<果歩>
「…良くないわね」
マリカ先輩が腕を組んで立ち止まる。
腕に圧迫されて胸がたゆむ。
本当にその胸は凶器ですよ…大きくて柔らかくて張りがあって…良いなぁ。
「何がですか?」
「私たちが追ってるのに奴は気づいてる」
「え…」
それは確かにあまり良くない。
仲間を引き連れて向かい打たれたら勝率はかなり下がる。
奇襲前提に追っていたのに逆にこっちが襲われかねない。
「間違いないんですか?」
「淫気の残り方がどうも胡散臭いのよ。
嗅ぎつけられる退魔師を選別するように…意図的に少しずつ残されてる気がするわ」
「すると…力のある退魔師を食べるのが目的ですか」
「おそらくね。
でも引き下がるわけにはいかないわ。
捕まえるために次の犠牲者が出るのを待つわけにもいかないしね、建前上。
追跡を続けるけど、いつでも逃げられるように心構えをしときなさい」
「はい」
淫気を辿り、人気のない公園にたどり着いた。
「男の死体が五体転がってる…やぁね、これはインキュバスの仕業じゃないわ」
「この感じは…水白家ですね。もうココにはいないみたいですけど」
「インキュバスが片付いたらそれも追わないとねぇ…それにしても…」
マリカ先輩が怪訝そうにあたりを見回す。
「さっきから思ってんだけど……この辺りは気の流れが変ね。
淫魔の類を引きよせ、清らかな者を遠ざける気配がある…
……何か…強大な化け物でもいるのかしら………」
「ん、そんな気配ありますか? 全然感じないんですけど」
「果歩ちゃんは汚れてるから気づかないのよ。
あなたは退魔師より、サキュバスよりの性質ですもの」
「でも、マリカ先輩よりは清らかな自身ありますよ」
公園の中で淫気は途絶えていた。
「まかれちゃいました?」
「しぃっ……来たわ……」
林の陰から男が現れた。
図体がでかい。鋭い表情をしてる。
黒い薄手のコートを羽織ったその男はゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
淫気は発していないが、どうやらこの男がインキュバスのようだ。
歩いてくる様子を見ただけで、この男がかなりの強敵だと分かった。
焼けついて消えなくなった影のような、妙な存在感があるのだ。
「少し観察させてもらった。
あのホテルから俺を追ってきたのだろう?
大したものだ、誉めてやろう」
「あら嬉しい、なかなか良い男じゃない。
やりがいがありそう…私たちふたりが優しく退治してあげる」
マリカ先輩にスイッチが入った。
獲物を狩る怪しい眼でインキュバスを見つめている。
毎回思うけど、この人は退魔を心の底から楽しんでる。
特に強力で自身に満ちた相手をいたぶり倒すのが大好きなのだ。
人間にそんなことすれば犯罪だけど、魔物にする分には褒め称えられる。
この人が退魔師である理由はそんなところだ。
相手が淫魔の類なら倒す方法もえっちな方法になる。
そういう方法でこんな相手を倒すのはマリカ先輩にとって至福の時なのだ。
インキュバスが口を三日月のように歪め、笑う。
「はは…これは良い。
楽しめそうだ。
俺は夢黒。どうせ俺かお前たちのいずれかが死ぬ。
名前を教えといてやろう」
「あら、ありがとう。変わったお名前ね。
じゃあ私たちも名乗らないとね…私は円刻退魔師団の霧島マリカ」
「ほぉ。お前がの霧島マリカか…」
先輩は有名だ。化け物を貪り食う、化け物みたいな退魔師として。
夢黒はますます口を歪ませて笑う。
まだ淫気は隠したままだ。
だけど、分かる。こいつは強敵だ。
私一人じゃ絶対に勝てないぐらいの。
あの大きな体の中に莫大な量の淫気を潜ませてる。
「そっちのお前の名前は?」
「生憎、インキュバスに教えるような名前は持ち合わせてないんですよ」
そう答えたとき、自分が興奮していることに気づいた。
これがどういう興奮なのかは判断しかねるけど…
強敵と戦う興奮なのか、魅力的なインキュバスに犯されることを予感した興奮なのか、
もしくは全然違う興奮なのか……
「ほぅ。それは残念だ。
だが、お前もなかなか面白そうだ…」
「さ、おしゃべりはここまで。
始めましょうよ」
マリカ先輩はワイシャツのボタンを一つずつ外し、豊満な谷間をさらけ出す。
クラクラするような甘い芳香が漂う。
「可愛がってあげるわ…」
夢黒は流れるようにマリカ先輩に近づき、唇を奪った。
大きな手で赤いブラジャーに包まれた大きな乳房を揉みしだく。
唇で塞がれたマリカ先輩の口から悩ましい声が漏れる。
お互いを唇と舌で貪り合っている。
今まで触れたことのないほど高濃度の淫気が口からマリカ先輩の体を侵食しているのが分かった。
私は素早く夢黒の後ろに回り込み、両手をスボンに滑り込ませる。
凶暴なペニスがズボンを破らんばかりにそそり立っていた。
ズボン越しに、先輩のタイトなスカートの中に突き当てられていたそれを、
私は両手で滑らすように扱く。
