ドアを開けると廊下だった。
手には指輪がある。
(こんな指輪……イッも死なないだと?)
「どうやってこれを……」
「わからない。だが……使えるかもしれない」
「どういうことだ?」
「俺たちが付けたら何か起こるか、試してみる価値はある。この先に居るのはおそらく城主だ。一番力を持っていると考えるのが妥当だろう」
「確かにそうだが……」
「どれくらい仲間がいるのかもわからない。あいつらの力を逆にこっちのものに出来るのなら、やってみよう」
そう言っているうちに、握っている指輪が光り始めた。いくらか体力が戻っていく……?
「やっぱり何か力がある?」
「そうだな。とりあえずもっておこう」
それぞれ指輪をはめ、通路を進む。
ひときわ大きなドアがあった。
「皆を助けるのを最優先に行こう」
クラがそう言い、タチバナもうなずいた。
重く、大きな音を立てながらゆっくりと開く。
かつての城主の間だろうか、大きな窓から月明かりが差し込み、赤いじゅうたんが敷き詰められ、部屋の右と左に入ってきたものと同じ大きさのドアが二つあった。壁際にある椅子にそいつは座っていた。
「いらっしゃい。よくここまできたねぇ」
赤い髪と白い肌。
胸元がはだけた赤い服を着ている。西洋の顔立ち、腰のくびれ、尻の丸み、大きい白い乳房。そのすべてがこの城に居た淫魔のなかでもっとも魅惑を放っていた。いやらしくほほ笑みながらこちらを見てくる。
「私がストラ。この城の主よ」
「そうか。もう仲間はいないぞ」
「きみ達がここまで来たという事は、そうみたいだね」
「おまえもその仲間を追わせてやるよ」
タチバナが言う。ストラがクスクスと笑った。
ゆっくりと身体を見せつけるように歩きながら近づいてきた。今カザネやリザより甘く、いやらしい匂いが立ち込めてくる。
「それは愉しみだよ。ただ、キミ達の友達を助けるのは間に合いそうもないね?」
「どういうことだ!」
怒りや仲間への思いを総動員して理性を保つ。
「捕まえていた子たちは大体本国に送っちゃったから」
「本国だと……」
タチバナがつぶやく。淫魔達の国に送られた人間が帰って来たことはない。
「そう。最後の子たちも今……」
一メートル程の距離で向かい合う。クラは視線をそらした。ストラの身体といやらしいほほ笑みを見続けていると、理性が吸い取られそうな気がした。
(こ、こんな状況なのに……)
ペニスが固くなってくる。
ストラの立っている場所を囲むように円に光り始めた。
「なんだ?!」
右側の部屋の壁が消え、囚人を捉えるような檻が姿を見せた。
「コウ!」
「ク、クラ! タチバナ!」
中には探し求めていた人達の姿があった。本隊長や、行方不明者のリストに乗っていた人達、そしてコウ。
「あら、知り合いなんだね?」
「このっ」
檻がある床が動き始め、ゆっくりと三人がいる部屋に出てくる。
同時に反対側のドアの近くに大きな光りの環が浮き上がった。檻を飲み込むほどに大きく、中は真っ暗でどこにつながっているのかわからない。
(ゲートか!)
このままだと檻はゲートに飲み込まれてしまう!
