「ベビーシッターだって!?」
ショーンは落ち着かなさげに声を荒げた。
「僕はもう18歳だよ!? 18歳の男にベビーシッターなんていらないよ!」
ショーンのパパは読んでいたシャーロックホームズから顔を上げ、そこは彼の書斎だったが、パイプをオーク材の机の上に置くとこう言った。
「そう騒ぐんじゃない。ショーン。お前は私とママに、お前を大人のように扱えというが、しかしお前はこの前トイレットペーパーをお隣さんの家の木に引っかけるイタズラを行ったばかりだ。大人になったと証明したいようだが、振る舞いはまだまだ子供のままだ。そして子供のように振る舞うお前にはベビーシッターが必要なんだよ。さらに付け加えるなら、お前がときどき行うイタズラは、子供っぽいの域を超えてときどき違法でもある。ショーン、法律だって罰の必要性を雄弁に証明している」
「じゃあなんでデイブやベンを家に呼んじゃいけないの?」
「お前はまだあと2週間謹慎が残ってる。その間は友達もテレビも禁止だ。学校に行って家に帰ってくるだけしか許可しない。さあ、この話はもうこれでお終い。もうパパが話すことは何も無い」
ショーンはキッチンのママのところに駆けつけた。
「ねぇママ! 僕はベビーシッターなんかいらないよ! 僕、ママのして欲しい事はなんでもする。ほんとにどんな事でも。だからベビーシッターだけは勘弁してよ! デイブやベンにばれたら一生笑いものにされちゃうよ!」
ショーンのママはいささか同情的な表情だった。
「ショーン。これはそんなに悪い話じゃないと思うの。本当よ? アマンダ・モリスが来てくれる事になってるの。彼女の事、覚えてるでしょ? 彼女のママと私は教会の同じボウリングチームの会員なのよ」
どうしてショーンがアマンダの事を忘れる事ができただろう。彼女は彼より5歳年上で、彼が押さない頃に同じようにベビーシッターとして家に来ていた。良い思い出は何も無い。彼は常に彼女に大きく反発したが、彼女は常に傲慢で、威張っていて、乱暴で、ショーンの上に馬乗りになると情け容赦なく彼をくすぐって彼女に屈服するまで許さなかったのだ。
ショーンは部屋にいきベッドにもぐり、友達にバレたらどうしよう、一生からかわれ続けるだろうな、などと考え悩んだがそれも長くは続かなかった。45分もしないうちに玄関のベルが鳴り響いたからだ。
ショーンとママはアマンダと彼女のママに玄関口で応対をし、家の中へと招き入れた。
「ショーン? モリスとアマンダよ。覚えてるでしょう」
ママに聞かれてショーンは彼女たちを見た。アマンダは昔みたときよりも随分美しく成長していた。彼女のカット裾のショートパンツは伸びやかな脚を存分に見せ、サンダルからのぞく足の爪はマニキュアで完璧にメイクされていた。ふわっとして長いブラウンの髪はポニーテールに結い上げられて、目元には黒いサングラス。サンフランシスコ記念祭のぴっちりしたTシャツが体の起伏を強調していた。
「アマンダ? 屋内ではサングラスを外しなさい。失礼よ」
アマンダはサングラスを外すと暖炉のマントルピースの上に畳んで置いた。
「ごめんねショーン。ママ達はもう行かなくちゃいけないの。ねぇモリス、私今でも信じられないわ。貴方が毎月売り切れだったファントムのオペラのファーストシートのチケットを持ってきてくれるだなんて夢みたい」
ショーンのパパが部屋に入り、アマンダに紙切れを手渡した。
「これが私がいるレストランの番号だ。困ったことがあったらかけたまえ。5時まではここにいて、8時からはシアターにいる。こっちがシアターの番号だ。11時になったら帰ってくるよ。その間、くれぐれもショーンにはテレビもパソコンも使わせないでくれ。頼んだよ?」
アマンダはうなずいた。
「問題ないわ。ミスター・アンダーソン」
ショーンの両親とアマンダのママはシアターにでかえけ、アマンダはパーラーにピザの宅配の電話をかけた。そしてアマンダが彼女の小説を読んでる途中、ショーンは彼女の目を盗んで書斎に忍び込み、パソコンをオンにして友達とメールを始めた。
約5分後の事、アマンダは書斎に来てショーンのパパのシャーロックホームズを借りにきた。
「ショーン」
「貴方はコンピュータを使っちゃダメって言われてたでしょ? 宿題でもやったらどうなの」
彼女はコンピュータの電源を切るとショーンの腕を引っ張って書斎から出た。ショーンは15分ほどテキストブックを広げていたが再び彼女の目を盗んで書斎に忍んだ。アマンダがやってこないのを確認して再び友達にeメールを送り出す。30分後に読み終えたシャーロックホームズを戻しに来たアマンダと鉢合わせした。
「あぁ、ショーン。もういいわ。今すぐ電源を切ってベッドで寝なさい。ちゃんとシャワーを浴びてからね」
ショーンはしぶしぶシャワーを浴びると下着一枚で自分の部屋のドアを開いた。
彼がドアを開いた時、アマンダが背後から飛びついてきてそのままベッドに組み伏せた。手早く手錠を出すと安全に彼の手首をベッドの支柱につなぎ、足首も同じように束縛する。
ショーンが動けないのを確認した後、アマンダはショーンの腹を何度か撫でた。そして彼の目に彼女の長い爪を見せつけながら口を開いた。