すぐに濃厚な淫気そのもののようなカウパーが指を濡らす。
もう辺りは夢黒の淫気に包まれている。
既に私の下着は濡れていた。
マリカ先輩は胸を揉まれ、唇を奪われながらも夢黒の屈強な体に指を這わせ、服を脱がしていく。
だが、時々漏れる先輩の声を聞くと、演技じゃなく本当感じていることが分かって、
私の体は熱くなる。
ようやくふたりの唇が離れた。
「ふぅぅ、すごい上手…素敵よ夢黒さん」
艶めかしく上気した先輩の声。
一般人なら正気を失うほどの淫気に晒されながらも、この人は戦いを楽しんでる。
「円刻退魔師団一の実力者というのは伊達ではないようだ…。
だが、俺に勝てるかどうかは別問題だな」
そう言う夢黒のペニスからはカウパーがだらだらと溢れている。
それを塗りたくる様に両手で愛撫する。
この夢黒というインキュバスは強敵だが、2対1なことを考えれば優勢だろう。
(私も太ももに垂れるぐらい濡れてるけど、まぁそれはともかく)。
先輩は男を狂わすことに異常に長けている。
柔らかくてしなやかな肉体…そこから発される甘い香気。
彼女に貢いで貢いで人生終わったような男もいるそうだ。
マリカ先輩は最強の退魔師なのだ。
今回も勝つ。
<夢黒>
霧島マリカ。この退魔師は本当に面白い。
張りのある柔らかい肉体を摺り寄せてくる。
この女から漂う甘い香りはたやすく男の理性を破壊しようとしてくる。
濃厚な淫気を直接口から流し込まれても狂わない。
好戦的で、俺と似たものを感じる。
面白い。
そして後ろからぴったりとくっついて、ペニスを両手で扱いてくる退魔師。
胸はさほど大きくないようだが、素肌の感触が心地良い。
そして滑らかな手の具合の良さ。
まったく低級な退魔師を犯すより、よっぽど大きな快感を与えてくる。
本当に、面白い。
この女たちが俺に組みふせられ、理性が消え去り、死に向かって絶頂し続けることになるのだから…
<果歩>
「ふふ、あなたが上手いからもうこんなことなっちゃった…」
タイトスカートは履いたまま、見せつけるようにぐしょくじょに濡れたショーツを脱ぎ捨てる。
マリカ先輩と夢黒の匂いが混ざり合っている。
「準備は出来てるようだ。入れてやろう」
そう言って扱かれているペニスを強引に挿入しようと…
「きゃっ!!」
フェイントだった。
大きな手が私のあそこを弄り、愛液を溢れ出せる。
いやらしくて、凶悪な手つきだった。
私をいかせようと的確に、リズミカルに手が動く。
自然と喘ぎ声が漏れた。
さわさわと、ぬるぬると、表面をいびられる。
そして、太い指が浅くほじくる様に膣に入ってくる。
「くぅっ!!」
指先に凝縮した淫気が放たれている…
押し寄せる快楽の波を必死に耐える。
だが、耐えるので精一杯で、ペニスを扱く手が止まってしまう。
その場にへたり込んでしまいそうになる。
マリカ先輩の方を見る。
「私は可愛がられるより、可愛がる方が好きなの」
あそこに伸びた手をかわし、その場にかがんでいた。
そして豊満な乳房でペニスを挟み込んだ。
「くっ」
夢黒が小さく呻く。
私はせめて邪魔をしない様に、陰嚢を中心に愛撫をする。
もっとも耐えるので精一杯、たいした愛撫は出来ないけれど。
頭がぼーっとする。濃厚な淫気が体の中を駆け巡っている。
谷間に唾液を垂らしながら、マリカ先輩は微笑む。
柔らかい谷間はカウパーと唾液でどろどろに濡れている。
「私の胸はどう? これで死んじゃうインキュバスがたくさんいるのよ」
あそこまで手が届かないため、夢黒は片手で先輩の胸を揉み、乳首を弄る。
もう片方の手で、私はイカされそうになっている。
インキュバスにいかされれば生命力や退魔師の力を奪われる。
一階で命を落としたり、退魔師としての力を全て失うことはそうそうないが…
しばらくはまともに戦えなくなる。
少なくともインキュバスがいった際に相手の力を奪うことは出来なくなる。
マリカ先輩からも甘い声が漏れている。
あそこをいじられるのは避けられてたとは言え、
あの熱くて凶暴なペニスを胸で感じているのだ。
最初のキスのことも考えれば私よりずっと大量の淫気に晒されている。
夢黒はマリカ先輩の谷間に囚われて、蕩けるような快感に飲み込まれている。
唾液とカウパーで濡れたマリカ先輩の胸に揉みし抱かれるのは最高の快楽なはずだ。
だけど…まだすぐにはいきそうもない。
その前に私がイッてしまいそうだ。
一旦距離をとるか…でもそうすれば夢黒の責めの全てはマリカ先輩が受けることになる。
マリカ先輩にそこまでの余裕があるかと言えば……きっとない。
でも、私には、もっと余裕がない。
だんだん理性が壊れていく。
指がぐちゅぐちゅと音を立てる。
全てを放棄していってしまいたい。
夢黒の指は激しく私の中をかき混ぜている。
指先からどんどん淫気が注入されていく。
はしたない声をあげて打ち震えることしか私には出来ない。
あぁ…だめだ…本当にもう……!!
