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始動! ルチアナ学院BF部!

※本作は『激闘! クリスマスファック! 《前篇》』 read.cgi?no=774
と、『激闘! クリスマスファック! 《後編》』 read.cgi?no=775
の二作品の設定を引き継いでいます。

「ここか」
 『聖ルチアナ学院〜学校案内』と書かれた冊子を片手に、僕は目的の部屋の前にいた。
 緊張か。ノックのためにかざした手に汗がにじむ。
「よし! 今日、ここから、僕の新しいバトルファックが始まるんだ!」
 気合を一つ、僕はドアをノックした。

 聖ルチアナ学院は2年前に共学化したばかりの元女子校だ。大正5年開校。良妻賢母養成機関といった趣の、古き良き女学校としての面を持つ一方、女子スポーツの強豪校としても知られていた。
 そのせいか、共学化した後も文武両面で女子やその保護者に人気が高く、生徒の男女比は10:1で女子が多いままだ。とはいえ、それはそれで学校の特色といえるし、他のスポーツならなんの問題もない。
だが、ことバトルファックにおいては男女比の偏りは死活問題と言える。組み合わせが成立しないからだ。そしてルチアナBF部では男の部員がゼロであるという。これでは団体戦に出ることもできない。
 それゆえ、ルチアナでは他学校からの転入を含めて、BF部の男子部員を募集していた。まさに渡りに船である。
 それでもクリスマスファックを目指す僕にとって、女子が弱ければ意味がないのだが、個人女子でのルチアナは、この二年間で全国レベルの成績を出すまでに成長しているのだ。この条件に僕は飛びついた。
(男子がいないはずなのに、どんな練習をしているんだろう?)
 僕が以前いた鳳学園がペアに出場を絞っていたことと、地区が違ったせいで、僕はルチアナの情報は戦績ぐらいしか知らない。そのため、ルチアナの成績と躍進は不可解な部分があった。だが……。

