下深き闇の一室
そこはダンジョンの最下層にして最強の“主”がいる部屋
そしてもう一つの影が主と対峙していた
「あのささという忍…放っておいていいのかい?」
サキュバス、四天王の中で最も実力が未知数の女だ
黒いしっぽと翼が妖しく動く
「うむ、あの女の目的はどうやらあの男、サウだということがわかったからな」
「しかしこのダンジョンにあんな人間の異分子を紛れ込んでおくなんて…アタシは気に食わないね」
サキュバスの口調は少し怒っている感じだ
「ここは我ら異形にとっての聖域、お前の言いたいこともわかる」
「……なら、どうして?」
「我に考えがある、あの復讐心は利用できるものがある…」
「復讐心があろうがなかろうが、人間じゃないか、汚らわしい…女の人間など」
「そこだよ」
主が闇の中でほくそ笑む
「人間というところが、最大限に活用できるところなのだよ……」
「…………?」
意味がわからず、首を傾げるサキュバス
「監視役に乙女をつけておいた、しばらくは様子見で十分だよ…」
「…………」
「ここが地下8階か…」
サウは順調に進んでいた
いや、7階でしばらくあの忍…ささに気絶させられていたのだが
「それにしても、異形だけじゃなく人間にまで狙われるなんて、アナタも大変ね」
中のシャドーがのんきそうに言う
「他人事だと思って…」
「まぁ、もう少し異形と戦って、闇の力に慣れといたほうがいいわね」
「というかこのダンジョン、後何階あるんだ?」
「それは私も異形としての尊厳があるから言えないけど…まだ続くわね」
「なんかもー、かなり絞られたから疲れたよ」
サウはため息交じりに言う
「アナタの疲れに応じて、その階に安眠道具があるわ、それを使って休んで」
シャドーは淡々と説明する
「まぁ、この体力の消耗度なら、この階にあるでしょうけど…」
「……ホント、不思議なとこだな、ここ」
「私もそう思うわ」
「まぁ、それはともかく…」
サウはキョロキョロと辺りを見回す
「敵がいないんじゃないか?」
「こういう場合、罠の可能性が高いわ、気をつけて」
「罠って言われてもな…そんな簡単に対処できるもんでも―――ッ!?」
最後まで言葉を言うことはできなかった
驚愕に言葉は飲み込まれた
サウが踏みしめていた地面(クッションだが)が、フッと消えた
そして下は闇――
「………え?」
いや、違う、水!?
思考してる間に、サウは水の中へと飲み込まれてしまった
水の中
全裸でいると、冷たさが心地良い
(って、マズい!?)
慌てて浮上しようとする
ガシッ
(……ッ!)
足を誰かに掴まれた感覚
下を見ると、金髪の女性が怪しく微笑んでいる
彼女は青いビキニを着けていた
(離せ…!)
抵抗しようともがく、だが水中では思うように力が入らず、抜け出せない
「大丈夫よ…ここは水の中と同じように浮力感はあるけど、息は出来るわ」
「…!?」
手が離される
確かに、普通に呼吸ができる、水が入ってくる感覚はない
「どういう、ことだ…?」
「ここではこの水の中で戦ってもらうということよ…私と」
「…!」
女を見据える
「お前が、ここの階の敵か」
「フフフ、私の名前はミズカ…異形の中でも、中級のレベルよ」
「お前がどれほど強いか知らないが、ここで負けるわけにはいかない」
「そう…でも運が悪かったわね」
直後、凄まじいスピードでサウに抱きつく
「っ!?」
「水の中で、私と戦うことがどれほど愚かか教えてあげるわ」
そして、そのまま深く潜っていく
「まずは、アナタが脱出しちゃわないように、一番下まで潜ってあげる」
「や、やめろ…!」
水の中の戦闘が初めてのサウにとって、脱出不可能はかなり不利になる
必死にもがくが、ミズカはサウを抱きしめ離さない
「どう?水の中で抱かれるのは…感じちゃわない?」
「あぐっ…」
水の中で抱きしめられ、サウの抵抗力は薄れていき、興奮が高まっていく
「さて、いくわよ」
そして深く潜っていく…
5分ぐらいは潜っただろうか、もう地上へ自力で戻るのは相当な苦労を要するだろう
それに、逃げてもこのミズカに捕まるのは明白である
「そろそろいいかな…」
サウを抱きしめ続けていたミズカは離して解放してやる
抱きしめられてすっかり興奮してしまったサウ、ペニスも起ちきっている
「元気な子ね、すぐにイカせてあげるわ…この水の中で」
「くっ…」
泳いでなんとか体制を整えようとするが、なかなか難しい
少し移動するだけで体制を整えるのが困難になるのだ
「何を企んでいるか知らないけど、諦めたほうがいいよ」
接近してきたミズカに再び抱きしめられるサウ
そしてペニスに手を伸ばし、リズミカルにしごいてきた
「うあっ…!」
水の感覚がローションに似たような役割を果たし、余計に気持ちいい
反撃しようと、必死に手で胸を掴もうとする
「無駄ね」
軽々と避けられてしまい、背後につかれる
後ろからペニスのしごきは続いている
「くそっ」
「そんなに私のビキニがいいの?」
言うとミズカは自分の青いビキニの右胸のところを下から少し指で広げる
そして正面を向く
「こんなのはどう?」
手に持っていたサウのペニスを、指で開いていたビキニと胸の隙間に導く
「うっ!」
「ふふ」
右胸のビキニに閉じ込められたサウのペニスをビキニ越しに掴んで捕らえる
先端の部分がビキニの上のほうにちょこんと出る形になる
「うあああああああっ!?」
ビキニの中で乳首がペニスに擦れ、それが凄まじい快楽を呼ぶ
「まだまだ」
それだけでは終わらず、ミズカは先端を舌で弄ってくる
「ぐあっ、や、やめ…!」
「ふふっ、逃げられないわ、出しちゃいなさい」
さらに亀頭を口に含み、激しく吸引してきた
「ああああああああっ!!」
ドピュピュピュピュ!!
