渡してしまったが、どうやらキスはこちらに分があるようだ。
 徐々にだが、ペースを取り返しつつある。
 だが、ルキもそう甘くはない。
 分が悪いと見るや、ナナシに向かって体重を預け、ナナシを身体全体で押す。
(!!)
 ペースを取り戻そうとキスに集中し過ぎていたナナシは簡単にすぐ後ろの壁に追いやられる。
 壁に到達すると同時にルキはナナシから口を離す。
「キス、上手いんだね・・・じゃあ、お礼に!」
 ルキは後ろを向くと上半身を曲げ、そのまま尻を使いナナシの肉棒を責め立てた。
 大きく、それでいて健康的な「肉」がナナシの身体に快楽を刻み込む。
 その責めはナナシが今まで受けてきた尻コキとは比較にならなかった。
 当然、ナナシの肉棒に変化が起こる。
「やっと、熱くて、大きくて、硬くなってきた・・・ね!」
 顔をこちらに向け、笑顔を見せるルキ。
 その笑顔はまるで、感じる男の顔が好物だと言わんばかりに淫靡なものだった。
(このままは、流石にマズいな。仕方ない・・・!)
 ナナシは両手を伸ばし、ルキの乳房を掴み責め立てる。

―ハズだった―

「うっ・・・!」
 思わず声が漏れる。
 そのケタ違いの弾力、重量感は手で責めるナナシ側にも快楽を与えてくる。
(ある程度は予想していたが、まさかこれ程とは・・・)
「どうしたの?いいんだよ、もっと激しくしても。ほら、こんな感じ・・・で!」
 ルキの尻コキが激しさを増す。
「う・・・くっ!」
 追い詰められるナナシ。だが、その頭は冷静だった。
(激しくなる、ということは・・・)
 タイミングを見計らい、ナナシは横に倒れる様にして脱出を試みた。
 尻コキによる責めに集中していればいる程、咄嗟の対応がもたつく。
 案の定、脱出には成功した。
 
―が、しかし―

「ダーメ。逃がさないよ」
 すぐさまルキが抱きついてくる。
 そのまま二人はベッドへと倒れ込み、上はルキが取る形となった。
(上は取られたか・・・だが、何とか脱出できたな)
 ホッとするのも束の間、再びルキがナナシに対しキスを仕掛ける。
 上を取られ体重を乗せられている分、自身の胸板で暴れるルキの乳房の破壊力は凄まじいものだ。
(しかし、この勝負ならこちらに・・・!?)
 肉棒が何かに挟まれる。
 それがルキの太腿だと気づくまで時間はかからなかった。
 ナナシの肉棒を挟みながら器用に太腿を上下させている。
 ルキのキスを捌きながらこの責めに耐える。同時に行うのは、ナナシとて至難の業だった。
 分があるはずのキスも、次第に押され始める。
 ルキの舌が、唾液がナナシの口内を、喉を、犯す。
 そして太腿での責めが激しくなるにつれ、乳房もまた激しく暴れる。
 ルキが持つ「肉」を最大限に使った責め。
 並みの選手ならこの時点で敗北必死である。
 だが、ナナシは諦めていなかった。
(これは・・・どうだ!)
 ナナシは自身の腰を突き上げた。肉棒は勢いよくルキの秘部を掠る。
「え?」
 思わぬ反撃にルキの動きが止まる。
 (・・・よし!)
 続けて腰を突き上げ、今度はナナシが責める。
「・・・ひっ・・・ん!」
 今度はナナシの舌がルキの口内へと侵入する。
 上を取られながらも確実に反撃していくナナシ。
 が、ルキという女がこれで流れを渡すハズがなかった。
 ルキはキスを止め、上半身を起こす。
(今だ!)
 この時を待っていたとナナシもまた身体を起こす。
 そのまま体勢を入れ替え、今度は自分が上を取ろうとする。
 
