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背徳の薔薇 贄

 レイは巨石でも背負っているかのように重くなっている身体を恍魔に向け、憔悴しながらも一歩一歩、歩いていった。
 歩く、という意識を強くもたねば、今にも意識ごと崩れ落ちてしまいそうなほどの疲労や激痛があるからだった。
 思えば、自分が監禁されている大部屋でアーシアの修行を受けてから、性的行為が連続している。強靭な精神力作りを名目にアーシアから口の愛撫を受けたあと、休む間もなくバベットの淫界へ飛んだ。恍魔に捕らわれた幼馴染のシンディが凄惨な姿になっていたのを目撃して自分を見失い、同じく、恍魔の力によって自分を見失ったアーシアと、狂乱の情事をおこなった。それからすぐに、今度は恍魔との戦いである。
 ここまで二度ほど射精し、同数の淫気喰いを受けている。過去に経験がないほど膨大な量の淫気も放出していた。生きているのが不思議なくらいである。いつ事切れてもおかしくはないとすら思う。
 全身から溢れる真紅色の光も、自分の命を削っているのがよく分かる。が、これがないと、アーシアがまた恍魔によって常軌を逸するだろう。そうなったら今度こそ完全に終わりなのは明白なので、利用する必要があった。
 この結界のような力の扱い方は理解していた。理屈は不明だが、眉間のあたりにオン、オフが可能なスイッチが存在する感覚があり、今はスイッチが入っている状態だ。
 スイッチを入れ続けるのは簡単である。ただ意識していればいいからだ。逆に言えば、その意識を保っていないと切れてしまうだろうから、恍魔を斃すまでは、これを切らさないように気をつける必要があった。
 歩を進めるレイの白目は真紅に染まり、空色の瞳は闇色に染まったままだ。恍魔を厳しく睨みつけて油断なくしていたが、恍魔は身動きひとつせず、笑みを浮かべて少年の到達を待っている。
 裸体の淫魔はとても細身で、未熟さのかけらもない完成された肢体であった。身長も高く、レイよりも頭ひとつは大きい。至近距離まで間合いを詰めたら、見上げねばならないだろう。
 土色の肌が作り物の肉体に見えてしまうのは、それだけ美しい表れであった。無毛の頭がマネキンを思わせ、美術的な美しさを醸している。
 この恍魔を相手にするには速攻しかない、というのが、レイの考えだった。こちらの体力がほぼ尽きているため、時間をかけていられないのだ。なんだかんだと理由をつけて、即挿入に持ち込むつもりである。愛撫だけで屠れるとは思っていないので、残り僅かしかない体力は抽送運動に使おうという魂胆であった。
 射精は許されない。次の淫気喰いで襲ってくる負担は、自分の身を滅ぼすだろうという直感があるからだ。
 丹田に力を込めて一歩を踏み出すと、左肩に一陣の風が過ぎ去った。
 アーシアが上空から恍魔へ躍りかかったのだ。
「無茶しちゃダメだっ」
 慌てて呼び止めたが、彼女はそのまま恍魔の元へ飛んでいく。その飛び方は不自然なほどぎこちなく、真っ直ぐ飛べていない。左右に揺れながら、ゆっくりとした速度で向かっていった。
 飛んでいるアーシアを後ろから見上げると、豊満な臀部が映った。彼女はワンピースを腰に結っているため、面積の狭い藍色の下着を穿いているだけでは尻肉が丸出しになるのである。
 飛行速度は上がらず、全身が左右に揺れているので、肉付きの多い尻が右へ左へ揺れ動く。
 すべての事情を投げ捨ててかぶりつきに行きたくなる衝動を抑えるのは、難儀な作業となった。
 それはあとでもできると自分に言い聞かせて未来に光を指し示し、生き残る必要性を無理やりに増やしたのである。
「私は少年に用がある。貴様は邪魔だな」
 恍魔が自分の周囲に展開していた複数の触手たちのうち、二本をアーシアへ向かわせた。
 一本目の触手はアーシアが手で払いのけたのだが、二本目の触手はよけられず、彼女の腰に巻きついて絡め取られてしまった。
 自由に飛べなくなったアーシアに対し、彼女が払った触手が体勢を整え、再度、襲ってきた。触手の先端は男性器に酷似しており、それが黒翼の堕天使の口へ、一直線に突っ込んでくる。
 アーシアは咄嗟に首を左にかしげてやりすごした。
 躱された触手は、今度はそのままでは済まさなかった。すぐに身を反転させると、背後から突貫して彼女の右腕に巻きついて絡め取り、すぐさま、ねじり上げてきた。
「くっ」
 アーシアは左手を伸ばして触手を掴もうとしたが、逆に左手首まで巻き上げられ、両腕を拘束されてしまう。完全に動きに精彩を欠いていており、いかに消耗が激しいのかを物語っていた。
 それでも諦めず、左手首を返して触手を掴むのに成功すると、即座に引き剥がそうと試みた。中は中空になっているらしく、握れた箇所は潰れたが、肉色の体表は滑りやすい体液で濡れているので握りづらい。また、すでに両腕が固定されてしまっているために思うように動かせず、握力によって触手の身を僅かに潰すだけに終わり、引き剥がすまでには至らなかった。
 触手の感触は、気色悪いのひと言である。
「私は少年と戯れるのだ、貴様に用はない。触手で相手をしてやるから、せいぜい喘げ」
「フン、キサマ程度が、この私に通用するとでも思ったか」
「口だけは達者だな。それも、今のうちだ」
 レイが助けたく思っても、アーシアは上空で捕縛されているのでとても届かない。それ以前に、囮になってくれているのが痛いほど伝わってきた。
