〜塔1−4階〜
エリーはゴーストとの戦いで失った体力を回復させた後、再び先に進むことにした
不思議と肉体的な疲れは感じない…塔に何かしらの魔力があるのだろうか
「あ…」
しばらく進むと、広いドーム上のようなところに再び出た
先の方には階段が見える…ここで1階は終わりのようだ
「そうか…やっと1階が終わったんだ」
随分戦ってきたように感じるが、まだこれは始まりにすぎない
この上には、更なる強敵が…
「……でも、必ず勝ってみせる」
エリーは決意を新たにそう呟く
だが
「うふふ、意気込みは良いわね、お姉さん?」
「っ!」
唐突に聞こえた声に思わず身構える
そしてドーム全体が柔らかな雰囲気に包まれる、この独特の感覚…
地面の柔らかさを両足で自覚し、バトルフィールドが形成されたことを実感する
「今までの戦い、見せてもらったわ、なかなかやるじゃない」
前方には、金髪の髪を靡かせた黒いゴスロリ風味なドレスを纏った少女がいた
「あ、あなたは…」
「ふふ、あたしの名前は「ハート」よ、よろしく」
ハートと自己紹介した少女は、自分の周りにそのドレスのスカートから出ていた先端がハートの形をした尻尾を体の周りに巻くように展開する
「くっ…」
エリーは何か歪なものを感じ取っていた、この敵は…明らかに今までの敵と違う、と
あのサキュバスに近いものを感じる
「あたしも「サキュバス」の一種なんだけど…まあちょっと特殊なのよね」
エリーの感情を先読みするかのように告げる
「ふふっ、少しは楽しませてね」
それだけ告げると、ハートはロケットのようにエリーに突撃してくる
「くっ!?」
1:避けられない
2:避ける
1:避けられない
「あっ!?」
次の瞬間には、ハートはエリーに抱きついていた
エリーの方が背が高いが、ハートは飛びつくようにエリーの首に両手を回す
「ふふっ、捕まえた…もう逃げられないよ?」
「ぁ…………あ」
何故か金縛りにあったかのように、エリーは一歩も動けずにいた
「じゃあ、あたしの能力の一つをあなたに刻むわ」
彼女の小さい口があーんと開き、そこから見える八重歯が光る
「あたしの性質の一つ…「ヴァンパイア」」
そして、エリーの首筋に口を寄せ――――
ズプッ
「――――――――ッ!!」
「〜♪」
次の瞬間には、その牙を突き立てた
痛みと、しかし同時に体の芯から力が抜け、自分の体が疼いていくような感覚に陥る
「は…あぁ」
「うふ、良い表情」
ハートはニコリと微笑むとエリーの頬に軽く口付けし、後ろに回りこむ
エリーはガクッと膝をつき、前かがみに倒れそうになるが、ハートが後ろから体を抱え込み、それを許さない
そしてハートはエリーの防護服の隙間から両手を入れ、エリーの乳房と秘所をその指で優しく愛撫し始めた
「ん、あ………」
「あたしの牙の味は気に入ってもらえたかしら?いつもより感じるんじゃない?」
ハートの言う通り、エリーはいつもより体の火照りと疼きを感じていた
ハートに愛撫される場所が爆発的な切なさを持って快感に変わる
「あああああああああああっ、あーーーーーーーーー!!」
「良い声で鳴くわね……可愛い」
乳首を指で弾かれ、クリトリスをくすぐられる
それだけの行為だが、エリーにとっては致命的なダメージになっていた
「ああああああああ………んんっ」
涙を流し快感に震えるエリーに、ハートは顔を強引に手で振り向かせ、その唇を奪う
「んんん……………ん………」
しばらく抵抗するエリーだったが、やがてぶらんと両手が下がり、瞳を閉じる
そしてエリーは、快楽の渦へと堕ちた
「お姉さんも、あたしの玩具の一つになるのよ……ふふ」
最期に聞こえたのは、ハートのそんな言葉だった
2:避ける
「っ!!」
すんでのところでハートの突進を体を捻って避けるエリー、すぐ横を冷たい風が通りすぎるのを感じる
「へえ」
ズザザザザザッ!