「ようこそルチアナBF部へ。まあ、掛けてくれたまえ」
(なるほど、雰囲気がある。これならあの成績も頷けるかもしれない)
 僕は部室の奥で『部長』と書かれた名札の置かれた机に座る、御堂寺蘭という存在を目の当たりにして、そう思った。
 3年の御堂寺部長はメガネをかけた知的な印象のある女性だ。二つに分けたお下げを肩に垂らす女性らしい髪型にも関わらず、どこか中性的で、男口調が似合っている。
 よく整った顔つきは間違いなく美人と評されるものだが、メガネでも消しきれない目つきの鋭さや、常に口元に浮かぶ微かな笑みが、わずかにバランスを崩している。端的に言えば底意地が悪そうな顔、となるのだが、言い知れぬ“深み”も感じられ、美しさだけでは説明できない魅力を醸し出しているのだ。
 その得体の知れない魅力を感じさせる部長が、BF部の指導をしていると聞くと、不思議と納得してしまうものがあった。
「……ふむ、提出してもらう書類は揃っているようだね」
 雑談を交えながら、入部届け等の書類に目を通していた部長が言った。
「では、今日から正式に君は、聖ルチアナ学院バトルファック部の所属となる。改めてよろしく頼むよ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
 差し出された手を握ると、力強い握手がかえってきた。
「それにしても、鳳学園みたいな強豪からうちに来るとは。誘っておいてなんだが、よく来る気になったね」
「……どうしても闘いたい相手が、鳳学園に居ては闘えない相手がいるんです」
「ほう……」
 僕の答えに部長は興味深げに息をついた。
「どうやら君も……。まあ、深い話はおいおいしていくことにして、そろそろ他の部員も来るころだ。今日は見学がてら、皆に紹介してあげよう」
 部長は何かを言いかけてやめると、取り直すように言った。
 と、そこへ。
「うぃーすっ。あのよー、お嬢……、あん? 何だ、お前」
 やけに柄の悪い声が聞こえてきた。
 振り返ってみると、ショートカットを茶色く染め、指定のカーディガンを腰で縛った女子生徒が部室のドアを開けたところだった。
 よく見ると制服のスカートやブラウスをところどころ改造してある。耳にはピアスもしていた。鳳にはあまりいないタイプの女子だったので僕が面くらっていると、女子生徒が絡んできた。
「ああ、何見てんだよ?」
「い、いや……」
「竜子、紹介しよう。鳳学園から転校してきた泉貴明君だ。泉君、彼女は緋崎竜子。うちのエースだ」
「エース? 彼女が?」
「あ? なんだよ、何か文句あんのか?」
「そういうわけじゃないけど……」
 意外だった。てっきり部長がエースなんだと思っていたが。
「ってかよ、お嬢。まさか、戦力強化のあてがあるって、こいつのことか?」
「そうだよ。泉君は鳳学園の生徒の中でも、上位クラスの生徒だったんだ。頼もしいだろう?」
 部長の紹介は少しこそばゆかった。が、僕が謙遜するより早く、緋崎が言った。
「おいおい、お嬢。冗談はやめてくれよ。鳳なんか伝統だけの、古臭いBFしかできねぇとこじゃないか。んなところのやつなんか、うちにはいらねぇよ」
「な、なんだと!?」
 僕は生れて初めて女性に対して声を荒げた。
「鳳のBFはつまんねぇ、って言ってんだよ」
「取り消せ! 鳳のバトルファックは素晴らしいんだぞ!」
「はん、どうせ“初めて”が良くて、先輩に惚れちまったくちだろ? よくいるんだよなぁ、そういう甘ちゃんがよ。どうせ、たいして上手くもないBFだろうに、“初めて”の幻想に縛られちゃう奴が」
 緋崎に転校した理由を半分言い当てられ、僕は動揺した。だが、紗江子先輩との“初めて”を馬鹿にされた怒りがそれを上回った。
「紗江子先輩との“初めて”は、鳳のバトルファックは誰にも馬鹿になんてさせない! 上がれ、上がれよ!!」
 僕は部室の角に設えられた、マットを指差した。
「面白ぇ、吹くじゃねぇか。お嬢、マット使うぜ」
「いいだろう。存分にやりたまえ」
「来な。鳳のカビくせぇBFがどんなもんか、見てやるよ」
 緋埼が内履きを脱ぎながらマットに上がった。
「なにをっ! そっちこそイかされて後悔するなよ!」
 僕はシャツの襟元を緩めながら後を追った。
「んっ? 何やってるんだ、脱げよ」
 誘っておきながら、緋崎はマットの中央に腕組みをして立ったまま、服を脱ぐそぶりを見せない。
「はんっ! 伝統校さんの男は、女に服を脱いでもらわないとBFも始められないのか? 随分ぬるいBFじゃないか」
「着衣ルールがいいって言うなら、構わない! 受けて立つさ!」
 着衣状態からのバトルファックは、首が締まったりする危険があることから、学生ルールの試合では必ず脱衣から入る。しかし、より実戦的なバトルファックを志向する一部の学校や、プロ団体では着衣ルールを採用しているところもある。
 僕自身は着衣ルールの経験はほぼ皆無だが、応用を利かせるだけの基礎は積んできた自負があった。
 緋崎の挑発をうけて、僕は彼女に真正面から組みついた。
「んっ……、ちゅっ、んむっ……れるっ」
 緋崎は一切かわす気配も見せず、それどころか仁王立ちのまま僕のハグとキスを受け止めた。
(なっ、抵抗しないつもりか!? くそっ、馬鹿にして! いいさ、それなら存分に触ってやる!)
