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とあるハンターのおっぱい敗北記:第一章

 僕は自分で言うのも何だけど、キャリアは浅いながら
かなりの実績を積み上げている淫魔ハンターだ。いわゆる新進気鋭と
言う奴かな?まあ、この業界は一部の天才を除けばベテランらしく強い
ベテランなんて少ないとも言われるけど。

 ともあれ、僕は今王国内でそれなりに期待されている立場にある。
だから単独任務を任される事も多くなってきており、今回は北の帝国への
偵察任務を言い渡された。王国と北の帝国は険しい山脈で領土が
区切られており、安全なルートは山脈の中の谷間に作られた関所を
通る以外にはない。その為か相互通商条約こそ結んでいるものの交流は浅く、
そもそも帝国は不穏な噂が絶えない為決して油断が許されない相手だ。

 その帝国に送った使者が帰ってこなくなっている。帝国側の仕業なのか、
それとも帝国に何かあったのか?それを確かめるのが今回の僕の任務だ。
僕の腕ならそこらの野良淫魔など怖くないし、帝国も全面戦争を
企んでいたりしない限り迂闊に手を出して来たりしない筈…

 そんな上官の言葉を聞いたのも早一週間前。僕は遂に関所に辿り着いた。
そしてそこの有様を見た時、おもわずこう呟かずには居られなかった。

「…なんだこれは?」

 一言で言えばもぬけの殻。関所には居る筈の番兵や役人が一人も
居なかったのだ。ただし関所そのものは無事で、つい最近まで何人か
人間が暮らしていた事を物語る痕跡がいくつもあった。

 調査と考察に明け暮れる事数時間、僕は引き返す事にした。いくつか
推論は立てられるが、それを裏付けられる証拠が無い。しかしこれ以上の
情報を求めて帝国に侵入するには腑に落ちない事が多すぎる。
もしこれが帝国の計略だったりしたら、僕が捕まればその分だけ
王国が不利になるのだ。

 そうと決めたまでは良かったが、ひとつ問題があった。

「はあ…疲れたな…」

 引き返すと決めて歩き始めた僕は早々愚痴りたい気分になっていた。
本来なら関所で宿を借り、久々に屋根つきの睡眠を貪る予定だったのだが
それが叶わなくなった為、今まで自覚していなかった一週間分の野宿で
溜まった疲労が体をグッと重くしていた。

 グキュルゥウ…

 それ以上に問題だったのは関所で食料を補給できなかった為、
残り少ない保存食で帰り道の間を食い繋がないといけない事だった。
周りを見渡しても食べられそうな物はロクに見かけず、たまにあっても
怪しいキノコや虫の類ばっかり。いくら何でもそれは遠慮したい。

「くっそ〜、帰ったら腹一杯クラムチャウダーを食ってやるぞ〜」

 そんな訳で僕は腹の足しにもならない愚痴を吐きながら山の中の
獣道を歩いている。街道を外れれば何かしら食べられる物が
みつからないかな、等と思っていたのは甘かった様だ。
せめて山菜でもみつからないかな…

 ふわ…

 ん?なんだこれ?チーズの匂い…だろうか?
僕は最初からチーズなんか持ってきていない。と言う事は…!
近くに食べ物がある!しかもチーズなんて加工物があると言う事は、
人が住んでいると言う事だ!よし、探し出して宿と飯を
分けてもらえる様交渉してみよう!

 ふわふわと漂うチーズの匂いを鼻で辿ってみる。現金な物でチーズの
匂いが濃くなると足も軽くなり、何時しか僕は駆け出していた。
数分もかからずに民家をみつけると歓喜の余り叫びそうになってしまった。
狩人か、それとも薬草摘みの家だろうか?

「すみませ〜ん!誰かいますか〜?」

 食欲と睡眠欲の充実が約束されていると思うと気持ちが焦ってしまう。
落ち着け、あまりがっつくと相手の機嫌を損ねてしまうかも知れない。
ここは紳士的に、かつ低姿勢で…

「はい?」

 ガチャッ。
 たゆん。

 …あれ?

 なんだろうあれ?おっぱいかな?でもおっぱいってあそこまで綺麗で
大きくて柔らかそうな物だっけ。うわ、ブラウス越しに揺れてる…
乳首は浮き上がっていないからノーブラじゃないんだろうけど、それなのに
あんなに揺れるなんて…見てみたい、生で見てみたい…!

「あら?旅人さんかしら?」

 はっ!

 な、何をしているんだ僕は!初対面の女性の胸をいきなり物欲しそうに
凝視して、脱がせたいなんて思っているなんて!それでも淫魔ハンターか!
それ以前に人間としてダメすぎる!早く顔を見ろ!胸じゃなく顔を!

