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LoveRomance Saga3

「まだ先は長いの?」
 僕たちは、さらにいくつかの分岐を抜け、洞窟を進んでいた。今は僕が先頭に立っている。周辺警戒の訓練のためだ。
「いえ、もうそろそろ…ああ、あの角を曲がったらゴールですよ」
 今のところ、場の雰囲気に変化の兆しはない。どうやら、僕はサキュバスに会わずにゴールできそうだ。
 と、一瞬気を緩めた瞬間、
サワサワッ
「ひんっ」
 何者かにお尻を撫でられた。明らかに性的な触り方だ。
 すわ、淫魔の奇襲かと、僕は飛び込み前転の要領で、思いっきり跳躍した。
「ダスティン!気をつけて!」
 僕のお尻を狙える位置にいたということは、後ろにいたダスティンが危ない。僕は受け身をとった勢いで、後ろを振り返った。
「あれ?」
 そこには、ちょっと驚いた様子のダスティンの姿しかない。
 と、いうことは、僕のお尻を触ったのは……
「ダスティン…まさか……」
 僕は最悪の事態を想像し、思わず後ずさる。
 はっ、だめだ、この先がゴールということは、つまり行き止まり。冷汗が背中を伝う。僕は完全に追い詰められていた…。
「ちょっ、何アホなことやってんですか!俺じゃなくて、そいつですよ、そいつ!」
 疑惑の眼差しを向けられたダスティンは、僕の背後を指さしながら、必死に弁解する。
 その手には乗らな…
「ひんっ」
 また背後から、今度は耳元を撫でられた。
 驚いて振り返ると、ぼんやりと女性の形を留めた、白い靄のようなものが、僕の背中にとりついていた。
 淫魔だ!
 良かった!
「ダスティン、あれは?」
 ぼくは急いでダスティンの近くに駆け寄る。
「若……。あれはシルフです」
「強いのかい?」
「強くはないんですが、ちょっとやっかいですね。試しに触ってみて下さい」
 よし、僕は靄の表面をなぞるように手を伸ばした。
「あ、あれ?」
 全く手ごたえがない。
「そう、全く触れないでしょう。シルフは普段実体を失ってるんで、どんなに腕のいい騎士でも触れないんですよ」
「そんなの無敵じゃないか、どうやって倒すんだい?」
「シルフは攻撃もほとんどしてこないんで、無視するのが一番なんですが、どうしても倒したいときは…」
 ダスティンはそう言いながら、まだ僕の周りで佇んでいるシルフに近づき、タイミングを計っている。
「ひんっ」
アアアァァァン
 シルフが三度僕に触れた瞬間、ダスティンの手がひらめいたかと思うと、シルフは僕の耳元で嬌声をあげて消滅した。
「おおっ」
「とまあ、攻撃するために実体化した瞬間を狙って、責めるわけです」
 鎧袖一触とはこのことか、一瞬で淫魔をイかせた手並みを、こともなげに語るダスティンに、僕は尊敬を深めたのだった。
「あ、それより若、あちらをご覧ください」
「もしかして、あれが?」
 ダスティンの指さす先には、石造りの台の上に煌びやかな宝箱が置かれていた。
 僕が勝手にダスティンへの評価を二転三転させているうちに、ゴールにたどりついていたのだ。
 僕は思わず宝箱に駆け寄っていた。
 中には、宝玉を持った鷲のレリーフが掘られたメダルが入っていた。鷲宝綬章、戦功のあった騎士に与えられる勲章だ。
「ダスティン!」
「おめでとうございます、若」
 こうしてメダルを手にしたことで、僕はここまでの道のりで経験したことを、改めて実感することができた。
 胸がいっぱいになった僕を、ダスティンが労ってくれる。
 僕たちは笑顔を交わして、喜びを分かち合った。