 アーシアの背中は丸出しになっており、肩甲骨の辺りから生えている三枚の漆黒の翼は、激しく羽ばたいて抵抗していた。肉体を左右へ揺らがせ、触手の緊縛から逃れようとするのと同時に、口を狙っている触手の照準を外している。ただし、腰を縛りつけている触手の力が強力なので、あまり動けていなかった。
 不意に、アーシアが首を後ろに向けてレイを見下ろすと、柔和に微笑んできた。
 やるしかないっ。
 レイは、恍魔がアーシアへ意識を向けているうちに、急いで接近を試みた。走るだけの力はないから、一歩ずつ、着実に間を詰めるのだ。
「もがいたところで、無駄だ」
 恍魔は、漆黒の翼を羽ばたいて抵抗するアーシアへ、勝ち誇ったように声をかけた。
 両腕を巻き上げている触手の先端がアーシアの顔の目前まで垂れ下がってくると、狙いをつけて隙を窺う。先端の口からは緑色の粘液がすでに漏れ垂れている。
 アーシアは口へ突っ込まれぬよう、触手を睨み据えた。
「よい絵柄だな。さしずめ、神に棄捨されし黒き御遣い、といったところか」
「……センスのなさは褒めてやる」
 アーシアが嘲ると、恍魔の顔から笑みが消えた。
「図に乗るな。──いいだろう、貴様から先に仕留めてやる」
 アーシアの口へ向かって触手が突っ込んでいった。それをアーシアは首を右へ倒して躱す。触手はそのまま彼女の首に巻きついて自由を奪い、先端を正面へ廻すと、首を擡げた。
 たった一本の触手で両腕と首を巻くほどの長さだ。恍魔への距離も数メートルはあり、相当な長さなのが分かる。恍魔の腰部後方には蟻や蜂の腹節に似たものが生えており、触手はそこから伸びているのだが、どうやってこれを何本も収納しているのか、レイは純粋に不思議に思った。
 恍魔がアーシアへ意識を向けている隙に、自分は恍魔の背後へ廻り込む動きをとっていた。すぐに発見されるだろうから直線的に最短距離で詰めるべきなのかもしれないが、万が一にでも不意を突けて挿入してしまえれば儲けもの、という、陳腐な発想である。
 とはいえ、木の陰に隠れるように動き、死角を作りつつ移動していた。
「さあ、咥えろ」
 恍魔は首を動かせなくなったアーシアの口へ、容赦なく触手を突き立てた。アーシアは固く唇を引き結んで腔内への侵入を許さない。そこへ触手がねじり込む動きをとってきたので、柔らかな唇が無残なまでにひしゃげたが、彼女は歯列も使って耐えてみせた。
「なかなかに頑張るものだが、触手はそれだけか?」
 腰に巻きついていた触手は、先端がふた股に分かれているものだった。これらの触手の先端は口広がりの構造をしている。それが、レイとの情事の際にアーシアが自ら剥き出しにした釣鐘型のたっぷりとした乳房へ、それぞれ吸いついてゆく。シンディの胸を吸っていたものと似た形のものであった。
「ほぉ、見事な持ち物だ。ここまで柔らかいとはな。では存分に弄ぶとしようか」
 触手の口がアーシアの肌色の乳輪ごと丸呑みにすると、無遠慮に乳房を吸った。その影響で胸が引っ張られて形を変えられる。さらに追い討ちとばかりに、口の周辺に生えている無数の細かな触手が先端の吸盤を乳肉に貼りつけて蠢動し、胸を波立たせた。触手の本体も吸着しながら乱暴に動いて胸を揺さぶるので、絶対的な柔らかさを有するアーシアの双丘は、これらの動きによって複雑に変形させられた。
 アーシアは胸の防衛を放棄した。隙を作って眼前にある触手を口へ突っ込み、粘液を吐き出して呑み込ませるのが狙いなのを看破したからだ。淫魔の体液というものは個人差によって効果が異なるので、どんな影響を受けてしまうか知れたものではない。覚醒したレイの能力は恍気の無効化であり、ほかの力まで無力にできるわけではない。だがそれだけでも恍魔にとっては絶大な効果なのだから、それ以上を望むのは無礼であろうと、アーシアは、自分の戦いをするのであった。
 恍魔に打ち勝つつもりでいるのである。
 両胸は自由を許さざるを得ないので、やられたい放題にされた。
 左の乳房は強烈に引っ張られているので伸び上がり、右の乳房は押し潰されたり複雑に動かされたりして、常に形を変えていた。触手の吸盤口は吸着力が強く、激しく動かされても決して離さない。さらに口の中には舌のような長細いものがあり、それが乳首に差し出された。突起を続けていた胸の先を嬲られ、痺れに似た感覚が襲う。
 次々と感度を昂められ、アーシアは口を閉じたまま呻いた。レイとの情事を中断して少し冷めていた火照りが、これらによって、すぐに喚起されてしまう。絶頂直前まで昂ぶっていたものを普段の状態まで戻すには、時間が足りないのだ。
「どうしても咥えぬ、か」
 触手を口に突き込む動きを続けさせたまま、恍魔は微笑した。
「触手は二本だけではないのだがな?」
 アーシアの目が、恍魔の付近でゆらめいていたほかの触手たちを視認し、細められた。
 多数の触手がアーシア目掛けて伸びてゆく。それを見ながら、レイは歯を食い縛って耐えた。
 自分にはどうしようもないのだ。
 気配を殺し、木の陰を巧みに使いながら接近しているが、歩行速度が遅すぎるために近付いている感覚がまるで抱けない。それが焦りを呼ぶが、自分の戦いはこれからが本番だ。できるだけ消耗は避けねばならない。だが、その体力自体がほとんど尽きている。精神力で動いているようなものなのだ。
