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LoveRomance Saga

LoveRomance Saga

コンコン
「アルフレッド様、儀礼用のお召し物をお持ちしました。よろしいですか?」
「ああ、セシリア。入って」
 窓の外を眺めていると、ノックの音が響く。ノックの主は、声ですぐに分かった。僕が4歳の頃から傍仕えとして城に上がっているセシリアだ。この10年毎朝起こしに来てくれる、彼女の声を聞き間違えるはずがない。
僕の了解を得て、彼女が厚手の豪奢なマントを抱えて部屋に入ってきた。
8歳年上の彼女は、今年で22歳になる。紺色の使用人服の上に、真っ白なエプロンを着けている。肩口で切りそろえられた栗色の髪と、頭部を彩るフリルのヘッドドレスが、彼女の清潔感を際立たせている。
「お手伝いいたします」
 セシリアがマントを持って僕の背後にまわる。羽織って首のところで飾り紐を結ぶだけなので、一人でも着られるのだが、なんとなく彼女のされるがままに任せた。
「元服おめでとうございます、アルフレッド様。ついにこの日が来たのですね。立派になられましたわ」
「ありがとうセシリア。僕、立派な騎士になるよ」
 そう、今日の誕生日をもって、僕はイマキスの騎士になる。そのための叙任式に向かうところなのだ。
 止め紐を結ぶセシリアの細い指が、僕の首をくすぐる。むずがゆいのにほっとさせてくれる優しい感触だ。
「さあ、できました」
 彼女が名残惜しむように、マントのしわを直してくれた。
「うん、行ってくるよ」
 僕は部屋を出た。

 叙任式の式場となる謁見の間で、イマキス公爵である父上と、僕が小さい頃に亡くなった母上の代わりに、公妃役を務める姉上、父上の相談役である司教様、騎士団の主だった騎士といった面々に見守られ、式は粛々と進められた。
「イマキス公子アルフレッドよ。そなたは騎士道と己の良心に恥じることなく、ロマリアの盾として騎士の務めを果たすことを誓うか?」
 式は佳境に入り、父上が騎士の誓いを促す。イマキスは本国であるロマリアの東を支えてきた。イマキスの騎士は、そのロマリアの盾とならねばならないのだ。
「はい、誓います」
「ナディア、剣を」
 父上は姉上から剣を受取り、僕の肩に剣の腹を軽く押し当てた。ロマリアの発展に伴い、他国との戦争も減り、騎士団の主な任務が淫魔との戦いになった今では、あまり使われることない剣だが、力としての騎士団の象徴でもある。この剣を受け取ることで、僕は騎士の資格を得る。
「アルフレッド励むのだぞ!」
「はい!」
 父上から剣を受け取ると、謁見の間は万雷の拍手で包まれた。

「おめでとう、アルフレッド」
「ありがとう、姉上」
 式が終わり皆が引き揚げていく中、父上と姉上が励ましの声をかけてくれる。
「さあ、今日、明日と忙しくなる。夜まで少し自室で休むがよい」
「ち、父上」
「そうね、アルフレッド、がんばるのよ」
「姉上まで…」
 父上の励ましに含まれた別の意味に気付いて赤くなった僕を、姉上がからかってくる。
 僕は意地の悪い笑みを浮かべる二人から、逃げるようにしてその場を離れた。

「若、おめでとうございます」
「ああ、ありがとうダスティン」
 謁見の間を出たところで声をかけてきたのは、騎士団所属のダスティンだった。
 武芸、性技ともに優れた彼は、25歳の若さで、すでに一隊を任されている。しかし、地の性格が非常に軽く、年の離れた友達のような付き合いをしている。セシリアとも顔見知りで、二人で僕によくしてくれている。彼には秘密だが、僕にとっては尊敬する憧れの騎士でもある。
「そうそう、若の添い伏しと伏し初めの供居は、俺が務めることになりました」
「ええっ?ダスティンがかい?うーん、頼もしいけど…よく知っている相手だと、何だか恥ずかしいな」
「なーに、供居なんざ、いざ始まったら空気ですよ、空気。それより肝心の添い伏しはセシリアが相手ですからね、知り合いだからって緊張してちゃ始りませんよ」
「セ、セシリアが!?」
「おや、ご存じなかったですか?まあ、セシリアが相手なら、万が一にも失敗はないでしょうから、気楽に構えていることですよ。それじゃ、夜にまた会いましょう」
 言うだけ言って、ダスティンは絶句している僕の背中をバンバンと叩いて去って行った。

