Love Romance Saga4
イマキス城の窓辺から、城下を見下ろすと、日暮れの訪れに合わせて、家々に灯された明かりが、淡い光の列を象っていた。道に沿って並ぶ光の道しるべは、徐々に細く薄くなっていく。
農民の収穫祭だろうか。郊外に広がる畑のあたりで、温かな色の光が、ゆらゆらと揺れているのが窺える。きっと脱穀を終えた麦の束だろう、かすかに見える柔らかな凹凸が農地に影を落としていた。
秋夜、そんな言葉が心に浮かんだ…
「ふう……」
「ど、どうされたんですか?アルフレッド様」
お風呂からあがり、寛いだ格好で日記を記していた僕が、突然溜息をついたことで、ベッドを整えてくれていたセシリアが、怪訝そうな声をかけてきた。
「いや、少し疲れてね…」
「それはいけませんわ、アルフレッド様。さぁ、早くお休みになってください」
掛け終えたばかりの真新しいシーツを、彼女がパンパンッとかるく払う。
「あぁ、ありがとう、セシリア。そうさせてもらうよ……」
痛みを訴え始めた腰を、トントンと叩きながら、日記帳を閉じる。続きは明日だ。ああ疲れた、今日はいろいろあったからなぁ。そう続きを書くとしたら……
「道を開けろ!衛生兵を呼べ!若様がイかされた!!」
ダスティンに支えられた僕を、いち早く治療するための先ぶれの声が、城内に響き渡った。
「若様が!」
「イかされたっ!?」
先ぶれの声を聞いた者は皆、道を空けて僕たちを通してくれる。向けられる真摯な眼差しから、彼らが、僕の事を心底心配してくれているのが分かる。
だが、彼らの瞳を受け、僕の心に浮かんだ思いは、
は、恥ずかしいっ!
羞恥心だった。
精嚢の中で渦巻いている淫気のせいで、僕の分身は、慰めを求め、これ以上ないほどにいきり立っている。しかも、下着との摩擦で暴発するのを防ぐため、ズボンの前を切り裂いた穴から、陰茎を露出させた状態でいるのだ。
ダスティンが気を利かせて、マントで器用に隠してくれているものの、即席のカーテンの奥では、歩調に合わせて、ヒョコヒョコと間の抜けた上下運動を見せている。治療しやすいように、また副次的な感染――対淫魔戦では、服との摩擦による空しい暴発――を防ぐために、負傷部位を露出させるのが戦場の慣わしとは言え、今の姿はいかにも情けない。
昼下がりの城内、使用人や警護兵がそこかしこで、普通に仕事をしている。兵士たちは、見て見ぬふりをしてくれていたが、使用人の女性たちは、その純粋な優しさから、ある意味残酷な、気遣うような視線をよこしていた。
他者の働きかけを求めている肉棒は、彼女達の純真な視線にすら敏感に反応し、ビクビクと激しく脈打つ。
こちらを見ていた、僕より年下のメイドと目が合い、羞恥心に振れていた心の針が、怪しい快感に傾きかけたとき、
「アルフレッド様!!」
今最も聞きたかった、頼もしい声が響いた。
「セシリア〜」
顎のラインで切りそろえた、栗色の髪を揺らし、清潔なメイド服に身を固めたセシリアが、こちらに駆け寄ってくる。
「アルフレッド様、ご無事ですか!?」
「うん、イかされちゃったけど、ダスティンが助けてくれたから…」
「まだ命に別状はないが、早く若の治療を…」
「ええ、分かっているわ!アルフレッド様、それで何回イかされたのですか?」
「え…そ、その、……さ、三回……」
「三回ですって!?ちょっと、あなたがついていてなんでそんなことになるのよ!」
「訳は後で話す…くっ、…それより……、わ、若を……」
股間に渦巻く淫気に、さしものダスティンも僅かに息を乱す。
「まさか、あなたまで!?……アルフレッド様、あともう少しだけ我慢していただけますか?」
「え、ああ、大丈夫だよ。ここまで来て、少し安心できたから…」
「では、少しだけお待ちください。所要を済ませてしまいますので…」
ちょっとそこまで行ってきます、といった具合の、こともなげな風情で言葉を継ぐと、セシリアは一歩ずれて、ダスティンの前に立った。
「さぁ、出しなさい」
「お、おい…」
肩に担いだ僕の腕を右手で握り、僕の肩にまわした左手でマントを支えているため、両手がふさがっているダスティンのズボン――彼は僕ほどの重症ではないため、穴は空いていない――を、ダスティンの前に跪いたセシリアが、素早く脱がせた。
「アルフレッド様をお守りできなかった人に、気遣いなんかしたくないですけど、まぁ、武士の情けですわ。一応隠して差し上げます」
押さえを失った剛直が、ボロンッと飛び出した瞬間、真っ白な女物のハンカチがかぶせられた。
武士の情け……か?
