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キャッスル

「く、おぉぉぉ!!」
絶叫がこだまし搾りとられていく男。その上にまたがり性を貪る淫魔
「いいよその声……残念だったねぇ?」
汗と精液に濡れたからだでほほ笑む淫魔はこれから始まる大饗宴を想像して震えた。



人間の性を搾り殺す淫魔
それにあらがう人間。

そのふたつがぶつかり合う世界があった。

人間は捉えられると殺されるか、施設に入れられ、一定数の精液を確保するため個体数を調整されながら、生かされる。

人間も絶滅を待つわけではなかった。
淫魔を倒すため、諸国で誘惑にあらがう訓練を受けた部隊が組織された。イカせることでしか倒せないのだ。
そして今、囚われていた同胞をたすけるため、淫魔を倒すため、「キャッスル」と呼ばれる根城兼人間飼育場に
突入する。


「準備はいいか」
総勢ニ十人にも昇る救助部隊に俺はいた。「キャッスル」がある山のふもとでの会議、隊長が作戦を説明している
「キャッスル」は淫魔達の基地であり、囚われた仲間たちは殺されるか淫魔の本国へと送還
されるまでの一時的な拘束所だった。俺たちの国はかなり淫魔達に侵攻を許していた。
「キャッスル」を陥とし前線を押し上げなければ未来はない。そしてあいつも…
「おい。クラ」
肩をたたかれる。タチバナがいた。
「やっぱりコウのことが気になるよな。大丈夫だ。まだ連れて行かれていないはず。今日取り戻してやろう」
タチバナは笑っている。
俺とコウは同じ部隊に居た親友だった。タチバナもその部隊に居た。タチバナはそんなにしゃべるタイプではないが、三人は仲が良かった
しかし、前回の戦いでコウは囚われてしまった。そうだ。
今日なんとしてでもとりもどさなければ……
「ああ、取り戻す」
笑い返す。タチバナは満足そうにうなずくと
「死ぬなよ。俺も会いたい奴がいるんでな。そっちもやらなきゃいけないから、頼んだぞ」
と配置組に戻って行った。
隊長の声が響く。
「今回は四人一組で動く。作戦目標は囚われている仲間の解放が第一だ。予定されている本部隊の
「キャッスル」への大攻勢の混乱に乗じ侵入。囚われている仲間を解放し、離脱する。侵入ルートは各自渡した地図に。地上五階地下一階建てになっている
内部の地下と一階ニ階部分のどこかに囚われていると考えられる」
「地図と情報は確かなのですか?」
だれかが質問した
「この情報は事前偵察を行ったものから送られてきたものだ。彼は帰って来てはいない。鳩だけが戻って来た」
静寂が重くなる。
「かつての領主が使っていた城だ。内部の構造はそこまで変わっていないだろう。死地かも知れんがやるしかない
勝って取り戻すんだ。全て」
そうだ……保証はなくとも戦って勝たねばならない。闘志が湧いてくる。
「その他の情報は資料にある。今回、侵攻はあくまで本部隊の役目だ。無理はするなよ。特に上の階へ行けばいくほど強力な淫魔がいるはずだ。
逃げるのも作戦だぞ」
ブリーフィングは終わった。待ってろよ、コウ……!!

なだらかな山の頂上にキャッスルはあった。その最上階には四匹の淫魔がいた。
窓の外では人間の部隊が来るのがうかがい知れる。三百人はいるだろうか。この地方に居る全軍だろう。
「ねぇストラさま? あの人たち懲りないね。全員束になったって結局搾りとられるだけなのに」
青い髪の淫魔が笑う。少女のあどけなさを残しているが、間違いなく男殺しの色香をまとっていた。
「今回はどうするのですか? 外でお相手をなさるんですか」
東洋系の顔立ちをしたやわらかいほほ笑みを携えるものが窓の外を見ながら言う。
一見慈愛にみちているとも思えるが背中の黒い翼。そして豊かな乳房と肉付きのよい肉体が
今まで多くの男を搾り殺してきた無慈悲な悪魔と告げていた。
「私はたくさん搾れればそれでいいけどねぇ」
少し年齢を重ねた風貌のものが言う。寿命は人間とは比べ物にならないほど長いから好んでその姿なのだろう。
しかし肌はハリに満ちていて、肉厚の唇が老練な技を覚えた百戦錬磨の証明だった
「今この城に見方はどれくらいいるんだっけ?」
おそらく領主の物であった大きな椅子に座ったストラと言われた淫魔がつぶやいた。レースのカーテンに覆われ表情はうかがえない