「まさかセシリアが添い伏し相手になるなんて…」
 戻れたのが不思議なほど舞い上がったまま、部屋に戻った僕は、軽い食事をとった後、ベッドに腰かけて、何度目か分からないつぶやきを漏らした。
 年頃の貴族の子弟が、初めて女性を知るための儀式である添い伏しは、使用人の中から、性技に長けた、気立てのいい女性が選ばれるのが常である。有事には騎士団の衛生兵も務め、僕の身の回りを世話してくれているセシリアが、その相手に選らばれるのは自然の成り行きであるが、気恥かしさは否めない。なにより彼女は僕の今も続いている初恋の相手だった。
「セシリアとこのベッドで……」
 式の間に、おそらくセシリアが整えてくれた、真新しいシーツをなぞっていると、朝の彼女の指の感触が思い起こされ、股間に血が集まり始める。気を紛らわそうと、部屋の中をうろうろと歩き回りが、結局落ち着かず再びベッドに腰を下ろす。これも何度繰り返したか分からない。
 そうこうするうち、日が完全に落ち、部屋の中はランプの明かりだけになっていた。
コンコンッ
「は、はいっ!」
 突然のノックに答えた声は、情けないほど見事に裏返っていた。
「アルフレッド様、セシリアです。入ってもよろしいですか?」
「ああ…、ど、どうぞ」
 動揺を抑えきれないところへ、落ち着き払った様子のセシリアが、ドアを開けて入ってきた。
「アルフレッド様、この度は元服おめでとうございます」
「う、うん。ありがとう…」
 いつものメイド服にいつもの微笑みを浮かべたセシリアが、お祝いの言葉をかけてくれる。
 しかし、当の僕は、彼女の顔を見かえすことすらできなかった。毎朝お越しに来てくれるときには気にならなかった、彼女の胸の盛り上がりや、エプロンの紐に締め付けられた腰回りの細さが、ランプの薄明かりに照らされ、目に焼き付いて離れない。見つめるのも悪い気がして、必死に目を逸らそうとしても、気がつけば視線が柔らかな稜線をなぞっていた。
「ふふ、そんな目をされては、恥ずかしいですわ」
「ご、ごめんっ」
 悪戯を咎めるようなセシリアの言葉に、僕は俯いてしまった。
「いいえ、構いません。アルフレッド様はこれから女を知るための儀式を行うのです。知りたい対象を、よく見ることも大事なことですわ」
 セシリアはそう言うと、静かな足取りで近づいてきた。俯いたままの僕の視界の大部分が、彼女の洋服を盛り上げている、胸の膨らみで占められてしまった。
「アルフレッド様…これより私、セシリア=ランバートが、添い伏しのお相手を務めさせていただきます。私にご不満が無ければ、どうぞお許しの口づけを…」
「セシリア……」
 僕は顔を上げると、僅かに上を向き、瞳を閉じて口づけを待つ彼女の頬を両手で包み込み、その可憐な唇に口づけた。

