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ギロチン少女マジカル☆ギヨたん その8

「――拙いな」
 窓越しに夜空を見上げて、銀髪の女性は物憂げに呟く。
 雨が降っていた。
 いきなりの豪雨である。
 地面を間断なく叩く雨音は家の壁を貫いて、激しく人の鼓膜を叩いた。目に見えぬ不吉なものの存在を信じてしまいそうになるほどの不気味さで、暴力的な雨脚は掃射された矢が地面で跳ねているような音だった。
 そんな中でも夜空で輝く三日月は空が笑っているようで、魔女イザベラは眉を顰めた。
「嵐の中を、青ざめた馬が闊歩する。騎手は死の御使いで、人は震えてこうべを隠す」魔女は帽子掛けからハットを取って深くかぶった。「そろそろこの隠遁生活も終わりかな。お節介なちびすけもいなくて案外気に入っていたのだけど……」
 珍しく感慨深そうにイザベラは溜息を吐く。
 突然、家の扉が弾かれた。
 蝶番が壊れそうなくらい勢いよく開かれた扉。それにイザベラは驚かなかった。
 イザベラは、玄関の向こう側に向かって微笑む。
「おかえり、三人とも」
 玄関の前には、全身で雨を受けながら人を背負ったレリアの小さな姿があった。

 終章/夢の終わり La fin du reve...

 夢を見ていた。
 なんでこれが夢だとすぐに気づけたのか、それは簡単な話で。
 もうこの世にはいない人がいたから、だからこれは幸せな夢なのだと思ったのだ。
 アンナマリアはぼんやりと目の前にいる男を見ていた。
 口の周りにだらしなく無精髭を生やしている、くたびれた金髪の男だ。服を油で汚した男は、アンナマリアに背中を向けて熱心に仕事をこなしている。
 油を染みこませた布で、刃にこびり付いた血糊を拭っていた。
 娘を愛でるように。恋人を撫でるように。大事な機械を手入れするように。何度も何度も布で断頭台の刃を布で拭く。
 その男がアンナマリアを見ることはない。だってこれは夢で、アンナマリアは劇を見る観客に過ぎないから。
 いや、男はアンナマリアを見ていなかったが、確かにアンナマリアを見ていた。
 ――あれは、わたしだ。
 あの刃は、断頭台はわたしだ、と理解する。そして、自分の手入れをしている男の背中をアンナマリアはよく知っていた。
 男の名前を呼ぼうとして、困惑する。
 例えこれが夢の中だとしても。過去の再現だったとしても。断頭台の自分ではなく、人間になった自分の方に振り向いて欲しかった。自分から自分へと視線を奪い去りたい、矛盾した嫉妬心に身を焦がされた。
 おかしいのはアンナマリアも自覚していたが、それでも気持ちを押しとどめることはできない。できるわけがない。
 自分が殺した男だ。もう二度と会えないことは知っている。その理不尽さにせめて反抗しようと、人の身となって人間に報復しようと決めたのだ。
 想い焦がれていた、二度と会えないその姿。
 だから、自分に目を向けさせなかった。ずっと大事にしてくれたから、こんな姿で生まれることができたと伝えたかった。
 なのに。
「      !」
 声は意味をなさない。
 ああ、そうだ。――私は彼の名前すら知らなかった。
 アンナマリアは背中に駆け寄ろうとした。なのに、どんどんと男の姿は遠くなる。
 真っ白な光の彼方に消えていく男の背中へ、必死になって手を伸ばす。かすれていく男に手は届かない。
 夢から覚めたくない。せめて、せめて、また声だけは、聞かせて欲しいのに。
 男の姿はアンナマリアの視界から薄れていく。
 その間際。男がアンナマリアを振り返った。
 消えゆく姿で、顔すら霞みに隠されている。
「     」
 唇が動いた。
 なんといったのだろう。
 わからない――。
 アンナマリアは夢から覚める。 
 
 イザベラがレリアにタオルを渡し、三人の水気を取って風邪をひかないように暖め、落ち着いたときには既に夜明けが間近となっていた。
 簡単にイザベラが作った暖かいスープをレリアがすする。調理した人間のせいでスープに具はない。味も水よりはマシという程度だったが、冷え切った躯にはそれでも暖かく染みいった。
 毛布を被って両手でカップに入ったスープをレリアが飲んでいると、横のソファに寝かされていたアンナマリアが目を覚ました。
 濡れたドレスを脱がされて裸に毛布をかぶせられた状態のアンナマリアは、頭を抑えながらゆっくりと上半身を起こす。
「ここは……帰ってきたの……?」
「レリアがひとりで運んできたんだよ」
 まだ状況をうまく飲み込めていないアンナマリアに、イザベラが答えた。
 カップの縁から口を離して、レリアは頷く。
「ええ、いきなり、ギヨたんは倒れたんですよ。兵士の首を切り落とした途端に。……びっくりしたんですからね」
「ごめん」
「謝られても困ります」
「……ありがとう」
「それでいいんです」
 レリアが表情を緩めたのを見て、アンナマリアは恥ずかしくなって毛布に顔を埋めた。よくよく考えてみると誰かに対して素直に礼をいったのは初めてだった気がして、所在なくなり胸がむずむずとした。
 落ち着かなくてきょろきょろと辺りを見ていたアンナマリアは、恥ずかしさを誤魔化すためにふたりへ訊ねた。
「ジョゼフは、どうしたの?」
 アンナマリアは夢の中に出てきた男のことを脳裏に浮かべて、云ってから唐突に不安で胸がいっぱいになった。
 もしかして、結局助けることはできなかったのではないだろうか?