 とはいえ、アーシアが限界を迎えるまえに接近して勝負に持ち込む必要がある。いつまでアーシアが持ちこたえてくれているか。さほど時間はないだろうから、どうしても焦燥感が募ってしまう。アーシアが絶頂すれば勝敗は決する。そうなれば、恍魔は姿を消した自分を探し、簡単に発見するだろう。見つかったら企みが見抜かれて、隙を見せなくなるのは考えるまでもない。それは最悪の状況といえた。
 精気を有する自分が近くにいてアーシアが絶頂した場合、彼女は消滅してしまうのだろうか。
 そうであれば、耐え難い恐怖だ。
 迂回は失敗だったかもしれないが、もう遅い。とにかく歩くしかないのだ。
 一歩進めば、その一歩分、確実に近付けるのである。
「私はべつに、貴様の口に執着しているわけではない。女の口は、いろいろとあるのだからな」
 新しく向かってきた複数の触手のうち、二本が、それぞれアーシアの足首に巻きついた。
 アーシアは両脚を閉じて腰をひねり、開かれまいとする。
 レイが確認していたとおり、スカートはスリップごと腰に結い上げたままなので、上半身と同じく股間も丸はだけだ。藍色の下着はつけっぱなしだが濡れきっているので、逆三角形に手入れされた陰毛が浮き上がっている。これは、恍魔の波動による影響からであり、また、レイと結合して絶頂へとひた走った結果でもあった。
 薄藁色のニーソックスも愛液や汗によって濡れ、乳白色の地肌が透けている。葡萄酒色で総レースのガータベルトの紐はニーソックスから外れ、微風になびいていた。
 両腕と両脚を縛られたアーシアを見るのが忍びないが、レイの闇色の双眸は妖しい情景図から離れなかった。一瞬だけしおれた若塔がいきり勃ち、アーシアの艶然さに呆けそうになったので、気を取り直す。
 アーシアは抵抗空しく、両脚を大きく開かされてしまった。恍魔が意図的にアーシアの脚がM字になるよう姿勢を作ったのは、彼女に屈辱を与えるためなのかもしれない。彼女自身、目つきが鋭くなっていた。憎悪の視線を恍魔に向けている。
 アーシアの前で自由にゆらめいている触手は、まだ三本も残っている。そのうちの一本が彼女の股間に接近した。近付いた触手は先端が鏃のようになっている。だが鋭角的ではない。鉤の部分が刺激を増す構造になっているのだろう。それが有翼の淫魔の股間を、下着の上からつついた。
 肛門である。
 アーシアが膝を閉めようとすると、足首に巻きついている触手が這い上がってきて膝も拘束してしまった。そのまま大きく股を開かせ、姿勢を保持する。
 下着には深い縦筋が刻まれた。
 股間をつついていた触手が、アーシアの右脚の付け根から下着の中へ潜り込んでいった。
 アーシアは咄嗟に腰を引いて抵抗したが、触手は下着の中身には執着せず、左脚の付け根から外に出てくると、その身を使って彼女の下着を引っ張った。
 痛ましいほどに伸び上げられた下着はすぐに限界に達して破けてしまい、無残に垂れ下がる。
 股間を晒されたアーシアは顔を紅潮させて憤怒に燃えた。が、唇を堅く閉じて、口への侵入を試みている触手を拒絶しているため、声を出せないでいる。
 剥き出しとなった女貝は、濡れそぼって大口を開けていた。内側の肉ビラは充血して開花しきっているので、彼女は膣口だけを閉めると、涎が垂れて下にある蕾を濡らす。
 顔は汗まみれなので、青藤色の髪の毛はシャギーが解けてしまって頬に張りつき、前髪は額にこびりついていた。
「括約筋を締める力が弱いな。随分と衰弱しているようだが、それで抵抗しているつもりか?」
 先端が鏃型で鉤を有する触手が、肛門を突いたり、揉み込みを繰り返した。アーシアはあくまで抵抗して腰を動かし、逃れようとした。が、その腰に巻きついている触手の拘束によって思うように身動きできず、後ろの門を陵辱している触手は、易々とアーシアの抵抗運動に併せてきて、決して離れない。
 それどころか、自由にしていた残り二本の触手のうちの一本が、股間に近寄ってきた。それは先端が男性器に似ているもので、イボのような突起物が多数ある。さらに周囲に複数の細かな触手をもっていた。それらの細かな触手は先が吸盤になっていて、胸を襲っている細かな触手たちの構造と同様である。
 割り開いているアーシアの貝口を触手の先端がなぞり始めた。膣への挿入は試みず、淫谷全体を大仰になぞっている。ときおり先端を膣口で止め、突きたてようとする動きをすると、アーシアが身を固くして身構えるので、恍魔は面白がってそれらの動きを続けた。
 周囲の細かな触手が恥丘に吸いついていくと、振動して刺激を与えてきた。アーシアは腰をくねらせて逃れようとする。すると、細かな触手のうちのひとつが、敏感になりすぎている、親指の先ほどに充血した真っ赤な肉芽に張りついた。淫裂からはみ出すほどの大きさなため受ける刺激が大きいらしく、目を固く閉じて快楽をこらえる。が、心とは裏腹に、股間は新しい淫らな液体を湧かせた。
 再度羽ばたいて拘束から逃れようとしたが、梨の礫である。
「絶頂寸前のわりには、よく持ちこたえるものだ。先ほどは、恍気に当たっても抵抗してみせたな。たいした器だと認めよう。貴様が満足するには、はたしてどれほどの男どもが必要になるのか、興味深い」
 力責めで触手が菊門に差し込まれると、抵抗空しく貫かれたアーシアは閉じていた目を見開いた。直腸の奥へと突き進んでいく触手に慈悲はない。鏃の鉤によって腸壁をえぐられながら、有り得ないほど侵入していったため、苦悶の色をたたえた。
「まだまだ甘い。さあ、もっと奥へ行こうか」
