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Love Romance Saga レンシャ記2

Love Romance Saga レンシャ記2


 その日、遊牧の民、シュメイル人の娘レンシャは、優しい恋人を思い、眠れなかった体を引きずるようにして、日の出とともに、馬を引きに広場へ向かった。
その瞳や頬は、寝不足では説明がつかないほどに潤み、火照っていた。
レンシャはいつものように愛馬のティルを呼んだ。しかし、彼はぐずるような仕草を見せ、レンシャに馬具を装着させようとはさせなかった。
「どうしたの、ティル? ほら……きゃっ。もう! いいわ、他の子に乗せてもらうから」
 無理に鞍を乗せようとするレンシャを、ティルは突き飛ばすように押しのけた。そんな彼の様子に、レンシャは普段は見せない苛立ちを露わにする。
 結局、ティルに乗るのを諦めたレンシャは、空いていた馬に乗って、昨日見つけた泉へと駆けだした。

***

「むぅ、この辺りのはずだが……。おお、いいところに……娘、そなたナルサムの村のものか?」」
 レンシャが村を出てしばらくしたところで、立派な身なりをした青年が、レンシャの祖父の名前を出して、彼女に声をかけた。
「はい……、そうですけど」
 輝くばかりの金髪を伸ばし、掘りの深い顔立ちに碧眼を光らせる青年の容貌は、貴公子を絵に書いたようである。たまに行商に訪れる商人以外、村の外の人間を見たことがないレンシャは、少し緊張した面持ちで答えた。
「どう行けばいいのだろうか? 案内してくれぬか?」
 青年は整った顔に、柔らかい笑みを浮かべレンシャに言った。その所作には、女性に接することへの慣れを思わせるものがあった。
「ごめんなさい、急いでいるんです。あの丘を越えたら、すぐ村が見えますから……」
 しかし、少しでも早く泉に向かいたいレンシャは、申し訳なさそうにしながらも、青年の案内を断った。
「む、そうか。すまぬな、呼びとめて」
 身分の高そうな青年は、人を使うことに慣れているのだろう。断られたことに少し面食らったようでもあった。が、気を取り直してレンシャに礼を言うと、村の方向へ馬を向かわせた。
 風変わりな訪問者を疑問に思いつつも、青年と別れたレンシャは、一直線に泉のある林へと馬を走らせた。

***

「邪魔をするぞ、ナルサム」
 村の外でレンシャに声をかけた青年が、ナルサムの出迎えを受けて言った。
「おお……、これはこれは、ミハイル殿下。このようなところへお越しいただき……」
 青年はロマリアの皇太子、ミハイル・ヴァン・ロマリアその人だった。10年前の元服の儀に、シュメイル人の元老の一人として出席していたナルサムは、その面影を見て、膝を折った。
「さ、狭い家ではありますが……」
「いや、シュメイルをシュメイルたらしめている、駿馬の嘶きを聞きながら、話に興じるのもよかろう」
 ミハイルは、広場に離された馬の群れを眺めながら言った。
「はっ、それでは……。殿下、此の度のご訪問は、何か御公務であらせますか?」
「なに、私の勝手で参ったまでだ。父がそろそろ私に家督を継がせようというのでな、我儘がきくうちに、国の中を見て回ろうと思ったのだ」
「しかし、このような辺境の地まで回られていては、御身に万が一ということも……」
「だが、国王といえば軍の責任者だ。三佳郷を見ておかぬわけにはいくまい」
「ははは、それはまた古い言葉を御存知ですな。ボルドルの葡萄踏みにノレールの織女、シュメイルの馬乗りでしたかな」
 ナルサムが挙げた三地方の女性は、それぞれの職業によって、自然に磨かれた性技を体得しており、床あしらいが上手いことで知られているのだ。
「ふっ、何が古いものか。今でも騎士や兵士の間では、自信を失いたくなければ、三佳郷の嫁はとるなと言われておるぞ」
 そう言って、二人の男は武人の間で通じる、俗な冗談で笑い合った。
「ん? なんだ、この馬は?」
 立ち話を続けるミハイル達の元へ、一頭の馬が近づき、何かを訴えるようにしてミハイルの袖を噛んだ。
「こ、これは失礼を。孫娘が世話をしている馬なのですが、普段はこのような粗相はしないのです。何卒、ご容赦のほど……」
「よいよい。馬のすることだ。……ふむ、しかし、何か訴えたいことでもあるようだな」
 ミハイルの袖を咥えた馬――ティルは、馬とは思えぬ真摯な色を秘めた瞳で、ミハイルを見つめていた。
「面白い、私に乗れと言っているようだ。よし、ニルサム、この馬を借りていくぞ」
 ティルの眼差しに、何事かを感じ取ったミハイルは、自分の馬から使いなれた馬具一式を取り外し、ティルの背に積んだ。
 自分の意が通じたことを悟ったティルは、ミハイルの準備が終わるのを、駆け出したい気持ちを抑えるようにして、じっと待っていた。