 初めて味わう女性の唇は、思いの外柔らかで、滑らかで、温かかった。理性を蕩かすようなその感触に、僕は唇を離すことができず、さりとてそれ以上のこともできずに、ただただ、唇を合わせ続けた。
「ぅくっ……はぁはぁ…んむっ?」
 ずっと止めていた息がついに続かなくなり、唇を離し息をつく僕の口が、再び同じ感触に塞がれた。
「んふっ……んっ…」
 呼吸を乱され目を回す僕の口元に、セシリアの鼻息がかかって少しくすぐったかった。そのことで、なにも息を止めている必要がないことに気づき、僕も鼻から少し息を抜く。
 僕の体から強張りが抜けたのを感じたセシリアは、僕の背中に手をまわし、体を密着させると、閉じ合わされていた唇を離し、僕の下唇を挟みつけるようにして、モグモグと口を動かし、吸いついてきた。
 彼女に倣って口づけを変化させると、さっきまでの息苦しさが嘘のように消え、行為に没頭できた。
「んっ…むうっ……、うわっ!」
 しばらく彼女の唇の感触を味わっていると、脱力してよろけた脚が絡まり、宙に浮くような感覚とともに、体が大きく後ろに倒れてしまった。
 一瞬ヒヤリとしたものの、ボフッとういう柔らかな感触で、ベッドに尻もちを付いただけだと悟る。どうやらセシリアが、後ずさる僕を、少しずつ誘導してくれていたらしかった。
「失礼いたします、アルフレッド様」
 ベッドの縁に腰かけた形の僕を、彼女はそのまま押し倒すと、そのまま馬乗りになってきた。
 彼女の勢いに押され、僕が思わずずり上がって逃げようとすると、エプロンを外したセシリアが僕のおなかの上にストンと腰を下ろし、逃げられないようにされてしまった。
「セ、セシリアっ!?」
 何枚もの布を通しているのに、はっきりと分かる彼女の柔らかいお尻の感触が、ポヨンと伝わってきて、キスで昂っていた僕の股間のモノがガチガチに固まってしまった。
「あっ、重かったですか?少し場所を調整いたしますね」
「そうじゃなくてっ、…まっ、待って!」
 セシリアは、わざとやっているのではないかと疑いたくなるほど、見事にお尻を僕の胴に密着させたまま、腰骨の方へと座る位置をずらしていった。
 ズボンを痛いほど押し上げているモノに、彼女のお尻が触れそうになり、とにかくばれてはいけないという、罪悪感と羞恥が入り混じった感情に襲われた僕は、セシリアの腰を掴んで彼女の動きを遮った。
「どうかされましたか?」
 セシリアは、髪の毛の色を少し濃くした瞳で、不思議そうに覗きこんできた。
「えっ…あ、と…、あっ、そうだ、ダスティンはどうしたのかな?供居がいないけど始めて良かったのかな?」
「ああ、初めの一回は二人きりの方が、アルフレッド様も気が楽かと思ったのですが…、もしご不安なようでしたら、今から呼んでまいりますが」
「二人っきりの方がいい!」
 思わず力が入ってしまった答えに、すこし残念そうだったセシリアの顔が、明るくなった。
 ……いや、それより
「初めの一回?」
 勃起を隠すのに必死で、流しかけた言葉に反応した僕に、セシリアが少し意地の悪い笑みを浮かべて説明を加えた。
「ええ、淫魔に限らず、女性が男性器を責めるには、膣の他に、主なところで口や手、胸、太腿などを使えますので、淫魔と戦う前までには、それらを一通り経験しておくことが大事なのです」
「口…、胸……」
 思わずセシリアの体を眺めてしまった僕に、クスリと笑いをこぼして彼女が続ける。
「さらには、お尻や髪、足の裏、究極的には体中どこでも使えますが、そうした部位は淫魔でも使い手は稀ですし、殿方の嗜好への影響も強いので、添い伏しで使うことはありません。まあ、アルフレッド様がお望みであれば、喜んでお相手させていただきますが…」
 彼女の冗談めかした結びの言葉に、彼女に股間を踏みつけられている自分を想像し、生唾を飲み込んだのは、一生の秘密だ。
「供居の方にはそれらの責めに対する抵抗方法を、男性の視点からアドバイスしていただくのです。アルフレッド様は明日が伏し初めですので、今夜中に全部経験していただきます、がんばってくださいね」
「う、うん…お手柔らかに頼むよ」
 ニコッと微笑みかけられ、ちょっと心配になる。はたしてもつだろうか……。
「では、さっそく続きを…」
 セシリアは、僕の心配を尻目に、軽く腰を浮かせると……
「…さっきから我慢されているようですものねっ!」
テントを張っていた股間に、グッとお尻を押しつけてきた。
「ああっ!」
 話に夢中で、無防備だった所へ受けた甘美な鉄槌に、僕は素っ頓狂な声を出してしまった。
「ふふっ、隠さなくてもよろしいですのに…。アルフレッド様のココ、ズボン越しでもはっきり分かるほど固くて、立派ですよ」
 隠していたつもりが、セシリアにはばればれだったようだ。彼女は、お尻を擦りつけながら上体を倒し、キスの雨を降らせて来た。
「んっ、んっ、ちゅっ、んちゅぅ…れろっ」
 頬や瞼に散らされる口撃を、迎え撃とうと開かれた僕の唇が、先手を取られて絡めとられてしまった。歯の隙間を通って、セシリアのヌルヌルした舌が押し込まれてきた。
 下手に抵抗すると、彼女の舌を噛んでしまいそうで、動くに動けない。軽く開いたまま硬直してしまった僕の口の中で、セシリアの舌が奔放に暴れまわった。
 尖らせた舌先が、上顎や歯の付け根を舐めまわし、縮こまった僕の舌を小突きまわす。
 舌技の巧みさに圧倒され、僕が責められるまま耐えていると、セシリアは動きを和らげてくれた。少し余裕ができた僕は、彼女の舌に自分から舌を絡めていく。僕の舌技が稚拙なせいで快感は弱まってしまったが、不思議な達成感があった。
 自信を強めた僕は、今度はセシリアの舌を手掛かりにして彼女の口内を目指した。彼女もそれを助けるように、自分の舌をゆっくりと引っ込めていく。
「んっ…ちゅっ…んん…んはっ……、んぅ、んちゅぅ」
 さっき彼女がしてくれたように、僕もセシリアの口内に舌を這わす。彼女ほどの動きができないのは分かっていたので、その分できるだけいろんな所を舐めて、心を込めることにした。