 胃袋まで到達されるのではというほど、次々に入ってゆく。アーシアの腹が膨れるのが肉眼でも確認できるほどであった。
 レイは恍魔の背後まで廻り込むのに成功したが、まだ距離がある。気付かれぬよう、慎重に歩を進めた。アーシアが心配でたまらない。何をされるのか想像すらつかなかった。
 その彼女は、結腸まで貫かれていた。そこでやっと侵入が止まったものの力が入らないらしく、もがいていた両腕が脱力した。その隙を恍魔が見逃すはずもなく、触手を口へ突き込む。
 アーシアは遂に、腔内へ触手の侵入を許してしまった。
 緑色の粘液がとにかく不味い。長期間放置した腐った生魚の味であり、嘔吐感を催して噎せ返った。
「今は苦しいだろうが、すぐ楽になる。訳が分からなくなる、と表現したほうが、正しいかもしれぬがな」
 肛門に打ち込んでいた触手が、根元となる恍魔の腹節から膨らみを帯びた。それが徐々にアーシアのほうへ向かって波打つ。口に入っている触手にも、同様の現象が発生した。
 レイは急いだ。恍魔が何かしている。それによってアーシアがたいへんな目に遭うのは目に見えていた。シンディのように、意識を飛ばされるのだろうか。とにかく急がなければならない。
 重い身体を引き摺り、葉擦れの音を出さないように進む。飛びかかるにはまだ距離がありすぎた。

 間に合うわけがなかった。

 ふたつの膨らみがアーシアの体内へ入っていくと、放出された。アーシアは腸内の吐瀉物はどうしようもないとしても、口のものは飲み込むものかと吐き出そうと努めた。だがとにかく量が尋常ではない。喉を絞め、息をこらすのにも限度がある。舌を使って触手を押し出そうとするのだが触手の力が強くて動かない。逆に触手に快感を与えて放出の手助けをするばかりであった。吐き出される粘液に塗られ、味覚は悲鳴を上げた。
 最初の刺激は、腹から来た。
 腸内に出されたものの影響で焼けつく熱に身悶えし、逃れようと翼を何度もはためかせるが、拘束は解かれない。両腕は持ち上げられているので何もできず、両足は大きく開かされて、こちらも何もできなかった。股間と乳房は蹂躙され続けている。いつの間にか、自由にしていた最後の一本の触手が、胸の谷間に挟まって前後運動をおこなっていた。こちらからも緑色の粘液が吐かれ、乳肌を焼くほどの熱を発散しながら濡れ汚した。
 腹を焼く熱は脳に響いている。アーシアは呼吸の苦しさも相俟って、思わず喘いでしまう。その拍子に口の中でせき止めていた粘液が、勢いよく喉に流れ込んでしまった。
 嚥下せずとも勝手に喉を流れ落ちてゆく。喉が焼かれる熱に見舞われると、すぐに胃も灼熱に襲われた。
 発情によって火照っていた乳白色の肌の色は、熱湯に浸かったかのように、真っ赤に染まった。
(アーシアが……、イク……)
 レイに絶望感が充満した。自分がいるせいでアーシアが消えてしまったとしたら取り返しがつかない。ここから離脱しようがないので、己の無力さに打ちひしがれるばかりであった。
 自分を淫界へ連れてこさせてしまったのは、やはり間違いだったという思いが強くなってゆく。事態は悪くなるいっぽうなのだ。
 アーシアの肛門を侵している触手が抽送を繰り返して刺激を与え、女裂は挿入こそされないが滅茶苦茶に触手が動きまわった。無数の細かな触手は内外の女丘に吸いついて揉みしだきつつ割り開いており、本体の触手の動きを支援している。紅核を吸っている細かな触手は、その豆を丸呑みにしながら吸盤口を開閉させて刺激した。閉じると同時に引っ張り、開くと同時に押し潰している。
 全身を痙攣させたアーシアから官能の喘ぎを聞いた。触手によって口を塞がれているのでくぐもった声音だが、その音量は膨大である。
 哀歓の森にアーシアの悲鳴のような艶声が響き、それが途切れると、暴れていた三枚の翼が力なく垂れ落ちた。
(アーシア……ッ)
 レイの全身に悪寒が走り、鳥肌を立たせた。張り裂ける悲しみが心を打ち砕き、歩行をやめて両脚を震わせる。
 頭が真っ白になりかけると、眉間にある、真紅色の波動を放つために必要なスイッチの感覚も消失しかけたが、少年は、ただ呆然とアーシアを眺めた。
 抵抗する力すら失ってしまったアーシアは、銀杯色の瞳を呆けたように恍魔へ向けながら首をうなだれ、首に巻きついている触手の身へ顎を預けていた。
 腔内を暴れまわる触手の突撃は緩みがない模様で、上下左右に動き回っているのが頬の膨らみで理解できる。
 その口の端から、恍魔が吐き出した粘液の泡が立った。粘性の強い泡は次々と互いを吸収しあいながら大きくなってゆき、最後は触手の身で擦り破られ、絶頂した堕天使の頬にこびりつく。
 ただ、その姿は、しっかりと存在させていた。
 四肢も、肉体も、翼も、力を喪失したまま蹂躙され続けながらも、消え入る様子は、まったくない。
(……消えない。なんで? でもとにかくよかった。よし、近付くぞ)
 レイの頭脳がアーシアの無事を確認すると悦びに満ち、再び働きだした。
 なぜ消滅しなかったのかが心に引っかかったものの、今は事実のほうこそが重要だ。研鑽している余裕があったら、その意識は恍魔を斃すほうに使うべきなので、眉間に意識を強め、消えかけた真紅色の波動を保持するぶんに充てた。
 身体の行動も可能となった。無事というには凄惨すぎる状況ではあるものの、レイは上体をかがめながら進んだ。恍魔の所まで、まだ少し距離がある。
 ふたりのあいだには巨木が三本あった。具合よい植わり方で、一本ずつ使って隠密に距離を詰められそうだ。心中で森に感謝して一本目の幹に優しく触れると、歩を進める。