「ああ、飲み込まれちゃうねぇ? もしワタシをこの光りからずらせれば止まるよ?」
楽しそうなストラの声が響く。
クラはたまらず飛び出し、ストラの立つ円の中へと入った。ストラと顔を合わせる。
いや、顔を合わせてしまった。
(うっ……な、なんて)
ストラは服の上から胸を揉み、秘所をまさぐっていた。
見せつけるようにオナニーをするストラに、思わず足が止まる。理性が警鐘を鳴らしていたが、クラの視線は服の上からでもわかる乳房のふくらみや指の淫媚な動きを追っていた。
ペニスがガチガチに勃起する。
頭の中がストラの肉体で染まる。いやらしい視線に射抜かれる。
すらりと伸びた脚、首や鎖骨の艶めかしいラインや肌にふれたくなる。
(さ、触りたい……)
「たっぷり触って? 気持ちいいわよぉ?」
無意識のうちに手が伸びていく。クラはストラの指もゆっくりとペニスに伸びていることに気がつくことはできなかった。
ストラが淫らな笑みを浮かべる。
「…ラ……ク……ラ、クラ!」
あと一瞬で触れると言う時に、大声で叫ぶタチバナの声が聞こえた。
「なっ?!」
ストラの驚いた声と同時に二人を囲っていた光りの円が弱まる。
「指輪をぶつけるんだ!」
「まさか?」
なんとか呼び覚ました理性で声を理解し指輪を円にぶつけた。
円が消える。
すかさずストラから距離を取った。
同時に檻を飲み込もうとしていた環が消え、檻が戻って行く。
「そこのドアからこっちに来れる!」
コウが叫んでいるのが聞こえた。
「……おい大丈夫か。理性を奪われたら…負けるぞ」
「あぁ……ありがとう」
タチバナの息もかなり荒かったが、なんとか耐えているようだった。
「あっちのドアに仲間がいるなら、反対の方は転送するものがあるのか……?」
「たぶんな」
二つの大きなドアを眺める。
「は……ハハハ」
ストラはしばらく元に戻って行く檻を呆然と眺めていたが、不意に笑いだした。
「あの子たちの指輪の強さを逆に使うとは……やってくれるねぇ。タチバナくん?」
ゆっくりこちらへと向き直ったストラは笑みは、さきほどよりエロティックだった。
「はっ、見せびらかす癖があだになったみたいだな」
「決めた……君からだね」
ゆっくりとストラが近づいてくる。
「行くぞ!」
そう言うとタチバナは環が浮かび上がった方のドアへと駆けだした。
(おとりになるつもりか……!)
クラは止めようとしたが、手は届かなかった。ドアを開け、入って行く。
「へぇ……そういうことかぁ」
ストラがゆっくりとタチバナの後を追う。
クラは立ち上がり、檻が消えた方のドアへと向かう。
「ふふっ……クラくんも犯してほしかったらこっちに来たらいいよ?」
ドアを開けつつ、ストラが誘う。
「バカ言うな! 覚悟しろ……おまえを倒す」
「ふふ、私に触っていたら同じことが言えた?」
そう言いながらドアの向こうへと消えた。
急いで仲間を取り戻し助けに行く。
クラはそれだけを考えドアを開いた。
クラ・パート
唾を飲み込んだ。仲間が居たらすぐに解放し、ストラと戦うタチバナの所へ向かわないといけない。リザを倒したと言うタチバナでも、ストラと一人で戦うのは……
「あいつの会いたい奴って言うのは誰だったんだ……?」
うっすらと灯りが見える……行くぞ!
開け放った扉の先は、広い牢屋だった。
皆がいるのか?!
「おい! コウ! 皆! 来たぞ!!」
響き渡る声。
しばらくすると奥の方から声がした
「クラか!! 俺はコウだ!! まだ仲間はこっちにいる!」
居た! あっちか……
「待て!! 気を付けろ!! あいつがこの部屋にいるぞ!!」
駆け出そうとした矢先、太い声が響く。
「本隊長?!」
(あいつって誰だ?)
「まったくあのオジサンったら、せっかく生かしておいてあげたのに……」
ヌルリとした感触が背中にまとわりつき、妖艶な声が響いた。
「なんだってんだ!!!」
そのまとわりつく誰かを払い、振り向いた。
「なっ……!」
「死んだと思ったの? バカね」
リザが居た。
全身が液体に濡れ、むせかえるような色気を放っていた。
「タチバナにやられたんじゃなかったのか……」
「……確かにイカされたわ……でも、指輪のおかげで助かったのよぉ」
やはりそんな力を……
「まさか使うとは思っていなかったけど……ここに飛んだのよ……タチバナくんは運が良かったのねぇ」
「負け惜しみか」
「そうかしら?……ここにアナタが来たってことは、あの子の運も尽きたのね。いや、願いが叶ったというのかしら」
濡れた髪を舌でなめ、笑っている。
背筋がゾクゾクと震えた。
「なんだと?」
「あの子の生まれ故郷は淫魔が吸いつくしたのよ」
あの東の村のことか?