「…はんっ、んむっ…ぅんむぅ……、はぁ…お上手です、アルフレッド様…」
 口を離した僕に、セシリアが頬を染めて囁きかけてきた。その表情には、さっきまでは無かった艶が感じられた。股間に押し付けられるお尻の動きも、からかうようなものから、しっとりとした動きに変わっていた。
 セシリアは上体を起こすと、ワンピースになった使用人服のボタンを一つずつ外し始めた。
 喉もとからお腹まで続くボタンが、一つ外れる度、服の合わせ目から覗く肌の面積が増えていく。たっぷり見せつけるようにしてボタンを外し終えたセシリアは、焦らすのを止め、袖を抜いて洋服を引き下ろし、あっさりと上半身をさらけ出した。腰回りに溜まった紺色の布と肌の白さの対比が、目に眩しかった。
「セシリア…」
「まだですわ、お待ちになって」
 抱きつこうとして、体を起こしかけた僕を、人差し指で唇を抑え、軽くいなすと、セシリアは最後に残ったブラジャーを外し始めた。背中に両手を回したため、胸の膨らみが一層強調される。
 ホックの外れる気配とともに、清潔な白いブラジャーが浮き上がり、肌との間に隙間が生まれた。
「ああ、アルフレッド様…、そんなにお見つめになって…」
 期待に満ちた僕の視線を受け、セシリアは両肩の紐を同時に降ろしていく。支えを失ったブラは、今にもめくれそうだが、微妙なバランスを保って頂を守っていたが、彼女が腕を下ろしきると、ついに剥がれおちるようにして役目を終えた。
「セシリア!!」
 今度こそ我慢できず、僕は彼女の体を抱きしめると、露わになった胸元に顔を埋めた。
 巨乳というほどではないが、形よく整ったお椀形の実りに挟まれた谷間は、少し蒸れた彼女の体臭を濃密に湛えていた。僕は、両頬で柔らかな感触を楽しみながら、胸一杯にそれを吸い込んだ。
「ふふ、気持ちいいですか、アルフレッド様?」
 セシリアは余裕たっぷりの声で、僕の子供っぽい行いを受け止め、優しく頭を撫でてくれた。
 僕はその行為の気持ち良さとは裏腹に、彼女の余裕に悔しさを覚え、何とか反撃を試みる。
「あふっ、そこは…まだ…、あんっ、しょうが…ないですわね」
 彼女の山頂で真っ赤に色づいていた突起を口に含み、キスの要領で転がすと、セシリアの口から可愛らしい声が漏れた。初めて引き出した、明らかな快感の響きに、気分が高揚してくる。
 僕は本能の赴くまま目の前の果実を揉みしだいた。肌のハリは触れるものを全て弾いてしまいそうなのに、恐る恐る力を入れた指はどこまでも沈んでいく。それでいて力を抜くと、指に張り付いたまま押し返してくる。いつまで揉んでいても飽きない不思議な感触だった。
「ん…ああぁ…、あんっ、んふっ、…あぁ…、ふふふっ…」
 不意をつけた初撃では、高い声を上げさせられたものの、愛撫を続けるうちに彼女の声は、静かな落ち着いた吐息に変わってしまった。それどころか、たまに混ざる笑い声が気になってしまい、僕は不安で愛撫を止めてしまった。
「あの…セシリア。僕のやり方じゃ気持よくないかな?」
「?」
「その、なにか可笑しなことをしてしまったみたいだし…」
「いえ、どうやら誤解させてしまったようですね。さっきのは可笑しかったのではなく、楽しかったのですわ」
「楽しい?」
「ええ、こうして抱き合っていると、アルフレッド様のお考えやお気持ちが伝わってきて、楽しくおしゃべりをしているような気になってくるのです。それに快感は決して体だけで味わうものではありませんわ。アルフレッド様の想いが伝わってくると、心が気持ちいいのです」
「僕の想い?」
「はい。『セシリアの裸が見たい』『セシリアとキスしたい』『セシリアとくっつきたい』全部伝わってきます。…それに『セシリアが好きだ』も」
「うぁ……」
 下心も恋心も見透かされ、一気に恥ずかしくなる。
「初めて女性に触れるアルフレッド様に技術が伴わないのは当然です。今は喘がせたり、善がらせたりするのではなく、自分のお気持ちをぶつけるだけをお考えください」
「気持ちを伝える…。うん、わかったよ、セシリア」
 10年間世話をしてくれて、性技も経験も遥かに上手なセシリアに、小手先だけの取り繕いが通じるわけがない。
 半ば開き直るようにして、再び彼女の体を抱きしめてみると、彼女と僕の間にある布、僕のシャツがひどく邪魔に思えた。
 彼女に目くばせすると、心得た様子で彼女は体を少し離した。何気ないところで通じあえたようで嬉しい。僕はすこしでも離れているのが嫌で、急いで邪魔者を脱ぎ捨てると、全身のバネを使って彼女と体を入れ替え、押し倒した。
 素肌に直接触れた彼女の肌は、どんな上質な布より肌理細かで、触れあっているだけで官能を呼び起こされた。
 肌に這わせた舌からは、セシリアの好意らしきものがひしひしと伝わってくる気がしたが、僕の未熟な洞察では、彼女ほどはっきりと心の中を覗き見ることはできなかった。
 だから僕はそれを口にした。
「セシリア、僕は君のことがもっと知りたい、どうすればいい?」
「アルフレッド様、知りたいものがあったら、どうすればよろしいのでしたか?」
 返された問いに、僕は彼女が部屋を訪れた時の事を思い出し、
「良く見ることが大事…」
答えた。
「正解です」
 セシリアは蟲惑的な笑みを浮かべると、僕の胴を挟むようにしていた両足を、二人の間に差し入れ、僕をゆっくりと膝で押しのけた。
 ちょっと前までの僕ならば、このつれない行為に動揺していただろうが、今の僕は違う。セシリアのしたいことを自分なりに悟り、彼女の腰に纏わりついたままの布に手を掛けた。
 形よくスラリと伸びた脚に沿って、ワンピースを引き降ろしていくと、白いストッキングを吊っているガーターベルト、ブラジャーとお揃いの意匠のショーツ、ストッキングのレースに彩られた太ももが次々と露わになっていった。
 その中の一点にくぎ付けになった僕の視線に、まるでしっかり確かめろと言わんばかりに、セシリアの膝が開き、腰が浮かされた。真白なショーツに、楕円形の小さな灰色のシミが広がっていた。
 僕は分かりきった答えを確かめるために、最後の一枚を脱がせた。

