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裁きの島 第一話 「ハジマリ」

僕の名前はクライス、これでも淫魔ハンターをやっている者だ
この世界には人間がいて、そして人間を襲う淫魔がいる
襲うと言っても、暴力的というわけではない
バトルファック――性における戦いを繰り広げるのだ
そしてその戦いに負ければ、人間は淫魔に精を吸い取られ、養分にされてしまい、最後には死ぬ
僕たちは、戦うことで生き残らなければならないのだ




ある日、僕に任務が来た
僕に託された指令は、とある島に行ってほしいとのこと
淫魔が潜伏している可能性が高い、という情報がハンター本部に届けられたのだ
それの調査に今回、僕が向かうことになった
本当は複数のハンターを派遣したかったのだが、いかんせん僕らは人手不足
僕が先鋒という形で、先に島に行くことになった
島は、絶海の孤島と呼ぶにふさわしい場所だった
しかし、島の面積はとても広く、全部歩いて回るのはかなりの時間を有すると思われた
長期の滞在、ということになりそうだ……




「それじゃ、俺は本部へ戻る」
「わかりました、帰り道もお気をつけて」
僕はここまで僕を船に乗せてくれた先輩のカラスさんにお礼を述べていた
「すぐに援軍を連れて来るから待っていろ、お前はその間、なるべく島を調査しといてくれ、マップなど作ってくれているとありがたい」
「わかりました、やっておきます」
「無理はするんじゃないぞ、じゃあな」
「カラスさんも帰り道、お気をつけて」
カラスさんは船に乗り込み、島から船を離していった
遠ざかる船を、僕は見送った…
「………さて」
僕は島の方に目を移した
島はかなり広い、船に乗っているとき遠目で見たがかなりの大きさがあることがわかった
人が住んでいても問題のない程の大きさだったと思う
(いや…淫魔が住んでいても問題はない、か?)
冷たい風が、僕の頬を撫でる
とりあえず僕はこの島を長期に渡って調査しなくてはならないので、当然拠点を作る必要がある
降り立ったのは潮の匂いがする浜辺だが、こんなところを拠点にするわけにはいかない
雨風をしのげて、寒さにも対策があり、なおかつ危険が少ないところ…
僕はゆっくりと歩き出した




浜辺から少し歩くと森が見える
結構大きな森だ、深く進むと迷子になる可能性は十分にある
「この森の入り口近くならば、拠点にするには丁度いいか……」
僕は拠点位置を決め、背負っていたリュックサックと持っていたバッグを地面に下ろす、まずはキャンプの設置だ
バッグの中には簡易テント用具が入っている、折りたたんであるがワイヤーを簡単に組み上げればすぐにテントは完成した
中にリュックサックを放る
「次は、火だな…」
森の中から、薪を集めよう……




作業をしているうちに、夜になった
僕は切り取られた丸太を椅子代わりに腰掛け、焚き火に温まりながら、食料のパンをかじっていた
(ここまで、淫魔が現れた気配はなかった……いないのかも、しれない)
だが油断は禁物だった、淫魔が現れた当初こそ淫魔は人間の精を貪るだけの獣と呼んでよいものだった
だが最近の淫魔は知性を身につけたと言われる、言語を喋り、心理的にも人間を追い詰める
これを人間は上級淫魔と名づけた、上級淫魔を倒せるハンターは実は一握りと言われる
僕は、まだ上級淫魔と戦ったことはなかった
(もし戦うとして…僕は勝つことができるんだろうか)
淫魔を倒してはきたが、僕はまだ未熟者である
それはほかならない、自分自身が一番理解しているつもりである
(でも、だからこそ…この任務、全うしてみせる)
そんなことを思ったときだった

「ピューイ」

「?」
鳴き声…?僕は振り返った
そこには暗い闇の中でもよくわかる、白い鳥がいた
その輝きは、眩暈すら覚えるほど神々しくもあった
「ん…?」
よく見ると白い鳥は、口に何かを加えていた
これは、手紙?
白い鳥は僕に近づき、その手紙を顔を上げることで近づけてくる
僕が、受け取れってことか…?
僕はその手紙を白い鳥からそっと受け取った
「ピューイ♪」
白い鳥は喜んだような様子でまた、夜の風を切り裂きながら何処かへと飛んで行った
「………」
僕は手紙の封を切り、中身を取り出す
中はごく一般的なレターであった、僕はその文章をゆっくりと目で追った


