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光の宗教と闇の宗教

 ルポライターの男が案内された扉をくぐると一本の廊下が伸びていた。
「これがわたくしどもの練習場ですわ」
 先導して歩く女性のヒップがゆさゆさ揺れる。妙齢の婦人の豊満な肉付きは、白いチャイナドレス風の着物を内からこんもり押し上げて、着物にくっきりと陰影をきざむ。

 つるつるとした廊下は白く、左右にはいくつものドアと大張りのガラスがあって、それぞれの部屋をのぞけるようになっていた。
「ただいま乱取稽古の最中ですのよ」
「ほぉー……これが乱取りですか」
 ガラスの中では一対ずつの男女が清潔な夜具の上で絡み合っていた。
「わたしたち、セックスで勝負いたしますの」


 ここは、宗教法人「光翼教団」の教会であった。


「あ、あれはっ!?」
「あぁ、あれですか。わたくしどもは『エンジェル』と呼んでおりますが……そうですね、簡単に申し上げますと、西洋由来の降霊術と東洋仙術による肉体のタオ化によって体の一部に天使の力を乗り移らせる技術ですわ」
 ライターの男が覗いたガラスの向こう側では、まるで昆虫の脱皮のように、少女の背後からもう一人の少女が滑り出てくる光景があった。
「あの娘の『エンジェル』は、分け身、ですわね。体のサイズを半分にすれば2人、3分の1にすれば3人になれますの」
 見る間にガラスの向こうの男は5人もの小娘にむらがられていた。股間を舐める少女を払えば耳の穴を舐められ、それを払えば脇腹や足の裏をこしょこしょとくすぐられて、ひるんだ隙に尻や股間に女が張り付いてくる。敏感な場所をちろちろと責められるうちに男の抵抗は弱々しくなり、ついには3人がかりのフェラチオを受けて盛大に白濁を吹き上げた。

「こんなものが、全員に……?」
「くすっ……いいえ、まさか。まず『エンジェル』は若い肉体にのみ宿ります。そして、理由は不明なのですが、『女』の体に憑く事が多いようなのです」
「ほほぉ、もっとその……『エンジェル』、を、見せてもらってもよろしいですか?」
「ええ、もちろん。あの娘の分身のように派手なものばかりではございませんが」
 婦人は、つい、と隣のブースを指さして見せた。豊かなボリュームの黒髪の女が痩せぎすの男を組み敷いていた。男の顔には苦悶の混じったような、色濃い恍惚が浮かんでいた。
「彼女の『エンジェル』は、髪に宿ってますのよ」
「髪、ですか。髪の毛が一体どうなっているんです?」
「ほほ、あまり込み入った事は企業秘密ですわ。ほら、あの子はウチの珍しい男の『エンジェル』、ミカエル君でしてよ」
 指さしたのはその対面の2個隣となったブースだった。ライターの男がガラスに駆け寄る。

『んんっ……、ふっ……』

 防音がしっかりしているためか、かすかにしか聞こえてこないが女のあえぎ声だ。こちらは男の側がアドバンテージを取ってるらしい。
 そして彼は婦人から、ミカエルの驚くべきエンジェル能力についての説明を受けた。


 一通り見学を終え、二人はロビーのテーブルで向かい合って紅茶を飲んだ。
「いやぁ、今日はありがとうございました。大変面白い記事が書けそうですよ」
「へぇえ、それは良かった。ウチは『黒踊宗』と比べてどうだったかしら?」
「え……」
 椅子から立ち上がると、白いチャイナドレスの裾をゆらして、彼女は男に近づいた。
「あら、バレないとでも思ったの? 貴方、昨日は我が『光翼教団』の対立組織である『黒踊宗』にも取材をかけていらっしたでしょう?」
「あの、いえ、それは……」
「うちと『黒踏宗』が来週に性技による果たし合い……『仙闘の儀』っていうんだけど……それを行う事は知ってるわよね?」
「えっと、だから、その、――んぐっ」
 婦人のしなやかな手が男の後頭部に回り込み、ばふっ、とドレスの生地越しに男の顔をゴムマリのような胸元に押しつけた。

 ぽよんぽよんと弾力の中でもみくちゃにされ、魂ごともみしだかれるような感触にうっとりしてると頭の上から子守歌のような優しい声が降ってきた。
「わたくしのエンジェルはおっぱいですの。こうやって男をおっぱいでぱふぱふすれば、どのような屈強の男もわたくしの可愛い赤ん坊に退行いたしますわ」
 後頭部はすでに婦人の白い指先にサワサワとくしけずられている。
「むがっ……、むっ……」
 男はなんとか抜けだそうとするが、両手でしっかりと谷間の中に固定されて動けない。もがけばもがくほど甘い弾力に顔中をぽよぽよされて、ますます脱力感が増していくのみだ。
「おほほほほほほ、観念なさい。もう貴方はわたくしのシモベよ。絶対に逃げられないわ」
「んんーっ……、んーっ……」
 陰茎が勃起しておさまらない一方で、意識は、寝足りない朝の二度寝のごとく、抗いがたい脱力感と心地よさに包みこまれて深い闇へと落ちていく。



 練習場から戻ってきた信徒たちのうち若干名が、第二朗読室へと入ってきた。
「はーぁっ、疲れたぁ。あ、妙子姉様ー、その人、新しい『赤ちゃん』ですかぁ?」
「ええ、そうよ……『この子』ったらね、黒踏宗のお寺の方から来たらしいのよ。つばき? 試合にでるみんなを呼んできてくれないかしら。この子から向こうの様子をいろいろ教えてもらいましょ?」
「はーい、わっかりましたぁ」
 扉が閉まると再び二人きりになる。

 元・ライターだった男は口元に巨大な豊乳をくわえさせられ、やや無理矢理ぎみにミルクを注ぎ込まれていた。衣服は全部はぎ取られ、飲み下すたびにしこしことあそこをリズミカルにしごかれているようだ。
「気持ちいいでしょう。もっと味わっていたいでしょう。わたしの言うことを聞いてなさい。わたしの言うことだけを聞いていればもっともっと気持ちよくしてあげるから……」
 頭を優雅な手つきで撫でられて、男は一言
「おぎゃあ」
と鳴いた。このまま教会の都合の良いように『しつけ』を施されて利用される運命なのだ。


 元ライターの男は皆の前で、己の見てきた妖寺『黒踏宗』に関する全ての情報を赤裸々に語り継ぎ、皆は来週の試合に向けての対策を協議した。


 妙子、と呼ばれたこの女性は、自らの可愛い弟子たちが黒踏宗の憎っくきガキ共をけちょんけちょんに叩きのめす様を夢想して喜びに身を震わせた。大きな胸がそれにあわせてぶるっと揺れた。
 厨二病っぽい超能力バトルと、エッチが好みのバランスでブレンドされてる作品を見つけられずに悶々としていたところ、一念発起して自分で作ってみようと思い立ちました。

 作者名は、辞書をランダムに開いてつけました。草紙、相似、掃除、曹司、と、使えない単語ばかりが続いて、ある程度妥協した結果がこれです。

 書き方の指南書などを沢山読んで勉強してみましたが、なにぶん素人の下手くそ芸なので、あまりに手厳しいコメント等は控え目にしてくださると、とっても嬉しいです。

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