「さあ、ダスティン、早く城に帰ろう」
 僕は意気揚揚と先頭に立ち、帰路に着く。あとは来た道を帰るだけだ。
 しかし、それは致命的な油断だった。
 駆け足で曲がり角を曲がろうとして、あたりに漂う粉っぽさが増した香りに気づいた時には、すでに僕の体は柔らかいものに抱きとめられていた。
「むぐっ!?」
 僕の顔面が、ふかふかのクッションに包まれる。駆け足での衝突にも関わらず、いささかの痛みもない。
「若っ!!」
 急に途切れた僕の声を追って、緊迫したダスティンの声が迫る。
「ゴールおめでとう、ぼく。ご褒美にお姉さん達が、あっちで可愛がってあげるわ」
 声の主は、僕を抱きしめたまま、後ろに引き摺って行く。僕は、足をつっぱらかして必死に抵抗したが、何者かの手によって、ひょいっと腰を持ち上げられてしまい、いとも簡単に運ばれてしまう。
「なっ、サキュバスが二匹?くそ、待てっ、若を放せ!」
「むぐぅ!ぐぐっ、むううっ!」
 僕が滅茶苦茶に手足を振りまわし暴れると、サキュバス達のスピードが鈍り、ダスティンの気配が近くなる。
 一気に差を詰めた彼の気配が、僕の腰を持ち上げているサキュバスに、届くかと思われた瞬間、
「残念でした〜、あなたの相手は私よ」
分岐した道に潜んでいた三人目の声が、後ろから響き、何かが倒れる気配がした。
 音でしか分からないが、後ろから奇襲を受けたダスティンが、引き倒されてしまったようだ。
「ばかな、三匹だと!ええい、邪魔だ、放せ、淫魔めが!」
「あっ…ちょっ、やばっ、何こいつ、上手いっ、ああっ、あぅん」
 さすがはダスティンだ。奇襲をものともせず、反撃に移ったようだ。すぐにサキュバスの喘ぎ声が聞こえ始める。
「ね、姉さん不味いわよ、リナが…」
「ええ、分かってる。私が行くから、あなたはこの子を押さえていて」
 淫魔に血縁はないが、同時期に同じ理由で生まれたものは結束が強い。このサキュバスも、同時期に発生して、姉妹のような意識でいるらしい。妹の危機に、僕の顔を抱いていた長女らしきサキュバスが、慌てて援護に向かう。
「ぷはっ」
 底なし沼のような弾力から解放され、やっと息をつける。
 腰を抱えているサキュバス一人では、さすがに僕の体重を支えられないらしく、岩場に足がついた。
 まずは状況を把握するため、後ろを振り返ると、紫の髪と色を揃えた、ブラとタイトなミニスカートを纏った、ロングヘアの淫魔が、後ろを気にしながら腰に抱きついていた。人間なら20代半ばだろうか、やや垂れ気味の目元と、ウェーブしている髪が色っぽい。僕より、頭半分高い長身に似合った、メリハリに富んだ体つきをしている。胸などは、セシリアより二回りは大きい。インプと同じような形の羽が生えているが、かなり大きく、力強さを感じる。
 彼女の向こうで、ダスティンに絡みついているサキュバス達も、同じ種族なので外見や雰囲気はよく似ていたが、顔の細かな造形や髪の色、服装に個体差が出ていた。
 ダスティンに組み敷かれ、股間を弄られている、リナと呼ばれていた末妹は、二女より少し赤い髪の色に合わせた、ブラとホットパンツを着ている。リナを助けようと、背後からダスティンに抱きついている長女は、青味の強い紫で、髪とそろえたパレオを腰に巻きつけていた。
「あっ、お姉ちゃん、助かったわ。んっ、気をつけて、こいつ…、強い」
 背後から長女の執拗な妨害を受け、さしものダスティンも、攻撃の手が弱まってしまった。
「若っ!サキュバスの一匹や二匹、すぐに片づけてそっちに行きますんで、しばらくがんばってください」
「ダスティン、こっちは気にしないで、その二人に集中して!」
 そうだ、いくらダスティンでも、二人同時に相手するのはきついはずだ。せめて二女だけでも、僕が相手しないと。
「あら、ずいぶん勇ましいのね。気に入ったわ、あなたは私がイかせてあげる」
 二女は僕の耳に息を吹きかけながら、さっそくベルトを外し始めた。
 まずはこの不利な体勢から抜け出さないと…。
「この…くっ、放せ」
 インプのミナのときと違って、腕力もそれなりにあるらしく、淫魔の扱いに不慣れな僕では、ベルトをしっかり掴んでいる手を、引き剥がすことはできなかった。
 なら、ミナを落とした魅惑のトークで…。
「ねえ、お姉さん、名前を聞いていいかな?」
「サラよ、それがどうかした?」
「サラか、いい名前だ。その星座を散りばめたような、艶やかな髪の色といっしょで、深い夜の海のイメージだ」
「あら?随分ロマンチストなのね。ふふ、ありがと」
 成功だ。よし、このまま。
「ねえ、サラ。僕、その綺麗な髪を撫でてみたいんだけど」
 これで自然に振り向け……
