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傾国艶談2

「す、すごい……」
 オネロスは呆然とつぶやいた。
「んっ、んっ、んっ……ずろろろっ」
 アタランテの象牙色の肌は、白濁液ですっかり化粧されていた。すでに三回、オネロス
はアタランテに精液を打ち放っていた。アヌス舐めで我慢できずに一回、亀頭責め、ディ
ープフェラでそれぞれ一回……そして今、四回目の絶頂がオネロスに訪れようとしていた。
「じゅぷっ、じゅぷぷっ、ん……ぷふっ……」
 目にもとまらない猛烈なスピードで首を上下し、肉棒を揺さぶると、今度は良く動く舌
で鈴口をつつき、先走りを吸い取る。ある時は亀頭をくるんでこすって攻撃したかと思う
と、次の瞬間には竿にからみついて根こそぎ精液を吸い上げる。
 この愛撫の嵐に耐えられる男がこの地上に存在するだろうか? いや、存在するわけが
ない。性豪オネロスとてもその例外ではなく、数分もすると尻の穴から突き抜けるように
快感が駆け上がってくるのを感じた。
「う……」
 一言、うめいた。亀頭に熱い感覚が広がり、背筋を安堵と絶望が走り抜ける。
「ん……。ごくっ、ごくっ、ごくり。ちゅるるるっ」
 残滓すらも残さず、アタランテは吸い上げた。オネロスの身体に無力感が広がる。
 アタランテは出なくなってからも執拗に吸い続け、それからやっと男根から口を放した。
フェラ地獄がはじまってからおよそ三十分ぶりに解放された男根からは、ほかほかと湯気
が立ち上っていた。もうすっかりふやけている。
「これがアマゾネスに伝わる性技の一つ、『羊の乳搾り』だ。気持ちよかったか」
 優しく目を細め、オネロスの頬を撫でながら言った。その様子はオネロスを慈しむよう
にさえ見えた。

「しかし、すごいな。これだけ吸ったのに、まだ濃い。量も減っていない。アマゾネスの
虜囚となった男は数あれど、お前ほど強い男は初めてだ」
 口の端から垂れる白濁をぺろりと舌で舐めながら、言った。
「こんなにたくさん飲んだら、身体がうずいてたまらない。オネロス、今度は私を満足さ
せてくれ。……ああ、まだこんなに固いじゃないか。この太く逞しいペニス、見かけ倒し
ではないのだろう?」
 言うが早いか、アタランテはオネロスに跨り、用を足すようなかっこうで肉棒にねらい
を定めた。息は荒く、頬は紅潮し、上下の口から唾液がしたたり落ちている。濡れそぼる
花園は、あたかも草食獣を前にした肉食獣のごとしで、ごちそうへの期待で唾液が止まら
ぬ様子であった。
 一方のオネロスといえば、主導権をとられてはならないと知りつつも、先ほどの舌技の
余韻で足の指一本すら動かせない有り様で、虎の前で足を挫いたカモシカのように体を震
わせ、来るべき快感の恐怖におののくしかないのであった。
「ん、んん、んんんっ……」
 アタランテの陰部がオネロスを呑み込んでいく。大きく傘を張ったカリ首が膣壁に擦ら
れ、もう合計して四回も精を放ったというのに、また快感が肉棒に広がりはじめていた。
「あん……んっ、ふっ、ふ……」
 大の男の手で握られているような錯覚を覚えるほど、アタランテの膣は良く締まった。
男を無理矢理拉致し、貪欲に精液を吸い取り、根こそぎ精気を奪い取ることで生殖してき
たアマゾネスの膣である。筋肉の付き方から内部の構造まで、男を犯すのに都合よく作ら
れているのは当然だった。ましてや、その戦士隊長のモノである。常人ならば狂いかねな
い快感だった。
「あ、ああっ……あんっ、んうっ、あああっ。もっと、もっとおっ」
 膣の感触だけで暴発しそうなのに、アタランテは腰を乱暴に振ってきた。前へ後ろへ左
へ右へ。大きな胸はちぎれんばかりに揺れまくり、尻の肉がオネロスをしたたかに打った。
パン、バン、パスンッという魅惑のドラムに合わせて、オネロスの男根はいいようになぶ
られる。
 しかし……

