5498

淫魔と女忍 「見えない鎖 (上編)」

 その男の名を、大神一之介[おおがみいちのすけ]といった。姓も名も、彼の本名ではな
い。本当の家も名も、とうの昔に捨てたのだった。一之介は、養父から与えられた名であ
り、大神は退魔を生業とする一族の家名。つまり、彼は退魔師の資格を持つ、選ばれた人
間というわけだった。
 退魔とは、中国に伝わる道教をもとにした、邪なる存在を祓う術のことである。そうい
うと、安倍晴明などを想像するかもしれないが、大神家伝来の退魔はそういった正当な魔
物祓いとはまったくの別物である。道教の思想のなかでも、特に「接して漏らさず」とい
う、有り体に言えばセックスに関する思想、房中術に特化し、性を食い物にする魔物であ
る「淫魔」と呼ばれる存在を祓うのが、大神家の退魔であった。雌の淫魔は男の精を喰ら
い、雄の淫魔は女と交わることによって精気を吸収して、生きる。刀で斬りつけられよう
が、毒を盛られようが、絶対に死ぬことはない。淫魔を祓うためには、体力が尽きるまで
気をやる、つまりイカせるしかなかった。大神家とは、淫魔を昇天させ祓う、そういう宿
命を負った家系であった。もし大神家のような退魔の血筋がなければ、たちまちのうちに
淫魔は精気を蓄えて増殖し、人間を駆逐してしまうだろう。それ故、大神家は時の権力者
からも保護され、民衆からも少なからず敬意を払われていたのであった。
 時に、一之介が大神の養子になったころ、家の当主は藤一郎と呼ばれる男であった。彼
は、身の丈は優に六尺半(約1m90cm)という偉丈夫であり、精力絶倫にして、技術は
精緻、そのうえ凶悪きわまる逸物を有していた。退魔の家系は大神家だけでなく、一乗谷
家などいくつかの分派があったが、天下無双の退魔師といえば、大神藤一郎をおいてほか
になかった。

 藤一郎は、一族の娘二十人に命じて、養子となったばかりで当時十歳にも満たない一之
介に、房中術の手ほどきを受けさせた。もちろん、彼女らも雄の淫魔と戦う歴戦の退魔師
であり、その実力たるや男数十人を瞬く間に昇天させ、精力溢れる若者を一息で腹上死さ
せるほどであった。そんな姉たちによってたかって筆下ろしをされたあと、一之介は過酷
きわまる修行をつまされることになる。詳細な描写は避けるが、いくつか例を挙げると、
腕が腫れ上がるまで乳房の愛撫をさせられたり、舌がつるまで陰部を舐めさせられた。そ
れから、耐久力の修行として、姉たちに荒縄で亀甲縛りにされ、目隠しをつけられたあと、
二十人の姉が一斉に舌で責められたりもした。張り型(今で言う、こけし)で尻の穴もた
っぷりと開発されたし、ろうそくや浣腸で責められたりもした。ここまで来ると、一之介
のためというよりも、姉たちのサディスティックな欲望を満足させるためとしか思えない
が、それを一之介が口にすることはできなかった。姉たちを本気で怒らせた場合、未熟な
一之介に命の保証はない。以前に一度、姉たちを怒らせたときなど、泡を吹くまで搾り取
られたあげく、切れ痔になるまで尻の穴を責められた。
 元服も近づくと、一之介は姉たちと互角以上に戦えるようになっていた。シックスナイ
ンで互いの局部を舐め合い、先に達した方は食事抜き、という修行をさせられた。一之介
は最初のうちこそ姉たちの舌技に翻弄されていたが、負けたときのひもじさをバネにして、
すぐに連勝するようになった。そうしたわけで、みるみるうちに一之介は人間離れした性
技を身につけていった。

