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とあるハンターのおっぱい敗北記:第十九章

「う〜ん、お姉ちゃん前よりずっと力がついているね」

「それはそうよ〜。だって、最前線で精を吸い続けたんだもの」

 王国が…王国が滅ぼされたのか?いや、そんな訳がない!
王国の淫魔対策は万全だった筈!これまでなんども淫魔に襲撃されながらも
粘り強く国土を発展させ、帝国に匹敵する大国だったんだ!

 でも、現にこうして帝国は滅びた。つまり、王国も?
いや!国レベルで見れば僕以上に強いハンターだって沢山いたんだ。
英雄として名高いバトルファッカーも数人居る。淫魔の国と
戦争になってもそう簡単には…戦争?

「だよね〜。でも危ない場面はなかった?ボク結構心配していたんだよ」

「そうねえ…それなりに危険な時もあったわねえ。腕利きのハンターと
戦った事も、何回かあったし…でも全体的に見れば順調だったし、戦死者も
予定より少なくて済んだわ。向こうは淫魔が軍隊として攻めてくるなんて
全く考えていなかったみたいで、常にこっちが先手を取れたのよ。ふふっ」

 そうだ…そうだった。僕は淫魔が国家レベルの侵略をしてくるなんて
想像した事もなかった。王国の誰もがそうだっただろう。しかも帝国との
仲が良くなかったのも不利に働いたのは間違いない。

 だから情報面で不利にされて…そもそもハンターは軍人ではないから
大規模な組織として運用するには不都合で…ああ、そんな!

 何か、何か無いのか人間側に有利な材料は!…ダメだ!淫魔側に
有利な材料ばっかりだ!補給の難易度!戦える者と戦えない者の比率!
人間が勝っても敵の数を減らせるだけだが、淫魔は勝てば勝つ程
質でも数でも有利になると言う残酷な事実!考えれば考える程
王国がどれだけ圧倒的に不利だったか理解してしまう…!

 なにより…なによりネピアさんがここに居ると言う事は…
もし戦争そのものはまだ終わっていなくても、既に大局はもう
決まっていて覆らなくなっていると言う事、なの、か…?

「ネピ、アさん」

「えっ!?ど、どうしたの坊や!?」

「お兄ちゃん!?お顔真っ青だよ!」

「王国、は滅んだん、ですか…?」

「え?ええ…王家に正式に無条件降伏をさせたわ」

 無条件降伏。

 つまり、占領されたと言う事だ。

 この帝国と同じく、人間の国ではなく淫魔の国になってしまったんだ。

「あ、あ、あああ…!」

「坊や、どうしたの!?返事をして!」

「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」

 色んな顔が、声が、場所が、季節が目の前を流れていく。

 僕を育ててくれた孤児院の院長さん。せっかく結ばれた奥さんが
淫魔化されて子供が作れる前に引き離されたから、孤児院を始めたらしい。
院長さんは決して語らなかったそれを偶然知った時、僕は淫魔ハンターに
なろうと決心したんだ。院長さんみたいに悲しむ人を減らしたくて。

 ハンター育成学校で出会った同級生、先輩、後輩、先生。色んな人が居た。
落ちこぼれからエリート、努力家から怠け者、良い奴とイヤな奴、
好きな先生と嫌いな先生。前者だけでなく後者も僕の大切な一部に
なっていたと気付いたのは卒業式の次の日だった。

 ハンター機関で出会った同業者や上官。ここでも学校と同様色んな人と
出会ったけど、学校とは違ってここは現実だった。つい先日仲良くなった
相手が任務から帰ってこなかったり、英雄と呼ばれる人は皆大なり小なり
傷ついていたり、悲しみを忘れて仕事に没頭し続けた結果事務的な態度しか
取れなくなったスタッフが居たり…それでも皆、戦い続けていたんだ。

 ハンターとして接した一般人達。大抵の場合は感謝されたけど、
中には理不尽な文句を言ったり何故もっと早く来てくれなかったと
泣き叫んだりする人も居た。その度に喜ばされたり落ち込んだりした。
彼らの存在、彼らの生き様こそが僕たちハンターの存在意義であり、
終わる事のない戦いの中でまだ生きているんだと感じさせてくれた。