 丸まって小さくなった布きれを手にしたままの僕の眼前に、刺激的すぎる光景が広がっていた。純白の雪原に刻まれた、薄紅色のクレヴァスが、湧き出した愛蜜でキラキラと輝いている。セシリアの息遣いに合わせるように、ときおりヒクヒクと蠢く秘裂は、その度に新たな潤いを滲ませていた。
「セシリア…。こんなに濡れてる」
「ええ、濡れていますわね」
 両足をM字に開き、恥ずかしげもなく股間を晒したまま、セシリアはまるで他人事のように言った。
「さあ、アルフレッド様、セシリアはこうして気持ちを曝け出していますわ。次は私が、アルフレッド様のお気持ちを知る番ですわ」
 セシリアはクスクスと笑いながら、ストッキングに包まれたつま先で、僕の股間を撫で上げた。
 僕は誘われるまま、カチャカチャと見苦しくベルトを外すと、下着ごとズボンを引き下ろす。
 ポロンっという擬音が聞こえそうなほど勢いよく、いきり立った分身が飛び出した。反動で上下に揺れている彼は、僕の気持ちを雄弁に語っていた。あまりの馬鹿正直さが、恥ずかしくてたまらないのに、全部見せている僕をセシリアも見つめてくれて、彼女の言う心が気持ちいいとはこのことだろうか、僕は開放的な幸福感に包まれていた。
「ふふ、それがアルフレッド様のお気持ちなのですね…」
 セシリアは艶然と微笑むと、膝を軽く曲げた脚をしどけなく投げ出したまま、クッションにゆったりと体を沈め、両手を伸ばして僕を招いた。
 花の蜜に誘われる蝶のように、フラフラと誘われるまま、彼女の股の間に体を滑り込ませた。
 彼女を潰してしまわぬよう、僕が四つん這いで体重を支えながら覆いかぶさると、セシリアは夜に花弁を閉じる花のように、たおやかな腕を僕の首に巻きつけてきた。全く力が入っていないその腕は、まるで魔法のように僕の自由を奪う。突っ張っていた僕の腕は、魔性の引力に負けて力なく折れ、肘をついてしまった。
 ぐっと近くなったセシリアの瞳と目が合った。
 限界だった。
「セシリア!」
 僕は本能の赴くまま、腰を突き出した。しかし、狙いどころか目測すらつけていなかった僕の切っ先は、当然セシリアの膣口を捉えることは無く、彼女の柔らかな恥丘の膨らみを滑って行った。
「あれっ、おかしいな…、くそ、このっ」
 慌てて腰を引き、何度もやり直してみるものの、どうにも上手くいかず、滲み始めていた先走りの汁で、彼女のお腹を点々と汚していくだけだった。
「アルフレッド様、セシリアはここに居ます。慌てなくても、逃げたりいたしませんわ。それにそんなに離れていては、アルフレッド様がなさりたいことはできないでしょう…、もっと、こうして…」
 セシリアはそう言うと、踵で僕の膝裏を引きつけた。支点を前にずらされたことで、僕の腰は自然とその位置を下げ、彼女の股間にペタンと着地した。
「さあ、あとはお分かりですね」
「う、うん!」
 あんな遠く感じた入口が、彼女の僅かな動作で一気に近づいたのが僕にも分かった。
 やっと掴んだ手がかりを見失わないよう、セシリアに密着させた肉棒を放してしまわないよう、慎重に入口を探っていく。
 手を使えばもっと作業は楽になるのだろうけど、それは僕の矜持が許さなかった。
クチッ
 急に聞こえた水音とともに、亀頭に触れていたものが、サラサラした感触から、水気を含んだ感触に変わった。
 ここ?
 セシリアの胸元に埋めていた顔を上げ、尋ねかけるような視線を送ってみたけど、彼女は優しい微笑みを浮かべたままだった。
 目を合わせたまま、さらに下へ切っ先をずらしていくと、彼女の目元が少しずつ緩んでいく。
チュクッ
 さっきより大きく響いた水音ともに、彼女が長い息をはいた。
 間違いない、ここだ。
「あっ、あっ、ああぁ…ん…んはぁ…」
 僕がはやる気持ちを抑えて、じっくりと腰を進めていくとセシリアは可愛い声で答えてくれた。
「熱…セシリア…こんな、こんなに…ああ、セシリア、セシリア」
 僕が勢いのまま挿入できたのは、ペニスの半分までだった。
セシリアの膣内は、僕の想像以上に狭く、筒状のものに入れているというより、くっつきあった粘膜を剥がしながら進んでいるようだ。繊細な襞に剥き出しの粘膜をねっとりと舐められると、腰が痺れて動けなくなってしまった。
「ふふっ、アルフレッド様、それではセシリアのことを知ったとは言えませんよ」
「ああ…、でも、僕…」
「お辛いのでしたら、一度引き抜いて、気持ちを落ち着けなさってもよろしいのですよ」
 セシリアはこともなげに言うが、今の僕には、雁首の裏にまで絡みついてくる襞を振り切って引き抜くなど、とてもじゃないけどできそうにない。
 かといって、彼女の熱さは僕の勃起を、じりじりと焦がしていた。たとえ動かないでいても、そう長くは耐えられそうに無かった。
 引くも地獄、留まるも地獄ならば、話は簡単だ。どうせ情けない姿を晒すなら、自分の素直な気持ちをセシリアに見せたい。こうして僕を受け入れてくれている彼女から、逃げるような真似はしたくなかった。
「セシリア、セシリアーー!」
 僕は意を決して、彼女の最奥へと飛び込んだ。
ジュプゥッ
「ああぁんっ」
 セシリアの奥まった所に溜まっていた愛液が、新たに飛び込んできた体積に押し出され、入口まで溢れてくる。僕が飛び込んだ先は、膣口近辺よりは、やや広くなっていて、ギリギリのところで暴発を避けることができた。
「くうぅぅ、すごい、セシリア、こんなに溢れて…」
「んんっ、…どうですか、アルフレッド様、奥まで来ないと、お分かりになれない、でしょう?」
「うん、僕、嬉しいよ、セシリア!今度は、また僕の番だね、行くよ、セシリア」
 僕は彼女の膣の中で、夢中で肉茎を行き来させた。セシリアの愛蜜は、強すぎた摩擦感を和らげ、抽送の手助けをしてくれた。
「ああっ…、あんっ…、すばらしいですわ、アルフレッド様。力強くて、純粋で…、まっすぐ伝わってきます。そう、そうです…んんぅっ、…その調子ですわ」
 いつの間にかセシリアの足が、僕の後ろで組み合わされ、僕が腰を引いても陰茎が抜け落ちないようにしてくれていた。
 僕は彼女の手のひらの上にいるのを承知で、がむしゃらに腰を振り続けた。余計なことを考えたり、動きを止めたりすれば、そのとたんに射精してしまいそうだったからだ。
「セシリア…、ああ…、もう、僕、イきそうだ、我慢できないよ…」
 初陣を見事に果たしてくれた分身には悪いが、僕はもう限界だった。骨盤に広がった痺れが、尿道に集まってきて、今にも飛び出そうとしている。
「アルフレッド様、よくがんばられました、ご立派でしたわ」
 僕はセシリアの許しを得ると、届きうる一番奥へと肉棒を突っ込み、耐えるのを止めた。
「ああぁぁっっうえああぁやえぇえおおぅ!?」
 尿道を駆け上がる精子とともに、こみあがる叫びをあげようとしが、語尾が変な具合になってしまった。精液を放出するはずの肉棒も、空しい空砲を撃って、ビクビクと痙攣していた。
「クスクスっ、だーめ、まだイっちゃダメですよ」
 僕の体に変調を来らせた犯人はすぐに自白した。当然それはセシリアだ。
 彼女は何を思ったのか、入口の狭いところで、陰茎の根元を締め上げ、精液の通り道を塞いできた。
「あぐぅ、セシリア、一体何を?」
「女性を置いて、一人で気持よくなっちゃうような子には、お仕置きです」
「お仕置きって、そんな…、あっ、やめて」
 セシリアが少し腰を捻ると、僅かに緩んでいた、亀頭周辺の膣壁までがキュウゥと絞り込まれてきた。あまりの圧迫感に腰を引こうとしても、彼女の足に拘束されていて逃げられない。
「ちゃんと私を気持よくしてくだされば、すぐに緩めてあげますわ」
「そんな…、無理だよ、こんなの動けない…」
「それは我慢しようとして、無駄な力を入れているからですわ。どんなに気持ち良くても、絶対にイけないようになっていますから、安心して腰を使ってください」
 にこやかに残酷な宣言を受けた。
 僕は括約筋の緊張を緩めながら、腰をゆっくり行き来させてみた。
「はうっ、ああっ、イけない、ああうぅ」
 セシリアの言うとおり、輸精管をのぼって来た精液は、根元に留まったまま発射されることはなかった。しかし、射精現象による反射で、僕の肉棒はありもしない精液を吐き出そうと、空撃ちを続けていた。
「ひいいぃ、セシリア、お願いっ、ひきいぃっ、出させて!」
 身を震わせながら、彼女の膣襞の洗礼を受け続けている僕の分身は、射精直前のもどかしさと、射精の開放感という、相反する二つの激感を伝え続けている。
 射精反応のための神経ネットワークは完全に乱され、僕の下半身の筋肉は、てんでわらわらに欲求を叫んでいる。
「ああっ、アルフレッド様が私の中で震えて…、んんっ!そう、そこですわ、もっと、もっと突いて!」
 僕のめちゃくちゃな腰使いに、セシリアもようやく応え始めてくれていたけど、常に射精感を味わい続けている僕の体力は、限界にきていた。
 力なくセシリアの体にのしかかったまま、腰を擦りつけるのが精一杯だ。
「さすがにもう限界みたいですね。アルフレッド様は少しご休憩ください」
 やっとイける。
 助かった。
 心底そう思った。その途端、ぐるりと世界が回った気がした。
 あっ、と思った時には、なぜか天井を見上げていた。
「私が動きますから、アルフレッド様はリラックスしていてください」
 セシリアは、驚くべき手際で、僕と体を入れ替え騎乗位にもちこんでいた。
 当然膣圧はそのまま、射精を許してくれない。
 壊される。
 彼女が腰を揺らし始めるに至って、僕は戦慄した。
「ちょっと、待ったぁっ!!」
「ダスティ〜ン〜」
 突然ドアが開かれ、供居の騎士が現れた。
 僕は藁にもすがる思いで、彼の名を呼ぶ。涙声で。
「若を再起不能にするつもりか!いいかげんにイかせて差し上げろ!」
 なんて頼もしい言葉だ。ごめんよダスティン、邪魔にして。
「もう…仕方ないですわね。アルフレッド様、邪魔ものが来ちゃいましたから、一度イっておきましょうか」
「邪魔ものって…」
「邪魔者は邪魔者です。アルフレッド様は、これから初体験の締めくくりを迎えるのですよ。殿方にそんなところ見られたいわけがないでしょう!まあ、入ってきてしまったものはしょうがないから、一寸後ろを向いていてくださらない」
「お前がそこまでしなかったら……、ああ、分かったよ、早くしろ!」
 二人が口論している間も、セシリアの下でもがいている僕を見かねて、ダスティンが後ろを向く。
「さ、アルフレッド様、これでアルフレッド様のイキ顔を見るのは、私だけになりましたから、安心してイっていただけますわよ。どんな情けない顔をなさっても平気ですわ」
 セシリアはそう言うと、僕が顔を背けられないよう、両手で固定すると、目を合わせたまま、ゆっくりと締め付けを解除していった。
 亀頭を包んでいた膣壁から、順番にゆっくりと圧迫が緩み、尿道の形が回復していく。
トプットロロトプトロトプ
 待ち望んでいた射精は、予想外に穏やかに始まった。湧水が溢れるように、時間をかけてゆっくりと精液が流れ出ていく。
「ふあぁぁぅぅああうぅぅあぁぁぁ……」
 あまりの開放感に、僕の口から法悦のため息が漏れる。
 顔の筋肉が緩むのが止められない。おそらくセシリアには、とんでもない顔を晒しているのだろう。

