6000

光の宗教と闇の宗教 その3

「第二回戦!」

「‥‥えーと、黒鶴選手!」
「はーい」
 審判の読み上げが一瞬よどんだのは苗字を探したからだ。だが、どうやら苗字は無いらしい。
「月森ミカエル選手!」
「はい」

「勝負、始めっ!」
 黒鶴、と呼ばれた長身の女は静かに歩み出した。片一方のミカエル少年がびくっと震えてたたずんだのと対照的だ。
 手がそっと差し出され、震えるミカエルの首筋の後ろに優しく触れた。
「ねぇ、君、ちっちゃいね。何歳になるの?」
「じゅう、ごさい」
「うそ。十歳ぐらいだと思ったよ。でもあたしの方がいっこ年上だ。十六だもん」
「うん……」
 おずおずとミカエルの両手が黒鶴の腰元に回った。
「綺麗な栗色の毛。ねぇ、キスしよっか」
「え……ぁぅ」
 黒鶴が腰をかがめて唇を奪った。ちぅちぅと唇をしゃぶる音がする。
 ミカエルは控えめに唇を動かすだけで勘弁してもらおうとしたが黒鶴にその気は無いらしい。舌先が滑り込んできて口を上下に開かすとそのままむさぼるように口中を責める。歯ぐきの表も裏もていねいになぞられて感じそうになり、あわてて舌で押し返そうとすると今度はベロが吸い込まれて相手の歯で優しくホールドされて、舌先が相手の舌になぶられる。そうして返す力で再び自身の口の中が深く激しく蹂躙されると性感が膨れてたまらなくなった。
「きゃっ」
「はぅ……、ぅぅ……」
 つい突き飛ばしてしまった。ミカエルは自身の耳まで真っ赤に染まって肌も薄桜色にいろづいていた。黒鶴はかすかに泣きそうな目をしたが、すぐさまにらむ目つきになった。

「あたしの事、嫌いなの?」
「ご、ごめんなさい……そういうわけじゃ」
「もういい。壊してあげる」
「え、そんな、まって」
 黒鶴はがっしと両手を掴むと一回り小さい少年を力づくで裏返しにした。そのままはがいじめにすると少年ごと後ろに倒れ込む。やや大きめな胸がクッションのようになりミカエルの頭を受け止めた。脚がじたばたしないよう自分の脚を絡ませて、半回転してから固定する。動物が後ろからのしかかられて交尾をする体勢だ。体重が負けているのか全然返せる気配が無い。
 と、わずかに拘束が緩くなったので抜けようとしたが
「はうっ!!!」
「逃がさないよ」
 下半身に強力なしびれが走った。痛いような、窮屈なような、どうとも言えない感触である。素早く動いて状況を脱出できないほどに脳みそが焼かれた。
「一本だけどキツいね」
「そんなっ! 指を入れるなんて」
「おっと、暴れようなんて思わないでね。……こうなっちゃうから」
「ああああああああ!!!」
 黒鶴の指が肛門の中でうねうね動いた。たまらない激痛と異物感に歯を食いしばらせると次第に刺激が弱まってきた。
 今、黒鶴はミカエルを四つん這いにさせ、右手を肛門の方に、左手で髪の毛をつかんで彼のすぐ横側に正座していた。浴衣を荒々しく脱がせると、さらに体を密着させる。ミカエルの背には彼女の乳房が乗ったがその感触を感じ取るヒマはない。

「ねぇ、お姉さんのいうことをよーく聞いてほしいの」
「うぅー、痛いよぅ、苦しいよぅ……」
「そうしないと、また痛ーくしちゃうから」
「ひぅっ、お願いだから、や、やめてぇ……」

 黒鶴は背筋がゾクッとするのを止められなかった。思わずよだれも垂れそうになる。目の前の小さく華奢な男の子は震えた目をしておびえきっている。少女のようですらあるその小柄な体躯。あどけない純真な顔つき。くりくりした目に柔らかな流線をえがく栗色の毛。彼女の属する黒踏宗には絶対にいないタイプの男の子。
 この小さなダイヤモンドのような芸術品を今から自分がメチャクチャに引き裂いて壊してしまう様子を想像するだけで頬がかっかと上気してきて股間が熱くうるおってくる。彼女は極度のサディストだった。
 黒鶴はミカエルの耳元にごにょごにょと囁き始めた。
「第一問。君、好きな子っているの?」
「い、いないです」
「嘘つかないで!」
「ああああああああ!!!」
「ほら、嘘ついた罰だよ! もっともっと苦しんで!」
「いたあああああああいいいいいい!! いたい! いたい!」
「いるんでしょ?」
「い、います……」
「誰?」
「それは、お姉さんに言っても分かんないと……」
「あの選手の女の子のどっちかじゃないの?」
「えっ」
「ほらまた嘘ついた! お仕置きしてあげる!」
「いたいっ! いたいっ! いたいいいいいいい!」
「あの先鋒の小っちゃなウサギみたいな子?」
「う、う〜ん」
「それとも大将でキリッとした固そうな感じの女?」
「えっ、いや、それはっ」
「ほんと、解りやすいね。君。でさぁ、……あたしの事、どう思う?」
「どうって……」
「好き? 嫌い?」
「別にどっちでも」
「はっきりしない男は嫌いだよ!」
「いいいいいいいいっ!!」
「ねぇ、好き? 嫌い?」
「す、好きです……」
「嘘おっしゃい!」
「いだああああああっ!! いたいっ、いたいよぉっ」
「好き? 嫌い?」
「き……きらい」
「なんだって!?」
「いいぎゃああああああああ!! ああぁぁぁ! あぁああああ!」