***

「ふふふ、レンシャの肌、とても綺麗だわ。淫魔でもこんなに滑らかな肌は、そう無いわよ」
「ああ……、姉様、はぁ……」
「可愛い声出して……、私に触られると気持ちいのね?」
「……はい」
 ミハイルと別れた後、目当ての泉に辿り着いたレンシャは、彼女を待ち構えていたドライアドと一緒に、泉の中で、睦まじく情交の前の沐浴を楽しんでいた。
 浅瀬に腰かけたドライアドは、レンシャを足の間に座らせ、小柄な体を、背後から包み込むようにして抱き、掬った水を彼女の体に浴びせていた。
 身中に渦巻く淫気に当てられ、淫夢にうかされながら長い一夜を過ごしたレンシャは、ドライアドの手に水をかけられただけで、堪えようのない疼きを感じ、溜息を漏らしている。
 少女の体を愛おしげに洗うドライアドの手は、母のような優しさに満ちていながら、どこまでも淫らだ。
 ドライアドの手は、新たに水を掬うため、あるいは別な部位に触れるため、レンシャの肌から離れざるを得ないところで、最後まで指を肌の上に残すようにして、ゆっくりと離れていく。そうすると、レンシャの肌には、いつまでも淡い余韻が残るのだった。
「本当に可愛い子……。来てくれて嬉しいわ」
 そう言ってレンシャを抱きしめたドライアドの目には、少女への淫欲と、安堵の色が浮かんでいた。
 昨日レンシャを抱いた時、ドライアドは彼女の愛らしさに、大きな欲を覚えていた。すなわち、レンシャの精気を吸うだけではなく、彼女を淫魔の仲間に迎えようと思い立ったのだ。そのためには、レンシャが衰弱してしまわないよう、気をつけながら、大量の淫気を浴びせる必要がある。そこまで考えたドライアドは、レンシャが誰かの治療を受け、正気に戻ってしまう危険を冒して、彼女を村へと帰したのだ。
 そして、ドライアドが賭けに勝った今、レンシャは彼女の腕の中で可憐な肢体を晒している。そのことが、ドライアドの安堵を引き出したのだ。
「姉様ぁ、んんぅ、そこはぁっ!」
 ドライアドの手が、内股に滑り込んだ途端、レンシャが四肢を縮こまらせた。
「どうしたの、レンシャ? それじゃ、私が触れないでしょう? 教えた通りにしてごらんなさい」
「は、はい……、んっ、あうぅ……」
 頬を真っ赤にしたレンシャが、腿の間をおずおずと広げ、両手を開いてドライアドの両膝に乗せた。
「本当に、いい子」
 遮るもののなくなったレンシャの開かれた体を、ドライアドの指先が、淡いタッチで這いまわる。
 自ら肉体を捧げる行為と、くすぐったさと紙一重の柔らかい性感が、レンシャの羞恥を煽る。肩口から覗き見える頬の色と、膝を掴む手の力みが、ドライアドにそれを伝えている。
「レンシャは、私の指が大好きなのね。貴女の可愛いここが、教えてくれてるわ」
 ドライアドは、無防備に開かれたレンシャの秘処で、ぬめりをかき混ぜながら、俯くレンシャの耳元に囁いた。
「こんなに蜜を滲ませて……」
 ドアイアドの指が、レンシャの大陰唇に隠れた、細かな襞を摘まみ、引っ張りだし、薄い襞を、指の間で捩り合わせながら、全体の形を丹念に調べていく。大きく縒れたところや、特に薄くなったところを見つける度、ドライアドは指の動きを強め、その感想を口にした。
「やあぁん」
 さすがに耐えきれなくなったレンシャが、足を閉じた。
「レンシャ」
 ドライアドは、優しい、しかし冷静な声でレンシャの名前を呼んだ。
「ううぅ……」
 その声にレンシャは再びドライアドの手に、弱い部分を晒け出す。
「ふふ、本当に可愛い子……。もっとしっかり抱いてあげるわね、レンシャ」
 沐浴の形を借りた前戯で、十分にレンシャを昂らせたと感じたドライアドは、昨日のように、苔と草で作ったベッドへとレンシャを導いた。