衆人環視の中――城の廊下のど真ん中――で、そそり立つ肉竿にハンカチをかけたダスティンが立ちつくす。作りかけの照る照る坊主を股間に生やした姿が、哀れを誘う。
それでも彼は、僕を支えている手を放そうとはしない。ダスティン、君ってやつは……。
「なにを…やめ…おおぅ」
ハンカチの影に差し入れられたセシリアの手が、無防備なダスティンのものを掴む。暖かな女性の手の感触に、ダスティンの腰が引ける。
「しっかり立ちなさい!アルフレッド様がお怪我でもしたらどうするの!」
「くっ……」
屈みこもうとしていたダスティンに、セシリアの声が喝を入れる。下がりかけた僕の肩が、力強く床を踏みしめる彼に、再び引き上げられた。
僕は、別の人に支えてもらうか、なんなら座っていても良かったのだが……。
「いきますよ……」
ダスティンがしっかりと足場を固めたのを見て、宣言がなされる。スゥッとセシリアの手が揺らいだ次の瞬間、
「ほふぅぅぅ……」
シュパパパパパパパパパ
至福によって喉の締まりが緩み、自然に漏れたような溜息と、布を叩く、軽い連続した打撃音が打ち鳴らされた。
「「おお……!」」
そして周りから感嘆の声が湧きあがる。僕もその一員だ。
素早く、小刻みなセシリアの手淫のストロークが、ハンカチの端を打ち、傘をふんわりと広げていく。先ほどから聞こえる乾いた音は、彼女の手とハンカチの布地が奏でていたのだ。しかも、何度も手が触れているにも関わらず、ハンカチは下に落ちることもなく、ダスティンの頂冠を覆っている。作りかけの照る照る坊主は、なだらかな裾野を持った大山へと姿を変えていた。
固定されていない布きれが、どうしてこれほどの安定を保てるのか。目を凝らすうち、その秘密に気が付いた。
ハンカチの山頂を形成している、亀頭によって盛り上がった部分が、微動だにしていないのだ。
どれほど正確なストロークを描けば可能になるのだろうか。セシリアはダスティンの自然な勃起角度を保ったまま、彼の陰茎を扱きたてているのだ。
「おおぅっ、くう、おほおぅぉぉ……」
ダスティンが、仁王立ちのまま天を仰ぐ。
そうだろう、自由にふるまう逸物に、あれほどの摩擦を受けているのだ。その開放感たるや、すでに射精時のそれに匹敵するものがあるはずだ。
肩から伝わる振動で、彼の膝がガクガクと震えているのが分かる。
「くっ…!」
ダスティンが低く呻いた瞬間、美しい山稜を築いていたハンカチが、大きく形を崩した。
セシリアの手コキが乱れたのではない。ダスティンが耐えきれず、空腰を打ったのだ。
「ちょっと、治療中なのに、じっとしてることもできないの?そんなことじゃ、騎士の名が泣くわよ」
「むぅ…くぉ、くふぅ……」
セシリアに言われるまでも無く、ダスティンも必死に腰の動きを止めようとしていた。僕の肩を掴む手に力が入る。足を一度踏み変え、笑っていた膝に喝を入れたようだ。
しかし、その抵抗も、功を奏しているとは言い難い。それどころか、上半身と足場が固定されたせいで、余計に腰の動きが強調され、時折カクッと揺れる腰に注目が集まった。
名のある騎士にとって、空腰を打たされるなど、恥辱以外の何ものでもない。しかも、周りには、立ち去る機会を失った――いや、あれはセシリアの手技に魅入られているのか――人々が、遠巻きにこちらを伺っているのだ。
「すごい………」
警備兵の一人が、ポツリと漏らした。無理もない。
セシリアの正確なストロークは、ダスティンの乱気流を思わせる、不規則で激しい空腰にも、一向に乱れを見せない。
極限まで無駄を省いた、安定したその動きは、ダスティンの恥骨を叩く力強さとあいまって、上空を舞う渡り鳥の羽ばたきを想起させた。