「総勢60くらいですわ」窓際の淫魔が応える
「ありがとうカザネ」
「どうするんだ?」
青い髪の淫魔が訪ねる
「ファイ、最後は楽しい方がいい?」
ファイと言われたものはもちろん! と笑う。
「何を考えてるの?」年配の淫魔が言った。
「リザ様、このあたりの人間で戦えるのはあの子たちで全部。だから……最後はみんなでたのしみましょ?」
リザは応えを聞いてほほ笑む。
この地方での最後の戦いが始まろうとしていた。


1、

闘いは静かに始まった。決死隊の突撃が肩透かしに終わったからだ。森にはサキュバスは一匹もおらずなんと門があけ放たれていた。
「どうしますか隊長?!」
黒い城を目の前にした跳ね橋のまえで本隊長はしばし考える。出入り口はここしかない。
本部隊の隊長は応える。
「今日で全てケリをつけるぞ!城に入るんだ!捕虜となっていた仲間を開放し戦力を増やして淫魔を根絶やしにするぞ!」
俺達救助部隊は本部隊に混じり攻撃に参加せず城への突入を第一としていたが、これでは意味がない。
全軍と共に入る。おおきなホールロビーがある。闘いの場として考えられていたこの城は階段の位置が複雑で分かりにくいが
設計書通りならわかる。一見一階は何もかわっていない。
担当の地下に入った。
驚いた。誰もいない。淫魔も人間も。どういうことだ?
 
ロビーにもどると隊長と本隊長が離していた。
「報告! 地下には誰もいません」
「やはりか……」
本隊長がつぶやく
「どういうことです?」
「一階にもニ階にもネズミ一匹おらんのだよ」

救助の意味が無くなったのか? 誰もいないという報告が続々と入る。
本隊長と救助部隊の隊長が話しこんでいる。どういうことだ?淫魔達は逃げたのか?

『みなさん。いらっしゃい』
突如としてホールに女の声が響き渡った。
部隊に緊張が走る。
『ここまでお疲れ様。今日はいよいよ決着をつけにきたのでしょう? 決死の。死ぬ気での決着を』
「隊長! 跳ね橋が上がって行きます!」
ホールに居た全員が動揺している。
「何が望みだ!?」隊長が叫んだ。
『私たちも決着が望み……大丈夫。外の人間には手出しは一切しない。わたしたちもみな城の中……
思う存分搾りとってあげるわ』
妖艶な笑い声が響いた。
「全員を呼び戻せ」
救助隊長に言われ、四人で一階の部屋に散らばっている仲間を呼び戻すために廊下へとでた。
『みなさんで一辺に来てもかまわないけど、それじゃ面白くないわ。ゲームをしましょう』
どうやらどこに居てもこえが響くらしい。それぞれ手近な部屋へと入っていく。俺も小部屋に入った。
「誰もいないか!」
どうやら物置き部屋らしい。ほうきやちりとりなどの掃除用具が置いてある。別の部屋に……
「開かない!?」
さっき軽く開いたドアは動かなかった」
『みんなで集まるのはここまで……それぞれの部屋に階段を呼びだしてあげる。三階までバラバラに来てちょうだい。
三階から上は無法地帯……みんなでたっぷり楽しみましょ?』
部隊と寸断されてしまった。大きな音がなり、振り向くと壁だったところに階段ができている。
これを昇るのか?
『もうほとんど捕まえていた人間は送っちゃったけど、残りは最上階にいるわ。もし昇ってこれたら助けられるかもね?』
そいうことか…コウ!
組になっていた三人とも離れてしまった。とにかく昇らなければ。皆を信じて。


ホールロビーでは残った本隊長と隊長とニ十人程が現れた大きな階段を上った。
それぞれの小部屋にバラバラになった隊員も階段を上って行った。



それを聞くと最上階でストラはほほ笑んだ。
ついカッとなってやった。何でもよくはなかったけどこうなった。反省と後悔をしている。

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