私がいきそうになった瞬間、それは現れた。
一言で言えば裸の美女。
輝くような銀の髪、中世的で国籍不明な顔立ち。
とても綺麗だった。でも紅い瞳は狂気に彩られている。
突然、何もない空間に現れたようだった。
人ではない。
夢黒は素早く私たちから離れ、正体不明の銀髪の女性を睨みつけた。
「何者だ貴様」
私はその場にへたり込む……ぎりぎり…ぎりぎり、いかされないで済んだ。
気がつくとマリカ先輩は私を守る様に美女と私の間に立ちはだかっていた。
「くふふ…インキュバスが一人と退魔師が二人に雪美に殺された死体が5つ。
なんだか、この公園は楽しいところね」
美女の声が夜の公園に響く。高くて透き通るような…でも悪意に満ちた声だった。
「せっかく夢黒さんが名前を聞いてくれたんだから自己紹介ぐらいしたらぁ?」
マリカ先輩の指先が私に合図を送る。
逃げるわよ、と。
突然現れた女に警戒している。
話を続けるようなふりをして、さっさと逃げるべきだと判断したのだろう。
「私の名前が知りたいの?
でも教えてあげない。私はあなた達の名前よく知ってるよ。
霧島マリカ、夢黒、菅山果歩。あなた達みたいな人たち、私、大好き」
どうして名前を知ってるんだろう…ずっと隠れてたなら先輩と夢黒の名前を知ってるのは分かる。
だけど、どうして私の名前まで…いつも人外の相手には名前を明かさないようにしてるのに。
「はっ。俺はお前みたいな得体のしれない存在は好きじゃなくてね。
失礼させてもらう」
淫気も気配も完全に消してインキュバスは闇に溶けた。
「あーあ、逃げられちゃった。
まぁ良いや。今日は挨拶だから。
そうそう、果歩ちゃん。私が出てきたから助かったんだよ?
感謝してね」
確かに結果としてはそうだが…味方とは思えなかった。
全てがどうしようもなく悪意に満ちている。
眼差しも、声も、その笑みも。
マリカ先輩は黙って銀髪の美女を睨んでいる。
「さて、今日はあなた達、退魔師のおふたりにお知らせがみっつあるんだよ。
ひとつめは、耳寄りな情報。この近くの廃墟に水白家の純血、水白雪美が潜んでる。見つけて殺すといいよ。
ふたつめは、数日後この辺りでちょっとしたパーティをやるんだ。
主催者は私。とっても楽しいことになるから、ぜひ来てね。
みっつめは、とても素敵な情報だよ。ふたりともそのパーティで死ぬの。
とっても気持良く死ねるから、楽しみにしててね。
他にもたくさん死ぬよ。私の手で、気持ちよく、ね」
唖然とする。この女はいったいなんなんだ。
美しい体を見せつけるようにくねらして、美女は一人で笑っている。
自分が言ったことに笑ってるみたいだ…。
「それじゃあ挨拶は済んだから帰ろうかな。バイバイ」
霧のように、銀髪の美女は消えた。
「…良くないわね」
「なんだったんでしょう、今の女の人」
「わからない。少なくとも人間じゃないわ。
たぶん、あれがこの場所に淫魔の類を引き寄せてる…」
「サキュバスでもないですよね」
「えぇ。どちらかと言えば水白家に近い気だった…
けど、水白家とも違う。なんていうかあれは……」
そこまで言ってマリカ先輩は考え込むように黙ってしまった。
「とりあえず、どうしましょう?
この公園で死んでる5人を食べた水白家の奴を追いますか?
さっきの女の人も近くの廃墟に純血である水白雪美が潜んでるとか言ってましたし」
「…いや、警察に連絡して今日は引き上げましょう。
本当にこれをやったのがその純血なら、今のコンディションでは厳しいわ。
それにあの女が言ってることが嘘でも本当でも、何か狙いがあってのことでしょうしね…。
それから、他の退魔師にも一通り連絡を回しましょう。
ちょっとこれは…異常事態よ」
「分かりました」
「それで。帰ったら今夜は特訓よ。
嫌でも忙しくなりそうだからね…少しでもお互い力を伸ばしましょう」
おおっ、マジですか!? やった!!
私、マリカ先輩となら何回でもイケます!!
今夜は眠れそうもないなぁ、ふふふふふふ。
ニヤニヤしてたら、すっごい嫌な眼でマリカ先輩に見られた。
めげませんけどね。
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