―その時だった―

(!?)
 目の前が真っ暗になり、再びベッドに寝かしつけられた。
「はぁ・・・はぁ・・・お尻も太腿も耐えるなんて凄いね、キミ。でもこれはどうか、な!」
 自身の視界を覆っているもの。
 それはルキの乳房だった。
 手で掴んだだけで、あの快楽である。
 それが顔全体を覆っている。
 ナナシはこの試合で一番の危機感を覚え、早急に脱出を試みる。
 だが、身体が思うように動かない。
 鼻腔をくすぐる甘美な匂い。
 もがけばもがくほど身体に刻み込まれる乳房の質感。
 ブラジャーが生み出す圧倒的な乳圧。
 呼吸が困難な為か、頭が回らなくなっていくのが分かった。
 次第にルキの乳房だけのことを考え始めしまう。
 もっと、もっと味わいたい。
 ルキの乳房を求める自身の身体が、脱出を拒否している。
 そうしている内にルキはナナシの後頭部に手を回し、さらに強く、深くナナシの顔を自身の乳房に埋めた。
 考えが覚束無い。
 この試合で自身を救ってきた冷静さを奪われ、ナナシは突破口を見い出せないでいた。
(辛うじて動くのは・・・左手だけ・・・か)
 左手一本で何ができるか、僅かに残った理性をかき集めナナシは考えた。
 相手が生娘ならまだしも、ルキという相手に左手一本で打開策を講じることは普通ならば困難を極める。
 そう、「普通ならば」だ。
(・・・やってみるか!)
 弱々しくも左手を動かし、ルキの肩に手をかける。
 いや、正確には違う。
 左手でブラジャーの「肩紐」を掴んだのだ。
 そして今込めることが出来る精一杯の力を込め引っ張った。
「きゃ!?」
 突然のことにルキは引っ張られるままベッドを転がった。
 仰向けの状態になり、天井が視界に入る。
 ルキは驚嘆した。
 肩紐を掴まれたことではない。
 あの状況でもまだ勝利することをあきらめなかったナナシの精神力にだ。
 互いの思考が、この一瞬にのみ同調した。

―この相手は今まで最強の相手だ、と―

 すぐに体勢を立て直したいルキだったが、この隙を見逃すほどナナシは甘くない。
 この試合で初めて彼女の上を取ることに成功した。
(あれだけ責めたのに、もう立て直すなんて・・・!)
 必死だった。
 この機を逃せば絶対に勝てない。
 本能がそうナナシに告げた。
 その必死さがナナシの身体を突き動かした。
 上を取るや否や、キスでルキの口を塞ぎ、指を彼女の秘部へと宛がう。
「ん・・・あ・・・!!」
(十分だ・・・)
 ナナシはキスを止め、素早く準備に入る。
 両足を持ち上げ、自身の肉棒をルキの秘部へと挿入した。
「んぁ・・・ああああ!!!」
 ルキの嬌声が上がる。
 キスに分があるとはいえ、それだけでは決定打に欠ける。
 逆転するには、シンプルだがこの方法が一番だ。
 まして、男性優位の正常位。
 ナナシに迷いは無かった。
 徐々に腰を動かす速度を上げてルキを責め立てる。
「くっ・・・あ・・・んんんん!!!!」
 嬌声を上げながらも必死に耐えるルキ。
 だが、必死なのはナナシも同じだった。
 互いに勝利を目指し、一心に責め、耐える。
 永遠に続くかのような苛烈な攻防だが、次第にその攻防の均衡が崩れ始める。
「ふぁ・・・あ・・・イ・・・ク・・・!!」
 先に音を上げたのはルキだった。
(もらった!)
 好機と見てナナシがさらに激しく責める。
 今や試合の流れは完全にナナシにあった。
 一度は遠のいた勝利が眼前にある。
 故に、だろうか。
 心に余裕が出来てしまったのかもしれない。
 ナナシは見てしまった。
 ルキの「乳房」を。
 ブラジャーの中で、自分が腰を振る度に揺れるルキの乳房を見てしまった。
 一突きする度に規則正しく、且つ妖艶に揺れるそれは自分を誘っている様に見える。
(・・・くっ!)
 目が逸らせない。
 どうしてもルキの乳房を見てしまう。
(ならば・・・!)
 英断を試みるナナシ。
 ナナシは挿入したままルキにキスを仕掛けた。
 胸板が彼女の乳房に接触するが、集中出来ない現状よりはマシと踏んだのだ。