 毛布に爪を立てて握り締めるアンナマリアに、イザベラは奥の扉を示した。
「別の部屋で寝ているよ。一番衰弱していたから、ベッドの上さ」
 それを聞いて、アンナマリアは自分自身でも驚くほどに安堵してしまった。胸につっかえていた重りがすとんと落ちて、ほっと息を吐く。
「そう、よかった」
 ジョゼフは助けることができた。そのことにアンナマリアは表情が緩むことを抑えられなかった。
「……だけど」
 と、そこで口を開いたのはレリアだ。
「淫魔の毒気に当てられています」
「毒?」
「前にも云いましたよね、あたしたち淫魔は精力を増進する体液を分泌できるって。でも、それには副作用がありまして……連続して長時間その体液を吸収すると、正常な身体機能を損なってしまうんです。麻薬みたいなものですからね。しかも、ジョゼフくんはそれをたっぷりと躯に取り込んでしまったようで……」
「つまり、どうなってるの?」
「ジョゼフくんは、脳機能に障害を負いました。思考能力がなくなってます。生きてはいても、なにも考えられなくなったんです」
 弛緩していたところを力の限り殴られたような心地だった。
 それでは、まるで――
「生きた、屍……」
 レリアは無言で、スープに口をつける。アンナマリアの言葉を否定する者は誰もいなかった。
「そんな……治らない、の?」
「いや、治るよ」
 愕然としているアンナマリアの言葉をイザベラが平然と否定した。
「な、治るの?」
「うん。ふつうなら治らないんだけどね。そこはほら、この偉大な魔法使いの力にかかればなんとでもなるよ」
 いつもなら悪態のひとつでも突くところだが、今はアンナマリアの目には本当にイザベラが偉大な人物のように映った。
「ただ、それにはひとつ条件があるんですよ」
 レリアが云いにくそうに言葉を濁したので、またもやアンナマリアは不安になる。それもまた、なにか副作用でもあるのだろうか。
「なに、簡単なことじゃないか。ジョゼフと性行して淫魔の毒がたっぷりの精液を搾るだけだ」
「そ、そんな方法で?」
「そんな方法とは心外な。いいかい、精液というモノは欲望の原液であり塊なのだから、そこに邪なものを関連づけて一緒に引きづり出すのは実に正当な方法なのだよ。私の術のお陰でそうやって毒気の摘出ができるのだから、むしろ称讃してほしいくらいだね」
 方法が意外だったので驚いたものの、悪い方向の話ではなかったのでアンナマリアは胸をなで下ろした。それでも、レリアの表情は依然としてまだ暗い。
 アンナマリアがその理由を訊ねようとすると、イザベラが先に口を開いた。
「で、問題は誰がジョゼフの精を搾るかだ」
「……あ」
 ようやく、気まずい雰囲気が流れているのかがわかった。
 アンナマリアは口をつぐんでしまう。
 誰がジョゼフを搾りとればいいのか。別に、アンナマリア以外でもできることだ。イザベラはなんでも出来そうなものだから性技も余裕であろうし、レリアに至っては淫魔だ。どちらも完璧に仕事をこなしてみせるに違いない。
 けれど、とアンナマリアば憮然としてしまう。ジョゼフが自分以外の女に搾精されているのを想像するのは、なんというか、気分が悪かった。
 自分以外がするのは嫌なのに、だからといって志願するのは躊躇われる。それもこれも牢獄でレリアに告白されたことを思い出してしまうからだ。
 レリアはジョゼフに好意を持っている。一方アンナマリアといえば、兄の面影をジョゼフに見ていないといえば嘘になる。訊ねられれば、それ以外の感情もあると断言するが、代換のように見てしまっている節がないわけではなかった。
 その後ろめたさのせいで声をあげることができない。
 アンナマリアが黙っていると、案の定レリアが沈黙を破った。
「あたしは辞退します」
「え!?」
 びっくりして、アンナマリアは思わず声をあげていた。
「ちょっとギヨたん、声が大きいですよ!」
「ど、どうして!? だって、レリアは……」
「忘れたんですか、あたしは淫魔ですよ」
 レリアは寂しげに笑った。
「淫魔の毒気を抜かなきゃいけないのに、また淫魔の体液をすり込んじゃったら何があるかわからないじゃないですか……。だから、あたしは駄目なんですよ」
 だから、と云ってレリアはアンナマリアの方を見た。
「ギヨたんにお願いします。大変不本意ですけど」
「あれ、私でもいいんだよ?」
「先生はもっと駄目です。色々と駄目です。駄目駄目です」
「やれやれ、手厳しい助手だ」
 腕を組んで肩を竦めるイザベラには目もくれず、アンナマリアはレリアのことを注視していた。
「わたしで、いいの?」
「もうっ、いいって云ってるじゃないですか。あたしの気が変わらないうちにとっとと行ってきちゃってくださいよ!」
「……わかった」
 アンナマリアは頷いて、毛布を引きずりながら立ち上がった。
 そうして、廊下の方へと出て行き扉が閉まると、レリアは糸が切れたように躯から力を抜いてソファに寝転んだ。
「うー、もう、ホントに……」
 毛布を抱きかかえて、もどかしそうに足をばたばたとさせた。そんなレリアをイザベラは笑った。
「いやあ、難儀だねえ。珍しくいじらしくて微笑ましいよ、レリア」