「そろそろですわね……」
セシリアが、渡りの終わりを告げる。ダスティンを目的地まで誘った淫らな羽は、徐々にその羽ばたきを緩めていく。ゆっくりと、時間を引き延ばすようにして、彼女の指が肉棒の全体を撫でおろしていく。
ダスティンの付け根に達した瞬間、セシリアの手は、滑空してきた鳥が、接地する際見せる、大きな羽ばたきのようにして、素早く最後の一扱きを入れた。
トンッ
「おおぉぉぅっ…」
セシリアの手が、軽い打撃を骨盤に加えた瞬間、亀頭を覆っていたハンカチに、じわっと染みが広がり、ダスティンの膝が折れた。
淫気と混ざった精液は、その嵩を大きく増す。セシリアの治療によって、射精に導かれたダスティンは、セシリアが手を離した後も、溜まりに溜まったものを排出すべく、未だに断続的な放出を続けていた。
「お待たせいたしました。次は、アルフレッド様ですわ」
床に崩れ落ちてしまったダスティンに変わり、肩を貸してくれたセシリアが、そう言って、マントで隠している部分に手を伸ばしてきた。
「お、おいっ、若はちゃんと救護室で…」
僕の番か、と身を固くし、一部をもっと固くしたところで、蹲ったままのダスティンが、セシリアに声をかけた。
「当たり前でしょう!あなたと一緒にしないわよ!……あぁ、絨毯に溢したら弁償させるわよ…」
セシリアの言葉に、ダスティンが慌てて、射精を受け止めていたハンカチを押さえた。すでにハンカチの内側には、大量の精液が出されていて、動くとこぼれてしまうようだ。さりとて他に手頃な布は無い。射精が続いていて、何かで受け止める必要がある以上、彼はハンカチをあてて、じっとしているよりないのだった。
「さぁ、アルフレッド様、行きましょうか」
ハンカチを宛がったまま、蹲るダスティンを尻目に、セシリアが僕を抱えて踵を返す。
「うっ……」
そんな僕たちの背後から、哀れを誘う短いうめき声が聞こえた。
だが、振り返らないのも武士の情け。
僕はセシリアと一緒に、救護室へと足を速めた。
シャッ
セシリアは、僕をベッドの縁に腰かけさせると、ベッドの周りを囲むように設置されたカーテンを、勢いよく閉めた。それによって、救護室に並ぶベッドの列から、この空間だけが隔離され、セシリアと二人きりでいることが一層強調される。ベッドはどれも空いていたので、ドアの方のカーテンさえ閉めれば事は足りたのだが、あえて全周を閉め切ったのは、こうした効果を狙ってのことかもしれない。
「さて、アルフレッド様。早速治療にかからせていただきますので、まずはお召し物を…」
「ああ……」
「あっ、お待ちを」
まずは服を脱ごうと、シャツのボタンにかけた手が、セシリアに軽く押し留められた。
そのまま僕の手を両脇に降ろさせると、セシリアのほっそりした指が、ボタンを外し始める。全てボタンを外し終えたセシリアは、僕の膝を跨ぐようにして立ち、シャツから腕を片方ずつ丁寧に引き抜いていった。
「はい、バンサーイ」
「ちょっと、セシリア…」
シャツを脱がし終えたセシリアは、こんどは肌着に手をかけ、そんな声をかけてきた。
子供を着替えさせるような声かけに、さすがに恥ずかしくなって僕が抵抗すると、
「これも治療の一貫です!大人しくして下さい!」
「治療って、ダスティンにしたみたいに、射精させることなんじゃないの?」
「一回イかされたぐらいなら、あの役立たずにした程度の単純な治療で済みますが、アルフレッド様は三回もイかされてしまっているのですよ?もっとずっと深い、心の奥底からの満足を味わわない限り、安心できませんわ」
「僕が満足するのと、バンザイと何の関係が…」
「大丈夫、セシリアは心得ておりますわ。さっ、両手を上げて…」
