両親を震災で亡くしてから、少年にとっての親友は、飼っていた犬だけだった。父の弟夫婦に引き取られてからも、少年は周りに心を開くことはなかった。
真面目で働き者の叔父と、出産間近の優しく気立てのいい妻。叔父夫婦は、未だに両親の死を引きずっている少年に対し、とても優しく接してくれた。
しかし、少年は、叔父夫婦に応えることもなく、同年代の友人を作るでもなく、いつも、飼っている雌犬と一緒だった。
少年の名前は、ユウ。犬の名前は、珍しい緑色の瞳からグリーンと名づけられていた。
時節はクリスマスイブ。いつものようにユウとグリーンは川原を散歩していた。
ふたりは、川原が好きでいつもほとりの草むらでごろごろしていた。ふたりとも、この時間が好きだった。
水は冷たく、曇って暗くなっていたものの、グリーンがそばにいてくれて心は穏やかだった。
しかし、その光景の・・・川の真ん中に、小猫の姿・・・。
「な、流されてる!」
小猫は、水に顔を出したり沈んだり・・・そのまま、流れて行っていた。
「ワン!」
一声吠えると、グリーンは飛び込んでいった。そのまま、川の中央まで泳ぎ着くと小猫を咥え戻ってくる。
「グリーン!すごいよ!」
しかし、岸にあと一息というところで・・・
「グリーン!み、水が!!」
上流から、大量の濁流が流れ込んでくる。それを察したグリーンは、小猫を岸へ放り投げ自分も戻ろうとしたが・・・一歩及ばなかった。
「ワォーン!」
「グリーン!」
グリーンは、どんどん流されていく。最初は抵抗して泳ごうとしていたものの、冷たい水とぞの勢いにだんだん動きが鈍くなっていく・・・
ユウは、岸をグリーンと走り続けた。どれだけ走っただろうか・・・水の流れで岸にたどり着いたグリーンは、もう既に冷たくなっていた・・・
「グリーン!動いてよ!返事してよ!」
ユウのグリーンへの思いを痛いほど分かっていた叔父夫婦は、グリーンを教会で弔うことにした。
クリスマスイブのため、遅い夜の礼拝が終わってからの葬儀。既に夜も更け、神父は去り、叔父は具合が悪い妻を気遣って自宅に帰っていた。
それでも、ユウは、グリーンの棺にしがみついたままだった。
大好きなグリーンは、もういない・・・そう思うと、動くに動けなかった。
「うっ、うっ、えぐっ、うわーん!」
お別れなんてやだよ!一人ぼっちはやだよ!
クリスマスって、神様が生まれたおめでたい日なんだって、神父様も言ってたじゃないか!
神様がいるんなら、グリーンを生き返らせてよ!
「うぉっほん!」
「ひゃっ!な・・・お、おじさん、だ、誰?真っ赤な格好してるけど・・・もしかして・・・サンタ・・・さん?」
「ふぉーっふぉっふぉ。ワシを知っておったか!それなら、話も早いのぉ。」
「今日はのぉ、サンタがよい子にプレゼントをあげる日なんじゃ。」
「プレゼント・・・?じゃ、じゃあさ!僕が欲しいものをもらえるの?」
「ふぉーっふぉっふぉ。そうじゃのぉ。お前さんがいい子にしてれば、叶うかもしれんのぉ。」
「じゃ、じゃあさ!グリーンを、グリーンを生き返らせてよ!」
「ほぉっ・・・そうか、それはなかなか難しいのぉ」
「え?」
「死んでしまった生き物を生き返らせることは、自然の摂理に反することなのじゃ・・・それをそうやすやすと受けることは出来ん。」
「だって!今言ったじゃないか!いい子にしてれば叶うって!僕、いい子になるから!お願いだから!ねぇっ!ねぇっ!」
「・・・そうか・・・ならば、お主のその思いが本物だということをわしに見せてくないか?」
「え?思い?どうやって?」
サンタは、目を瞑り呪文のようなものを囁いた。
「え?え?え?」
棺の傍に、ユウと同年代くらいの全裸の女の子が出現した。全裸の女の子など見たことがなかったユウは戸惑うばかりであった。
「コレはのぉ、この犬の肉体を人間化したものじゃ。死んだばかりだから魂もまだ入っておる。」
「え・・・?た、たしかに・・・目が綺麗な緑色をしてる・・・グリーン?」
コク・・・少女がうなずく。
「のぉ、少年よ。自分が達する前に、この子をエッチで達せられたらば、その時に発せられるパワーで、生き返ることが出来るじゃろうのぉ」