「茶化さないでくださいよぉ……。これでも結構本気で悔しがってるんですから」
「ふむ、そうか。ではこういう趣向はどうだい?」
「はい?」
 と、イザベラが何事かを耳打ちすると、レリアの表情がみるみると驚きに変わっていく。
 そうして、イザベラは悪戯っぽく笑った。

 アンナマリアは人の気配のする部屋の前に立つと、一度息を大きく吸い込んでから扉を開いた。
 ベッドの上で起き上がっているジョゼフの姿が目に入り、少しだけ動きを止めた。
 ジョゼフがアンナマリアを見る。その目には意志の光はない。ただ、音に反応しただけだ。自分がなにをしているのか、自分がなにを見ているのか、そういったことは一切考えられていない。
 雨が地面を叩く音だけが暗い部屋の中で響く。アンナマリアはしばらくジョゼフと目を合わせた後、ベッドの方へと歩き出した。
 雨雲の切れ目から覗く月の灯りがアンナマリアとジョゼフをほのかに照らし出す。
 ベッドの前まで来ると、アンナマリアは自身の躯を包む毛布をするりと床に落とした。
 少女の細い裸体が白銀色の灯りを受けて、暗闇の中で浮かび上がる。控えめな胸の膨らみからすべすべとして柔らかそうなお腹、そこからへこんだへそに、まだ毛も生えていない秘部。それらすべては隠されることもなく、月明かりを受けて浮かび上がっていた。
 幻想的な姿だった。
 アンナマリアは四つん這いでベッドにあがり、ジョゼフへ抱きつくように身を寄せた。
 何が起こっているのかも理解していない、赤ん坊のような瞳を覗き込む。息がかかるほど近くから目を合わせて、アンナマリアはささやいた。
「今、楽に……気持ちよく、してあげるね」
 急にわき上がってきた嗜虐心のままに唇を奪う。
 アンナマリアは相手をベッドの上に押し倒した。いつの間にか、路地裏で押し倒してたときと同じ嗜虐的な思考がアンナマリアの裡にわき上がっていた。
 いつもなら惨めに喘がせて果てさせてやろう、と思うのに、今はみっともなく虐めてやろうと思っている。似ているようで、それは相反するものだった。
 男を相手にしている淫魔が抱いている感情と同じものだとはまったく自覚しないまま、アンナマリアは衝動に突き動かされるままに相手の舌に自分のものを絡みつかせる。
「んっ……っ……」
 獲物に食らい付く獣のように荒くなった熱い吐息が洩れる。アンナマリアの小さな唇は情熱的に吸い付いて、相手の全身を抱擁するように深く繋がる。
 いったいキスだけでどれくらいの時間繋がっていたのか。長く長く繋がっていたふたりは、アンナマリアが躯を起こしたことでようやく離れた。
 小さな躯で精一杯献身するように、しかしその実相手を虜にする舌技をこなしたアンナマリアの唇はふたりの混じり合った唾液で濡れていて、細い糸が残滓となってお互いの唇を繋いでいた。
 ジョゼフに馬乗りになったアンナマリアは、ついに切れてしまった唾液の糸が名残惜しく、自分の唇を人差し指でなぞる。
 自然とアンナマリアの小さな口元が持ち上がった。
 心臓がドキドキとしていた。胸の中心に火の塊でも現れたのかのように、そこからジンジンと熱が広がっていた。苦しくも、ましてや不快でもない。なにかが物足りない切なさと、全身をほてらせる満足感があった。
 頬が紅潮していることが、アンナマリア自身にもわかる。熱くなっているのが自覚できるくらい、その華奢な肉体は興奮していた。
 頭の中には、相手を自分のものにしたいという欲求で満ちている。アンナマリアは本来なら断頭台であり、道具が担い手を決めるなど本来ならあり得ざることだ。
 いや、道具だからこそ、自分にふさわしい担い手を決めたくもなる。ただ、今まではそれができるような状況でないがために誰もわからなかっただけのこと。
 熱く、強く、深く、抱きしめて――自分だけのものにしたい――。
 アンナマリアは今まで自分が感じたことのない想いで頭がパンクしそうだった。クラクラと揺れる頭では、自分でもおかしいと思えるほどに正常な判断がつかない。なんでこんなことを、と動揺する。けれど、そんな冷静な思考もやがて水に溶けるようにして消えていく。人で例えるなら、アンナマリアはアルコールに酔っているも同然だった。
 ふと、自分のお尻の下で存在を主張するものに気付く。
 ジョゼフの下半身に座り込んでいたアンナマリアは躯をずらすと、相手の股間部分が大きく膨らんでいるのを布越しに見た。
 それでアンナマリアは、自分は直接ここから毒気に染まった精子を搾り取らなければいけないことを思い出した。
 大きく膨らんだペニスを服の上から指でなぞる。亀頭の辺りから根本まで細い指が流れ落ち、ペニスが小刻みに震えた。その素直な反応に、くすりと笑う。
「相変わらず、こっちは素直なままなんだね……男の人って」
 服の上から肉棒を握って、上下に扱く。アンナマリアの手の動きで雁首を行ったり来たりする皮と亀頭全体を撫でる布の感触にペニスはますます硬さを増した。
「ふふ……じゃあ、一度このまま出しちゃえ」
 自分の手で為す術なく感じてしまうペニスが面白くて、アンナマリアは嗜虐心に従って手の動きを早める。直接陰茎に触れられたわけでもなく、服を脱がされることもなく続けられる手淫。布も合わせて与えられる快楽はその躯にとって未知のもので、意志を失ったジョゼフが我慢できるわけもない。