「可愛かったですわ、アルフレッド様」
 放出を終え、余韻に浸っていた僕に、セシリアが意地悪な笑みを浮かべて、キスしてくれた。
「若、お疲れのとこ、早速で恐縮なんですが、次の段取りが詰まってますんで…」
 再び甘く漂い始めた雰囲気に、ダスティンが割って入ってきた。
「ちょっと、せっかくアルフレッド様と二人で余韻に浸っているのに、邪魔しないでよ。アルフレッド様、こんなの放っておいて、二人でゆっくり進めていきましょう」
「お前に任したら、若が枯れちまうだろうが!」
「ぼ、僕も、折角だから、ダスティンのアドバイスが聞きたいかな…」
 セシリアの申し出は、魅力的ではあったが、さすがに危険を感じ、ダスティンに味方する。
 僕にも断られたのが気に障ったのか、セシリアが頬を膨らませている。可愛らしい仕草なのに、僕の背中には悪寒が走った。どうやらセシリアの怖さを刻みつけられてしまったようだ。
恐るべし、セシリア=ランバート。この僅かな時間で、僕の心をこれほど縛るとは…。
「で、まずは何をするのかな?」
 くだらないことを考えてみても、悪寒はおさまってくれなかったので、なし崩し的に話を進めてしまうことにした。
「ええ、まずは一通りの責め、いわゆるフェラ、パイずり、手コキ、素股といったところを経験してから、バトルファックにおける基本的なポジショニングや愛撫のテクニックをさらっとくんですが…」
 遠慮がちなダスティンの言葉を受けて、僕は股間を見下ろした。
「ああ…、ちょっとすぐには……」
 さっきまではあんなにいきり立っていた僕の逸物は、すっかり委縮して項垂れていた。
「では、ポジニングから入りましょうか。おい、若に甘えてないで準備しろ」
「はーい、分かりましたよ」
 僕の胸を枕にして寛いでいたセシリアが、となりで四つん這いになった。
「まずバトルファックにおいて最も重視すべきなのは、バックをとることです」
 ダスティンの誘導を受けて、四つん這いになったセシリアの背中に覆いかぶさった。彼女と僕は、ほとんど同じ背丈なので、上になった僕は手がベッドに届かず、彼女の上に乗っかる形になる。頬をつけた彼女の背中は、すべすべして気持ち良かった。
「この体勢は、ほぼ一方的に責められるのに加えて、相手の動きを制限できるため、同じ力量の場合、バックを取れば7割方勝ちは決まります」
 確かに僕の手は、セシリアの胸にも股間にも届く。
「アルフレッド様、ついでですから、愛撫の練習もしていいですわよ」
「え、あ、うん」
 僕はセシリアの厚意に甘えて、彼女のおわん型の膨らみに手を伸ばした。
「あっ、やっぱりアルフレッド様、お上手ですわ、あんっ」
 あまりに頼りない柔らかさに、壊れモノを扱う様に揉んだのが功を奏し、彼女が褒めてくれた。調子にのって、僕の精液と彼女の愛液でグズグズになった陰部にも手を差し入れると、更にいい反応を返してくれた。
 現金なもので、優位な状況で触っていると、股間がムズムズし始めた。今度は隠す必要はなかったのだが、日常生活で染み付いた、勃起した時の反射的な行動として、かるく腰を引いてしまった。
「でも、油断は禁物ですわ。例えば…」
 セシリアは二人の間にできた隙間を生かし、弓なりに腰を反らして反動をつけると、勢いよくお尻を僕の股間にぶつけてきた。
「あふうっ!」
パプッパプッ
 甘美な刺激を伴った、柔らかい打撃が、断続的に襲ってくる。
 僕は少しでも打撃を和らげようと、彼女のお尻に押されるまま腰を引いていく。
「えいっ!」
 しかし、それこそがセシリアの思惑だった。
 彼女が急に体を起こしたせいで、後ろに跳ね飛ばされ尻もちをついた。さらに、彼女はその上に腰かけてくる。背面座位というやつだ。
ニュルンッ
 すっかり元気を取り戻していた肉茎が、温かいものに包まれた。
「えあっ?また入ったの?」
 微かな違和感に疑問符を浮かべる。
「いいえ、これが素股です」
 これが素股?
 確かに言われてみると、膣とは違って、襞の感触がない。しかし、その温もりや柔らかい圧迫は膣内とよく似ていた。
「また、勝手なことを…、若、ご説明いたしますと、素股の危険性はその膣との類似にあります」
「確かに…」
 ダスティンの言うとおり、セシリアの膣の具合をしらないまま、これをされていたら、素股と見抜くのは不可能だろう。実戦なら、このまま射精するまで空しく腰を使っていたと思う。
「それだけじゃありませんわ。こんなこともできるんですのよ」
 セシリアが彼女の体の向こうで、何かゴソゴソやりだした。
「あひゃあぁっ!」
 彼女の太ももで挟まれたままの肉棒の、最も敏感な部分である尿道口が、その切れ目にそって激しく擦られたのだ。
 失禁してしまいそうな衝撃に、思わず掴んだままのセシリアの胸を握りしめてしまった。
「ああぁん、強すぎですわ。もう…悪い子、そんなことすると、お仕置…」
「ま、待て、それは若には早い!」
 ダスティンの焦った声が余計に恐怖感を煽る。
「えいっ」
「ひゃいうええっ」
 摩擦の標的になっていたとば口に、今度はたぶん爪だろうか、何か固いものが押し込まれた。
ビュクビュクッ
 訳も分からぬまま精子が飛び出していた。快感ではなく、衝撃でイってしまった。
「わ、若…ご無事ですか?」
「う、うん。なんとか…」
「さあっ、次は何ですか?」
 意気揚揚としたセシリアが、勢いよくベッドに横たわる。彼女の意外な一面、できれば隠しておいてほしかった…、表面にでてきているようだ。
 反面、ダスティンの方は、同情を前面に押し出して、申し訳なさそうにしている。
 僕は悲壮感を漂わせながら、彼の指導に従って、セシリアに覆いかぶさって行った。