「ん、ああああっ、なんでぇ? なんでこんなに……ああんっ」
 非現実的な量の愛液が床に水たまりをつくっていた。感じているのだ。アタランテのほ
うも、どうしようもないぐらい感じていた。オネロスの性技の真価は常人離れした体力、
精液の量と、なによりも彼自身――股間の名刀――にあった。女性を愛撫するのにもっと
も適切な硬度、長さ、太さ、温度。それらもさることながら、生体オーラのごとき超常的
な力――ある種の超能力か魔力と言って差し支えないエネルギーによって、彼の肉棒を膣
内に迎え入れた女性は、通常あり得ない快楽を味わうことになるのである。
「ううっ……はあっ、もう……」
 声を押し殺し、感じていることを悟られまいと努力するが、そこは性の達人オネロスで、
アタランテが追いつめられていることを敏感に察知した。
 オネロスは反撃に出た。全神経を集中させて括約筋を締め、残った力をすべて使って腰
を突き上げた。思わぬ反撃にアタランテは身をよじり、悶えた。もちろん、アタランテも
負けてはおらず、豊かな髪を振り乱してよがり狂いながらも、膣の筋肉を巧みに律動させ
てオネロスにもダメージを与える。だが、それは決定的な反撃となるには力不足だった。
 精神的、肉体的に余裕ができたオネロスは、アタランテの尻をかかえ、立ち上がった。
女性をかかえて立ったままペニスを抜き差しする姿勢、立位とか駅弁と言われる体位にな
ったのだ。これによって、主導権はアタランテからオネロスへ完全に移った。鮮やかなオ
ネロスの身のこなしに、観衆のアマゾネスから歓声が起こる。

 二人の汗はたいまつの火に照らされ、薄暗いなかでも淡く輝いていた。双方技をつくし
て戦う様は、竜虎の戦い、という言葉を彷彿とさせる。その闘気は周りで観戦しているア
マゾネスたちにも伝播した。アマゾネスにとって、性技は剣術や格闘術とおなじく生き残
るのに必要な技術の一つである。それ故、性に優れたる者は男女問わず勇者として畏敬の
対象になった。アタランテとオネロスの性の舞踏はそんなアマゾネスたちを魅了したので
ある。
 騎乗位から立位へ、と思えば女性優位の背位に移り、そして次の瞬間には正常位へ。め
まぐるしく移り変わる、常人離れした技の数々が織りなす壮絶なセックスは永遠に続くか
と思われたが、オネロスの名刀によって次第に精力を削られていたアタランテが、ついに
甲高い嬌声をあげた。
「あ、あああああっ……いくっ……いっちゃうううっ」
 二、三度、震えたかと思うと、がくりと体が折れ、顔をオネロスの胸にうずめた。直後、
ぴくり、ぴくりとオネロスの男根が震え、膣からどろりと白濁液があふれ出た。戦士隊長
としての意地で繰り出した、アタランテの最後の締め付けでオネロスも達したのだった。
 刹那、鉦が鳴った。オネロスの一人抜きの達成を告げる鉦であった。しばらく絶頂の余
韻に浸っていたアタランテが、オネロスに近づき、耳元でささやく。
「オネロス……良かったわ……。私に勝ったんだから、他の奴になんか負けたら、承知し
ないからな。絶対に勝って、勝って、生きて……また私の伽をしてくれよ」
 アタランテは唇をオネロスの頬へ強く押しつけた。

*          *          *          *      

「二の戦士、並びに三の戦士よ。前へ」
 オネロスは自分の耳を疑った。一人相手でも五回も搾り取られたのに、二人いっぺんに
相手をしろだって? 冗談じゃない。
 しかし、それが冗談でもなんでもないことは、アマゾネスたちのなかから二人が立ち上
がったことで明らかだった。
「私、アーニャ」「僕はヘレ」
 二人は同時に名乗った。その様子は、傲然としたアタランテの態度とはうってかわって
軽いもので、オネロスはいささか拍子抜けした。
 アーニャは高慢そうなつり目の女だった。うばたまのように艶やかな黒髪は腰まで伸び
ていて、根元で束ねてポニーテールになっている。顔立ちはかわいいというよりは美人で、
ハスキーな声色もその印象に拍車をかけており、見るものを圧倒するような美貌だった。
 一方のヘレは柔らかく優しそうな表情で、終始笑顔を絶やさない。透き通るようなブロ
ンドの髪は首筋あたりまででかりそろえられている。声もどこか間の抜けた、愛嬌のある
声であった。
 好対照の二人に共通することは、健康そうに焼けた褐色の肌と――巨乳だった。それは
薄布の服を大きく盛り上げ、彼女らが歩くごとに別の生物であるかのようにぷるぷると律
動している。ゆったりとしたスタイルの服であるにもかかわらず、乳房のあまりの大きさ
に今にも服がはち切れそうだ。アタランテも相当の巨乳であったが、この二人と比べると
まったく見劣りした。
 私的に相手をする分には楽しいのだろうが、今のオネロスにはその巨乳は危険な凶器で
しかない。魅惑的な乳房から繰り出される快楽への不安と期待が複雑に絡み合ってオネロ
スの体を駆け抜けた。

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