「そう?私はあなたのペニスが撫でたいわ。ねえ、見せてくれない?」
「えっ…、いや、だめだよ」
美しい女性の口から、突然飛び出た卑語に、僕はしどろもどろになってしまう。
「あなたのペニス、ちゃんと固くなってるんでしょ?」
「えぅ…」
「なってないの?」
「いえ、なってます…」
 なぜか敬語になってしまう。
「じゃあ、恥ずかしがる必要ないじゃない。立派なオチンチン、見せてちょうだい」
 だめだ、役者が違う。
「で、でも……」
「でもじゃないわよ、ほら!」
キュッ
「うっ……」
 ズボンの上から、長い指に陰嚢ごと鷲掴みにされ、内またになってしまう。
 勝てる気がしない。
「ダ、ダスティ〜ン」
「若っ!ええい、くそっ!」
 僕の救援を求める声に、彼は防御を捨てて、リナへの責めを強める。長女がその隙をついて、彼のズボンを脱がしにかかった。
 僕は僕で、少しでもサラの邪魔をしようと試みるが、攻防の要であるベルトのバックルが、すでに彼女の手に握りこまれていて、効果的な防御ができない。あたふたしているうちに、ベルトを外されてしまった。緩んだウエストから、手を差し込まれそうになって、慌ててサラの手首を抑える。
「んっ、こらっ、無駄な抵抗しないで、んちゅっ、あきらめ…なさい」
 サラは僕の耳たぶをしゃぶりながら、中指だけで勃起の先端を弾いてきた。
 そう、自己主張を始めていた分身は、上を目指して伸びあがり、自らその身を淫魔の射程内へと近づけていたのだ。敏感な鈴口に指の腹が引っかけられ、そのままゆっくりと亀裂を撫で上げられる。相棒の利敵行為のせいで、苦痛混じりのもどかしさに苛まれることになった。
 「あっ、く、ああっ、だめだっ!」
 敏感な粘膜の中でも、特に弱い亀裂を狙う、乾いた摩擦に耐えきれず、僕は両手で裏切り者を覆い隠すため、サラの手首を離してしまった。
「はい、ご開帳ぉー」
 サラは、間髪入れずズボンを下着ごとずり下ろした。前かがみになって股間を手で隠す、情けない少年のオブジェの出来上がりだ。
「ダスティ〜〜ン!」
「ぷぁっ、若、今しばらく!」
「あっ、あっ、あっ、お姉ちゃん、助けて、ああっ、いいよぉ」
「この、早くイきなさい、んっ、んちゅ、ちゅぱっ」
 もう一方の戦場では、3人が複雑に重なり合っていた。リナのホットパンツを剥ぎ取ったダスティンが、彼女の股に顔を埋めて舌先で責め立て、ダスティンのズボンを奪い取った長女が、彼の首筋に吸いつきながら、妖艶な手つきでペニスを扱いていた。
 ダスティンの余裕の表情にくらべ、リナの方は大分切羽詰まった様子だ。
「ああっ、ダメ、そこ舐めちゃ、いやっ、指まで…、あんっ、イっちゃう、イっちゃうよぉ!」
 陰核しゃぶりに加えて、膣内を指でかき混ぜられ、リナは絶頂寸前だ。
「いやああぁぁっ!」
「よし、イかせた!」
 腰をガクガクと震わせていたリナの体が、ピーンと硬直した瞬間、後ろに淫魔を張りつかせたままダスティンが立ち上がった。
「若!今行きます……、なにっ!?」
 そのまま駆け出すかに見えた出足が、一歩目で払われてしまった。跳ね起きた勢いのまま、崩れ落ちるダスティン。あわや、床にぶつかるかと思われた彼の体は、柔らかなクッションに受け止められた。
 まだリナが消滅していない。
「そんなバカな!?サキュバスがなんで絶頂に耐えられる?」
 二人のサキュバスに、完全に挟まれてしまったダスティンが、衝撃を受けて固まっている。自分の下にある感触が、信じられないようだ。
格の高い淫魔には、二度三度の絶頂にも耐える種属もいるが、通常サキュバスはそれに当てはまらない。彼が驚くのも当然だ。
「ふふっ、驚いた?私たちも、昨晩生まれてみて、吃驚しちゃったわ」
 リナをイかせた凶器のような口が、今は胸元にあってとりあえず危険が無いため、優位を意識した長女が饒舌になる。
「昨晩生まれただと?どこでそんな淫気を集めたんだ!?」
「あなた達のお城からよ。昨日一晩中、すっごい淫気が流れてきてたわ。若い子の、イきたいのにイけない、イきたくないのにイかされる、そんな悶々とした葛藤がずーと続くんですもの、実体化できるだけ集めた後も、どんどん流れ込んできて、元気になりすぎて困っちゃったわ」
 つまり、異常に濃い淫気が、通常より強い淫魔を生み出してしまったわけか。
「でたらめを言うな!イマキス城に、淫気を大量に生み出すような、不自然なセックスをする不埒な輩がいるわけがない!」
「そうだそうだ、イマキス城の人たちは、城下の住民も含めて、皆自分達の騎士の国に誇りを持っているんだ。己の快楽に負けて、淫魔をみすみす助けるようなまねをする、不届き者がいるわけ………」