 仰向けになったセシリアを、横から押さえこむサイドポジションでは、最初こそ彼女の陰唇を責めていたものの、すぐに僕の股間に手が伸びてきて、手コキで発射。
 彼女のお腹に馬乗りになるマウントポジションでは、胸の谷間に誘い込まれ発射。
 股に顔を埋めるクンニスリングポジションでは、巧みに体を回転させたセシリアに、シックスナインに持ち込まれ発射。
 開始時の説明によるノルマをこなした頃には、精魂尽き果てていた。
「わ、若……、よくご無事で…。さ、さて、これで一通りのことは終えましたので、あとはゆっくりお休みください」
 僕が纏っているカサついた空気に、ダスティンがどもりながら終わりを告げてくれた。
「ほら、若がお休みだ。お前もさっさと着替えろ」
「分かってるから、早く出て行ってくれない?何が悲しくて、あなたの前で着替えなきゃならないの。供居のお役目は終わったんだから、もうサービスは終わりよ!」
「この…、ああ言えばこう言う…。若、明日の伏し初めは昼からですので、多少はゆっくりできると思います」
「ああ、明日も頼むよダスティン」
「はい、では、失礼します」
 ダスティンが退出し、部屋にはセシリアと二人になった。
「セシリアも、今日はありがとう。僕、セシリアが初めての人で良かったよ」
 ちょっと怖かったけど…。
 最後は口に出さずに飲み込んだけど、彼女が初めてで良かったというのは、僕の偽らざる本心だった。
「アルフレッド様…。……あっ、…ちょっと……その……」
 僕の視線を受けて、まっすぐ見つめ返してくれていたセシリアが、急にモジモジし始めた。顔を真っ赤にして、いそいそとシーツを手繰り寄せていた。
「あっ、ご、ごめんっ」
 そんな彼女の様子に、僕は慌てて後ろを向いた。衛生兵の仕事もこなしているとはいえ、セシリアは年若い女性だ。儀式が終わったのに、裸をじろじろ見られれば、恥ずかしいに決まっている。
 僕は自分の至らなさを恥じた。…のに、なぜか僕の下半身は元気を取り戻していた。
 職務を離れたところで、いつものセシリアが裸で後ろに座っているという事実に、正直者が反応してしまったようだ。
 邪な自分を律しようと、目を閉じて違うことを考えようとしたが、かえってさっきまでの情交が思い起こされてしまった。
 セシリアの形のいい胸が背中に押し付けられ、あの細いのに柔らかい指で肉竿を扱かれる。そうそう、こんな感じ……。
「って、セシリア、何してるんだよ!?」
 やけにリアルな感触だと思ったら、現実に彼女に後ろから抱きつかれていた。
「ふふふ、今度こそ邪魔者はどこかへ行きましたから、ゆっくりできますわ」
「なっ…、でも、もう儀式は終わりって…」
「あら、アルフレッド様は、今さっき大人になられたのですよ。大人の男女が裸でベッドにいれば、することは一つでしょう?まして私は、アルフレッド様の傍仕えですもの。夜のお世話は当然ですわ」
 バックを取られたままでは、あんまりにも間抜けなので、なんとか拘束をふりほどいてセシリアに向き合う。
「夜のお世話って…、そんなのダメだよ。セシリアだって、そんなの嫌だろ?」
「嫌だなんて、いつ私がそんなこと申し上げましたか?」
「だって、さっきだって、僕が裸を見たら真っ赤になって…。儀式だから、恥ずかしいの我慢してくれてたんでしょ?」
「あれは…」
 コホンと咳払いして、セシリアが続ける。
「アルフレッド様が、あんまりたくさんお出しになるから…、あふれてきたものに、アソコを撫でられちゃったからですわ」
「僕のが、溢れて…、ぅあ…」
 今度は僕が赤面してしまう。
「まったく、好きでもない相手に、あそこまでできると思いますか?逆に、もし、そんな風に見られてたなら、ショックですわ」
 好きな相手に、あそこまでできるセシリアが僕は怖い、などとはもちろん言わず、
「ご、ごめん。僕、勘違いしてたよ。許してセシリア」
素直に謝る。
「はい、許して差し上げます。……じゃあ、始めましょうか」
 それとこれとは、話が別だ。
「それはダメェ!お願いだよ、セシリア、もう僕できないよ」
「そこをそんなにしておいて、そんな言い訳は通りませんわよ。それに、まだアルフレッド様の大好きな、アレが残ってるんですから」
「アレ?添い伏しで全部やったんじゃないの?」
 フフフ、と笑いを浮かべながら、セシリアが僕の前に立ちあがった。当の僕は、体がすくんで動けない。
「アルフレッド様は隠せてるつもりでしょうが、私の眼はごまかせませんわ」
フミッ
 セシリアは宣言とともに、白いストッキングに包まれた足で、僕の陰部を踏みつけてきた。どうやら、一生の秘密だと思っていた性癖は、彼女にはお見通しだったようだ。
フミフミッフミッ
「あああぁぁっぁあっっ!」
 僕の部屋に裏返った男の声が響き続けた。