 泉からあがり、レンシャを緑のベッドに四つん這いにさせたドライアドは、彼女のお尻の側に周り、尻丘の谷間に顔を埋めた。
「ああっ、はあぁっ! 姉様、止めて、舐めちゃ、ああんっ!」
 ドライアドは、尖らせた舌先で、すでに綻んでいた膣口を中心に、レンシャの股座全体を広く舐めまわした。
 細く、しなやかな腰を、折れんばかりに反らし、可愛いらしい小尻を振ってレンシャは悶えた。しかし、ドライアドの顔は、レンシャの下半身に張り付いたまま離れない。
 的確で、執拗な舌戯を受け、レンシャの肌に汗が滲む。彼女のお下げを解いた赤毛からは、ドライアドの芳香にも劣らぬ、清く甘い体臭が、匂いたつようになっていた。
「あっ? 何? やっ、あうっ、ううんっ! ふううぅぅぅん!」
 レンシャが急に湧きあがった感覚に、驚きの声を上げた。
 見れば、緑のベッドから細く伸びた蔓が、レンシャの手足の指に絡みつき、その身をうねらせている。
 感受性の強いレンシャにとって、指や指の股は立派な性感帯だった。その全てを一度に愛撫され、彼女は唸るような嬌声を漏らした。
「ふふ、美味しいわぁ、レンシャのここ。んっ、れる……、これなら、入るかしら……?」
 ドライアドは大きく口を開き、舌の腹をレンシャの淫口に強く押し付けて、未成熟な女陰全体を一舐めすると、レンシャの花弁から口を離した。
「あっ? いや、あうぅ、姉様、ああっ、ああん!」
 レンシャが、股間に舌よりも固い感触を感じた瞬間、ゆっくりと、しかし躊躇なく、ドライアドの指が彼女の中に差し込まれていた。
 処女の境目を、初めて通り抜けた侵入者に対して、レンシャの膣口が反射的にきつく締まった。しかし、唾液と愛液、二種類の蜜を塗り込められた関門は、抵抗にはなりえず、レンシャの体は、ドライアドの人差し指を根元まで受け入れた。
「大丈夫、楽にして。痛くないでしょ?」
 ドライアドはそう言って、再び指を入口付近まで戻すと、今しがた指を通した、処女の証に空いた孔を、その大きさを図るようにして指先で探った。
「あら、……やっぱり馬に乗っているからかしら。ちょっと穴が広がってるわね」
「やっ!」
 恥部の特徴を口にされたレンシャが、身を固くする。ドライアドは、そんなレンシャを、体の内部を撫でることであやす。
「恥ずかしがらなくてもいいのよ。そのおかげで、もっといいことをしてあげられるわ」
「んっ、……いいこと?」
「ええ、そう。ちょっと、待ってなさいね」
 そう言って、ドライアドが手を宙にかざすと、脱ぎ棄てられていた薄衣の中から、蔦のベルトが蛇のようにして這い出てきた。
「んっ、……ふふふ」
 二人の足もとまで這い進んだ蔦は、ドライアドの脚を昇り、彼女の太腿の付け根に幾重にも巻きついた。さらに蔦の両端が、自分自身を編みこむようにして纏まっていき、複雑な起伏を持った尻尾が二つ出来上がった。
 ドライアドはその一方を、楽しげな笑い声を洩らしながら自分の膣に受け入れると、レンシャの入口を解していた指を抜き、彼女の尻丘に両手を添えた。
「あっ……姉様」
 レンシャは、無防備に晒した股間に不穏な気配を感じて、不安の声を漏らす。