 白い肩を何度も揺らしながらパン生地でもこねるように両手でペニスを扱き上げるアンナマリアの動きに、性感は瞬く間に高められていき。
 ぐぎゅっ、と強く掴まれたままに雁首をなで上げられたとき、ジョゼフは限界を迎えた。
 どぷんっ、どぷんっ、と内側から何度もノックされてズボンが膨れあがる。熱く滾った精液が布に染みこんでいき、ペニスを握ったままだったアンナマリアの掌にも熱い精の感触が伝わってきた。
「まず一回目……」
 まるでゲームの回数を数えるような気軽な口調ながら、その顔は夜空に浮かぶ月のように妖しく笑っていた。
「それじゃあ、二回目……行こうか?」
 アンナマリアがジョゼフのズボンを下げる。すると、自分の出した白濁とした液体でたっぷりと濡れたペニスが姿を現した。大きさも硬さも衰えずに、今にもまた爆発しそうなくらいパンパンに膨らんだ陰茎をアンナマリアは優しく握り込む。熱く、粘っこい精液の感触。指に絡みつく感触を不快とは思わず逆に楽しみながら、ペニスに精液を塗り込むように指を動かす。
 精液を潤滑液代わりにして別々の生き物のようにペニスを這い回る繊細な指先の動きに、達したばかりにも関わらずペニスは射精感を高め出した。
 人差し指の腹が尿道口を広げながら撫でる。敏感になっている亀頭の上を指が滑っていく度にペニスは激しく脈打った。
 その反応と砂糖のデコレーションでもされたようにたっぷりの精液で濡れた亀頭を見て、アンナマリアは唇を舌で舐める。そして、自身の黒い長髪を手で背中に流しながら亀頭を口で呑み込んだ。
 口内に広がる苦々しい精液の味と独特の鼻をつく臭いに、アンナマリアは目を陶然と細める。見た目の錯覚通り、それが砂糖菓子の飾りであるとでも云うように頬をすぼめながらペニスに付着した精液を舐めた。
「んっ、ちゅっ、……ん、ふぅうう、じゅ……んふっ」
 根本まで呑み込みながら、一回目にたっぷりと吐き出された精液を呑み込む。口を亀頭の辺りまで引くと今度は陰茎を手で責めながら、亀頭を執拗になめ回す。
 いつの間にか、ペニスを濡らすのは精液ではなくアンナマリアの唾液になっていた。ジョゼフの体温も熱くなり、息はアンナマリアよりもずっと激しくなる。
 アンナマリアの口淫は搾り取るためだけの動きではなかった。もちろん、それもあるが、なによりも相手に気持ちよくなってもらおうという感情が行為を通して現れていた。
 アンナマリアは自分の持っている技量の限りを込めて口の中を蠢かせる。幾多の男たちを絶頂させてきた少女が心から行為に没頭しているのだから、それに男が搾り取られないわけもなく。
 幼い少女の口から強制的に与えられる快楽の前に、ジョゼフの躯はまたもや屈服した。
 バネで弾かれたように腰を浮かせてアンナマリアの喉を突き、ペニスは精嚢に溜まった欲望を噴出した。
「んっ!?」
 最初、アンナマリアは驚いて目を見開いたものの、すぐに眼を細める。妖艶な目つきのままに喉を鳴らした。
 どくっ、どくっ、どくっ……。
「んくっ、んくっ……はあ……っ」
 一分は続いただろうか。長い射精が終わると、アンナマリアはペニスを口から抜いて満足気な吐息を吐いた。
 この二回でジョゼフが射精した精子は、既に精嚢に溜まる量を易々と超過していた。それもこれも、淫魔の体液による精力増進効果の賜である。射精を続ければ、やがて精子過剰生産と体力の喪失による死が待っている。もっとも、それ以前にショック死してしまう場合もあるが――その毒気に当てられたジョゼフは、体液に触れていなくとも同等の効果が躯に現れているのだ。
 精力を絶やさぬ力により、ペニスは未だに衰えを知らない。高位淫魔による体液の力と躯ひとつで男たちを搾り殺してきたアンナマリアの肉体があわされば、ペニスが萎えることすら許されないのは当然の結果だった。
 それに、今やアンナマリアは躯に頼るだけではなくなっていた。
「淫魔の力ってすごいんだ……ここ、こんなにしちゃって。それとも、そんなに気持ちよかったの?」
 クスクスと笑いながら囁く。思考能力を失ってしまっているはずのジョゼフの躯が羞恥に悶えるように身じろいだ。言葉に反応したのか、それとも単なる偶然なのか。定かではないが、アンナマリアは面白くなってペニスを指で弾いた。
「次はどんな風にしてあげようかな……、男の人なんだから。きっと、変態的なこと、考えてるんだよね?」
 ペニスを刺激されて背筋を震わせているジョゼフを尻目に、アンナマリアはどうやって気持ちよくしてあげようかと考えを巡らせていた。
「そうだ……。自分からしたことはないけど、こういうのは、どう?」
 云うなり、アンナマリアは自分の胸を両手で撫でた。ふっくらと控えめに膨れた胸にたっぷりと精液と唾液の混合液を塗りつけて、ジョゼフの腰に腕を回して抱きつく。そうして、てらてらと光る胸をペニスに押しつけた。
 胸は成長途上の未成熟なものということもあり、手で包み隠せるほどの慎ましやかな山でしかなかった。そんな乳房でも、弾力がないわけではない。小さいながらもペニスに押しつけられた胸は柔らかい弾力を敏感な神経に伝えていた。