「なら」
じりじりと迫ってくるリザの香りが思考にもやをかけていく。
「そう、その淫魔がストラ」
なんだって…ならあいつが言っていたのは、復讐か。
「フフ……そんな簡単な話じゃないかもね」
背中にひんやりとした感触。壁に当たっていた。
「それを話してあげたらあの子のペニス、とってもビクビクしてたもの…私の中で」
濡れた身体がまとわりつき、リザの息がかかる。
見下すような視線。下半身が反応してしまう。
「それにあの子の目……すごくいやらしかった」
胸板をそっと撫でられる。
濡れた所から身体がジンワリ熱くなっていった
「早く行ってあげないと、どうなるかわからないわよ」
そんな……ここまで来て負けられるか……
あせる俺の顔を見て、リザが笑う。
「でも、その前に私が、アナタを搾りとってあげるわ」
タチバナ・パート
長い廊下を進んでいく。この先に何かがあるはずだ。
(ストラ……あいつが村を)
姿を見て確信した。間違いない……あいつが。
(うっ……)
一瞬記憶がフラッシュバックする。振り払って前へ進む。
扉がある。光が漏れている。
「なんだ?」
タチバナの進んだ先の部屋は小さなベッドルームだった。甘い淫媚な香りが満ちている。絨毯と大きいベッドがあり、大きな鏡が数個配置されていた。そして部屋の奥にクローゼットがあり、人がくぐれるほどの環がそこにあった。
(あれか!)
その時後ろでドアが閉ざされた。
「いらっしゃい……ワタシのベッドルームへ」
ストラの声が響く。タチバナは振り向いた。
「そのクローゼットの環がゲートだよ……」
ドアに持たれながらストラがほほ笑んでいた。
「もう本国へは送らせないぜ」
「強気だねぇ。もし私を倒せれば、それは壊れるよぉ」
「一石二鳥だな」
身体を見せつけるように歩いてくる。腰や首のライン、大きな乳房に目を奪われないように理性を保つ。
「やっぱり君たちは強いね……私にあらがえるなんて」
「俺の村を……東の村をめちゃくちゃにしたのはお前か……?」
(冷静に、冷静に)
落ち着かせながらタチバナが聞くとストラは笑いだした。
「やっぱりあの時のボウヤだったんだぁ。そうよ。全員、搾りとってあげたのはワタシ」
しばし見つめ合いながら無言になる二人。
「あの時見た……お前を……」
タチバナは脳裏に仲間を虜にし、犯しつくしていたストラを思い出した。
あのときの、あの淫魔。
「忘れた日はなかった……倒してやるよ……」
言い放つ。
「そっかぁ……でも、本当かな?」
「何……?」
「隠れながらもあんなに私をずっと見ていたのに……?」
「何を?!」
そう言うとストラは上体をそらし身体を見せつけてきた。
「っ……」
大きな胸が揺れる。
なんとか視線を保つが、ペニスが隠しきれずビクンと脈打った。
ほほ笑むストラ。
「ふふ。もうそんなに大きくなってるよぉ?」
「黙れ…」
ストラの嗜虐的な視線と目があった。
「君といいクラくんといいその目、好きだよぉ」
「なめてるのか……!」
タチバナに怒りが湧き上がった。
「キミは殺さずに、虜にしてあげるよ……」
「なんだと……」
「君はペットにしてあげる」
(落ち着くんだ……)
冷静になろうとするタチバナに向かってストラが言う。
「私の全てで狂うまで気持ちよくしてあげるよ……絡め取ってあげる。この部屋を出る時、キミがどうなっているのか……私を倒しているのか、それとも……」
そこまで言うと、ストラは服を脱ぎ捨てた。
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