自然と力の入った括約筋が、綻んでいた花弁を閉じるように締まる。が、ドライアドの手が、尻の丸みに沿って動くと、その僅かな緊張も淡雪のように解け去った。
 クチリ、と水音をさせて、蔦棒の先端がレンシャに触れた。
「ああっ!」
 きつく編みこまれた、指二本ほどの太さの、長さは比べるべくも無い蔦棒が、レンシャの処女膜の向こうへ踏み込んでいった。
 細い腰を両手で支え、ドライアドはゆっくりと腰を前に送る。細長い蔦棒は、ドライアドが指で探った処より、更に奥、未踏の内地へと進んでいく。
「姉様、姉様!」
 同性の恋人相手には、予想だにしなかった、奥地に踏み込まれる衝撃に、レンシャが縋るような声で、ドライアドを呼んだ。
「貴女が怪我をしないように、細く作ってあるから安心していいのよ。力を抜いて、私の方に、お尻を突き出して……」
 ドライアドの言葉に、素直に従ったレンシャのお尻が、蔦の擬似男根を生やした腰に押し付けられた。
「いい子ね……」
 レンシャの小柄な体に、ドライアドが包み込むように覆いかぶさる。未開発の胎道を犯すくびれた柳腰が、淫猥にうねった。
「やっ、ああっ! 中で擦れて……あうっ、ううあぁっ」
 喘ぐレンシャの下半身を捕まえ、腰を使うドライアドの顔には、余裕と愉悦の笑みが浮かぶ。一方で、ゆっくり、ゆっくりと捏ねまわすような腰振りからは、想像し難い強烈な摩擦が、レンシャの膣壁に加えられていた。
 レンシャは当然使ったことはなかったが、芋などの蔓を編み、男根を模した道具は、女性を慰める淫具として広く使われている。
 固さとしなりを備えた材質と、編み込みの複雑な凹凸が、悦びの元になるわけであるが、今レンシャを責めているのは、植物を扱うことに長けた、淫魔が作りあげた代物だ。初めて他者と接触した、レンシャの初心な粘膜には、荷が勝ちすぎる相手と言えた。
「んっ……、ふふ、そんなに頑張って締め付けなくてもいいのよ、レンシャ。貴女は、私を受け入れていればいいの」
「違っ、んんぅ、姉様が奥に……、擦ってくる、から、ああっ!」
 ドライアドの気遣いによって、一般的な張り形より、ずっと細く作られた擬似男根も、レンシャの若すぎる果肉には、十分な質量をもっていた。
 反射的に異物を食い締めてしまう内肉は、ドライアドの軽く揺する程度の一突きを、渾身の力で抱きとめてしまうのだ。
 愛蜜の滲む襞の壁を、蔦棒は複雑な編み目でこそいていく。その一目一目が、甘美な痺れを巻き起こし、内壁全体に弱く、心地よい痙攣が広がっていった。
「ああっ、ああーっ、ううぅ、くふああぅ」
 摩擦の熱を貯め込み、ままならない淫らな肉を体の奥に抱え、レンシャは意味のない呻きを虚空に漏らす。
 甘い体臭を濃くし、背筋を震わす華奢な体を、背後から見下ろすドライアドには、レンシャのピークが近いことが容易に見て取れた。だが、彼女は一向に腰の動きを強めようとはしない。貪らない、互いを溶かし合う、絡みつく蔦のようなセックスが、ドライアドの性質であるようであった。
「可愛い、レンシャ。絶対に離さないわ……」
 汗みずくになった背中に、ピタリと体を寄せ、ドライアドが言った。