……昨晩?

…………いた。

僕だ。

ダスティンと目が合う。
「一晩中って、若、もしかしてあの後…」
「ごめんよ、ダスティン〜!」
 そう、確かに僕はセシリアと、一晩中、非常に不自然なセックスをしていた。足を使っていろいろした。足の裏も使った。ストッキングも使った。皮靴も使った。それがまさか、こんな事態を招くなんて…。
「あの、バカ女ぁ!!」
ダスティン、セシリアを怒らないで。悪いのは僕なんだから…。
「あらあら、その女とよっぽどすごいことしたの?指の間からはみ出てるわよ。なんなら、私もしてあげようか?」
 昨晩のことを思い出し、大きくなり過ぎて、手の中に納まらなくなった肉棒に、サラが指を這わせてくる。
「いえ、結構です」
 正直に言ったら、サキュバスにも引かれるかもしれない。第一、セシリアの立ち仕事で引き締まったアキレス腱と、奇跡的な柔軟さの土ふまずなくして、あれを再現することなどできるはずがない……。僕は丁重に断った。
「若、すいませんが、しばらくかかります。なんとか凌いでください」
「わ、分かった」
 さすがに百戦錬磨の騎士だ。事態を飲み込んだダスティンは、すぐさま行動に移った。器用に腰を揺すって、手コキのリズムを乱しつつ、リナの乳首に吸いついている。
 淫魔達も連携をとって、強敵になんとか立ち向かっていた。リナが胸の防御を捨てて、ダスティンの両手首をつかんでいる。妹が乳頭の性感に耐えつつ騎士を拘束するのに専念し、長女の責めにかけることにしたようだ。
 すでに頬を染めているリナに対し、ダスティンの顔には余裕の色が見られるので、彼が負けるとは思わないが、かなり時間はかかりそうだ。
「そんな約束しちゃっていいの?助けてもらった方が、いいんじゃない?」
 サラが手の甲を擦ってくる。ひんやりした指先を骨や筋に沿って這わせたかと思うと、温かい掌でしっとりと包み込んで撫で上げる。豊満な乳房が背中に押し付けられ、濃密な淫魔の香りが漂ってきた。
「うぅ……」
 僕は、理性をかなぐり捨てて、躍りかかりたくなるような誘いに耐え、口を噤んだ。僕にできる一番の援護は、ダスティンの気を散らさないようにしながら、ひたすら時間を稼ぐことだからだ。
 僕は、恥も外聞も捨てて、股間を押さえたまま正座して座り込んだ。陰茎を腿の間に押さえつけ、両手で上から覆い隠す。反撃を完全に捨てるかわりに、致命的な刺激を避ける、完全受身の防御の姿勢、タートルガードポジションだ。
「あなた、どれだけ情けない格好してるか、分かってる?」
「ふんっ、情けないと思うなら、かかってこい!僕をイかせられもしないのに、大きな口を叩くな!」
「言ってくれるわね…」
 明らかに格下な新米騎士に挑発され、サラはプライドを傷つけられたようだ。これで、僕を無視してダスティンの方へ向かわれるという、最悪の事態は避けられそうだ。
 サラは、まずは僕の足首のところに残っていた、ズボンと下着を引き抜き始めた。僕も一応つま先で抵抗するが、すぐに奪い取られてしまう。だが、今更大勢には影響ないはずだ。
それが分かっているのか、サラも何とか僕の欲情を誘おうと、自分の中指を口に入れて、挑発的なポーズをとったりしている。
「わ…か…、若、…むぐっ、ぐぅ、だめ…それじゃ……、かか……と」
「ダメよ、外からアドバイスしちゃ」
 視界の端で、僕の様子を伺っていたようで、ダスティンが何事か警告を発した。長女は、僕にそれを聞かせたくないらしく、ペニスを掴んでいた手をはなし、彼の顔をリナの谷間に押し付け、黙らせようとしている。
「踵?はっ、しまっ…」
 しまったと思った時には遅かった。僕の反応より一瞬早く、サラの指が、お尻の割れ目に沿って滑ってきた。