「す、すみません。はい、旅人なんです。お金は払いますから、
宿と食べ物を分けて頂けませんか?」

 うわ、どもっちゃった。なんてカッコ悪い…と言うかどう見ても怪しいな。
もしこの女性が一人暮らしなら、怖がられるかも…

「くす。ええ、良いわよ。お金は結構だから、どうぞ上がって」

 あれ?全然警戒されていない。むしろ整った顔立ちに人の良さそうな
笑みを浮かべている。優しそうな垂れ目だ…じゃなくって。

 なんかおかしくないかこれ?そもそもこんな場所に若い女性が
住んでいる物か?住んでいるとしても、突然来た見知らぬ男に対して
無警戒過ぎないか?お金も取らないって言っているし…

 ぐきゅるる…

「あ…」

「ふふ。どうぞ、ちょうどスープが煮上がった所よ」

 うう、恥ずかしい…欠食児童の気分だ。だけどそんな僕に対してこの人は
とても楽しそうだけど侮蔑の念なんか全然感じさせない笑い方をした。
動いた拍子に巨大な胸が揺れ、思わず喉がぐびりと鳴ってしまう。
ヤバい、勃起しそうだ。堪えろ、堪えろ。



「さ、どうぞ。山の幸のミルクシチューよ。出来立てで熱いから
少し冷ましてから食べた方が良いかもね」

「は、はい」

 結局僕は三大欲求の充実を優先させ、彼女の家に上がってしまった。
食欲と睡眠欲だけじゃなく性欲まで満たしたくなっているのが情けない。
だが情けない以上に腑に落ちない事もある。

 改めて彼女を見てみる。黒い長髪がさらりと真っ直ぐ流れる下には
間違いなく美人と言える顔がある。ただし垂れ目のせいかおっとりとした
笑みのせいか、作りそのものは大人の美貌だがそれらしいキツさがない。
若奥様、もしくは新米ママと言った雰囲気だ。

 だが見ていて落ち着きそうなのは首から上だけで、首から下は
いやらしいの一言だ。全体的に細身だが長身で、袖無しブラウスから
覗く腕も膝丈のスカートから生える脚も細長く、艶かしい。
山に住んでいるとは思えない程滑々で白いのが気になるが。

 なによりも細い腰と小さな肩に挟まれた胸があまりにも扇情的だ。
緩やかなブラウスに覆われているのに尚巨大さを主張する膨らみは
あまりにも大きすぎて威圧感すら感じるが、同時に非の打ち所の無い程
美しい曲線を描いている為その威圧感が神々しさに変わってしまっている。

 正直、今すぐ押し倒して上半身を裸にしてしまいたい。さっきまで
あれ程感じていた空腹も、今催している情欲の前では遠い幻と化している。
こうして座っているだけでも油断すると勃起してしまいそうだ。

 だからこそ感じる。彼女は異常だと。

 当たり前だが、淫魔ハンターはそう簡単には欲情しない様に訓練を
受けている。美人でもそれが一般人なら肉欲は意識しない限り感じない。
むしろある程度以上のハンターは一般人相手では満足できなくなり、
恋愛や結婚に問題が生じる程だ。

 それなのに今、僕は目の前の美女に酷く欲情している。
まるで強大な淫魔と対峙しているかの様に。

 だが彼女からは淫気を一切感じない。相手が強大な淫魔だったら必ず
感じる筈の淫気が全くないのだ。つまり彼女は淫魔ではなく人間だ。
これは一体どういう事なのだろう?彼女は引退した凄腕のハンターか、
もしくは教官だったとか言うオチだろうか?

「もしもし?」

「あ、はい?」

「もうそろそろ冷めたと思うけど…?」

 そうこうしている内に僕に手渡されたスープ鉢の中の白い液体は
湯気が立たなくなっていた。彼女を観察しながら考えていたら
だいぶ時間が過ぎていたらしい。

 色々引っかかる事はあるけど、相手が人間なら安心していいだろう。
多分彼女は帝国の人なんだろうけど、別に僕の素性を知っている訳でも
ないだろうし…あ、でも王国から来た者を無差別に捕まえている
とかだったら危ないかも…?でも流石にそれは考えにくいな…

 僕はそんな事を考えながらスープを口に含んだ。するとどうだろう。

「おいしい!」

「良かった。沢山あるから好きなだけ飲んでね」

 僕は思わず正直に賞賛の言葉を発していた。チーズの匂いだと
思っていたのは実際はこのスープに混ぜられたミルクが加熱された
匂いだったらしく、僅かな塩気と香ばしさが乳製品らしい甘味を引き立てて
思わずうっとりしてしまいそうな柔らかい味わいになっていた。
煮崩れかけた芋や山菜もミルクが十分に染み込んでいて、舌の上で
ほぐれていく優しい食感がたまらない。

 一口食べたらもう止まらなかった。僕は先ほどまで考えていた事なんか
すっかり忘れ、彼女にすすめられるまま何杯もスープを飲み干した。
彼女は僕の食べっぷりが気に入ったのか、食べれば食べる程機嫌が
良くなっていく様だった。

「ご、ご馳走さまでした…」

「あら?もういいの?まだ残っているのに」

「い、いえ、これ以上食べられません…」

 気がついたら僕は腹が痛くなる程食べていた。流石にこうなると食欲も
鈍り、何杯目かもう分からないお代わりをやっと断る気になった。
彼女は僕が食べるのを見ているのが嬉しかったのか残念な顔をしたが、
流石にこれ以上食べても吐いてしまいそうだ。
新シリーズ開始。相変わらずおっぱいです。
と言ってもまだまだプロローグみたいな物ですが。

感想・提案・批判・賢者転職報告などが頂けたら幸いです。
それこそが書き手の原動力と報酬ですから。

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