***

「ふむ、なるほどな……」
 ティルの背に乗り村を出たミハイルは、ティルに連れられるまま訪れた林の中で、ようやく納得がいった様子で呟いた。
「まあ、任せておけ」
 地面に降り立ったミハイルは、木立の向こうの光景に、前足をかいて催促するティルを軽く宥め、泉のほとりへと足を踏み入れた。

***

「レンシャ、ふふ……ッ、誰!?」
 レンシャを背後から犯していたドライアドが、無造作に近づいてくるミハイルに気づき、顔をあげた。
「ドライアドか……。悪いことは言わん。その娘を放して行くなら、見逃してやらんでもないぞ」
 冷静に、泰然とした姿勢を崩さず、歩み寄るミハイルの姿に、ドライアドは気圧された様子で硬直していた。
 淫魔の目を通して見るミハイルの体には、薄く靄がかかって見えるほどに精気が満ち満ちていた。一目でドライアドの種族を見抜いた眼力も、レンシャとの情交を前にして毛一筋ほどの動揺も見せぬ精神力も、ミハイルが只者でないことを如実に語っている。
 逃げるべきだ。この男の前にいてはイかされる。ドライアドの淫魔としての本能がしきりに叫んでいた。だが……
「…………そ、それはできない相談だわ……」
 レンシャの体から離れ、逃げだすかに見えたドライアドは、精一杯の虚勢を張って、その場に踏みとどまった。
「ほう……」
 ミハイルが意外そうな顔をする。ドライアドの様子から、自分の力量を正確に測り、怯えていることを感じたからだ。ひたすらに淫乱で、向こう見ずな淫魔ももちろんいるが、それは目の前のドライアドの印象と異なる。それがミハイルには不思議だった。
 だが、もとより、ミハイルには温情をかけるつもりはない。見逃すと言ったのは、ただ面倒なだけだ。
「ふん……、よかろう、ミルトの血筋が為せる技、とくと味わうがいい」
 向かってくるなら容赦はしないと言いたげに、ミハイルは、疲れ果て倒れ伏したレンシャの横に立つドライアドに、襟元のボタンを緩めながら歩み寄り――間合いの詰まったところで、素早くドライアドの太腿に飛びついた。
「きゃっ、くっ、……はあぅ」
 本能的に察知した実力差に加え、ミハイルの口から出たミルトの名に委縮していたドライアドは、ミハイルの突然のタックルに反応できない。ミハイルの動きも巧みで、力づくで押し倒すのではなく、淫魔に触れていられるよう、抱えたお尻を掲げるタックルでドライアドを上手く押し倒した。
 下半身にしがみつかれた時点で、ドライアドの負けは決まったようなものだった。
 レンシャとの情交によって、それなりに昂っていたドライアドはハンデを負い、しかも不意を突かれたために、男根を模した蔦棒が未だに股間に残っている。
 当然、ミハイルがそれを見逃すはずもなかった。
 ドライアドの右足を、股の間に挟み封じた上で、張り型を右手で小刻みに動かしていく。抜け目ない左手は、しっかりと胸の膨らみを揉んでいる。
「ああっ、はあっ、やめて、ううんっ!」
 ドライアドに残された術は無かった。ミハイルの下から這いだそうと、地面を蹴っても、右足に絡んだミハイルの脚は一向に緩まない。胸に添えられた手が邪魔で、体を起こすこともかなわない。せめてもの抵抗に、挟まれた右足を震わせて、ミハイルの股間を擦ってみるものの、旅装のズボンを纏ったままの相手には、いかほどの影響も無いのだった。
 処女や若駒には通じた、鎮静効果のある香りを放っても、ミハイルには通じないようである。淫魔の超常的な能力は、つきつめていけば、全て淫気によるものだ。強い精神力を見せる相手には通じないのであった。
「この……、あっ、ひゃあぁっ、うう……あああっ!」
 ドライアドは必死に繋ぎとめた意志を振り絞って、蔦を操り、ミハイルを狙った。だが、蔦がミハイルの腕に絡もうかという瞬間、張り型を掴む手が素早く閃き、ドライアドの気を散らしてしまう。
 自由な角度、速さで動かすことができる張り形での責めは、ミハイルの卓越した技能と相まって、ドライアドに快楽を与え続ける。道具の性質上、蔦棒は突くよりも、編み目を擦りつけるように使うのが効果的だ。ミハイルはそれを忠実に守った上で、さらに棒の先端をぶつける場所を選んで、腕を動かしていた。
レンシャとの繋がりを深めるために、好みの形に整えてあったことが、今は尚更に、ドライアドへ不利にはたらいていた。