「ふふふ、こっちがガラ空きよ。偉そうなこと言うのは、もう少し慣れてからになさい」
「あくうぅっ!」
 寸毫の躊躇いも見せず、彼女はその細くて綺麗な指を、僕の不浄の穴に突きいれてきた。
 本来タートルガードポジションでは、左右どちらかの踵で肛門を守らなければならない。それを失念していた僕は、無防備に急所を晒していたのだ。
 すでに先端を潜り込ませた繊細なる凶器は、反射でギチギチと悲鳴を上げている括約筋の関門を、唾液の滑りを使っていとも簡単にすり抜け、温かな穴倉で寛いでしまった。
「あら、こっちを弄られるのは、初めて?痛くしないから、心配しないでね」
 サラは完全に埋没させた中指を、蛇のように波打たせ、僕の強張りを揉みほぐしてくる。
 彼女の言うとおり、一度受け入れてしまうと、痛みは全くなかった。
「おっ…ほぉ…おふぅ…」
 挿入の衝撃が去ってみると、ただじんわりとした違和感があるだけで、特にこれといった快感も無い。屈辱的で精神的には十分刺激的な行為だが、イかされる心配は無いように思う。
「よーく、ほぐしてあげる」
 付け根で菊門を広げるようにして、指が円を描くが、やはり恥ずかしいだけで、追い詰められている感じはしない。
 大丈夫だ。意外に耐えられる。
 ……浅はかな考えだった。
「さ、いくわよぉ」
 サラの一言とともに、指の抽挿が始まると、静かだった状況が一変した。お尻から伝わる刺激が一気に強まり、漠然とした異物感は、はっきりとした存在感に変わる。肛門を何度も往復する指が、その形を明確なイメージとして脳裏に焼き付けていくのだ。
「ああぅっ、や、やめっ、…うくあっ、ひあっ、あああ……」
粘膜での性感は、圧迫刺激より摩擦刺激によって顕著にもたらされる。肛粘膜も例外ではない。
排泄を思わせる快感が途切れることなく続き、体内に踏み込まれている実感が、妙な充足感と従属の喜びを生み出していく。
 サラの指使いは、まさに征服者を体現していた。ワンストロークごとに、支配者と被支配者の関係が明瞭になり、屈辱の中、抵抗心が薄れていく。依存心が膨れ上がり、蹂躙が決して不快でないことを教えられる。もしかすると、膣に挿入されている女性の心情に近いのかもしれない。
「ひきいっ、やめろっ、あぐっ、…嘘だ、そんなの…、やめて…入るわけな、ひいっ」
 痛みをもたらさない征服者に、援軍が加わる。肛姦の指が一本増やされ、2倍になった体積がそのままの勢いで僕を犯し続ける。
「だいぶ気持ち良くなってきたみたいじゃない。じゃあ、次はイってみましょうか?」
 サラはそう言うと、指を限界まで突きさしたまま、小手を返して半回転させる。
 鉤爪状に曲げられた指先が、お腹側の腸壁に添えられた。
「ん〜、あったわ」
「な、なにを……、んはあぁぉぉぅ…」
 腸壁がぐっと押しこまれ、そのすぐ向こうのしこりが圧迫された途端、僕の全身を激しい脱力感が襲った。四肢から力が抜け、前に崩れ落ちそうになる。
「くぅっ、…だめだ…耐えないと…、おぉぉふぅう…んぐっ、やめ…おおんぉっう」
 少しずつ体が前傾していくにつれて、指の動きが奔放で大胆なものになっていく。
 体を起こそうとしても、軽くバイブレーションを送られただけで、理由の無い幸福感が押し寄せてきて、抵抗を止めてしまう。
 だめだ、耐えられない。
 心身を侵す肛辱の毒が、僕を追い詰め、愚行に走らせた。
「ここから逃げられるわけないでしょ!」
「あうあっ!」
 サラの手から逃げ出そうと、立ちあがりかけたところで、肛門を掴まれて引き倒される。僕はお尻を高く上げて、床に伏せる格好を取らされた。立ち上がる時に開いてしまった膝は、滑り込んできたサラの足が邪魔で、閉じられない。引き縄をつけられたまま、脱走を試みた家畜の末路だった。