初めまして、ようこそ淫魔ハンター、クライスさん
私の名前は…コードネームは“審判”(ジャッジメント)、それで呼んでくれてかまわないわ
私はこの“裁きの島”を収める淫魔です、長い付き合いになると思うので以後よろしく
さて、あなた達淫魔ハンター本部はこの島に淫魔がいることを睨んできたのよね?
正解です、ここは淫魔の基地の一角となります
ただ、本拠地とか補給地点とはちょっと違うんですよね
この裁きの島は文字通り、この島に迷い込んできた人間を裁くためにあるんです…淫魔なりのルールでね
まあ、もっと具体的に話すと“罠”ということになるんでしょうか…
あなた、いえあなた達はまんまと情報に踊らされてこの島にやってきた
それこそが私達淫魔の狙い、罠ですね
さて、罠にかかりあなたはこの島に来ました
この私、審判の目的はあなたとゲームをすることにあります、命を賭してのね
ルールは簡単です、あなたはこの島の何処かにいる私を見つけ、探し出す
そして私をバトルファックで倒すことができれば、あなたの勝ちです
ですがこの島には私を始め、多数の淫魔がいます
あなたは途中の道のりで出会うであろう淫魔とも戦うことになると思いますが、負けてしまえばあなたの負け、あなたは死ぬことになります
淫魔を倒していけば少しずつ私に近づくことができます、頑張ってください
ここ、裁きの島では基本、夜は人間を襲わないルールにしてあります
ですからゲームは明日の明朝からスタート、それ以後の夜も安全です
イクことはあなたの体力が許す限り何回でもイケますが、命が削られていくのはお忘れないように
さあ、始めましょうか…快楽による、命のやりとりを
あなたの進むルートは自由ですが、私のオススメとしては目の前の森を通っていくことですね
あなたが私の元にたどり着けること、祈っていますよ


PS
あの船の先輩さんはもうここに戻ってくることは永遠にありません
いえ……この世から戻ってこないと言ったほうが正しいですね
あなたに、逃げるという選択肢はありませんからね?




「……………………」
全てを読み終えたとき、僕は体を震わせていた
違う……淫魔を甘く見ていた
ここに来ること自体、既に仕組まれていたということだったのか…
そして僕はこれから、絶望的な戦いに赴くことになる
たった1人で、数十、いや数百かもしれない淫魔と戦わなければならない
しかも間違いなく、上級淫魔クラスがわんさかいると見て間違いないだろう
こんな趣向を凝らしてくるのが黒幕なのだ…遊ばれてると言っても良い
そして救援が来るのも更に先になってしまった
しかし淫魔は待ってくれない、僕の精を求めて明朝からすぐに襲ってくるはずだ
僕は、戦うしかない
「………思う壺か、だけど………」
仕組まれたゲームだとしても、どんな強大な敵だとしても
「僕は、戦い抜いてみせる……!」




「こんなゲームにするなんて、審判、お前は何を考えている?」
「戯れ…という答えではいけませんか?悪魔(サキュバス)」
島の何処か…周りが岩などで囲まれていることから、地下と思われる
そこに、二人の女性がいた
一人は金髪のロングにレオタードのようなものをその美しい肢体に着けた…
そう、文献に出てくるサキュバスそのものだった
形の良い尻からは、尻尾が生えている
そしてもう一人は、黒髪の、長い髪…
彼女は淫魔でありながら、限りなく人間に近い容姿だった
平安時代のような女房装束を見に纏い、優雅に腰掛けている
「一気にあの少年を攻めて本部の場所も聞き出してしまえばいいじゃないか」
「それでは美しくありません、事は優雅に運ばなければなりませんよ」
「美しいとか美しくないとかがそんなに重要かい?」
「フフフ…悪魔、あなたにはわからないのかもしれませんね」
審判はとても可憐に微笑む、その姿に悪魔も毒気を抜かれる
「まあここのリーダーはアンタだ、アンタの考えに従うさ」
「フフ、ありがとう悪魔」


(クライス…あなたも私たちと戦い成長するのです、それが、それこそがこのゲームの…)


夜が明けるまで、まもなくである




続く
ノベルの乾きっぷりを見て、また久々に書いてみました
しかし続くかどうかは相変わらず不明

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