 そんな一之介にも、元服の日が来た。元服の儀の席で、藤一郎は言った。
「一度も果てることなく、姉たちを昇天させてみろ。大神一族の男として認められるため
の、最後の試練だ」
 一之介がいかに成長したとはいえ、大神家の女たちを、それも二十人いっぺんに相手す
ると言うのは、正気の沙汰ではない。
「もし途中で果てるようなことがあれば、おまえの命はない。何代、何十代と、そうやっ
て不適格者を排除しながら、大神家は今の地位を築いてきた。大神家に弱き者は不要だ」
 一之介が不適格者と判断されれば、姉たちに死ぬまで精を絞りとられ、死体は野に捨て
られるだろう。一之介の代わりはいくらでもいるのだから、藤一郎がまた新しい養子をつ
かまえてくればいいだけなのだ。
 まさに、一之介自身の命をかけた、最後の修行だった。
 この一之介と姉たちとの戦いに関しては、別の話で語ろうと思う。苦戦しながらも、一
之介は見事な技と力で姉たちを昇天させ、大神家の正式な跡取りとなった。
「よく戦い抜いた。おまえはこれで、大神家の正式な跡取りとなったのだ」
 床は、気絶した姉たちで埋まっている。せまい部屋で、二十人と一人の退魔師が乱闘し
たのだから、当然といえた。まさに、死屍累々である。
「では、さっそくだが、おまえに大神家の男児としての、初仕事を与える」
 目の前の壮絶なようすに目をとめるでもなく、淡々と藤一郎は言った。

「昨年、一乗谷家と協力して討伐した女淫魔の残党が、わが城常国[しろとこのくに]の国
境を越え、南陸国[みなむつのくに]へ逃げた。そこまでなら放置しておいてもよいのだが、
その後、南陸国の女忍衆と結託し、色香でもって当局を裏から操っているらしい。こうな
れば、大神家としても看過できぬ事態、というわけだ」
 藤一郎は、一之介に見定めるような視線を送ったあと、
「おまえには、この女忍衆の頭を籠絡してきてほしい。頭を失えば女忍は所詮烏合の衆、
間違いなく瓦解するだろうし、そうなれば淫魔も表だった活動はできなくなる」
 敵地に単身乗り込み、頭を倒せというのだろうか。いくら大神家の男とはいえ、無茶な
話だった。第一、淫魔はともかく、女忍が性技で戦うとは限らない。非力な退魔師が、女
とはいえ殺しプロ相手に戦えるとは思えない。
「お屋形様。お考えごもっともなれど、私めには荷が重うございます」
 藤一郎は、じろりと一之介をにらんだ。鋭い眼光に射すくめられ、思わず全身をこわば
らせる。なるほど、いかな淫魔といえども、この眼光を前にしては、もてる性技の五分も
出し切れまい。
「もう一度いう。大神家の男児としての、仕事だ。大神の女二十人を手込めにできる男が、
なにを案ずるか。手込めにした女忍の一人二人を人質にすれば、向こうも手出しはできぬ。
忍びの者といえど、所詮は女だ」
 そういって、藤一郎は薄く笑いを浮かべた。
 一之介は咄嗟に言葉が出てこなかった。言葉を紡ごうとしても、喉と唇が震えて、音に
ならない。それでも答えないわけにはいかないので、無理矢理、腹の底から声をひねり出
して、
「……御意に。お屋形様、必ずやこの一之介めが責務を全うして参ります」

 大神家の館を辞し、一之介は女忍衆の拠点へ向かってひた走りに走った。大神家が刺客
を放ったことは、遅かれ早かれ敵の知るところとなるだろう。襲撃は、秘密裡に、そして
早急に行う必要があった。
 隣国との国境にさしかかったころ、あたりはすっかり暗くなっていた。都合の悪いこと
に、最寄りの宿場からはだいぶん距離があった。
「困ったな。このままいけば、野宿だ」
 一之介はぼやいた。
 森のなかでの野宿は、体力を消耗する。体が疲れていては、性技を存分に行使すること
はできない。退魔師は体が資本なのだ。
 野宿の準備を考えはじめた矢先、一之介の眼前に淡い火の光が現れた。民家の明かりの
ようにも見える。
「これは僥倖[ぎょうこう]。ありがたいことだ」
 森のなかに、こうも都合よく民家があるのは、怪しいようにも思われた。しかし、屋根
の下で寝られることを思うと、山姥[やまんば]であろうが狐憑き[きつねつき]であろうが
恐ろしくはない。
 近づいてみると、案の定、それは民家だった。その家は、古木に囲まれているわりに、
よく手入れされており、隠遁した賢者の庵などを彷彿とさせる。