―それを待たれていたとも知らずに―

 ナナシが上半身を倒した瞬間、ルキの目に活力が戻る。
 素早く右手でフロントホックを外すと、左手でナナシの顔を乳房の谷間へと招き入れる。
 だが、今度はナナシも対応を見せる。
 状況を理解し、すぐに上半身を起こし、谷間から顔を離そうとする。
 その瞬間、ナナシの後頭部でカチャリという不気味な音が鳴る。
 (な・・・!)
 上半身を起こしたにも関わらず、視界は奪われたままだった。
 それどころか、ルキが自分に抱きついたままになっている。
 意図せず、ナナシは対面座位の形を取ることになった。
「捕まえた・・・!」
 ルキは谷間にナナシの顔を埋めた状態でフロントホックを再び留めたのだ。
 通常のブラジャーではこんなことは出来ない。
 だが、ルキが身に纏うブラジャーは伸縮性の高い特殊な素材を使った特注のブラジャー。
 それを使用し、相手を乳房の牢獄へと閉じ込める。
 これが、ルキの必殺の形だった。
「今度・・・こそ、逃がさないんだから・・・!」
 状況が未だに飲み込めないナナシは動きが止まる。
 そこを見逃さず、ルキは一心不乱に腰を上下に振った。
「さっき・・・の!お返し・・・だ、よ!!!」
(クソ・・・この為のブラジャーだったのか!)
 先程より一層激しい乳圧がナナシを襲う。
 最早、なすがままだ。
「もう、限界だよね・・・いいよ、このまま出して・・・全部、全部出して!」
(まだ・・・だ!)
 身体はとうに限界を迎えていた。
 勝ちたい。
 ただただ、一途な想いがナナシを支え、そして今度は右手を動かした。
 自然と右手がそこに、フロントホックへと向かった。
「そん・・・な!」
 ホックが外れ、ナナシは牢獄からの再度抜け出し、そのまま仰向けに倒れた。
 自身が持つ必殺の形を破られ、ルキの顔に明確な焦りが生まれる。
(これ・・・で、最後だ!)
 騎乗位の形で、ナナシは肉棒を突き上げた。
 勝利を今度こそ掴む為に。
「ひ・・・ふぇ・・・あ・・・あああああああ!!!!」
 一際大きな嬌声を上げるルキ。
 必死に、愚直に、ただただ腰を突き上げるナナシ。
 責めて責めて責めて責めて、ひたすらに責める。
 だが、ここでまたあの乳房が目に入る。
(なら・・・!)
 ナナシは目を瞑り、視界からの情報を遮断した。
 聞こえるのはルキの嬌声と秘部と秘部とがぶつかり合う音だけだ。
 余計な情報を遮断し、その突き上げは更に鋭くなる。
 ルキの秘部から漏れ出す愛液の量はドンドン増えて行く。
 そして、ルキは限界を超え、盛大に絶頂を迎えた。