「エ、エッチ?!そ、そんなこと、したことないよ!」
「エッチといっても、難しいことはない、その子を愛してあげたらいいのじゃ。じゃ、ワシは次があるのでまたな。」
もう、サンタなど目に入ってなかった。目の前の少女は、ちょっと震えているようだった。
「寒いの?僕があっためてあげたら駄目?」
ぎゅっと、彼女を抱きしめてみる。心なしか顔が綻んだような気がする。
しばらく、そのまま抱きしめる。とくんとくん、お互いの心臓の音が聞こえる。
「ぁ・・・」
「な、なに?」
「・・・で」
「え?どうしたの?」
「ぬ・・・い・・・で」
「僕も、脱ぐの?」
「う・・ん・・」
ちょっと寒いけど、衣服を全部脱いでしまう。そして再び抱き合う。
「あ・・ったか・・・い」
「僕も・・・あったかい。ね、どきどきしてるよ!」
「わ、たしも・・・どき、どき」
だんだん、言葉が流暢になっていく。
「しばらく、こうしていていい?」
「うん・・・こうしていたい・・・」
・・・
・・・
・・・
「ねぇ、私ね・・・聞いてくれる?」
「どうしたの?」
「あ、あのね・・・ユウ様にこうしてほしかったの・・・ずっと、ずっと・・・犬だったらこんなことずっとできないと思ってたの。」
「犬だったら?グリーンって、犬じゃなかったの?」
「あのね・・・私はね・・・犬になる前は・・・前世は・・・人間だったの。碧って名前の・・・」
「前世?前も碧だったんだ。」
「私の瞳って、ちょっと碧がかかっているでしょ。だから、生まれたらすぐに、碧って名づけられたの。」
「そうだったんだ・・・」
「でね、死んじゃって、今度は犬に生まれ変わったの。そして、ユウ様に拾ってもらって、グリーンって名づけられたんだ。」
「うん」
「私ね・・・人間だった時ずっと一人ぼっちだったんだ・・・もうあんな思いはしたくなかった・・・でも、ユウ様と出会ってから一人じゃないんだって!」
「あ、あのさ・・・そのユウ『様』ってやめてくれないかな・・・恥ずかしいよ。」
「で、でも・・・人間だった時には、ご主人様のことを『様』付けで呼ぶようにって・・・」
「・・・グリーンって人間の時何してたの?」
「大きなお屋敷で、お手伝いさんのようなこと・・・メイドって言うらしいです」
「メイド?」
「ううん、いいの!いまは、ユウ様と一緒にいますから。私はそれだけで幸せです。ぺろぺろぺろ。」
「うわっ、顔舐めないでよ!くすぐったいよ!グリーン!」
「グリーンじゃなくて、碧って呼んでください!それに、いつも、ユウ様の顔舐めてたのに、今更そんな事いわないでください!もっと、ご奉仕しますね。ぺろぺろぺろ。」
「うわわっ!碧!なんだか、気持ちいい。」
「うふふっ、ユウ様。もっとしてあげます。ペロペロするのは、顔だけじゃないですよ。」
「え?あ?だっ・・・おっぱいのところも舐めるの?あ・・・な、なんだか、あぁ、はぁっ!」
「ユウ様、かわいいですよ。乳首を舐められて、感じてらっしゃるみたいですよ、ふふふ。もっと舐めてあげますね。」
「あぁ、あぁぁぁぁっ!だ、だめぇ!」
「噛んじゃったら、どうなっちゃうんでしょうね?あむあむ・・・」
「ひ、ひゃぁ!だめぇ!噛まないでぇ!」
「だめですよ、ユウ様。こんなに、硬くして喜んでいらっしゃるのに!あむあむ。でも・・・」
「え?あぁぁぁっ!そこはっ!」
「ユウ様!ここのところは、乳首より凄く固くなっていますが、どうなさったのですか?」
「だ、だってぇ!そこはぁぁ!」
「うふふ、声は上ずっていても、ここは逞しくです。ねぇ、ユウ様?」
「はぁぁっ、なに?」
「わたくし、ユウ様に、ずっとご奉仕したかったんですよ。私のしたかったこと、今からして差し上げますね?」
「うぁぁぁっ、ペロペロ舐めないでぇ!」
「んぐぐっ」
「く、くわえちゃだめぇ!」
「ちゅぅぅぅっっ」
「吸っちゃらめぇぇぇっ!」
「もっとして差し上げますね!ちゅうぅぅぅっ。硬くて、逞しいです。私、ユウ様のをずっとこうしたかったんです!あぁぁ!凄いです!」
「だ、だめだよ!で、でちゃうよぉ!!」
あれ?このまま出しちゃったら・・・グリ、碧は生き返らないんじゃなかったっけ?ってことは・・・我慢しなきゃ!