「ん……おっきくないから挟めない、けど……こういうの、好きな人もいるんでしょう?」
 少し自分の胸の大きさを気にしながらも、アンナマリアは躯をゆっくりと動かしてペニスを乳房で撫でる。
 豊満な胸で挟んだときのような柔らかい胸の圧力はない。
 代わりに、未熟な胸を擦りつけるというのはそれとはまた別の快感をジョゼフに与えていた。
 アンナマリアの胸は小さいながらも非常に柔らかく、ペニスが沈み込む。さらに、雁首を何度も刺激する乳首。アンナマリアが息を乱しながら躯を揺する度に擦りつけられる肌は高級な布で撫でられているようで、ぬるぬると少女の胸元を往復するペニスに伝わる感覚に、ジョゼフの躯は何度も腰を小刻みに震えさせた。
「やっぱり、こういうの好きなんだ。ん、でも、そんなに動くと巧く捕まえてられない……」
 辛うじてある谷間から滑って外れそうになるペニスを押しとどめようと、アンナマリアはジョゼフの腰に回した腕に力を込める。きつく抱きついてなんとか固定できたものの、アンナマリアの胸では精液を塗りつけすぎたせいもあり、いつ滑って溢れ出るかわかったものではなかった。
「う……どうして、ちゃんと止められないの……」
 別にアンナマリアは人間体の胸にコンプレックスを抱いていたわけではないのだが、こうして乳房による責めで苦戦してしまうといたく自尊心を傷つけられた。さっきまでの余裕がわずかに崩れ、声は焦りで上擦ってしまう。
「もう、駄目ですよー、ギヨたん。力を入れすぎたら逆にこぼれちゃいますよ」
「え?」
 唐突なレリアの忠告に、アンナマリアは目を丸くした。声のした隣を見ると、先程までまったく気配も感じなかったレリアの姿があった。月明かりに照らされたレリアはどうしてかわずかに透けてみえるものの、ゆらゆらと燃える焔色のショートヘアは見間違えようがなかった。
「え、え、なんで?」
 いくら行為に夢中だったとはいえ、背後で扉が開く音くらい聞き逃すわけはない。そんな音がした覚えはなかったのにレリアが隣にいて、アンナマリアは驚いた。
「ほらほら、それよりもギヨたんは向かい側にいってください。やっぱり独り占めしようだなんて許しませんよ、あたしにだってご褒美はあってしかるべきなんです。はい」
 ひとりで納得しているレリアに急かされながら肩を押され、アンナマリアは股の間から無理矢理退けられた。服をはだけ出すレリアを見て、アンナマリアは慌てた。
「ちょっと待って。どうしてここにいるの!? だって……」
 自分じゃなにがあるかわからないからって、と続ける前に別の声がアンナマリアの問いに答えた。
「それはなにを隠そう、この私のお陰というわけさ」
 いつの間にか、魔女イザベラがベッドに腰掛けていた。ジョゼフの足先に座ったイザベラ、今度も扉の開く音は聞こえていない。しかも、イザベラの姿も透明な膜が間にあるかのように輪郭がぼやけて見える。さらにいえば、アンナマリアはレリアに押し出されたときにそちらを見たが間違いなく誰もいなかったはずだ。
 しかし、イザベラの姿が見えて余計混乱するということもなく、むしろアンナマリアはいくらか平静を取り戻した。
「……貴方がなにかしたんだ。驚くのも飽きたくらいなんだけど」
 断頭台であった自分を人間に変えた魔女のことである。イザベラに関しては、なにができても不思議ではない。おそらく、彼女にできないことなどほとんどないのだろう。もし彼女がなにかをおこなわなかったら、それはできないのではなくやろうとしていないだけのことだ。
 なので、イザベラには常識的な思考で相手をしていては混乱するだけなのである。元が人ではないアンナマリアは常識など最初から持ち合わせてはおらず、よって短い付き合いながらイザベラの相手の仕方は心得ていた。
「うむ、その通りだよ。いやあ、このままだとかわいいかわいい助手が不憫でならなくてね。けれどレリアがジョゼフくんの相手をするとうっかり悪化で元に戻れなくなるかもしれない。淫魔の毒に犯された躯に淫魔の躯はきつすぎる」
「それで、どうしてレリアがこれるようになったの?」
「はっはっは、なに、問題なのはレリアの躯なわけだ。つまり、躯がなければなんの問題もないわけでね。今ここにいるレリアは精神思念体……判りやすく云えば生き霊かな?」
「ちょっと先生! なんですかその言いぐさは! 大体今は先生だってそうじゃないですか」
 よりにもよって生き霊呼ばわりされたことにレリアが怒る横で、アンナマリアはやっていることの理屈はわからないもののどういう結果になったかは漠然と呑み込んだ。
「それはわかったけど、そもそも躯が無くて触れるの? あ、でも今……?」
 云いながら、アンナマリアはさっきレリアに押しのけられたことを思い出す。実体がない霊体のはずなのに、レリアと確かに触れあえていた。
「大丈夫大丈夫、ふつうは触れないものだけど、今回は触りたいと思った相手の五感に作用し、錯覚させて正確な感覚を再現しつつ、大気を操り人体の動きをエミュレートして圧縮させることで押しつけるなどといった行動も可能にしたからね」
「なんでもありなんだから……」