 舌を緋崎の口内に押し込み、ねっとりと彼女の舌を舐りながら、左手で腰を抱き寄せ、右手でスカートの上からお尻を擦ってやる。
(んっ? この感触は……)
 左手に伝わる腰の細さは、見た目以上の抱き心地となって伝わってくるのに対して、右手に伝わってくるヒップの感触には違和感があった。
「ふん、偉そうなこと言って、スカートの中に短パンなんか穿いてるのか。BFするのに随分厚着じゃないか」
 スカートの下にショーツではありえない、固い生地の感触があった。
「ずるいって言うのか? 脱いでやってもいいぜ」
「ぬかせ。何枚着ていたって一緒さ!」
 僕はお尻を擦る力を少し強めた。生地の上で掌を滑らせる動きをやめ、スカートの生地ごとその下の短パンの生地を動かすようにして、生地を使って緋崎の尻肌を撫でてやる要領だ。
 さらには、生地の厚みに左右されない揉む動きを早めにとりいれて刺激していく。お尻の割れ目に指を沿わせて、デリケートなゾーンを意識させて常に意識させておくのも忘れない。
「んっ……」
 尻たぶを捏ねていくと、緋崎の鼻から息が漏れた。
感じた証拠なのは明らかだった。
 だが、僕が追い打ちをかけようとした瞬間、それまで無抵抗だった緋崎がとんでもない行動にでた。
ドンッ!!
 胸に強い衝撃があり、僕は後ろに倒れマットに尻もちをついてしまった。突き飛ばされたと悟った僕は、尻もちをついた姿勢のまま仁王立ちの緋崎にくってかかった。
「な、なにするんだ! バトルファックで暴力行為は厳禁だろ!」
 だが緋崎は悪びれた様子もないまま、僕の顔を覗き込みながら言った。
「今のが暴力行為?」
「そうだろ! 現に僕は突き飛ばされたんだぞ!」
 そう僕が怒鳴ると緋崎の表情に怒りの色が浮かび、さらに信じられない事態が僕を襲った。
「突き飛ばされただって? ふざけんじゃねぇっ!!」
パアァァンッ!!
 弾ける乾いた音。僕の頬が張られた音だ。
「な、な、な……」
 僕はあまりのことに、しばらく言葉が継げなかった。それでもどうにか抗議の言葉を絞り出す。
「あんまりだ、こんなのバトルファックじゃない! 部長っ! ここじゃ、どんなバトルファックをやってるんだ!?」
 僕は怒りの矛先を責任者たる部長にも向けた。だが緋崎同様彼女も悪びれたところはない。
「ふむ、うちのバトルファックか……。私はそれをパワーファックと呼んでいるね」
「パワーファックだって? なんだよ、それ。力ずくってことか? 最低なバトルファックじゃないか!」
「どうやら誤解があるようだね。……少し落ち着いて、自分の体に意識を向けてごらん。今、どこか痛いところがあるかい?」
「何言ってるんだ、今ビンタされたんだぞ! 痛いに決ま……えっ?」
 言われて気付いた。突き飛ばされた胸も、尻もちをついた尻も、驚くことに張られた頬さえ痛みがない。
「胸は突いたんじゃない、素早く押しただけ。マットは十分に柔らかい……」
 部長は教え諭すように言葉を紡ぐ。
「……音は派手に、ダメージは残さず。スパンキングの基本だ」
「スパンキングだって……?」
 呆然とする僕に勝ち誇ったようにして緋崎が言った。
「そうさ、うちのBFは、お手手つないで仲良くベッドイン、なんていうぬるいBFじゃねぇんだよ!」
 緋崎はそう叫ぶと座り込んだままの僕の股間を踏みつけてきた。
「うあぁっ」
「どうだ? んん? 踏まれて気持ちいいんだろ?」
 絶妙な体重のかけ方。甘い疼きが股間に広がる。
「エロい目しやがって。あたしのスカートの中が気になんのか?」
目の前で捲れかけたスカートの裾が、健康的な脚線美を辿った先の暗がりが、どうにも気になって仕方がない。緋崎は僕の股間を踏みながら、太腿の見せ方まで計算しているのだ。
「短パン穿いてんだぜ? 童貞かってぇの」
 嘲るような口調が、股間を刺激されながらだと、耳に心地よくさえある。言葉責めだ。しかも効果的な。
(しかし、こんな……、こんなプレイは……)
 一見乱暴に見える緋崎の行動の一つ一つが、実は高度な技術と計算に裏打ちされているというのは分かる。
だが、僕が培ってきた価値観は彼女を否定する。痛みがなければ何をやってもいいのか。突き飛ばすのは、頬を張るのは、局部を踏みつけるのは、暴力ではないのか、と。対戦相手を罵る必要があるのか、と。
 一方で心の中で小さく囁くもう一つの声があった。今感じているのは快感ではないのか、踏まれ、張られ、罵られても、お前は感じているのではないのか、と。
 いったいどちらの声に従えばいいのだろうか。価値観の崩壊と発見とに、同時に見舞われながら僕は混乱した。
「あん? どうした戦意喪失か?」
 心の葛藤が表に出ていたのだろう。訝しげな顔をした緋崎が責めを中断した。今の僕の状態ではとてもバトルファックは続けられない。
「…………」
 しばらくして、僕は無言で立ちあがり、出口に向かった。
「なんだ、逃げんのかよ」
 緋崎が言った。
「……逃げはしない……。でも、心の整理を、答えを出す時間をくれ……」
 それだけ言うのがやっとだった。緋崎の技を否定するのか、受け入れるのか。いずれにしても答えを出さなければならない。
「はん。じゃあ、答えとやらが出たら来な。いつでも相手してやるぜ」
 僕は緋崎の声を聞きながら部室を後にした。