「ユウ様!気持ちいいなら出しちゃってください!」
「だ、だめだよ!僕が出しちゃったら・・・碧が!僕が愛して、生き返らせるんだ!」
「だめですよ、めっ!ユウ様は、私に任せて、気持ちよくなってくれればいいんです。」
「ど、どうして!僕が出したら、碧は生き返れないんだよ!!だ、だめぇぇっ!・・・あれ?」
「ね、ユウ様?」
「・・・やめちゃったの?わかってくれたの?」
「よく聞いてください・・・どんな生き物にも、決められた命の長さがあります。」
「・・・」
「私は・・・犬の姿とはいえユウ様と過ごせた時間・・・凄い楽しかったです」
「・・・いやだよ・・・もう、パパやママの様に・・・消えるのはやだよ!ぐすっぐすっ!」
「ユウ様・・・分かってください・・・そして、精一杯私を感じてください!」
「うあっ!み、碧!」
ユウは、碧に押し倒される。
「上から、ユウ様の食べちゃいます・・・ユウ様・・・あぁ!凄い大きい!」
「み、碧!気持ちいいよぉ!でも・・・いやだぁ!」
「動いてあげますね・・・私のおっぱいも揉んで下さいね。柔らかくて、いい気持ちでしょ?」
「うぁ、だ、だめだよぉ」
ユウは、決して出すまいと歯を食いしばる。唇から鮮血がたれてくる・・・
「ユウ様・・・だぁめ!めっ!・・・私を・・・最後まで私をもっと感じてください!もっと、うごきます。あぁっ!ユウ様!」
「うぅぅぅぅ」
「ほら、ユウ様!もう、びくんびくんしてますよ。出したいんですね?ね!もう、出してください!私の中に!ねぇっ!」
「あ、あぁぁ、だめぇ!で、でちゃう!み、碧の中にだしちゃうぅぅぅ!」
どくっどくっ・・・
「すごい・・・ユウ様のいっぱい・・・ぐす・・・ユウ様・・・お別れですね・・・」
「はぁはぁ・・・み、碧!いやだぁぁあ!」
ぎゅっと碧を抱きしめる・・・どこにも逃がさないとばかりに・・・
「ユウ様・・・私は、とても幸せでした・・・こんど、また会える事があれば・・・また私をかわいがってくださいね?」
「いやだ!いやだ!僕をおいていかないで!!」
腕の中のぬくもりがすっと消えていく・・・
最後に、碧の唇が
「あ・り・が・と・う」
と、動いたように見えた・・・でも、最後まで見えることなく、碧が・・・さっきまで感じていたぬくもりごと消えていった・・・
僕が目が覚ますと、家のベッドの中にいた。
あれは、夢だったのかな?
グリーンが死んじゃったのも夢だったのかな?
グリーンが碧って女の子の変わったのも夢だったのかな?
・・・違う、グリーンの首輪が僕の枕元にある。
グリーンは死んじゃったんだ。
なんだか、涙が溢れきた・・・
『オギャーオギャーオギャー』
あれ?なんだ?隣の部屋から声がする・・・行ってみよう
「ねぇ、叔父さん。どうしたの?」
「おー、ユウか。ほら!お前の妹が生まれたんだよ!かわいいだろ!」
「あぁ、そうなんだ。」
叔母さんが、生まれたてでシーツに包まれた赤ん坊を抱きかかえている。
叔母さんの傍には産婆さん。二人とも、疲れているものの嬉しそうだ。
でも、僕はこんな気分で、笑うことができなかった。
「ねえ、ユウちゃん、名前何にしたい?」
「え?そ、それは叔父さんと叔母さんで決めればいいじゃないか!」
そんな気分にもなれないよ・・・
「そっか。どうしよっかな。叔母さんが決めていいのかな?この子ね、瞳の色が碧色でとても綺麗なんだよ。ユウちゃんもみてみない?」
「え・・・・・・・・・・・?」
瞬間、赤ん坊の方へ猛ダッシュしていた。
「叔母さん!みせて!その子見せて!」
「あらあら、何よ。慌てなくても見せてあげるわよ」
「ほ、ホントだ・・・緑色だ・・・」
「ね?綺麗でしょ?まるで、グリーンの瞳みたいだね。」
「ねぇ・・・叔母さん・叔父さん」
「ん?なぁに?」
「僕が名前つけてもいい?」
「え?どうしたの?いいわよ。」
「碧・・・じゃだめかな?」
「ね、サンタ様」
「なんじゃい。本当に良かったのか?少年は、おまえと一緒に居たがってたのに。」
「えぇ、わかってます・・・でも、私は犬としてじゃなく、人間としてユウ様のお傍に居たかったのです。」
「転生の法則を悪用しおって・・・まったく」
「でも、死者を生き返らせると凄い罰則だって、天使様から聞きましたよ?コレだったら、合法的にできるんだそうですね。」
「まあよい・・・わしはよい子の願いを一つだけかなえるために来た。そして、その願いはおまいさんが使った。それだけの話じゃ。」
「ユウ様には申し訳なかったんですが、私のわがままを聞いていただいてありがとうございます。」
「どっちかの願いしか叶えられないから、選ぶ方法を決めるしかないじゃろうも。たまたま、今回はあの方法になっただけで・・・って、おい早くあの赤子にお前の魂が入らないと間に合わないぞ。」
「あ、そうだ!はやくしなきゃ!素敵なクリスマスプレゼント、ありがとうございました。サンタ様!」
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