「あら、でも手は離さなかったのね、偉いわよ」
 この状態でペニスを扱かれれば、一巻の終わりだ。意地でも放す訳にはいかない。
「でも、こっちまでは届かないわね」
「あいっ、くううっ」
 膝を開いたことで、腿の守りを失った陰嚢が、ワッシと握りこまれてしまった。
 サラは、僕が痛みを感じないギリギリの強さで、袋の中のものを揉み込んでくる。
「ひっ!」
「だめよ、暴れちゃ。間違えて潰しちゃったら、どうするの」
 淫魔は傷が残るような暴力は振るわないことは分かっているが、どうしても恐怖心は湧きおこる。
「そうそう、じっとしてれば、怖いことなんて、な〜んにもないのよ」
 大人しくなった僕のお尻に、再び肛虐の嵐が吹き荒れる。手首が楽な角度になったせいで、スナップを利かせた激しく柔軟な動きだ。
 指の一突き、一揉みごとに亀頭を覆っている掌が湿っていく。先走った体液が陰茎に納まりきらず漏れ出していた。
「うあっ、なんで? くうぅあっ、出そう、だめだ、ああっ」
 マッサージを受けた二つの器官は、せっせと精液の素を作りだし、発射準備を整えていく。必死で銃身を押さえる主人を尻目に、性の弾丸が薬室に込められ、撃鉄が起こされる。肉茎への刺激が一切ないまま、射精の予兆だけがたかまっていた。
「ふふっ、出そう、じゃないでしょ、よく御覧なさい」
「え? あ…嘘だ、なんで?」
 サラに促され、股間を見下ろすと、防御の指の間から、白い粘液がポタポタと滴っていた。先走りの汁と思われたのは、紛うことなき本命だったのだ。
「ふうあぁ……、出ていく…」
体内に満ちていた精気が、滴りとともに漏れ出していくように感じる。
「いいわぁ、あなたの精気、光に満ちて沁み込んでくる」
 サラは、いったん精巣へのマッサージを止め、精液をすくい取って口に運んだ。頬を染め、恍惚の表情を浮かべている。精気を吸いとることで、本能的な渇望の中に、一時の充足を得ているようだ。
 一方の僕の方にも、奪われた精気を充填するかのように、流れ込んでくるものがあった。サラの放つ淫気だ。
 だが、ぽっかり空いた場所にはまり込んだ淫気は、一欠片の充実もあたえず、さらなる欲求を訴えかけてくる。
 腰部に澱のように溜まった淫気が、陰茎の中を循環して、勃起を促す。そそり立つ肉棒は、何かを失った喪失感を抱えながらも、さらなる放出への欲求で膨れ上がった。
「イきたくて堪らないでしょ? 大丈夫、すぐにイかせてあげるわ。そしたら、今よりもっとイきたくなっちゃうけど、またイかせてあげる。どんどん辛くなるけど、安心していいわよ。私が最後まで付き合ってあげるから。…さあ、手を放して」
 サラが僕の手首を掴んでくる。抵抗のために力を入れただけで、握りこんだ肉棒が震えてしまう。自分で押さえているだけで、射精してしまいそうだ。
 それならいっそ……。
 いや、だめだ。
 …でも……。
 手首に伝わる、サラの掌の柔らかさに全てを委ねてしまいたくなる。
 でも、それは快感を求めてだけではない。そうであれば、まだ耐えられる。
 ひたすらに寂しいのだ。誰かに慰めて欲しくてたまらないのだ。他人に触れてもらわないことには、心に穴が開いてしまいそうだった。
「我慢しちゃだめ、心が壊れちゃうわ。私に委ねるの、ずっと一緒に居てあげるから、ね、ほら」
 耳に染みいる甘い言葉とともに、腸壁が強く引っ掻かれる。
クリッ
「ああっ!」
ドクゥ
 前立腺への刺激による、2回目の強制射精だ。
 再び訪れる空虚とともに、自然なメカニズムを無視した射精の代償として、肉体的な疲労が押し寄せ、意識までもが朦朧としてきた。
 このまま続けられれば、次の射精は意識を保てないかもしれない。もし気絶したりすれば、ダスティンは3対1を強いられる。