「ごめんください。北丈国[きたはじょうのくに]から参った、旅の者です。一晩、宿をお
借りしたいのですが」
 一之介の声を聞いて、民家のあるじが出てきた。質素な身なりをした老婆だった。
「まあ、まあ。北丈国から。それは遠いところから」驚いたような声でそう言い、「それで
はお疲れでしょう。遠慮なさらずに、ささ、どうぞお上がりください」
 北丈国とは、一之介の本当の出身である城常国や南陸国からはるか北に位置する国だ。
一之介が嘘をついたのは、大神家の人間とばれる要因をすこしでも減らすためだった。
 突然の訪問者を怪しみ勘ぐるどころか、快く受け入れてくれた老婆に、一之介は、
「有り難い。大した礼はできませんが」
 と言って、少額の銭を包み、手渡した。老婆は黙って受け取ると、一之介を家の奥へ導
く。狭い室内には、中央にいろりがひとつあり、汁が入った鍋がコトコトと音を立ててい
る。
「ちょうど、夕食の支度をしたところですよ」
 一之介は、老婆から夕食にその鍋の汁を振る舞われた。
 汁の分量は、まるで、一之介の来訪を予期していたかのように、一之介が腹一杯食べて
もまだいくらか余るぐらいあった。
 夕食を食べたあと、一之介は床についた。床は堅かったが、疲れていたためか、すぐに眠気
がやってきた。明日の明朝には出発しなければならないので、一之介はすぐに眠気に身を任せた。

 その時だった。奥の部屋から、なにかがこすれあうような物音がするではないか。続い
て、ひたひたと裸足で床を歩く音。一之介は、目をそっと開き、あたりのようすをうかが
った。いろりの炎は消え、部屋は真っ暗だった。暗闇に目を慣らしたあと、物音がしたほ
うへ目をやる。
 あっ……、一之介は、思わず叫びそうになった。粉雪をまぶしたような、抜けるように
白く長い女の足が、そこにあった。その足は、明らかに若い女のものだった。先ほどまで
いた老婆は、どこへ行ったのだろう。
 一之介は、悟られぬように、まじまじと女の体を観察した。驚くことに、その女は全裸
であった。おそらく、先刻の物音は着衣を脱ぐ音だったのだろう。しかし、さらに一之介
が驚いたのは、その女の見事な容姿だった。むっちりとした尻に、今にも折れかねない細
さの胴回り。そして豊かに突き出た乳房は、女が動くたびに、まるで誘っているかのごと
く淫らに揺れ動く。まったく、見ているだけでたまらなくなってしまう。姉たちの躰も見
事だったが、月光に照らされ輝く目の前の裸体の、神秘的な美しさまでは備えていなかっ
た。
 女は、一之介を品定めするように観察したかと思うと、一之介のそばにしゃがんで、顔
を近づけてきた。短めの黒髪が一之介の顔をかすめ、ふわりと女の香が一之介の鼻腔をく
すぐる。それだけで、一之介は緩やかに勃起してしまった。性的な誘惑に耐える訓練を積
んだ人間を、かくも簡単に勃たせるというのは、尋常な力ではない。魔性の魅力だ。