 セシリアの足はとても素敵だった……



「おはようございます、アルフレッド様」
 翌朝、僕は慣れ親しんだ声で目を覚ました。しばしばする目を開くと、完璧に使用人服を着こなしたセシリアが、優しく微笑んでいた。
「おはよう、セシリア」
 僕が返事をしたのを確認して、セシリアは朝食の配膳を始める。皿を並べ、お茶を入れている彼女を見ていると、昨晩のことがうそのようだ。

「今日は伏し初め、いよいよ淫魔が相手です。ご健闘お祈りしてますわ」
「ありがとう、がんばるよ」
 セシリアが僕の隣で給仕を務めながら、今日の大まかな日程を説明してくれている。
 鈴を転がしたような心地よい声を聞きながら、僕は窓の外を見て目を細めた。

 太陽が黄色い……
 はじめまして、皆さんの作品を読んでいるうちにムラムラきて、書いてみました。
 ちゃんと書けてるか心配ですが、ご感想を聞いてみたくて投稿しました。
 淫魔をBFで倒す世界を題材にしてるだけで、BF要素がほとんど無いような気もしますが、どんなもんでしょう?
 一応、続く予定で、次からは淫魔もでてくるので、BF要素が強くなると思います。
 ご意見、ご感想いただけるとうれしいです。
 

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