 もう自棄だ。
 どうせなら、イかされる前に少しでもダメージを与えてやる。
「ぐあああぁっ!」
「えっ? ちょっと…」
 僕はさらに深く入ってくる指に耐えながら、サラの顔の前にお尻を突き出していく。いきなりの奇行に、サラが僅かに仰け反った。
「きゃあっ!?」
 僕の膝を開かせるために、近づき過ぎていたのが災いして、サラはそのまま後ろにひっくり返る。彼女の、ピッタリとタイトミニを張りつかせた太腿の間に、僕の頭が挟まれた。シックスナインポジションだ。
 僕はペニスのガードを解いて、スカートの中のショーツを剥きにかかった。
「あっ…、まだ抵抗する気? んんっ、いいわ、面白いじゃない、イかせてあげる!」
「んぶぅっ、んむむう、むちゅっ、ちゅばっ、んんんっむうぅ!」
 サラがぬるぬるになった亀頭を中心に、無防備な陰茎を扱きたてる。無論肛門を責めながら。
 亀頭を包む掌の、なんと暖かなことか。他者の慰めを欲していた肉棒が、淫魔の手によって、破滅の予感を含んだ、偽りの充足を得る。
だが、偽りとはいえ、慰めには違いない。僕は、心に充填された一時的な活力を糧に、濃密に香る淫花にむしゃぶりついた。
 股間やお尻から込み上げてくる叫びを、全て舌の動きに転嫁し、一心不乱に舐め続ける。
 サラの体にのめり込むことで、興奮が空虚を埋め、無茶な責めを可能にしていた。
 しかし、悲しいかな、精神に技術が追い付かない。未熟な僕の舌技では、サラに有効な快感を与えられなかった。
「あんっ、ふふ、まさかあそこから反撃してくるなんてね。でも、もう終わりよ!」
 手淫のスピードが上がり、射精感が否応なく高まる。お尻に入れられた指に、括約筋の働きを阻害され、僕は耐える間もなく3度目の精を放った。
 肉茎への摩擦による自然な射精は、量が多く、それに比例して襲いくる喪失感も強かった。
「休ませないわよ!ほら、ほら、ほらっ」
 射精中も続けられる手淫が、偽りの安らぎを与え、心が満たされる。激しく振れる感情の波に翻弄され、僕は舌を突き出したまま、涙を流していた。
 もうだめだ。舌も動かない。
ポンッ
 僕が意識を手放しかけたとき、肩に力強い感触が触れた。
 あっ………。
「ふふっ、ふふふっ、泣いてるの?ほら、舐めるのをやめちゃだめよ、まだまだ続けるんだか…ら?………えっ? 何?何してるの?」
 舌とは明らかに違う気配を股座に感じ、サラが狼狽した声を出す。
「ああ…、まだまだ続けてやるよ。若じゃなく、俺がな!」
 声の主は、もちろんダスティンだ。
 彼は僕の体を引き起こすと、唾液で濡れそぼった膣口に、固く反り返った剛直を突きいれた。
「なんであなたが?姉さん達は?あっ、いや、いやあああっ!太いぃ、んんぅっ、入ってくるぅぅ!」
 ダスティンの鍛え抜かれた陽根は、サラの膣道の形を無視して、あえて不自然な角度をつけて押し入っている。
 逞しい巨根に押し広げられる衝撃は、相当なものなのだろう。僕の下半身を拘束する力が、一時的に弱まった。
 僕は気力を振り絞って、お尻から指を引き抜き、横に倒れ込むようにしてサラの手から逃れた。それを確認したダスティンは、今度はしっかりと角度を合わせて、奥まで牡杭を打ち込んだ。
「ああっ、あああっ!今度は深い、奥に来すぎぃ!」
 雁首が見えるほど引き出されたかと思うと、次の瞬間には恥骨が打ちあわされている。二人の間で弾ける愛液が、長いストロークが生む、衝突の凄まじさを語っている。
 ダイナミックなピストンが子宮口を穿つ衝撃に、あれほど恐ろしかったサラが、ただただ翻弄され、されるがままになっていた。
「待って、お願い、止めてぇ!」
「いいや、だめだ!お望みどおり、たっぷり続けてやるから、よく味わえ!」
「いやあぁぁっ!」
 