「アッハハハハハ。そこそこ気持ちよかったか? だが、これからが始まりだぞ?」
 恍魔が高笑すると、アーシアの身に異変が起きた。
 大きく震えたかと思ったら、また大きく喘ぎ出したのだ。喘ぐと翼が持ち上がり、喘ぎが終わると、力を失って垂れ落ちる。
 もう一度、アーシアは同様の行為をした。
 加えて、もう一度。
 さらに、もう一度。
 銀杯色の瞳は輝きを失って虚ろになり、涙を溜めて潤みきっている。焦点も合ってなさそうで、瞼は半開きであった。
 触手を咥えさせられている唇は小刻みに震えていた。口の端から粘液が漏れ、顎を伝って垂れ下がっているので、振り子のように揺らいでいる。
 持ち上げられている両腕は脱力しているが、触手によって巻き上げられているために下げられずにいた。触手の身を掴んでいた手も握力がなくなったようで、ただ添えているのみである。
 両脚は足首と膝をきつく縛られ、両腿が一直線になるほどに開かされていた。
 それでも彼女は垂れ下げていた翼を持ち上げ、薄弱としながらも、はためかせて逃れようとした。
「まだ意識を保っているとは。恐ろしい女め、ならばこれもくれてやる」
 恍魔はアーシアの前門で動かしていた触手を膣口にあてがうと、なんの優しさもなく貫く。
 アーシアの絶叫が森にこだました。
「どうだ、イキ続ける感覚というのは病みつきになるだろう? 私の体液を体内に送られた者は、皆、こうなる」
 恍魔は膣と肛門に挿入している触手を激しく前後させた。簡単にアーシアは達し、またすぐ、刺激によって絶頂感を立ち上げられ、昂ぶり、果てる。
 力を失っている肉体でも淫魔としての本能からなのか、前後の口は、弱々しくも締まろうとしていた。肛門はめくれ上がり、小陰唇はだらしなく開ききって中を露出させていても、受ける極楽に反応するのである。
 第三の穴に対し、細かな触手のうちの一本が興味を示した。吸いついていた谷肉から離れて小さな穴を先端で撫でつけると口が開く。その開口部に、触手は入っていった。あっさりと進入できてしまったので、その触手まで前後に動き始めた。
「ううヴゥ……っ」
 アーシアは腰を大きく前後に振り、身悶えた。みっつの穴を征服された挿入感によって思わず喉で嚥下してしまい、咥えていた触手が喉奥へ押し入ってしまう。が、苦しみよりも寄せ来る波のほうが大きく、背筋を反らせながら果ててしまった。喉奥に存在する触手からまた粘液が注がれると、胃が焼かれてさらなる極致が来訪し、破裂する。
 股間は愛液をとめどなく溢れさせた。
「これを経験して正気を保てる者など存在しない。まさに淫魔冥利の力だとは思わぬか? 我らが恍魔と言われる由縁だよ」
 恍魔の問いかけに、アーシアは黙して力なくうなずいた。うなずくという行為の意味を理解しているかどうかは判然としないが、火照りきった肉体は、ますます紅く燃え盛った。
 乳白色の地肌の色は、陰も形もなくなっている。
「が、これを受け続けて生きていられる者も、同時に存在しない。それはそうだろう、肉体が耐えられるわけがないのだからな」
 恍魔は喉奥まで呑まれている触手をいったん口内まで引き戻すと、下半身の愛撫と同調させて動かした。その刺激で、やはりアーシアは大きく痙攣して雄叫び、羽ばたく。多少の硬直があってから、首をうな垂れ、翼を落とした。
 彼女が痙攣するのは絶頂する合図だった。大きく肉体が揺れると、触手に吸われたままの豊かな乳房が、その刺激による動き以外に、重たい揺れを見せる。尻肉も、太腿も波打った。
 アーシアは、ただ漫然と陵辱され、快楽によって消耗だけしていった。死にかけているといってもよい。激しく喘いだり肉体を反応させていても、次々と衰弱しているからだ。
 ただし、見えているのかすら不明だが、半開きの目は、恍魔に向けられていた。
「これでも意識を残しているとは、すさまじいものだな。貴様ほどの人物ならば、さぞかし名を挙げていることだろう。名を、なんと言う?」
 恍魔はアーシアの口から触手を引き抜いて喋れるようにした。緑色の粘液はとにかく粘性が強いので、アーシアの舌と触手の先端で、糸を引いてつながっている。
「アーシ、ア……、フォン……、イン……セ……グノ……」
 途切れ途切れに発言すると、やっと糸を引いていた粘液が断ち切られ、アーシアの顎にこびりついた。発言が終わると、やはり肉体の中から焼けつく刺激によって頂上に到達し、満腔を震わせながら粘性の高い体液を湧かせた。
「何? 貴様があのアーシア・フォン・インセグノだとでもいうのか。だが翼は三枚しかないではないか。ヤツは四枚の翼をはためかせ、堕天使たちの尊敬を一身に集める大天使だぞ。……が、信じてやる。この状況で嘘をつけるわけなど、ないのだからな。何かの拍子で、三枚に減ったのだろう」
 アーシアは緩慢にうなずき返すと、訪れた頂点によって、狂った歌声を響かせながら腰をよじった。
「そうか、アーシア・フォン・インセグノか。これはいい、実にいい。よし、私の下僕にしてやる。嬉しいだろう? どうせなら、そのまま死せず、何度でも同じような経験を味わうほうが、淫魔として最上の生き方ができるとは思わぬか? 死ねばもう、同じ経験はできぬのだからな。私に従えば、また楽しめる。どうだ、素晴らしい提案だろう?」