 僕は、その全てを裏切ったんだ。

「どういう事なのラクタ!?貴女、この一ヶ月何をしていたのよ!」

「ボクだって分かんないよ!抵抗したのなんて最初だけだったもん!
その後はずっとラヴラヴでお兄ちゃんも幸せそうだったもん!」

「抵抗…?坊やったら、貴女に抵抗しようとしたの?」

 母乳以外飲めなくなった?だからどうした。飢え死に覚悟で
逃げ出せば命と引き換えに情報を持って帰れたかもしれない。
あるいは極端に空腹になれば味をどれだけ酷く感じても食べ物や
水を無理やり摂取する事は出来たかも知れない。

 そもそもネピアさんに負けていなければこんな事にはなっていなかった。
罠にかけられてもそれを切り抜ける術はいくらでもあった筈。
特に母乳を飲まされたと気付いた時点で一目散に逃げていれば良かったのに。
それ以前に空腹に負けず、怪しいから立ち去っていれば…!

「う、うん。最初だけだよ?最初の日だけ、物凄く苦しそうで悲しそうな
ままボクをイかせようとしたの。でもその後メロメロにした筈なのに!」

「そう…と言う事は…ううん…多分…」

「お姉ちゃん?何か分かったの?」

「ええ。ごめんなさいラクタ。貴女の不手際じゃなくて私のミスだったわ。
ううん、それも違うかも。坊やが本当に英雄の卵と言って良い程
将来有望なハンターだったと言う事かしら…私もまだまだね」

「え?何を言っているのお姉ちゃん?それより早くお兄ちゃんを
助けないと!そうだ、おっぱい催眠!あれ使ってあげてよ!」

 でもそれは本当だろうか?ラクタちゃんから逃げ出すなり
ネピアさんの罠を切り抜けたりしていても、持ち帰った情報で何か
変わっていたんだろうか?既に帝国は完全に落ちていただろうし、
淫魔側の準備は万端。万が一こっちが先手を打てたとしても、
さっき嫌になる程思いついた淫魔側のアドバンテージは消えない。

 そう考えると僕が後悔するのはナンセンスに思えてくる。
客観的に見て、僕一人がどう足掻いても精々王国が屈するまでの時間を
少し引き伸ばせた程度じゃないだろうか?だったら全力を尽くして
いなかったとかもっとやれる事があったとか考えても無意味…

 こう考えている事そのものが僕が国を裏切った証拠じゃないか。

 今の僕を見たらハンター仲間たちはなんて言うだろう?院長さんは?
王国が生存の為の戦いに挑んでいる間、僕はこの一ヶ月何を…?

 ラクタちゃんに甘えていた。贅沢な生活で性欲に溺れていた。

「落ち着いて、ラクタ。こういう非常時こそ対応を間違うと取り返しの
付かない事になるの。特に催眠術なんて、相手の合意無しにかけたら
心を壊してしまうかも知れないのよ?だからそれは最後の手段ね」

「そ、そうなの?じゃあどうしたら…お姉ちゃん、お兄ちゃんが!」

「あ…」

 ナニガインマハンターダ。

「うぁあああああああああああああああああああああ!!!」

 頭が!頭が割れる!胸が張り裂ける!これは吐き気?何かを
吐き出したいのに何も出てこない!喉が焼ける!目の奥が燃える!
だけど涙が流れてこない!何かに背中を刺されている!

 なんでだ!どうしてこんな事に!誰だ!誰のせいなんだ!

 当然そこの二人のせいに決まっている。

「お、お兄ちゃん、どうしちゃったの?そんな嫌な目で見ないで…
お願い!お願いだから元の優しいお兄ちゃんに戻ってよぉ!」

「…そう。やっぱり坊やはまだハンターの坊やに苦しめられていたのね。
でもね坊や、もう私たちを憎もうとしたってムリよ…?」

 この二人が僕を誘惑して、捕まえて、幽閉したからこんな事に
なったんだ。この二人がいなければ、僕はこんな事になっていなかった。

 何もかもネピアさんとラクタちゃんのせいだ…やめろ!
なんでそんな親しみを込めた呼称になっているんだ!あの二人は淫魔だ!
名前なんか必要ない!あの二人は…あの二人は…!