 イザベラに順応した、とアンナマリアも思っていたが、いざ事も無げにこういった内容を語られるとつくづく非常識な存在であると再確認してしまう。
 驚きを通り越してあきれ果てたアンナマリアは、目を細めてイザベラに抗議した。
「それで、なんで貴方までそっちの姿で……」
「ほらほらギヨたん、そんなことはもういいじゃないですか。そんなに待たせたらこっちがかわいそうですよ?」
 レリアがそういって、ふたりが来るまではアンナマリアの胸で押さえつけられていたペニスを撫でた。実体のないレリアの手がジョゼフのモノに触れると、本物の手が触ったかのようにペニスは反応した。
「じゃあ、胸の続きをしましょうか。ギヨたんはそっちから、こっちからあたしで……こんな感じに……」
「ん、こう……?」
 レリアに云われるがままにアンナマリアが動くと、ちょうどふたりの胸でひとつのペニスがサンドイッチされる形になった。
 胸が控えめなふたりは自然と抱き合うような形で、互いに興奮した吐息の熱を感じた。
 レリアはアンナマリアの手をとって握り合うと、自分たちの胸から顔をだす亀頭を見下ろして笑った。
「わー、ホントにこの躯でも挟めてますよ……。たまには先生も良い仕事するんですから」
「たまには余計だ、たまには」
 そんなイザベラの軽口も耳には届いていないようで、レリアは目と目が触れそうなほど近くでアンナマリアを見た。
「ほら、ギヨたんはおっぱい小さいからあたしもいた方がいいですよね。こうしたら、もう絶対こぼれませんよ」
「それは大きなお世話で! ……んんっ」
 怒ろうとしたアンナマリアの口をレリアが口で塞ぐ。唇に伝わってくる暖かさは確かにレリアのもので、感触もまるで本物の肉体としているようにリアルだった。
 びっくりしているアンナマリアからレリアは顔を離した。
「そんなに怒っちゃダメですよ……ね、一緒に楽しませてください。やっぱり仲間外れはくやしいし、さみしいんですよ」
 じっとレリアが瞳を見つめる。そこにはいつもの活発な力強さと、茶化していない真摯な感情が込められていた。
 さっきまで、アンナマリアはジョゼフを独占してしまいたいと思っていたし、今でもそれは変わらない。独占欲が、じりじりと胸の奥で燻っている。
「……わかった。じゃあ、一緒に」
 けれどレリアの気持ちも知っていて、だからアンナマリアは断らなかった。
 それとこのままふたりでするということに、アンナマリアは少なからず興奮していた。
 ――こっちの方が、もっと沢山虐められる。
 一度ぞくぞくとした嗜虐心に火がつけば、もう止める術はなかった。
 もう一度アンナマリアとレリアは口づけをして、躯を揺らし始める。
 ふたりの乳房は押しつけ合って潰れ、その谷間に挟まれたペニスは胸で擦り上げられる。
 大きな胸とは違い、陰茎総てを包み込むようなものではなかった。左右は少女たちの胸で柔らかく擦られているが、同時にふたりの躯で締め付けられてもいた。
 抱き合うふたりの躯はほどよい圧力で肉棒を締め付け、緩め、精液と愛液の潤滑液で愛撫する。
 にゅち、にゅち、と粘っこい音を立てて頭を出したり下げたりする亀頭は快楽で紅く膨れあがり、先端から透明の液体を涙のように流していた。
「ふふっ、我慢汁がいっぱいですよ。舐めとってあげないと」
 レリアは尿道口へと舌を伸ばす。途絶えることなくどくどくと流れる透明の液体を綺麗に拭ってしまうと、そのまま亀頭にキスをする。胸で抑えながら、唇を亀頭に吸い付かせた。
「わたしも、混ぜて」
 アンナマリアも亀頭に口づけをすると、舌先で雁首を舐めた。レリアと唇が触れあい、ふたりは互いにキスしあうように亀頭をついばむ。
 はあ、はあ、と白い靄混じりの吐息を吐きながら、ふたりは精の臭いを漂わせる肉棒で夢中になった。
「ちゅ……ふっ、んはっ! ギヨたんも上手になりましたね……このおちんちん、またイっちゃうみたいですよ」
「こらえ性がないペニスだから……もう、イっちゃえ」
 ふたりは悪戯に笑って、亀頭を銜え込む。そのまま、思い切り胸で締め付け――
「ん……あ、あああああ!」
 反射的に、ジョゼフの口から絶叫が洩れた。
 もう何度も撃ったとは思えない勢いで、ペニスはふたりの口内に射精した。
 精液はふたりの口を押し返して胸に溢れ出た。まるで小さな胸から母乳でも出たかのように白濁液が胸をべっとりと濡らす。それでもまだペニスは脈打ち、精液で少女たちの細い輪郭を蹂躙した。
 レリアとアンナマリアは互いに相手の頬を伝い落ちる精液を舐める。まるで、猫同士が顔についた食べ残しを拭うように。
 そう、蹂躙されているのはこのふたりではなく、目をつけられた男の方がまさしく獲物なのだ。
「えへへ、ギヨたん、精液でびちゃびちゃですよー。って、あたしもですね」
「これなら……満足できるまで、がんばれ」
 精液に濡れたふたりの少女は淫蕩に笑って、まだ萎えることも許されないペニスを指で突いた。
 いつの間にかふたりの頭の中から淫魔の毒のことは綺麗さっぱり消え失せてしまっていた。

 ジョゼフが目を覚ましたとき、目の前は不自然なくらい真っ暗だった。
「んん……あう?」