 この問いかけにも、アーシアは肯首した。後ろの門は緑色の粘液で溢れ返っている。垂れ下がる粘液は切れずに地面まで届いていた。アーシアは触手に束縛されて浮かされたままだが、その高さは三メートルほどはある。おそろしいほどの粘性であった。
 上半身も夥しい粘液に汚れ、腰に巻きついているワンピースやスリップ、エプロンなどは、すべて濡れ汚れていた。
 恍魔は引き抜いていた触手をアーシアの口へもっていくと、再び咥えさせた。抵抗する力がないので簡単に中へ押し入り、口腔で暴れる。
 粘液が吐き出されると舌に乗り、喉に流れてゆく。それによってアーシアは昇りつめさせられ、垂れ下がっている三枚の翼を痙攣させた。顔は紅潮しきり、滝のような汗を噴き出している。汗は左の目尻にある小さな泣きボクロを、悲しく濡らしていた。
 呼吸も荒く、両肩の上下運動が激しい。触手を咥えさせられているために思うように息ができず、思わず口で呼吸をしてしまうと頬が窄んで触手を吸引してしまい、自ら粘液を吸い取る結果になってしまった。
 股間にあるみっつの女穴のうち、一番下にある穴は、直腸を引っ掻きまわされていた。押し広げられた菊門が痛ましく、中にいる触手は当然のように前後するので激しく形を歪めている。腸内に粘液が注ぎ込まれると、許容量を超過している直腸が悲鳴をあげ、無様な音を鳴らしながら泡を立てて外に溢れさせた。
 アーシアが達しても触手の動きは止まらない。思いやりの皆無な動きによって腸内がえぐられ、鏃型の先端によって腸壁が削り取られてゆく。鉤の部分が破壊力を増幅させており、その刺激によってすぐさま達し、尻肉を震わせた。
 前門の渓谷も惨憺たる有様だ。
 恍魔の波動やレイとの情事によって、ただでさえ柔らかくほぐされ濡れきっているというのに、連続した絶頂によって自らの大量の体液で濡れそぼっているそこへ、多数の細かな触手たちによって内外の肉襞が吸いつかれ、開脚によって開かれている股を、より大きく、強引に割り開かれているのだ。
 脚の付け根が覆われるほどに開花させられた大小の肉襞は、真っ赤に燃えるアーシアの肌よりも充血していた。
 秘裂の先にある女の肉芽を丸ごと喰らっている一本の細かな触手は、狂ったように長細い身を円運動させている。また、女芽を吸引しながら吸盤口を引っ張り上げたり押しつけたりして、好き放題に豆粒をいじりたおしていた。アーシアが腰を小刻みに震わせて狂悦に堕ちると、さらに動きを活発にして彼女の反応をすぐさま呼び覚ます。
 尿道に挿入しているもう一本の細かな触手のほうは、一心不乱にその身を出し入れしていた。思い切り伸びているので、身は膀胱まで達している。その中で吸盤口を開き、中にある水分を飲んでいるため、時折、触手が膨れ上がった。
 本体の触手は破壊願望に支配されたかのごとく、窮屈そうにしている膣内を暴走していた。
 触手の先端は男性器に似ているので官能を与えやすい構造をしているのに、イボのような突起物まであって内壁を遠慮なく掘削するため、アーシアの股間は絶え間なく女液を湧かせられ続けている。
 すでに収縮能力を失っている膣は、触手を締めつけられもせず、単純な穴と化していた。それでも触手はかまわず抽送し、彼女の中で暴虐の限りを尽くす。膣口には円の縁ができ、触手が突っ込まれると中へ引き摺り込まれ、出てくると捲れ上がっていた。
 濡れに濡れた渓谷は、泡まみれである。
「ふ……ううぅゥ」
 アーシアが脆弱なくぐもり声と共に頂に昇ると、僅かに子宮口が開いてしまった。
 触手は待ってましたとばかりに子宮口に割って入り、奥へと伸びる。アーシアが弱々しく首を振り、イヤであると表現したが、触手は無理にこじ開けて奥へと向かっていった。元々軟体な仕組みなのでかなり自在に動けるようだ。
 強硬に子宮口を押し広げられ、奥へと侵入されたアーシアであるが、快楽しか感じないらしく、痛みに悶絶する仕草は見られなかった。
 さすがに無理に押し進んでいたので触手の動きはすぐに止まったが、子宮内に、先端の口だけは到達されてしまう。
 恍魔が勝ち誇った笑みをアーシアに投げると、アーシアは諦観したように目を瞑る。
 触手が子宮内へ直接、

 あの粘液をぶちまけた。

「ふううぅぅっ。フウウヴヴゥゥァァァァッ!」
 アーシアの全身が激しい痙攣を起こした。捕縛されているので身動きこそできないものの、両脚や両腕は拘束している触手を引き千切らんばかりに伸び上がろうとした。背筋は折れてしまいそうなほど反り返り、顎を雷鳴轟く天に向ける。漆黒の三枚の翼は、アーシアの意思とは関係なく、大きく鶴翼した。
「アーッハッハッハッ。どうだ、たまらぬだろう。これが恍魔の力よ」
 恍魔の嘲笑がアーシアの絶叫と一緒になって、森に鳴り響く。
 アーシアが尿道から尿とは異質の水分を大量に噴出させ、その勢いで中を往復していた細かな触手が追い出されてしまった。非常に水圧が強いそれは、霧状となってところかまわず噴き散らす。
 レイと抱きあっていたときのものと、同様の症状であった。
 少しの刺激で絶頂するほど敏感になっている膣内を責め場所に選択した本体の触手は、子宮から出てきて乱暴に突き込みをすると、それに併せて噴射が起こった。尿道に執着している細かな触手が再度の侵入を試みようとしているが、噴出される体液によって流されている。
 粘性が高くなっている愛液と混ざり合った触手の粘液は、やや淡い緑色となって、膣口から溢れ出した。泡が立っても粘度が強いので弾けずそのまま残り、それを、尿道から射出された滑らかな水分が爆ぜさせる。