「ショーン。貴方はほんとに悪い子ね。パパからコンピュータを使っちゃダメって言われたでしょ? それも二回も破った。ほんとに悪い子。それで悪い子がどんな目に合うかは解っているわね」
アマンダはショーンに考える時間を与えた。ペタペタと彼の体に手を這わせている。ショーンは自由になろうと手足をもがいた。
「ショーン。どこに行きたいのか知らないけれど、どこにもいけないと私は思うわ。ねぇ、ショーン。ショーン。ショーン。貴方って本当に本当に悪い子だから、私、貴方にお仕置きをしなくっちゃいけないわ」
アマンダはもう一度彼の体に手を這わせると、突然彼を殴りつけるフリをした。……当たる寸前で手を引っ込めると、ショーンが手錠をガチャガチャいわせて逃げそうだったのを見て高らかに笑った。アマンダは再び殴るフリをすると、そのまま指の爪をショーンの太ももに深くめり込ませてショーンが手錠をきしませるのをもう一度笑った。
アマンダは羽毛を一本抜き取ると、彼の足の裏を優しく撫で上げ、撫で下げた。
「ハハハハハハハハハハハハハハハ!」
彼女の手首は繊細で滑らかにカーブする。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
そして幾分ねちっこかった。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
アマンダの、可哀想なショーンに対する拷問は数分間にも及んで続いた。ショーンは笑いで体が爆発しそうに感じた。しかし彼女は決して許さなかった。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
アマンダはショーンに息継ぎの時間を与えた。彼女の指先が直にショーンの胸部をすべって脇腹のあたりに落ち着いた。
「やめて……もうやめてよ! もう悪い事しないから、約束するから!」
「ふうん。でも私にはそれが正直に言っているのかどうか見分けがつかないわ」
アマンダは再びくすぐり始めた。長く伸びた爪の先が勢いよく彼の脇腹を撫で引っ掻いたり、肉を揉み込むマッサージのようにうねったり、太ももの敏感な部分を泡立てたりした。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
彼女の綺麗な指先の爪が彼の全身に余すとこなくお仕置きする。無限とも思える時間をただただショーンはもがき続けた。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」
この頃になるとアマンダはショーンの下着にできたシミのスポットに気付かざるを得なかった。
「まぁ、まぁ、まぁ」
「私たちってば、”ほんとうに”、大人になったみたいね。それとも私が気付かなかっただけなのかしら」
ショーンの顔が赤色に染まる。
「ねぇショーン、どうしようかしらこれ」
ショーンはますます真っ赤になった。
「ショーン? 貴方はいつも反抗的だったけど、でも私は貴方がとてもキュートな子だって事も認めないわけにはいかないわ。ふふ、こうして抵抗できない時なんて特にそう」
アマンダはうんうんと頷いた。
「えぇ、貴方が私に何を望んでいたのか、ようやくはっきり解ったわ」
彼女の顔は少々はにかんだようだった。
ショーンは自分の耳を疑った。そして目も……アマンダはショーンの体に馬乗りになると、より一層丁寧に優しく彼の下着を下ろしにかかった。さらに自身のシャツとブラを脱ぎ捨て彼の内ももを、固くそそり立った柱に危うくさわりそうになるくらい、マッサージした。そして肝心の部分に彼女のあえやかな指がからみつこうとした瞬間に、車庫のドアが閉まる音が室内にまで響いた。
アマンダはブラインドの隙間から外をのぞくと彼女たちの両親が笑いながら玄関に近づいてくるのを見て取った。
「ファック!」
アマンダは慌てて手錠を外し、全身汗だくで虚ろな目をしたショーンをてきぱきとパジャマにくるむと自分も服を着て書斎で本を読んでるふりをした。
アマンダと彼女のママが帰宅するとき、ショーンも起きて立ち会った。アマンダは彼にそっとウインクをした。
次の日彼のドアをママが叩いた。
「ねえ、どうだった? 貴方が言ってたように悪い事が起きたのかしら」
「ううん、そんな事ないよママ。なかなかクールだった」
「そう、それは良かったわ。あのね、ママ達今度は彼女の親戚に招待されてラスベガスに行こうと思っているの。一週間の予定なんだけれども、アマンダがまた貴方のベビーシッ……いえ、その、留守の間ショーンと一緒にいてくれるって。ゲストルームで寝泊まりしてくれる予定なんだけれど……大丈夫かしら?」
「オーケィ。心配ないよママ!」
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残念ながら私は芽が出なかった。なので多くは語らない。著作権はフリーだそうだ。翻訳したのは私だがその場合のコピーライトはどうなるのだろう。もしなにか産まれるとしても、僕に関する部分は完全にフリーとさせていただこう。