 ミハイルがドライアドの淫気を散らしきってしまうのに、それほどの時間はかからなかった。

***

「姉様……」
 腰の抜けた体で、地面にへたり込み、戦いの行方を見守っていたレンシャが、悲しげにドライアドを呼んだ。
 だが、その声の色とは裏腹に、肌は火照り、脚の間は濡れそぼっている。淫気に当てられ続けた女性の、典型的な症状だ。
「娘、抱くぞ」
 ミハイルはただ一言そう言って、服を脱ぎ始めた。

 厚手の旅装を解いたミハイルの体は、見事な肉体美を誇っていた。よく締まった逆三角形の体は、腰が細くスラリとして見えるが、盛り上がった筋肉のおかげで華奢なところは全くない。
「あぁ…………」
「悪いようにはせん。力を抜け」
 力の入らない体を、後ずらせるレンシャのもとに、ミハイルは優しい笑みを浮かべて屈み込み、膝に手をかけた。
「……ッ」
 ミハイルの股間で、ググッと首をもたげてきた男根を見て、レンシャが恥ずかしげに顔を背けた。
「ほう」
その仕草に、ミハイルは感心した。レンシャの反応は、常であれば、少女としては一般的な反応であるが、今の彼女は普通の状態にない。淫気の影響で、強力な媚薬を飲まされたようになった体をもてあまし、人恋しさに凍えている状態にある。それでもなお、恥じらいを見せるレンシャからは、淫気に対する抵抗力の強さが窺えたのだ。
しかし、ミハイルを押しのけることができるほど、余裕が残っているわけでもなかった。
 レンシャを厚い胸板に抱きよせたミハイルは、正座した自分の太腿に座らせるようにして、座ったまま彼女の秘裂を貫いた。
「はっ……、ああぁっーー!」
 乗馬による傷と、淫魔による掘削によって、やや拡張されていたとはいえ、ミハイルの剛直を通すには、少女の孔は狭かった。秘部から突き抜けた衝撃に、レンシャが叫んだ。
「そうだ、耐えることはない。そうやって、声をあげ、私にしがみついていろ。すぐに良くしてやろう」
 分身をレンシャの体内に深く埋めたまま、ミハイルは彼女の全身を、特に腰のまわりを掌で撫で擦る。
 するとすぐにレンシャの体から、強張りが抜けていった。
「ふっ、くはっ……、あん……」
 レンシャの脚に、痛みに耐えるのとは違った意味で力が入り、ミハイルの胴を締め付けた。彼女の頭が、ミハイルの肩にもたれかかる。
「うっ、むぅ……」
 思わずミハイルが呻いた。
すっぽりと腕の中に収まるレンシャの体は、予想以上に抱き心地がよく、また、肉茎を受け入れた腰が、滑らかにくねり始めていた。
 胴を挟む腿の力と、よどみのない腰の揺れは、まさに三佳郷に数えられるシュメイルの女の動き、そのものだった。どんな駄馬からも疾走を引き出す、独特のリズムは、人間の男の野生にも火を付けるようだ。
 抱き心地も、小柄だというだけでは説明がつかないものがあった。レンシャの素直な性格や、関節の柔軟さ、肌の肌理、香り、いろいろな要素のバランスがもたらした、天賦の才がそこにはあった。『誘い受け』と呼ばれる戦い方をするバトルファッカーには欠かせない素質だ。そして、それこそがドライアドが負けを承知で、ミハイルに挑むほどの執着を見せた対象だったのだ。
 ややもすると、百戦錬磨のミハイルからさえ、射精を引き出しそうなレンシャの動きを受け、ミハイルは体勢を変えることにした。
 レンシャを横たえさせ、正対するのを止め、互いの腰の面を交差させる側位の一形、俗に松葉くずしと呼ばれる体位をとった。大きく股を開かせ、片足を胸の前で抱えることができるこの体位は、レンシャの下半身の動きを封じるとともに、寄り添うことで男心を蕩かす、レンシャの天賦をも遠ざけることができる。
 まだ淫魔化までは至らない、人間であるレンシャに、イかされたところで何が起きるわけでもない。むしろそれも一興と、楽しむこともミハイルは考えた。しかし、同時に、別の考えも浮かんだ彼は、そちらの案をとり、射精の危険を避け、一度レンシャに自分の強さを刻みつけておくことにしたのだ。