「そうだ、その調子だ。もっと、もっと狂え。アハ、アハハハハハッ!!」
 断続的に続いた尿道からの噴射が終了しても、恍魔は触手による責めをやめなかった。
 尿道から追い出されてしまった細かな触手も再侵入を完了させ、また踊り狂う。
 本体の触手は膣内で縦横無尽に駆け巡り、アーシアが絶頂して子宮口が開くと、まためり込んでいって、子宮内に粘液を吐き出した。
 アーシアの瞳に溜まっていた涙が、頬を伝って流れ落ちる。
 それでも、視線は恍魔に向けられていた。
「噂には聞いていた大天使だが、本当に大したヤツだ。フフフ、死ぬ直前までいたぶってやろう。そのあとは、光の差さぬ暗くてジメジメした牢獄に連れてゆき、そこで従順な雌犬に仕立て上がるまで、それはもうじっくりと時間をかけ、ありとあらゆる調教をしてやる。肉のペットに成り下がるのさ、貴様は」
 恍魔は舌なめずりしながら触手を操ってアーシアを責めたてた。
 突かれるまま、揉まれるまま、彼女は恍魔を見下ろしている。首を立てて保持する力はとうに失い、首を巻いている触手に頬を預けていた。触手の体表から滲む粘液によって、その頬は濡れ汚れている。
「貴様が見たこともないような醜悪な姿の生物たちとも、交配させまくってやる。自ら喜んで異生物ども相手に交わり、腰振るようになるまでな。そうだ、子でも産んでみるか? さまざまな生物の種液で、その腹を満たしてやるぞ? アハハハハ!」
 アーシアの両の乳房を引っ張りながら、口に挿れている触手に粘液を吐き出させて飲み込ませる。喉肌で嚥下が見えると、恍魔は唇を吊り上げた。
「アーシア・フォン・インセグノ。貴様は音に聞こえし英傑だ、どうせすぐには屈服せぬのだろう? たくさん抵抗して私を悦ばせろ。そのほうが、潰し甲斐があるからな。誇り高きプライドをズタズタに切り裂いてやる。ああ、楽しみだ。貴様は私を燃えさせる。……燃えさせるんだよおおおぉぉォっ!」
 膣口と肛門に挿入している触手が回転を加えながら猛烈に出入りした。大量の粘液を吐いてアーシアを絶頂させ、それでもなお動きを激しくし、すぐにまた彼女を達させてしまう。
「死ぬか? もう死にそうか? 死んでしまうのか?」
 恍魔は狂気の笑みをたたえながら、しつこく追い込む。
 アーシアの口が切れて出血し、緑の粘液と混ざり合った。胃袋はもう満タンになっているのにもかまわずまだ呑み込ませ、アーシアが痙攣すると高笑う。
「アハハハハッ。……あぁ感じる。貴様のショーは、最高だよおおぉぉっ!!」
 恍魔は恍惚の表情となり、右腕を下げて自ら股間をなぞった。左腕は小振りに持ち上がる左胸を揉み、小指の第一間接ほどの長さを有する黒い乳首を摘んで、こねた。
 アーシアの漆黒の翼は、もう彼女がどうなろうとも反応せず、垂れ下がって揺れるだけとなった。

 胸の谷間を往復している触手が粘液を吐いて乳房や顔に飛び散らせると、アーシアは甘く弱く呻き、達した。
 翼は揺れるだけだった。
 ふたつの乳房に吸いついているそれぞれの触手が乳肉を揉みしだき、中にある長細い舌のような物体で肌色の乳首を巻きながら乳輪ごと吸い上げると、アーシアは股間から愛液をとめどなく溢れさせて天頂を極めた。
 翼は右へ左へ揺れていた。
 結腸まで侵入していった触手が先端の鉤で腸壁をえぐりながら粘液を吐き出すと、アーシアが飛び上がるように反応した。
 翼は前へ後ろへ揺れていた。
 尿道を征服している細かな触手が、太い主触手たちを真似て膀胱へ体液を噴くと、アーシアは腰を引きながら唇をわななかせ、昇った。
 黒翼が揺れ、数本の羽根がゆらめきながら、地面へと落ちていった。
 子宮に充満する粘液も無視して、また中に出すと、アーシアが大きくひきつけを起こした。 黒翼が前後左右に揺れ動き、数十本の羽根が舞い散った。

「いい……。いいよ貴様はぁっ! さあ、堕ち──」
「捉えたっ!」
 恍魔がとどめを刺しにかかろうとしたときであった。
 突如、恍魔の背後から男子の声が響いた。
 レイである。
 少年は淫気を練ってから恍魔に飛びかかっていった。全力で体当たりを見舞ったので、隙をつかれた恍魔はレイと一緒になって、地面へもんどりうって倒れ込んでしまう。
「貴様……っ。だからなぜ、淫魔の私に物理的攻撃が可能なのだっ!」
 レイは、もがいている恍魔の力を利用した。逃げようとする恍魔が脚を開くと、そこへ自分の右脚を捻じ込んでいった。顔に手を押しつけられて突っぱねられたが、力押しでねじ伏せようと試み、覆いかぶさってゆく。
 ここぞとばかりにほぼ尽きている力を使い、押さえ込みに入った。
「なんのつもりだ。貴様の相手はとりあえず後回しだ。あの雌犬と楽しんでから相手をしてやるから大人しく──」
「アーシアを悪く言うな!」
 取っ組みあいながらも、レイの頭は不思議と明晰になっていた。暴れる恍魔の力を上手に利用して、そのまま挿入体勢を次々と整える。離れようと恍魔が脚を開いて移動を試みたから、自分の身体をその脚のあいだに割り込ませるのに成功させた。
 触手による抵抗も覚悟していたのだが、それはなかった。どうやらアーシアがすべて引きつけてくれたらしい。そのお蔭で恍魔のみに集中できたのは、あまりにも大きかった。
 アーシアが心配だが、恍魔に集中せねばこちらが殺されてしまうのは分かりきっているので、申し訳ないが、今は彼女を思う心を掻き消し、恍魔との戦いに全思考を使役した。
「このっ。私の腹に乗るな無礼者!」