「…バンザーイ……」
たかが肌着一枚脱がすのに、どれほどの違いがあるものか?半信半疑のまま両手を上げた僕の肌を、ゆっくりと布の感触が昇って来る。顔がスッポリと覆われ、視界が奪われた。布の白さに包まれた世界の中で、自分と、すぐ傍にいるセシリアの体臭だけが仄かに香っている。突然開けた視界に広がるセシリアの姿と、芳香。
あぁ…、癒やされる……
「はい、次はベッドにゴロ〜ン」
「ゴロ〜ン」
腰かけた状態から、そのまま後ろにひっくり返る。勢いがつき過ぎて、少し浮かされたお尻とベッドの間に、セシリアがすかさず膝を差し入れた。そのまま下着と一緒に、ズボンが引き抜かれていく。
あぁ……
思いがけない幸福感に包まれていた僕は、気づけば、一糸纏わぬ、生まれたままの姿に剥かれていた。
僕の服を一通り脱がし終えると、セシリアは今度はベッドの中ほどに僕を座らせた。軽く曲げた僕の膝が作るスロープを、滑り降りるようにして、彼女が僕の腰に跨ってくる。
「あぁうっ!」
下着越しの肉溝が、ペニスを挟むようにして捉え、グウーッと重みをかけてきた。
「さっ、アルフレッド様。私の服も脱がせてくださいませ」
セシリアはそう言うと、さらに体重をかけるようにして体を密着させてくる。
首筋から香る、セシリアの香りにうかされながら、彼女の背後にまわした手で、エプロンの結び目を解く。
「うぁっ…」
止め紐を解き終えると、セシリアは僕の膝の上で、長い脚を器用にたたみ、クルリと向きを変えた。擦り潰すような動きが股間に伝わる。
さらに体重をかけるようにして、背中を預けてきたセシリアを抱え、後ろから抱き締める形で、ボタンを一つずつ外していく。鼻先を細く量のある栗色の髪に埋め、手探りでだ。
僕の手が下へ進むにつれて、きっちりとメイド服を着込んだセシリアのシルエットが、少しずつ崩れていく。ボタンを全て外し、大きく開いた襟元を引き下ろすと、背中の白が露わになった。
「あくっ…うぅ…」
セシリアは僕が袖をぬくのを待ってから、再びこちらに向き直り、首に腕を絡めてくる。彼女のお尻が乗っている股間に加えて、胸板にも膨らみが押し付けられ、女性特有の柔らかさが強調された。
僕は、促されるまま、再び死角にある手の位置に現れた留め具――ブラジャーのホック――を外しにかかった。
カチッという音とともに、拘束を解かれたセシリアの乳房が、彼女本来の形に戻る。瑞々しく張った乳肌は、ほんの僅か、重力に引かれて落ち、微かに震えて見せた。
肩ひもを外させ、万歳をさせた腕からブラを引き抜く。
こうした作業は、常に密着したまま行われ、彼女が動く度にふよふよとした感触と、その中心で固くなった二つのコリコリしたものが、僕の肌を擦った。
上半分を脱ぎ終えたセシリアが、再度巧みなターンをきる。しかし、今度は今までとは違い、回転の勢いのまま腰を浮かせると、前に手をついて、四つん這いの姿勢をとった。
僕は、迷うことなく、彼女の腰に纏わりついたメイド服と、要の下着を引き下ろし、足から抜き去った。
「セシリアッ…」
彼女のお尻でさんざん嬲られ、暴発寸前だった僕は、目の前で揺れる暖かな場所に、人恋しさに凍えそうな相棒を納めるため、セシリアに圧し掛かっていった。
「えっ…? セシリア?」
しっかりと狙いを定め、入口にあてがっていた切っ先が、腰を押しだした途端、空を切ってしまう。セシリアが逃げるようにして、ベッドに腹這いになってしまったからだ。その上、太腿もぴたりと閉じ合わされ、入るべき場所が完全に隠されてしまっていた。
「な、なんで? お願いだよ、セシリア、僕、もう…」
ビクンビクンと収まりのつかない、切なさの塊を抱えたままの僕に、肩越しに振りかえったセシリアは、意地悪な、でも魅力的な、彼女独特の笑みを浮かべた。