 あれ、と声を出そうとして、なにかに口が塞がれていることに気付く。そうして口を動かすと、塞いでいるものがビクンと痙攣してもっと強く押しつけられる。柔らかい何かで鼻も塞がれて、ジョゼフはびっくりして声をあげた。
「んー!? ぶはっ」
 じたばたと暴れると、顔に押しつけられていたものが離れた。何故か顔中が水浸しになっているジョゼフは咳き込みながら大きく息を吸い込んだ。
「な、なに?」
「あっ、ようやくお目覚めですかぁ、ジョゼフくん」
「え……うわっ」
 聞き慣れた声が話しかけてきて、ジョゼフはようやく今の状況を認識できるだけの余裕ができた。そして、自分に与えられている刺激にも。
 ジョゼフの顔を塞いでいたのは女陰だった。それを顔に押しつけていた女性がベッドの上に膝で立ち上がったために、股の間からジョゼフは自分の下半身を見ることができた。
「え、れ、レリアちゃん、なにを!?」
 そこには、ジョゼフのペニスを性器で根本まで銜え込んだレリアの姿があった。
 窓から差し込む茜色の朝日が、わずかに透けているレリアの躯を照らしている。全身が燃えるように揺らめく幼い裸体は神聖なものであるようで、同時に酷くいやらしく見えた。自分のペニスに跨っているレリアの姿に、ジョゼフの心臓は大きく脈打った。
「なにってぇ、見て判らないんですかぁ?」
 レリアの間延びした口調が、いつにも増して艶っぽいものになっている。騎乗位で繋がっているのに、まるで耳元にささやきかけられたかのような熱さがジョゼフの汗ばんだ首もとを撫でた。
「それは判るけど……ああっ」
 ジョゼフの言葉を、レリアが腰を捻って黙らせた。ガチガチに勃起した肉棒を銜え込む狭い秘所が捩られて、刺すような抗いがたい快感がペニスに走る。
「判るんなら、男の人がやらなきゃいけないことはひとつだけですよぉ。――子種、いっぱい注いでくださいね」
「あ、あああああ――!?」
 悪戯っぽい笑みのままに愛液で濡れた極上の肉壁が締め付けてきて、いきり立った肉棒は限界に達した。
 ぶびゅ! びゅくっ、どくっ! そんな音が鼓膜を震わせる勢いで、ペニスが精液をレリアの子宮に注ぎ込む。もう何度目かもわからない射精でペニスが鈍痛を訴えるものの、それを遙かに上回る快感がジョゼフの脳内を占領した。
「あはっ、でてる、でてる……ホントにあたしの子宮に射精されてるみたいですよ」
「もう淫魔の毒はないはずなのに、こんなに出しちゃうんだから。根っからの変態みたいね」
「う……っ、あ、アンナマリアちゃん?」
 息を荒げながら、ジョゼフは自分の目の前にある細い躯を見上げた。白く、ぷにぷにと柔らかそうなお腹をなぞり、渇いた大量の精液を付着させた控えめな胸を通り、黒髪を揺らす少女の顔に行き着く。それは、あのアンナマリアだった。
 目が覚めたばかりにこの状況で、ジョゼフは夢でも見ているような心地になる。
「い、いったいなにが……あうっ」
 ここに至るまで自分はなにをしていたのかと思い出そうとするが、絶え間なく蠢くレリアの膣に思考を桃色に染め上げられた。
 何日も水分をとっていないかのように渇いた喉を震わせて嬌声をあげるしかできないジョゼフに、ひとりの女性が近づいた。
「説明すると話は長くなるのだけどね。それもこれも最初はキミを助けるためだったのだよ、ジョゼフ。まあ、今となっては彼女たち自身が満足するためと目的は変わってしまったがね」
「い、イザベラ先生……って、どうして裸なんですか!」
 ベッドの脇に、一糸まとわぬ姿で豊満な胸をさらけだすイザベラが立っていた。手で掴んでもこぼれてしまうくらいの胸はぴんっと張っていて美しく、腰のくびれは腕を回して抱きしめたくなるくらいに引き締まっている。肉感的で、しかしだらしなくない肉体。アンナマリアとレリアとはまったく違う成熟した女性の瑞々しい肢体に、ジョゼフは生唾を飲んだ。
「いやあ、それはだね。見ていたら私もむらむらとしてきてしまってね。どうせだから仲間に入れて貰おうと思ったのさ。なに、こんなときのために私もレリアと同じ方法でこちらに来たのだ、搾り殺さないように加減はできているはずだよ」
「そ、そういう問題じゃむぐっ!?」
「ほら、喉渇いてるんでしょう? ……いっぱい、呑んじゃえばいいよ」
 ジョゼフの顔にまたアンナマリアの性器が押しつけられる。鼻には陰核と肌が強く押しつけられて、また呼吸が苦しくなった。手足を振って暴れても、弱ったジョゼフの躯には少女たちに抵抗するだけの力すら残されてはいなかった。アンナマリアが離してくれる様子もなく、ジョゼフは小さな少女の言葉に従って性器を舐めて、愛液を掻き出す。
 必死になってアンナマリアの亀裂に舌を入り込ませると、無数の肉襞に出迎えられた。奥へ奥へと導くように動く膣内の動きに、ぴりぴりと痺れるのに似た快感が舌をなぶる。
 その舌を伝って、愛液が流れ落ちてきた。透明な液体が口の中に入り込むと、強烈な水への欲求がわき上がった。衝動のままに喉を鳴らして、アンナマリアの性器から流れ出した愛液を嚥下していく。
 愛液を呑み、そこに酸素不足も相まって、ジョゼフは頭がクラクラとした。倒錯的な行為にふわふわと躯が浮き上がっていくように感じる。