「どっちが無礼だっ」
 腹、というのは、恍魔の腹節である。仰向けに倒れた恍魔の股の下には腹節が横たわり、そこにレイが乗ったのだ。その影響で、思うように身動きが取れないようである。
「降りろっ。力が、入らぬっ」
「それは好都合っ」
 レイは恍魔の細い左腿を抱くと、自分の股間を恍魔の股間へ重ねていった。
「ま、まさか貴様──っ」
「当然っ!」
 恍魔が腰をよじって回避してきたので、レイは自分の若塔を掴んで追撃した。
 少年は腹節に乗っているので、恍魔が腕を使って後ろに下がったところで、自分が何もしなくとも、一緒についていけた。
 また、腹節に乗ってから恍魔の抵抗があからさまに弱々しくなったので、レイは自分の思いどおりに易々と体勢が整えられた。
 恍魔の左脚を持ち上げて股を開かせ、自分の左脚は恍魔の右脚の上に置いて、さらに抵抗しづらくさせる。一般にいう、松葉崩しに似た姿勢である。
 互いの股が重なりそうなほどに密接すると、レイは己の先端をあてがいにいった。
 恍魔は脱皮して新しい姿になってからまだ間もないというのに、淫裂は全体的に黒ずんでいる。濡れ光っているそこは、恍魔の意思とは逆に、少年の若塔を迎え入れようと勝手に開いた。中から覗く膣口が開閉を繰り返して別の生き物のように動き、レイの先端を軽く咥える。
 その刺激で、包皮に包まれていた黒い豆が半分ほど顔を出す。小陰唇は充血して、さらに谷を押し開いた。
「くっ、力が……。卑怯だぞっ」
「そんなの自覚してる」
 恍魔が驚愕して目を見開くと同時に、レイは今できる最大限の淫気を、淫核化している心臓内で練り込んだ。
 すると、淫核化した心臓内にあるもうひとつの小淫核が呼応し、即座に練り込みが完成する。
 少年は、すぐさま超高濃度の淫気を若塔に送った。
 焼け爛れそうな苦痛に顔をしかめつつも移動が完了すると、屹立している若塔が頻闇の波動に包まれ、岩石同然の硬度を有した。
 レイは間髪入れず、感じろと、強烈に念じながら腰を突き込む。
 互いの腰がぶつかると恍魔から甘い叫びが上がり、首と腰をえび反らせた。
 挿入が達成されると、アーシアを宙吊りに拘束していた触手たちが、地面へゆっくりと落ちていった。
 アーシアが地面に横臥しても、触手たちは彼女の中に入ったままだし、腰に巻きつきながら乳房に吸いついている触手もそのままだ。また、両脚を縛りつけている触手たちや、両腕と首を縛り上げて先端を口に入れている触手もそのままだが、それらすべてに、動きが見られなくなった。
 力が入らないというのは本当のようだ。
 本体の恍魔自体からも、強い力は感じられないのである。
 レイはそれらを確認したあと、スキンヘッドの恍魔を見下ろした。恍魔は土色の顔色を濃くしながら、驚きの表情で少年を見上げている。
 中の具合は、覚悟していたほどではなかった。ディアネイラやアーシアのものと比較すれば、緩いとさえ感じる。熱く火照って濡れているのは、性行為をしていたので恍魔も燃え上がっていたからなのだろう。
「な、何をする! すぐにこの、汚らわしい一物を抜けっ。私の壷は、貴様のような子供が扱っていい代物ではないぞっ!」
「シンディやアーシアを酷い目に遭わせておいて……。その言い草はないだろ!!」
 搾り尽くしにこられると考えていたが、とくにその動きはなかった。
 力が入らないのは、自分が腹節に乗りかかっているのが原因なのかを知るために、レイは尻に重心を傾けて押し込んでみた。
「あうっ」
 腹節がたわむと、恍魔からさらに力が抜けた。抱えていた左脚がずり落ちそうになったので、レイは自分の右肩に恍魔の左脚を引っ掛けさせて固定させ、抱き直す。
 これは使えそうだ。
「よせ……。こんなのは卑怯だっ」
 恍魔の顔色が紅潮しているのが分かった。土色の肌に、とても濃い赤みが差している。
「だから自覚してるって言ってんじゃん。……何をしたって、アンタは滅ぼす」
 闇色に染まるレイの瞳が据わると、恍魔も覚悟を決めたようで、睨み返してきた。
「ちっ。ならば、私の腹が耐えきれぬほどに……、搾り取ってくれる!」
 先に恍魔が仕掛けてきた。肉貝を締めてレイを潰しにきたのだ。
 だが、射精感を抱かせられるほどの攻撃力はなかった。思うように力をかけられないのだろう。もちろん、長く締めあげられればやられてしまうだろうから、こちらもすぐに仕掛ける必要があった。
 尽きかけている体力がどこまで続くか不安であるが、それを顔に出さぬようにした。
 呼吸は荒く、心臓や全身の痛みは意識を飛ばすのに充分な威力がある。そう時間はかけられない。
 まずレイは、尻に体重をかけて腹節を圧迫し、締めつけてくる行為を強制的にやめさせた。
「この……。悪魔のような少年めっ」
「アンタと堂々と勝負する気なんて、……ないっ!」
 レイは最初から全開で、腰を振っていった。
 恍魔が細身を仰け反らせ、打ち震える。無毛の頭を両腕で抱え、小振りな乳房を肋骨に沈めながら、大きく喘いだ。
 反撃の開始である。

背徳の薔薇 贄 了
第十八話です

メッセージありがとうございました。
読みやすい文章というのは難しいですが、念頭に置いて努力していきたいので、遠慮なくどしどしご意見をくださると嬉しいです。

管理人様
何度も調整してくださりありがとうございました。

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