「アルフレッド様。お辛いのはよく分かります。でも、これも治療のためなのです」
「そうなの?」
「ええ。アルフレッド様には、心底からの満足をしていただく必要がありますから」
そうだった。でも、満足するだけなら……
僕の表情から、言いたい事を読み取ったセシリアが言葉を継ぐ。
「通常の場合でしたら、普通の治療を何度か行えば、十分な満足が得られます。しかし、アルフレッド様は、昨夜からかなりの回数、射精されております。過ぎればお体に障りますので、今回は、一回限りの射精で満悦に達していただきますわ」
僕の体を思っての言葉に、心が熱くなる。
でも、今の僕に、セシリアの中で腰を使うより、満足が得られる行為があるだろうか……?
………はっ!
「もしかして……」
「ええ、昨夜お試しいただいた中で、アルフレッド様が一番お気に召した、アレですわ」
昨日、ダスティンが部屋を出た後、僕たちはベッドの上で、純粋に愛し合う行為から、バトルファックのトレーニングともいえる行為まで、さまざまな愛戯を試みた。
無論、どれが一番気に入ったか、はっきりと告げるようなことはしていないが、セシリアにはお見通しだったようだ。腹這いになったセシリアに、後ろから覆いかぶさる自分。二人の位置関係を改めて意識すると、予想は確信に変わった。
「「『書きとり』」」
「だね」「ですわ」
二人の声が合わさったことで、確信が正しかったことが分かった。
「では、早速始めましょうか?」
「ああ」
セシリアは腹這いのまま、少し前へ移動し、反対に僕は少し後ろへ下がる。僕のいきり立ったものが、彼女の足の裏の上にきたところで、準備は完了だ。
「文字はお決めになりましたか?」
「うん、決まったよ。…じゃあ、始めるよ」
セシリアが顔を伏せたのを確認して、僕は肉棒の先端を、ストッキングに包まれた、彼女の足裏に押し付けた。
「くくううぅぅ……」
僕は肉茎に手を添え、押しつけた先端を左下へ払う様にして滑らせた。柔らかい布との摩擦が、敏感な粘膜を擦り、ピリピリと痺れるほどの刺激が昇って来る。
「くぅっ、ふうぅぅ…」
一度腰を浮かせて息をついたあと、今度は最初に亀頭を押しつけたところの、やや上方に着地させ、縦に長い線を引くようにして肉棒を滑らせる。先ほどとの3〜4倍は続く長い摩擦に、思わず腰を引いてしまいそうになるのを、何とか抑え、最後まで動かしきった。
そう、『書きとり』とは、男根を用いて文字を書く行為を指すのだ。亀頭への摩擦に耐えるトレーニングに適していることから、騎士の鍛錬法として普及している。擦りつける対象は、女性の体の他、シーツなどを使うことで、一人での鍛錬も可能である。
また、字の持つ不規則な軌道が、腰使いの鍛錬にも適している。僕のような未熟者は、手を添えて行うが、熟練者ともなると、腰の動きだけで見事に文字を書ききる。
昨晩、セシリアからこの鍛練法を習った僕は、彼女の勧めに従って、東洋の島国から伝わった文字を使っている。バトルファックが盛んなその国の文字は、線の数が多く複雑で鍛練に向いているのだ。また、字そのものに意味が込められており、セックスに関係する文字を選べば、その概念を理解する、精神的な修養にもつながる。
図書室の蔵書の中にも、その島国から伝わったものが数多くある。今回、僕はそうした書物で得た知識から、『性』という文字を選んだ。セックスそのものとしての意味も持つこの字は、根源的な、動物としての人間や淫魔の性をさすのだそうだ。
くすぐったいのだろう。クスクスと笑い声をたてるセシリアに、字画を書きつけていく。