「ふふっ、そう、その調子……息もかかって気持ち良いよ。もっと、はげしく……んっ」
 アンナマリアがジョセフの頭の上に両手を置いて、自分で腰を動かし始める。ぴちゃぴちゃと愛液を淫らに鳴らし、アンナマリアはうっとりとした表情で舌の感触を楽しんだ。
「ジョゼフくーん、そっちの方だけに気を取られちゃ、ダメですよ?」
「うぐっ!?」
 舌での愛撫だけに持って行かれていたジョゼフの意識を、レリアがペニスを思い切り締め付けて引き寄せた。
「おっと、それだけじゃないのだよ。実体じゃないから、こんなこともできるのさ」
 レリアが繋がっているにも関わらず、イザベラがジョゼフの下半身に躯を近づける。すると、その躯はレリアをすり抜けてジョゼフのペニスまで達した。
「同時に与えられる胸と膣内の世にも奇妙な快楽……存分に楽しみたまえ」
 そうして、豊満な乳房を手で押さえつけ、肉棒を挟み込んだ。
「ふ、んぐぅっ!」
 イザベラの胸に挟まれた快楽は、ジョゼフの想像を絶するものだった。痛いくらいに勃起した肉棒は全体をすっぽりと乳房に呑み込まれ、あらゆる角度から柔らかい締め付けに襲われた。
 さらに、ぎゅっとペニスを情熱的に呑み込んだレリアの膣の感触も襲いかかってくる。胸の柔らかすぎない弾力的な感触と、肉襞に締め上げられる快感。本来なら同時に起こりえるはずのない快楽の波に、ジョゼフの目の前は真っ白になった。
「あ、ぐ、ひあっ! あ、あ゛あ゛、あ゛……」
「さらに、これはどうかな?」
 イザベラが笑って、乳房から顔を出させた亀頭を口に銜えた。雁首に吸い付く紅い唇のぷるりとした感触と、尿道口を滑る舌。もし口をアンナマリアに塞がれていなかったら、ジョゼフは甲高い嬌声をあげていた。
「ちょっと、先生ばっかり! あたしももっといただくんですっ!」
 むっと眉を寄せたレリアが、強く力を込めて腰を落とす。子宮口が亀頭に押しつけられ――ずぶっ、と亀頭が子宮の中へと半分ほど埋まった。
 子宮の入り口が、亀頭を思い切り締める。淫魔のそこはまるでもうひとつの唇のように繊細に動いた。
「――――!?!?!?」
 精液をほしがって口をぱくぱくと開き亀頭を刺激する子宮口とイザベラの口内に、ジョゼフの脳内回路がいくつもの快楽で混線した。
「次は、もっと躯を動かしてぇ……」
 レリアが腰を上げ――落とす。
 ずんっ、とまた一気に奥までペニスが導かれる。肉棒をなで上げる膣に、ジョゼフは意識を失っていたときとはまた別の意味で思考できなくなっていく。
「ああっ、おっきいっ、おちんちんがっ、中で暴れてますよ!」
「ん……これで、終わり……っ」
 目を蕩けさせたアンナマリアが女性器をより強くジョゼフに押しつける。その背後で、レリアの上下運動は激しさを増していた。
「ふふ……ではイってしまうといい……」
 肉棒を乳房で扱きながら亀頭にむしゃぶりつき、イザベラは微笑んだ。
 顔を圧迫する愛液にまみれたアンナマリアの女性器に、ペニスへ絶え間なく食らい付くレリアの膣。そして、イザベラの乳房による愛撫――
「あ、あ、――――!!!」
 それに男が耐えられるわけもなかった。
「はあっ、あああ!」
 そして、アンナマリアとレリアも下半身から上り詰める刺激に嬌声をあげて。
 躯の中身ごと総て吐き出しなほどの快感に貫かれながら、肉棒は勢いよく精液を噴出した。
 嵐の中で荒れ狂う川のように白濁とした本流がレリアの膣とイザベラの口内にぶちまけられた。膣内と口内を生臭い精子で染め上げても射精の勢いは止まらず、ふたりの霊体を貫通してアンナマリアの背中を熱く滾った精液で白く汚した。
 朝日で真っ赤に染まった部屋の中には、男女の荒い吐息の音だけが静かに響いていた。

 To be continued...
 夏休み中に総て終わらせる……そう思っていた時期がおれにもありました。
 というわけでとんと更新速度が落ちてしまって申し訳ない、というわけで8回目です。それもこれもゲームってやつらの仕業なんだ。
 そういえばレズタグなんてありましたね、ということで一応つけておきます。これで大丈夫だろうか。というか、つくべき話はもっと前にもあった気がするのは気にしない。なんかいつのまにかレリアが百合百合しくなっているのは何故なのだ。
 未だにエロシーンの文字数の加減がわからないよ……どうなってるのこの文字数……というわけでまた意味もなく長文です。でもフェチ成分が少ないせいか、どうも文字数で誤魔化さないとエロが薄く見えてしまうっぽいのが辛いところ。エロシーンひとつでこれとかエロシーン三つある次回はどうなるんだ……?
 まあ、次回の文字数が多すぎたら分割するかもしれません。いよいよ次はギヨたんたちと高位淫魔たちの戦いです。果たして、勝つのはどちらなのか! レリアの秘策、そしてギヨたんの躯に起きる異常とは!? 以下次号!
 そういえば、長いタイトルでも全部表示されるようになってますね。こんな長いタイトルつけてる身としてはありがたい限りです……。
 それでは、また次もよろしくお願いしますー。

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