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「ふぃーー。なんだったんだ、ありゃ。どんだけマジになってんだよ。ああいう真面目なやつは、相手するの疲れるぜ」
 貴明が去った後の部室で、竜子はそんなことを言いながら椅子に腰を下ろした。
「ふふふ、随分彼のことが気に入ったみたいだね」
 湯呑を手に蘭が言った。
「ばっ、何言ってんだよ、お嬢。なんであんな甘ちゃんが気に入るんだよ」
「そうかい? それにしちゃ、結構熱くなっていたんじゃないかい?」
「……ちっ、やっぱりお嬢にゃ、適わねぇ……。そうだな、あいつかなりやばいぜ」
 急に神妙な顔になった竜子が言った。
「だろうね。彼は気付いてなかったようだけど、お尻を触られたあたりから、ずっと膝が微かに震えていたし、最初の間合いの取り方も焦りが見えた。……で、キスかい? 指使いかい?」
「どっちも……いや、指使いの方、だな。まさか短パン穿いてて、いきなり感じさせられるとは思わなかったぜ。鳳でどんだけ仕込まれて来たんだって話だよ」
 そう語る竜子の頬は仄かに赤らみ、腰のあたりをもぞもぞとさせる仕草に色気があった。快感の余韻に浸る女性の姿そのものである。
「くくく、そうか、そうか。ふふっ、面白くなってきたじゃないか……」
 竜子の様子を見て、蘭は満足気に頷いた。
「で、でもよ、お嬢。あいつまた部活に来るかい?」
 蘭の視線を受けて、少し照れくさそうにしながら竜子が言った。
「来るさ。必ず」
 答えた蘭の声は確信に満ちていた。
 そして誰にも聞こえない声で、小さく呟いた。
「彼もまた、バトルファックの業を背負ったバトルファッカーなのだから……」

 その言葉が現実になったのは2日後のことである。
以前書いた話の続編(前日譚)です。
お時間があれば前2作を読んでからお読みください。
その投稿からめちゃくちゃ時間が空いていますが、
最近投稿が賑わってきたようなので支援です。

ご意見、ご感想お気軽にお寄せ下さい。

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