腰の動きがスムーズになるよう、座らずに、低く伏せたような姿勢をとるのが『書きとり』の基本だ。そのため、目の前にはセシリアの綺麗なお尻がアップで迫り、脳髄が蕩けるようだ。
「くああぁぁっ…」
思わず声をあげてしまったのは、初めての横画に達したからだった。
縦に割れたとば口を、横に摺る行為は、尿道口を押し開くような刺激的な力が加わるのだ。
「はぁはぁ、セシリア、書き終わったよ…」
最後の一画をしっかりと止め、彼女に終りの合図を送る。
すぐに、連続して字を書いていく鍛練法もあるが、僕たちの取り決めでは、一字書き終えるごとに、何と書いたか、セシリアに当てさせることになっていた。彼女に分かる様に書くことで、丁寧な腰使いを身につけるためだ。
「なかなかお上手でしたわ。『性』ですわね。いい字を選ばれました」
よかった、しっかり書けていたようだ。
「じゃあ……」
早速とばかりに、セシリアの腰に手をのばし、前へ体を進めようとした瞬間――
コンッ
「あぁっう!!」
セシリアの踵が、僕の会陰部を打った。ごくごく軽い衝撃ではあったが、直下から直上へと電流が走りぬけ、体を痺れさせた。
「せっかちはいけませんわ、アルフレッド様。一字程度では足りませんでしょう? さぁ、まだまだ『書きとり』の時間は続きますよ」
セシリアは、膝立ちで固まってしまった僕の陰嚢を踵に乗せ、揺すりながら次の文字を促した。
「おおぉぉぅ…」
タプタプと音がしそうなほど、中身が詰まった袋を揺すられ、まともに頭が働かないまま、僕は次の文字を書きとるべく、今度はストッキングの淵、レース模様に彩られた太腿へと肉筆を降ろした。
二つ目に選んだ文字は『慾』だ。欲望を意味するこの文字は、東洋でのバトルファックや淫魔研究において、先ほど選んだ『性』と同じく、重要な三字のうちの一つだ。すなわち、本能としての『性』、個人の嗜好としての『慾』、至高の精神性としての『愛』の三字である。
この三つの概念なくしては、バトルファックはおろか、セックスすら語る事はできない。無論、『愛の無いセックス』『欲望を超越したセックス』といったものもある。しかし、無い、超えた、ということ自体が、すでにその概念を内包しているのだ。
よって、『性・慾・愛』の概念を切り離して考えることはできないのである。
『性』を書き終えても、セシリアが挿入を許してくれなかったのは、その事を教えようとしてくれたのかもしれない。
……ということは、この後『愛』の字も残っているということか……。
「あうくぅぅ…」
『性』の字には無かった、一画の途中での方向転換で、先を挫かれ、思わず声を漏らしてしまう。
それでも、なんとか筆を進めていたものの、終盤に差し掛かったころ、長い字画の途中で、一度肉筆を浮かせてしまった。
あと短い画二つで書き終わり、そんな考えが、未だ字画の途中であるというのに、頭に浮かんでしまったのだ。心の乱れは、そのまま腰使いの乱れとなり、終筆のハネを待たずして、筆先が明後日の方向へ跳ね上がってしまった。
「もっと丁寧にお書き下さい、アルフレッド様。もう一度、最初からです」
「ああぁ、そんなぁ……」
すでに書いている文字に確信を得ているセシリアは、僕の失敗をすぐに見破り、やり直しを命じてきた。
僕はこの美しい教師の命令に、嬉々として……いやいや、もとい、渋々従った。
『慾』を書き終えた後は、今度は挿入をねだったりはせずに、大人しく『愛』の書きとりに取りかかった。肉筆を下ろしたのは、キュッと形よくあがったお尻だ。今までとは違い、セシリアの素肌への書きとりだ。
絹よりもまだきめ細かな彼女の肌は、分泌液ですでにドロドロになった僕の筆先と相まって、格段の滑りをみせ、筆運びはスムーズになった。