両足で踏ん張るようにブレーキをかけて振り返るハート、そして再びエリーに向け突進してくる
「くっ……!」
捕まれば終わり、そんな悪寒が体を駆け巡る
体を投げ出すようにして二回目の突進も回避する
「なかなか頑張るじゃない、おねーさん?」
「っ……」
エリーは肌で感じ取っていた、ハートの実力はあのゴーストに憑依された先輩をも軽く凌ぐ
「あたしはサキュバスの中でも特殊…「多重能力者(デュアルスキル)」と呼ばれるのよ」
「な、に…?」
ゆらりと体を動かすハートは唐突に告げる
「ヴァンパイア、ワルキューレ、ティターニア…歴史に名を残す伝説の乙女達、あたしのサキュバスとしての魔力はたかが知れている…でも、あたしはそういった伝説の力の片鱗を少しずつ使うことができるのよ」
「く………」
宣告に思わず身震いするエリー、伝説の力……あまりにも手に余る
そんな相手に今の自分が勝利することなどできるのだろうか…そういった思いに駆られる
「うふふ…さあ、そろそろ終わらせてあげるわ!」
ハートの両眼がカッと見開かれる
エリーはそれを……
1:動けず、見つめる
2:とっさに、目を背けた
1:動けず、見つめる
「あ……!」
エリーはハートの両目を見つめた瞬間、自分の体が石像のように動けなくなってしまったのを感じた
ハートの口元が歪む
「捕まえた…あたしの“メデューサ”としての力…この魔眼に捕らえられたら、もう動けない」
「く、う…………!」
必死に体に神経を集中させるが、指先一つ動かすことは出来なかった
「ふふ、更に…“マルガレーテ”の能力」
ハートが指先をパチンと鳴らすと、唐突に背後に影が現れる
それは黒い棺桶のような形をしていた、奇妙なことにそれは空中に浮遊している
「拷問師として知られた彼女の能力は数々の拷問器具にある…これはその中でも基本的なものだけど“鉄の処女”(アイアン・メイデン)と呼ばれている」
「くっ……!!」
棺桶の蓋がゴゴ……と開く、その中から出てきたピンク色の触手のようなものがエリーの四肢にそれぞれ巻きつく
「あ…………やめっ」
「処女に抱かれ、百合の花を咲かせる…悪くないんじゃない?」
触手は彼女を棺桶の中に引き入れる
そしてゴゴゴ…と蓋は閉じた
「あ…ああああああああああああああああああああっ!!」
そして棺桶の中でエリーの絶叫が響き渡る
全身の触手は彼女の衣服を溶かし、瞬く間にその裸体を蹂躙する
乳房に、首筋に、秘所に、足首に…触手は撫で上げる
「んんん……ああああああああああ――――!!」
全身を溶かしつくす快感に、エリーの思考はすぐに弾けた
「ふふ、良い光景」
棺桶の窓から、ハートが顔を覗かせる
「ゆっくりあたしがこれから調教してあげる……ふふ、ふふふふふ」
ハートの愉悦が、響いた
2:とっさに、目を背けた
「っ!?」
ひやりとしたものを感じ、目を瞑り顔を横に振る
チッと舌打ちのようなものが聞こえる、ハートが発したものらしい
「お姉さんも、さっさとあたしに犯られちゃえばいいのよ…“ワルキューレ”の能力!」
ハートは突進しながら両手にいつの間にか光輝く剣のようなものを持っている
「なっ…!」
「安心して、殺傷能力はないわ…ちょっとばかし、精気を頂くけどね!」
横薙ぎに払われる光剣…とっさにバックステップでそれをかわす
「小賢しいわね!」
続いて二撃目が来る、突き…!
「っ、あああああああああっ!」
「!?」
横っ飛びにかわし、カウンター気味に突っ込む
その行動に初めてハートの顔色が変わる
体当たりを喰らったハートは光剣を投げ出し、押し倒されるような格好になる
「くぅ……あ!?」
「…………っ!」
チャンスを感じ取る、ゴスロリ衣装のスカートの中に手を、服の上から乳房を愛撫する
「ひゃああああん!!」
想像以上の黄色い声を上げるハート、これは……
「(もしかして、一つ一つの能力は凄まじいけど、体力的には大したことはない?)」
だとすれば勝機があるかもしれない、このまま一気に……!
と、不意に愛撫していたハートの体がふっと消える
「え!」
思わず驚きを声に出してしまうエリー、次の瞬間にはハートは3mほど後方に姿を現していた
「“ジャンヌダルク”…怪盗とよばれた彼女の能力は自身を隠してしまう手品と聞くわ」
が、姿を現した彼女はガクッと膝をつき息を切らしていた
「くっ…さすがに魔力を使いすぎたか…」
「ハート、ここまでね」
エリーは告げ、ゆっくりと近づくがハートは薄ら笑みを浮かべていた
「ほざくわね、今日は様子見と言ったところよエリー、また会いましょう」
それだけ告げると、再びハートはその姿をふっと消してしまった
「くっ、逃げるの!?」
「ふふっ、あたしを一度跪かせたぐらいで、いい気にならないことね…」
最後のハートの言葉が反響し…バトルフィールドは元に戻っていった
「くっ……はぁ、はぁ」
暗闇の中、息を切らせながら膝をつく
「あらら、ハート、やられちゃったの?」
近づく青い気配…ウェディングドレスがかすかに大気に靡くような音がする
「………うっさいわねサキュバス、全然本気じゃなかったっつーの」
その気配に毒づく、とはいえ、予想外だったエリーの強さに閉口せざるを得なかった
「とはいえ、なかなかの急成長っぷりね、何処までこれるか楽しみだわ」
「ふん、体力が回復したら、次こそあたしが抹殺してあげる」
「うふふ……」
ハートの言葉に、ただただ微笑むサキュバスであった
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