 一方的に腰を使える状態になったミハイルは、8の字を横にした∞の軌道でピストン運動を行った。彼を鍛えた、御側女衆の間で、インフィニティピストンの異名を持つその動きは、ミハイルが本気を出した証でもある。
 一度の突き込みの間にも、大きく角度を変えていくことで、切っ先が膣内で跳ねまわる。特に行き止まりのところで、縦に跳ねる亀頭が、子宮の入り口付近を擦っていくのが、インフィニティピストンの特徴だ。窮屈な肉洞で、無理やり突入の向きを変えうる強靭な筋力と、急な方向転換にも中折れしない剛直が求められる、使い手を選ぶ性技でもある。
「ああっ! いやあっ、ああーーー!!」
 巧みでかつ、男性的な力強さに満ちた抽挿に、太腿をがっちり抱えられ、逃げることも許されないレンシャが、細い喉を裂けんばかりに震わせた。
 ドライアドの腰使いには無かった、嵐のような激しさに、レンシャの理性は否応なく巻き込まれていく。また、蔦の編み目に、優しく、淫らに磨かれた襞粘膜は、ミハイルの亀頭がもたらす粘膜性の摩擦に、よく応えた。
 日々の騎乗生活の中で育まれたレンシャの内筋は、粘膜から伝わる甘美な信号に反応し、少女とは思えぬ力強さでミハイルを締め付けた。
「うっ……、そうだ、いいぞ」
 ミハイルは、彼のインフィニティピストンすら止めかねない締め付けに、気をよくした風情で言った。御側女衆を相手に鍛え、数多の淫魔と実戦を重ねてきた自分から、年端もいかぬ小娘が、本気の一環を引き出し、その上でなお反撃してくる天稟が、人を従える立場にある彼の心を震わせたのだ。
「あうぅっ! はああっ、ああーーー! んんあああぁぁっ!!」
 溜まった淫気を、嬌声に乗せて吐き出させるかのように、ミハイルは腰を使い続けた。
外伝の続きです。

需要がどのくらいあるのかは分かりませんが、趣味に走ってレズ多めです。
とは言うものの、百合成分はあまり表現できていないかもしれません。orz
(我こそは、という方がいらしたら、ぜひ投稿を!)

ギャグになる恐れがありましたが、本編でも軽い落ちを入れたりしているのでいいだろうと思い、
今回、考えていた『技名』を出してみました。
やっぱりセックス描写の途中で、技が出てきちゃまずいでしょうか?
(いや、登場人物が叫ばなければ大丈夫だ!)

皆さんは、三佳郷(なんて分かりやすい伏線……w ※二つ目の***の後あたりを参照)では、どのお里がいいですか?
僕はボルドルに行ってみたいです。

>>オパイさん
>レズ
同志の存在が心強いです。

>>名無しさん
一瞬考えましたが、やめました。
前回は空気だった愛馬ですが、今回はちょっといい働きをしてもらいました。(一瞬ですがw)

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