 下半身の急激な変化に一之介が戸惑っていると、今度は柔らかく温かいものがすっぽり
と口を覆った。女が一之介の唇を強引に奪ったのだった。はっと驚いて目を開くと、唇を
貪る女の顔があった。端正な顔立ちだが、その目は獲物を補食する肉食獣のようにどん欲
な光を帯びている。一之介の記憶のなかに、ひとつだけその光の心当たりがあった。淫魔
の、眼光である。
「うふ、こんばんは、退魔師さん。タヌキ寝入りは以外と下手なのね」
 おちょくるような口調で女は言った。
「貴様、淫魔か。くそっ、はめられた」
 女は、いや淫魔は、なにも答えずに、ゆっくりとのしかかってきた。その柔らかい感触
は、一之介の劣情を極限まで高めるのに十分だった。
 一之介は、体を回転させ、淫魔を組み伏せて床に押さえつけた。しかし、淫魔もさるも
ので、なすがままにされるように見せて、巧みな手つきで一之介の着衣を全部はぎ取った。
その鮮やかさは、まるで魔法のようだった。
 そして、女はあらわになった一之介の胸に、舌をはわせた。手は、脇腹やら背中を、さ
わさわと絶妙な力加減で刺激している。
「うっ、淫魔め。この家の老婆をどこへやった? 喰ったか?」
 すると、淫魔はおかしそうに笑って、
「あなた、淫魔をなんだと思ってるの。人間の生肉なんて、臭くて食べられやしないわよ。
あの婆さんは、わたしが化けていただけ」
 そう言いながら、手をするすると下の方へもっていき、陰茎をしっかりと握った。
「うわっ、くっ……」
 一之介のうめき声に、淫魔は嬉しそうな表情を浮かべると、そのまま手の中でもてあそ
びはじめた。人差し指で亀頭を摩擦し、ほかの指でカリ首をいやらしくなぞる。かと思う
と、素早く鞘を上下にしごき、玉袋をやんわりと揉みしだく。
 おまけに、もう片方の手は菊門をぐりぐりと刺激している。

「えへへ。どう? キクでしょ?」
 かわいらしくはにかんで、淫魔は得意そうに言った。
 このまま、主導権を握られては、勝ち目がない。一之介は反撃に出た。乳房に吸い付き、
ねっとりと舌をはわせる。乳房そのものの豊満さもさることながら、大きな乳輪も鮮やか
な桃色であり、乳首などはサクランボのようだ。遮二無二、それを貪るように愛撫する。
「ああ……んっ。そう、そこよ。上手いじゃない」
 と、言いながらも、淫魔は余裕の表情だ。あえぎ声も、どこかわざとらしい。
 しかし、一之介は動ずることなく、体を下のほうへずらして、臍[へそ]や太ももを舌で
舐めあげる。舌先が乾くと、指先で背中を柔らかく刺激する。
「あんっ、くすぐったい。もうっ、退魔師のくせに、そんな小手先の愛撫しかできない
の?」
 女は、一之介の顔をやおらつかむと、自分の陰部に押しつけた。
「ほら、ここを舐めて。淫魔を焦らそうなんて、馬鹿なこと考えないでよ」
 淫らな香りが、一之介を包む。技巧や肢体もさることながら、淫魔は「匂い」で人間を
落とすのだ。普通の人間は、淫魔に近づいただけで、その誘香にあてられ、正気を失って
しまう。退魔師の一之介といえど、理性を保つことはできなかった。

 なにがなんだかわからなくなり、一之介は淫魔の陰部にむしゃぶりつく。すえた臭いが
鼻腔を刺し、口には酸味が広がる。そして、小豆大の突起を、舌で器用に皮をむいて、優
しくつついた。さすがの淫魔もこれにはたまらず、小さく声を漏らしはじめる。
「んっ……ああ、いいわ……うう」
 淫魔は、一之介の頭を押さえる手に、力をこめてきた。陰部もすこしずつ湿りだし、あ
えぎの間隔も短くなっていく。
 一之介は、主導権が自分のものになっているのを、確信した。淫魔の背筋を撫でていた
手を、太ももに廻してくすぐる。淫魔の足が小刻みに震えているのがよくわかった。
 しかし、それがいけなかった。背中の手を動かしたせいで、淫魔は体を自由に動かせる
ようになってしまった。
 淫魔は一之介の頭を陰部にあてたまま、体を持ち上げてひっくり返し、一之介のペニス
に自らの顔を近づけた。いわゆる、合舐[シックスナイン]の体勢に持ち込んだのだった。
「あなたばかり責めてずるい……んふふ、お返しよ」
 妖しく微笑むと、眼前の逸物をぱくりとくわえ、けたたましい音をあげて吸い込んだ。
 ずちゅっ、ぬろろっ、ぷちゅっ、じゅるるるるっっ!
 信じられないほどの吸引力で、一之介のモノが吸い上げられる。高速で淫魔の首が上下
し、唇でサオを扱きあげた。凄まじい快感に、一之介の腰が震える。舌を動かすことすら
ままならず、なすがままになるしかなかった。