 ネピアさんとラクタちゃんは悪くない。

「えっ?お兄ちゃんボク達を嫌いになろうとしていたの!?」

「そうね。多分、ハンターの使命を思い出せとか、こんな事になった
原因の二人を好きになったりするなとか、そんな事ばっかり考えて
自分を苦しめちゃっているのよ…ああ、なんて労しいのかしら…」

 僕を捕らえたのがたまたまこの二人だっただけだ。僕の弱さは僕が悪い。
自分の弱さを他者に押し付けようとする者が弱いと言わずに何と言う?
しかもこう考えられるのは僕が二人に魅了されきっているからだ。
僕はこの二人がいないと論理的に考える事すらできないんだ。
愛する女性二人に罪を被せようとする男。それが僕。

「た…たすけて…」

「!!…もう良いよ、もうこんなに苦しんでいるお兄ちゃん見たくない!
お姉ちゃん、どうすればいいの?教えて!なんでもするから!」

「…私も確実に上手く行く自信はないけど、きっとこうするのが一番ね…
ラクタ、坊やの左側に座りなさい。私は右側に行くわ」

 頭がグラグラする。視界が定まらない。何か聞こえてくるが理解出来ない。

「うん!…で、どうしたらいいの?あ、分かった!ダブルぱふぱふだね!」

「そうよ。乱暴にしちゃだめよ。壊れ物を包み込むみたいにするの。
そして坊やが落ち着くまでじっとしているのよ?さあ、いっせーのせよ」

「いっせーのーせっ!」

 ぱふうぅん。
 ぱふふふっ。

 あ…おっぱい…

「坊や…ゆっくりと力を抜いて…ゆっくり、ゆっくりよ…」

「お兄ちゃん、聞こえる?お兄ちゃん?」

 右からネピアさんの柔らかく抱きこんでくれるしっとりとしたおっぱい。
左からラクタちゃんの弾ける様に抱きしめてくれる元気一杯なおっぱい。
下はおっぱいの曲線が続いている。上からは光と二人の声が降ってくる…

「あ!呼吸が落ち着いてきたよ、お姉ちゃん」

「ええ。しばらく休めば顔色も元に戻るわよ…きっと」

 暖かくて柔らかくて良い匂い。乳魔だけが作れる母性の楽園。
ああ、嫌な物が全部消えていく。痛かった熱が溶けて離れていく。

「ネピアさん…ラクタちゃん…」

「いいのよ。まだ何も言わなくて良いの。ね?」

「そっか…お兄ちゃん、こんなに辛かったんだね…」

 二人に撫でられている。ネピアさんには頭を、ラクタちゃんには背中を。
二人がかりで安心させられて、このまま僕が消えてなくなっちゃいそう。

「良かったあ。お姉ちゃん、お兄ちゃんが元に戻っていってるよ!」

「ええ、本当に良かった…対応を間違えていたら坊やはひょっとしたら…」

「ダメだよお姉ちゃんその先は!さっきもお兄ちゃんのショックを
予想しないで言っちゃったでしょ!だからこうなったんだよ」

「あ…そ、そうね。私ったらまたついうっかり…」

 ああ、おっぱいが四つも。それもただのおっぱいじゃない、好きで好きで
堪らないネピアさんとラクタちゃんのおっぱいだ。さっき僕はこの
おっぱいに助けを求めていたんだ…

 ネピアさんのゾクゾクする程だだ甘くて逆らえない愛に酔わされる。

 ラクタちゃんのドキドキさせる真っ直ぐすぎる愛が染み込んでくる。

 二人のおっぱいから暖かい何かが流れ込んできて、渦を巻いて、
苦しみと痛みを押し流していく…ああ、もう何だか…

 ぴゅっ。びゅるっ。どぴゅっ。

「よしよし…もう何も怖くないからね…私たちが一緒にいるから…」

「苦しんじゃダメだよ。お兄ちゃんは幸せじゃないといけないの」

 ああ、気持ち良い。幸せだ。二人とも好きで好きで堪らない。
乳魔だといくら寛大すぎてだだ甘すぎる性格にしてもOKだから有難いです。
他の淫魔だと中々こうはいきません。

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