「うっく……ひどいよぉ、どうすれば良いのぉ……ううっ、ひぐっ」
 ミカエルの目尻からこぼれた涙を、黒鶴が美味しそうに舐め取った。首をおさえていた左手を髪の毛の間にさしいれると、慈愛に満ちた仕草でなで始め、優しく言い聞かせる口調で話し始めた。
「泣いた顔も最高に可愛いね。気持ち良いんでしょ? 貴方の勃起、もうカチカチじゃない。こんなめちゃくちゃにされて感じちゃうなんて、君もそうとうな変態さんなんだね」
「ちがっ」
「違わないよ。あたしがその気なら君はもう10回ぐらいイっちゃってるんじゃないかな」
「そんな……」
「ねーぇ? あの君たちの大将の女の子、名前なんていうの?」
「君島、みち子さん、だよ……」
「みち子さんよりあたしの事、好き?」
「そ、それは……」
「みち子よりもあたしの事を好きになってくれるんなら、このまま優しく抜いてあげて、負かしてあげる。でもそうじゃないんなら……」
 黒鶴の指先がミカエルの髪をかきわけ耳を露出させると、いっそうボソボソした声を吹き付けるようにささやきだした。
「もっとメチャクチャにしてあたし無しじゃイケない体にしちゃうから……」
「お姉さんの事が」
「黒鶴って呼んで? ミカエル」
「黒鶴の事が、……黒鶴さんの方が、好き、です」
「誰より?」
「みち子さん、より」
「もう一度全部言って?」
「え?」
「”僕はみち子よりも黒鶴の事を愛してます”って」
「ぼ、僕は、みち子よりも黒鶴の事を愛してます」
「もっと大きな声で!」
「僕はっ、みち子よりも黒鶴を愛してますっ!」
「嬉しい!!」
「ぎゃああああああああああああああ!」
「嬉しいからこのまま壊してあげる! 思いっきり変態さんにしてあたしだけのミカエルにするから!」
「話がっ、ちがっ!!」
 黒鶴は空いた方の手をミカエルの柱に伸ばし、こしゅこしゅと大きくしごき始めた。
「ねぇ、ぱぶろふの犬って知ってるかな。ランプの光と一緒に餌を与え続けると、その犬はランプの光だけでよだれがでるの。ミカエルもこのままイッちゃうとお尻を犯されながらじゃないとイケなくなっちゃうね」
「だめっ、いぐっ、いぐぅぅぅぅぅぅぅぅ」
 ミカエルは盛大に精を吐き出した。彼はそのままぐったりと前のめりに倒れ込むと涙とよだれでぐちゃぐちゃの顔でぜぇぜぇ言った。みじめな気持ちと暴力的な快感とが全身をむしばみ、マラソン選手もかくやというほど大粒の汗をかいていた。

 黒鶴も一端体を離したが、熱気が一段落してまた優しく抱きしめようと思ったその時だ。


『黒鶴っ!!』


「え?」
 檄はまたしても大将の雄大からだ。黒鶴がマットについた自身の右膝に生暖かい感触を覚えると、それは白い粘体だった。
「えっ、なにこれ」
 ずるずると這い上るそれを取ろうとしても半液状のそれは離れもしないし止まりもしない。女陰を目指して進んでいるようだ。あきらかにミカエルの『エンジェル』だった。
「ミカエル、取って……!」
「ごめんなさい、黒鶴。それは僕の意思とは関係なしに動いちゃうんだ……」
「あっ……! ふぁぁああああ! いっ、いぅぅぅぅぅ!」
 黒鶴は背をエビ反らせてマットを掻いた。
「早く大人の人からタオで消してもらわないと、ずーっとイキっぱなしで黒鶴おかしくなっちゃう。お願いだから早くギブアップして……」

『勝負、それまで!』

 手をあげたのは黒踏宗の長老だ。
 黒鶴は大人達に運び出され、ミカエルはおぼつかない足取りで自陣に戻る。さゆりは目線を真横にずらし、みち子は「ご苦労だった」と言ったが声にはケンが含まれていた。
 これで2勝0敗なのだが、名目は「研鑽の成果の発表」なので大将戦も一応行う。これはこれで寄付金の分配に関わる大事な勝負だ。



「雄大、みんながやられて悔しいだろうが、危なくなったらいつでも止めるぞ」
「長老。……まぁ、なんとかなるさ」

「きみ子、趨勢(すうせい)はすでに私たちにあります。とどめを刺していらっしゃい」
「はいっ、妙子お姉様。私は光翼会若年部の代表として恥じない試合をしてまいります!」


 何回も書いてればそのうち上手くなっていくかもしれないし、そうじゃないかもしれないし……。
 いつまでもヘタだったら、それはそれで「こんなのでも出しゃばれるんだから、俺だって!」と新規参入の方が増えてくれたら、それはそれで書いた甲斐があるのかなー。

 コメントの横の■■■ みたいなバーが満タンだと、「書いて良かった−。むくわれたー」感があるので、勇気を出してポチリしてくれた皆様、ほんとうにありがとうございます。嬉しいです。

[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]