―!!!!!!―

 そう確信して腰を突き上げたナナシ。
 だが、手ごたえが急に無くなった。
 何事かと目を見開くと、そこにルキはいなかった。
「ダメ・・・だよ、最後まで・・・ちゃんと『見てなきゃ』・・・ね」
(しま・・・!!)
 声のする方を見れば、自分の両足を抱えたルキがいた。
 ホックを留められ、その中には窮屈そうな彼女の乳房が押し込められている。
(あ・・・あああああ)
「アタシの責め、『コレ』以外全部耐えたのは今までキミだけだよ」
(そん・・・な)
 抵抗する力は残っていない。
 ルキの為すがまま腰を持ち上げられ、『パイズリ』の体勢へと移行する。
「あれだけ我慢したんだから・・・どうなっちゃうんだろうね・・・」
 両手で左右から乳房を支え限界まで乳圧を高めた状態で、妖艶な笑みを浮かべたルキはその乳房をナナシの亀頭に宛がい、ゆっくりと飲み込んでいく。
「全部・・・全部だよ・・・一滴残らず全部・・・」
 やがてルキの乳房がナナシの肉棒を完全に飲み込んだ。
「搾り出してあげる!!!」
「あ・・・あああ・・・あああああああああああああ!!!!!!」
 凄まじい速度でパイズリが行われる。
 ルキの乳房はまるで意思を持った獣の様にナナシの肉棒を捕らえ扱き上げる。
 その質感は吸い付く様で。
 その弾力は肉棒を押し潰してしまうかの様で。
 その重量は一度扱くだけで脳が蕩けてしまう様だった。
 刻み込まれる快楽の度合いは、これまでの味わってきた責めとは比べ物にならない。
 何も考えられなかった。
 唯一考えられるのはルキの乳房のことだけ。
 逆転の策も、何も浮かばない。
 ただ、その押し寄せる凄まじい快楽に身をゆだねた。
 程無く、敗北の印である白濁の精液をルキの乳房へと射精する。
「まだだよ!言ったよね!一滴も残さないって!!!!」
 ルキはパイズリを止める気配を一切見せない。
 それどころか、その勢いは増す一方だ。
「ああああ!!!!・・ああ・・・ああ!!!!」
「いいよ!!もっと!もっと出して!!ドピュドピュって!ほら!ほらほら!!!!」
 二度、三度、そして四度とナナシの射精が続く。
 ルキの身体もブラジャーも精子にまみれている。
 だが、射精の勢いは一向に収まらない。
 ナナシの肉棒もまた衰える気配を見せない。
 神経が焼き切れそうな感覚をその身に覚えるナナシ。
 それでも、彼は求めてしまった。
 ルキの乳房を、ルキのパイズリを。
 試合が終了しても尚止まらないルキのパイズリは、ナナシの意識が飛ぶまで行われた。


「ん・・・」
「お、意識が戻ったみたいだね」
「・・・負けた。完敗だ」
 ベッドに寝たまま、ナナシは呟いた。
「そうだね、私の勝ちだね・・・『今回』は」
「謙遜しなくていい。俺の実力不足だった」
 ナナシの顔には全力を出し切ったことを物語る清々しい笑みが浮かんでいた。
「でも次は『コレ』引っかかってくれそうもないし、どうかな〜」
 自身のブラジャーを指差し苦笑するルキ。
「まっ、何にせよいい勝負だったよ。今まで一番だった」
 そう言うとルキは手を差し出す。
「またどこかで。その時もよろしく!」
「あぁ。今度は、俺が勝つ」
「楽しみにしてるよ」
 二人は固い握手を交わした。


 控え室で待つ時間というものは嫌いではない。
 考えや気持ちを整理できるからだ。
 今夜の相手について、自分の今後について、そしてあの約束について。
 様々な思考が男の脳内を駆け巡る。
 そして一段落が着くと、深呼吸をし、男はただその時を待っていた。
 暫くして、扉をノックする音が聞こえた。
「ナナシさん、時間です」
 スタッフが控え室のドアを開け、そう男に告げた。
 控え室で待つ時間は嫌いではないが、このリングネームはベテラン選手となった今でも慣れない。
 選手として登録手続きを行った際に、あろうことか名前を書き忘れてしまったのが原因だった。
 ともすれば書き直しとなるが、名前の欄の空白を「なるほど、そういうことか」と解された結果、男の登録名はナナシとなってしまった。
(さて、行くか)
 結局、あの約束は未だ果たされていない。
 それでも、ナナシはいつかまた合間見えることを信じ、今日も試合に臨む。
 選手として、『王者』として。
 現BF王者・ナナシ。
 その輝かしい経歴には、たった一度の敗北が記されていた。
何となく思いついたものを書いてみました。
で、思いついた勢いそのまま、一気に書き上げたので粗が多いかもしれません。
ご指摘等あればお願いします。

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