 勝負はあっけなく終わった。
 ダスティンの巧みで力強い抽挿は、サラに嬌声を止めることさえ許さず、快楽を絞り出させ続けた。
 絶頂の叫びを上げるサラを、容赦なく責め立て、彼女の存在を散らしていくダスティンの顔は、普段の表情からは想像もできないほど、無慈悲で怒りに満ちていた。だけど、その瞳に、憎しみの色だけは無かった。
 
「若…、お待たせしました」
「……っ!」
 サラの名残である、光の粒の最後の一粒まで散らしきったダスティンが、傍で転がっている僕に声をかける。返事を返そうと、彼の方を見た時、視界に映ったものに、僕は言葉を詰まらせた。
 ダスティンの陰茎に白い粘液が付着していた。射精の名残だ。
「ダスティン……」
 僕を救うため、防御を度外視した結果、彼ほどの騎士でも、堪え切れなかったのだ。
「大丈夫です、若。俺は慣れてますんで」
 僕が今も苛まれている空虚感を感じているはずなのに、彼は何事も無いように、僕に肩を貸してくれる。
 寄り掛かった肩に、彼の力強さが身にしみた。
 ダスティンほどの騎士に、射精の憂き目を味あわせてしまった、自分の不注意と力不足が、不甲斐なく、情けなく、悔しくて……、でも、温かい肩が心強くて……。
 
俯いて嗚咽を漏らす僕を、静かに支えていたダスティンが言った。

「若…、お辛いようでしたら、応急手当てを…」
「うん、断る」

僕は彼から離れた。
伏し初め編の後半です。

話の流れから、アナル責め(られ)になりましたが、ちゃんと書けてますでしょうか?
一応【801】注意を入れときましたが、必要なかったかな?
(ダスティンはノーマルです。アルフレッドもノーマルです。念のため)

前回コメントいただいた御八方、ありがとうございました。
覚えている範囲で
凸凹さま
 前々回に引き続き、コメントありがとうございます。ハンドルネーム、なんかエロいですね。
タローさま
 インプのミナは、ボクっ娘に入りますか?巨乳じゃなくて、ごめんなさい。
アルフレッドがフルボッコ…(お名前忘れました。申し訳ありません)
 今回のはフルボッコですよね?……もっと?

ご意見、ご感想お待ちしております。

追伸
パソコンの操作についてなのですが、
『バカね―――』
     ↑この棒、どこ押すと出るんでしょうか?ご存知の方、いらっしゃいますか?

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