しかし、今までにない丸い形が、腰使いを誤らせ、何度もやり直しを命じられることとなった。
セシリアの首筋に顔を埋めての『書きとり』は、ほとんど性交と変わらぬ印象を与え、僕の興奮を誘う。やり直しを命じるために、肩越しに振り替える目が、吐息が、僕の力加減を乱した。
丸みを滑り下りた先にある秘所が、常に意識の端で存在を主張し続け、僕の頭を一杯にしていく。
「はぁはぁ……セシリア……」
「よくできました。さぁ、ご褒美ですわ…」
セシリアの体温で、茹りきっていた僕は、彼女の許しを得るや否や、温かそうな墨つぼへと肉筆を滑らせたのだった……
あぁ、あのときのセシリアの膣内は暖かかったなぁ……。
つい先ほどのことながら、遠い記憶のように感じる。あまりに鮮烈でいながら、頭に血が上っていたために、霞がかったようになっているのだ。
いや、純粋に疲れているのかもしれない。早く休もう。
……おっと。
「いけない、いけない。父上と姉上にお休みのあいさつをしないと……」
んっ? そういえば、父上の姿は見たけど……
「ねぇ、セシリア。姉上の姿が朝から見えないけど、どこにいるか知ってるかい?」
「ふふ、ナディア様でしたら、昨日から教会にいらっしゃいますわ。もうこんな時間ですし、お泊りになるのではないでしょうか」
「教会に?」
「ええ、叙任式のすぐ後から、アルフレッド様の添い伏し、伏し初めの成功祈願をなさってらしたそうですよ」
「えっ! じゃあ、早く帰ったことを報告してこなくちゃ」
叙任式の直後からというと、丸一日だ。姉上の顔を見ないうちに寝てしまうなんてできない。
僕は教会に行くために、寝間着から着替えた。
「じゃあ、行ってくるよ」
「もう暗いですわ。私もお供いたします」
「余計危ないよ」
城から教会までは、太い大通りで繋がっている。まさかなにか起きるとは思わないが、それでも夜道を女性に歩かせるわけにはいくまい。僕はついてこようとするセシリアを押し留めた。
「では、あの役立たずをお連れ下さい。ただいま呼んでまいりますので」
役立たず……ダスティンのことか。隊長格の騎士をつけるような距離じゃない。
「ちょっと大げさすぎるよ……」
ダスティンも疲れているだろうと思い、セシリアを呼びとめたものの、彼女はスタスタと先に進んでいく。
「ああ、いいですよ。ちょっとお待ちを」
騎士宿舎の自室で休んでいたダスティンは、軽く了承すると、ブーツと外套を取りに部屋の中に入り、すぐに戻ってきた。
「さあ、行きましょうか」
「休んでいたところ悪いね」
「いえいえ、たまには教会にも顔をださないといけませんしね」
僕たちは正門まで見送ると言うセシリアと一緒に、3人で連れ立って歩いた。
門番に声をかけ、正門はすでに閉まっていたので、その横の通用口を開けてもらおうとした――その時、
「おい! ちょっと待て、外の様子がおかしい!」
櫓の上で見張りに立っていた兵士が、門番に向かって叫んだ。
「若、城の中へ! セシリア、お前もだ!」
ダスティンはそう言い置いて、素早く櫓にかけられた梯子を上っていった。
僕も言われたとおり、セシリアを連れて城内へ駆け戻る。なんらかの非常事態の場合、僕がその場にいれば、ダスティン達の立場上、護衛をつけなければならなくなる。それでは、彼らの仕事を邪魔してしまうからだ。
「ダスティン! 一体何事!?」
玄関扉まで来た僕は、一度振り返り叫んだ。
「あ、あれは――」
門の外を見たダスティンの声は――あのダスティンの声が――隠しようのないほど震えていた………
つづく
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