先端から吐き出された白濁液は、ほとんどがミズカの口に吸引されたが、少しばかり水の中へと薄れていく
力なく水中で浮遊する、ミズカはペニスをビキニから開放するとビキニのずれを直す
「フフ、私のビキニに酔いしれた?」
「……くっ!」
水中で一回転し体制を立て直す
(水中でグダグダやってたら、瞬殺だ…)
サウは必死に水面を掻き分けながら上を目指す
だが、横にならともかく、水の中で素人が上へ目指して登っていくのはかなりの技量を要する
それが例え息継ぎができたとしても、だ
ヒュン!
凄まじいスピードでミズカがサウの前に立ちふさがる
「ちっ…」
「逃げられるとでも思ってるの? 私は仮にも異形の種類では“人魚”(マーメイド)と言われているのよ」
そして一瞬でミズカの姿が消える
ガシッ
次の瞬間には、後ろから手首を捕まれている
「人間が人魚に、水中で勝てると思って?」
「くっ……!」
脱出しようにも、水中に体が慣れない
「そうね…私の本気を少し見せてあげる」
パチッ
何かが弾ける音
(ホックを、外した?)
「私が胸にビキニを着けているのは新しい快感を植え付けるだけではなく…」
クルッ
腕を回され、強引に正面を向かされる
ビキニがなくなり、隠されていた、二つの乳房が現れる
「あまりに子供には刺激が強すぎる胸を、封印するためでもあるのよ?」
そして、首に両手を回され、胸に埋められる
「っ!?」
一呼吸しただけで、意識が飛びそうになるほどにいい匂い
離れようとするが、そうすればするほど強く腕が胸に押される
「―――――――ッ!?」
「ふふ、あなたにもやっぱり強すぎたみたいね、もう限界でしょう?」
足をじたばたさせもがくが、その力もなくなり、意識も薄れてきて――
途絶えたかと思ったが、ギリギリのところで胸から解放される
だが意識が朦朧なのにはかわりなく、フワフワと水に浮かぶ
しかしペニスだけははっきりと元気だった
「トドメね…」
ミズカはその起ちきったペニスを胸の谷間に導き、激しくパイズリをしてきた
ゆっくりと、時に激しくなるリズミカルなパイズリ
サウにそれを我慢する力はなかった
ドピュピュピュピュピュ!!
なす術もなく出る二度目の精液
「後1回であなたも終わり、水の中で楽になりましょう?」
微笑み優しく抱きしめてくるミズカ
(ここまで、なのか…)
薄れていく意識、水の中では、いかなる攻撃でも通用しない
水上ではスピードで負ける、逃げられない…
もう、楽になるしか、ないか……
(…いや、まだだ!)
サウの瞳に、唐突に輝きが宿る
「あら?意識が戻ったの?でも眠らせてあげる…」
サウを抱きしめて離さないミズカはそのまま顔を寄せ、唇を重ねる
精神的に絶望的な状態になる口付けは、とても甘美なもので、トドメの一撃となる
このバトルに置いても例外ではない、それは
しかし
(―――え!?)
ミズカは異変に気づいた
サウの体が、闇に輝く
「な、何、この黒いの…はぁんっ!?」
水の中で一段と轟く黒い闇に触れた瞬間、ミズカの体に電撃的な快感が走った
慌ててサウの体を離すミズカ
「そ、そんな…水の中にいる限り人魚であるこの私が感じるなんて…っ!?」
異変は、まだ続いている
水の流れが変わったのだ
下にぐんぐんと水が流れていく感覚…
それに合わせて、ミズカとサウの体も下へ引き寄せられる
(み、水が…なくなっていく!?)
見ると、水がどんどん地面に吸い取られていくような感じになっている
上の方にあった水面が、少しずつ近づいてくる
「ダ、ダメ…私、水がないと…っ!」
人魚系の異形、いや水系の異形の8割は水の中でないと消えてしまう
大気に触れるということは、それにとって絶大な快楽となり、一瞬で消えてしまうからだ
(セイレーンのようなレベルの高い水系の異形になるとまた話が変わってくるが)
しかし、そうこうしている間にも水位はどんどん低くなる
(この…サウというのがやってるの!?この異変を…)
「おおおおおおおおおおおっ!」
黒き闇を吐き出す中心で、サウは叫び続ける
(闇の力って…一体……っ!?)
そして水が完全に消えて
「セ、セイレーン様ぁぁぁあああああああああ!!」
それを断末魔とし、ミズカはゆっくりと光に消えていった
「!」
唐突に理解し、セイレーンは驚愕に表情を染めた
「どうした?」
同じ部屋にいたサラマンダーが声をかける
「ミズカがやられた、みたい…」
「!」
その言葉にサラマンダーも緊張の面持ちになる
「レベルとしては我々四天王とさほど違わないミズカが…?」
「……あのサウという男、予想以上の成長ぶりね」
珍しく真剣な面持ちなセイレーン、いつもの優しい顔はそこにはない
「俺と戦った時は全く手足もでなかったのに」
「…原因はあの闇の力ね、イラクザはまだ私達を苦しめてるみたい」
「…………いくのか?」
サラマンダーの問いにコクリと頷く
「父を倒したのがが私なら、息子を倒すのもまた私の役目…」
背を向ける
「ミズカの仇…取らせてもらうわ、記憶の喪失を代償として」
そして、彼女の姿は
闇に紛れ、消えた
続く
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