 とどめ、と言わんばかりに、細くした舌先を尿道口に突き立て、ドリルのように動かし、
刺激しはじめた。
「うわあっ、だめだ……くそっ、イク……くうっ」
 一之介は首を振って、必死に耐えたが、無駄なあがきだった。
「もうイキそうなの? ……じゃあ、いっぱいお口に出してね」
 そう言うと、淫魔はイチモツを喉の奥までくわえこみ、桃色の舌を絡ませて、一気にす
すり上げた。
 ずちゅ、ぬる、ずろろろろっっ。
 内臓まで引っ張り出されそうな、吸引。めろめろになったイチモツを、長い舌がいたぶ
り、ねぶりあげる。電撃のように、背筋を快感が走り抜ける。 尻の穴はすぼみ上がり、毛
穴という毛穴が大きく広がって、汗が怒濤のごとく噴き出した。恐怖を覚えるぐらいに激
しい、射精感。ここでイッたら、精液といっしょに体の内容物をすべて噴出して、死んで
しまうのではないか、とさえ思えた。
「うっ、あっ、ふあっ、ぐっ……でるっっ」
 どくどくっ、ぴゅっ、ぴゅっ、どぱっ、どぴゅんっ。
 若干の痛みと、それに数倍する快感とともに、白濁の液が迸[ほとばし]った。淫魔の喉
が鳴るたびに、敗北の証が吸い取られていく。退魔師だけあって、その量は並々ならぬも
のであったが、さすがは淫魔というべきか、一滴も漏らさず飲み干していく。
 柄杓[ひしゃく]に一杯ほどの精液を噴出すると、一之介のモノはひくひくと震えて、射
精をやめた。それでもその淫魔は許さずに、じゅるるっ、と吸い上げ、尿道の奥を刺激し
て、残りカスをもすべて搾り取った。そしてそれをごくりと飲み込むと、余裕とも嘲弄と
もとれる笑みを浮かべて、
「こんなに多いのは久しぶりよ。さすがは退魔師ね。前菜としては、上出来だわ」
 口のまわりをおいしそうに舐めながら、淫魔は言った。

 そして、まだ反り返ったままのモノを解放し、強く握りしめながら、
「それじゃ、次は主菜よ。こってりと濃いのを出してね、退魔師さん」
 口調はおどけていたが、目は欲情した淫魔のそれだった。百獣の王もしっぽを巻いて逃
げ出すような獰猛さ。獲物を押さえつけた肉食獣のように、荒々しい息を吐きながら、そ
れでいて可憐な乙女のように頬を桃色に染め上げている。
 神々しいまでの淫[みだら]。それが、淫魔の力だと、一之介は初めて思い知った。
「んん……ああ……立派ね、大きい……」
 愛おしそうに、すりすりとイチモツをさすりながら、倒れて動けない一之介の上に跨っ
てきた。妖しい手つきで擦られ、淫らにとろけた淫魔の視線に射られて、一之介はまた激
しい興奮を覚えていた。
「そんなに切なそうな顔しなくても、すぐにあげるわよ」
 握りしめたモノを、淫魔は自分の秘部にむけて固定する。あたかも獲物を食わんとする
獣のごとく、一之介のモノを喰らおうと、淫魔の下の口はいやらしくよだれを垂れ流して
いた。
 ずちゅううっっ。
 腰を素早く落とし、淫魔は一之介の肉刀を自らの鞘に収めた。
 きゅううんっ、ぎゅっ、ぎゅっ。
 淫魔はいきなり強烈に締め付けた。襞はわさわさと蠢き、一之介のイチモツを蕩かそう
と、性感帯を巧みに責め立てた。いかな退魔師の大剣といえど、この責めにあってはひと
たまりもないかに思えた。
「ん、んんっ、あはんっ……うっ、ああんっ、あっ……イって……イっていいのよ」

 しかし、一之介の名刀は、蕩けるどころか、ますます硬く逞しくなり、逆に淫魔の内壁
をごりごりと責めあげた。挿入前は弱点でしかなかった、キノコの傘のように突き出たカ
リ首が、強力な武器となって淫魔の膣をあますところなく刺激する。
「そ、そんな……あ、あっ、ああっ、あっっ……んうう」
 淫魔の肉鞘はたしかに名器であったが、退魔師の素質を有する姉たちのモノと比べれば、
大した脅威ではなかった。その若さ故に手技口技に不慣れとはいえ、大神家に目をつけら
れるほどの一之介だ。淫魔にすれば、自らの名器をつかった攻撃は、一之介に対するとど
めの一撃のつもりであったのだろうが、硬度、大きさ、曲がり具合、どれをとっても超一
級の退魔師のモノを受け入れたのは、むしろ自殺行為であった。
 一之介は淫魔の強さを知らずに不覚をとったが、淫魔もまた、退魔師がいかなるものか
をよく知らなかったのだ。
「形勢逆転、のようだな」
 一之介はそう言うと、腰を大きく突き上げた。カリ首が、襞の一本一本を刺激し、強烈
な性感を淫魔に与える。一之介が腰を突き上げるたびに、それまでとはうってかわって、
甲高いあえぎ声をあげた。
「ん、はぁ、はぁ、ああんっ……そんなっ、激しくっ、あああっっ」
 快感のあまり全身から力が抜けたのだろうか、淫魔はへなへなと力無く一之介の肩にも
たれかかってきた。初めて男を受け入れる処女のように、歯を食いしばって一之介の体に
しがみついている。

 一之介は体を起こし、今度は淫魔を下に組み伏せた。淫魔は抵抗するそぶりすら見せず、
なすがままになっている。
 たたみかけるようにして、腰を淫魔の臀部に素早く力強く叩きつける。
「あっ、あんっ、はぁ、はあんっ、気持ちいい、ん……」
 淫魔はすでに、恍惚とした表情を浮かべてあらぬ方を凝視している。淫魔の目は、もは
や闘志はかけらもない、とろとろになった女の目であった。
 一之介は、いったんペニスを抜き、淫魔の体を持ち上げた。淫魔は、落ちないように、
一之介の肩にすがりつくので精一杯のようだった。無抵抗な淫魔に、一之介はふたたび自
分の分身を突き立てた。
「いやっ、ああ……落ちる、落ちるっ……ああんっ、はぁ、はぁっ」
 地に足がついていないことによる不安が、逆に淫魔の興奮を高めているようだった。目
からは、興奮のあまりか、哀れになるほどの涙があふれている。そのようすは、一之介の
加虐心、攻撃性をいっそう煽りたてた。
 そして、一之介はさらに激しく、より速く腰を動かしはじめた。退魔師としての修行の
なかで培われた強靱な足腰を使い、微妙に角度を変えながら、幾度も幾度も淫魔の奥深く
に肉刀を突き刺した。
 大神流秘技「八頭大蛇」
 一之介の激しい責め立てに、淫魔はたまらず声を張り上げた。
「あっ、はあっ、はああっ、ああ……イクッ……イクうううっっ」
 獣の雄叫びのような絶叫とともに、淫魔は達した。ぐったりとしなだれかかってくる淫
魔の重みで、一之介は自分が勝ったことを知った。
 退魔師としての、初めての勝利だった。

[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]