$$前書きにかえて$$
四方を海に囲まれた南海の離島に真田町はある。本島とは400km以上離れているこの島で
は、普通では考えられない風習がある。
その一つが学生達が所属する学園同士で行う『戦争』だ。戦争と言うと大袈裟だが、中
身は本島の運動会でもよく見かける騎馬戦である。真田町の学生達は一人の例外もなく
この騎馬戦に参加する。1000人を越える学生達が四人一組となって騎馬をつくり、対峙
する様は、私でなくても興奮を掻き立てられるだろう。
だがこの騎馬戦は別の意味でも興奮を掻き立てられる。本島の騎馬戦とは違い、真田町
の騎馬戦は掴みあって相手を落馬させるのではない。彼らが武器とするのは自らの性技
なのだ。
これだけでは全く意味が分からないだろう。だから私は間近で見てきた真田町における
戦争の物語を書き記すことにした。この物語を通して、真田町に興味を持って頂ければ
幸いだ。
ただ一つ注意して欲しい。学生達にとって、これは紛れもなく戦争なのだ。それをお忘
れなきよう。
さて前書きが長くなってしまった。そろそろ物語を始めるとしようか。
$$付記:真田町における戦争のルール(第一版)$$
一、戦いは騎馬戦によって行われる
一、騎馬は三人による騎馬と一人の騎手の計四人で組まれる。
一、騎馬を構成する四人は同性でなければならない。
一、騎手はその学園の最上級生でなければならない。
一、騎手が落馬もしくは絶頂した場合にその騎馬は負けとなる。
一、暴力的な行為における落馬は無効であり、またそのような行為は反則となる。
一、反則行為をした騎馬は即座に負けとなる。
一、同性同士の騎手が戦ってはならない。
一、大将騎は男女一騎ずつ出さなければならない。(注1)
一、一騎でも大将騎が負けると、その学園の敗北が確定する。
一、敗北した学園は相手の支配下に入らなければならない。
一、支配関係は毎年四月に初期化される。
注1:男子校、女子校の場合はその限りではない。
平成××年四月二十三日 真田町中央運動公園
人工芝が敷き詰められた運動場に真田中央学園と真田中央女子学園の学園生凡そ1000人
が対峙していた。彼らは男女問わずに上半身は何も羽織っておらず、下半身も申し訳程
度に股間に布を巻いているに過ぎなかった。
「……ふぅ」
真田中央学園1年の相原智樹は大きなため息を吐いた。この学園に入学してからまだ二
週間しか経っておらず、智樹にとってはこれが初戦になる。子供の頃から憧れていた戦
いの舞台に上がれた興奮と緊張で智樹は呼吸もままならなかった。
「落ち着け、相原。心配しなくても、この前のテストの実力が出せれば大丈夫だ」
「は、はい!」
入学してすぐに新入生を対象にしたテストが行われた。その成績が認められ、智樹は初
戦から前衛を任されることになったのだ。
前衛とは騎馬を構成する三人のうち、先頭に立つ者を示す言葉である。後ろの二人は後
衛と呼ばれる。騎馬戦においては、騎手と前衛の実力で勝敗が決まると言っても過言で
はない。
「全騎、騎乗!!」
力強い太鼓の音と共に真田中央学園の大将である菅原祐一郎の野太い声がして、智樹は
両手を後ろに出して騎馬を組む。前方を睨むと、こちらと同じく向こうも騎馬を組んで
いた。ちょうど正面にいた前衛の女生徒と目が合う。
「……くす」
ショートカットの女生徒は智樹を見て、大きな黒瞳を細めて挑発するように微笑んだ。
まるで自分が一年であることを見抜かれたようで、智樹はカッと頭に血を上らせた。
必ず倒してやる……そう心に決めて女生徒を睨み返す。女生徒は相変わらずにやにやと
挑発的な笑みを浮かべたままだった。
「敵は真田中央女子学園、大将は藤沢由紀だ。大将を倒した者は序列を二階級上げるこ
ととする!」
堂々とした祐一郎の声に応えて全騎が鬨の声を上げる。今回は相手が女子学園なので大
将は祐一郎一人だった。祐一郎も大将としては初陣には違いないが、これまで幾多の戦
いを潜り抜けてきた落ち着きが感じられた。
「今回、我が学園の女子は戦いには参加できない。我々男子の名誉にかけて、勝利を掴
み取れ!」
祐一郎の言葉に男子全員が真剣な顔になる。学園で待つ女子の為にも負けるわけにはい
かないのだ。
「全軍、進軍開始!」
一際大きく太鼓の音が鳴らされ、真田中央学園の守備隊以外の騎馬百数騎が一斉に突撃
を開始した。それに呼応するように向こうの女生徒達もこちらに向かってくる。
「行くぞ、相原、笹井、多田!!」
「はい!」
「おうよ!」
「ああ!」
騎手である大河内の言葉に智樹は応える。
「一気に大将へと言いたい所だが、まずは敵を減らすことが先決だ。相原、行き先はお
前に任せる!」
「は、はい!」
千載一遇のチャンスだった。智樹は真っ先に先程笑われた女生徒の姿を探す。
「っ!」
その姿が余りにも近くにあって智樹は息を呑んだ。女生徒が見ているのは自分。間違い
なくこちらに向かってきている。
「ふん、俺に向かってくるとはいい度胸だな。相原、正面だ。そいつとやる!」
大河内が早速前言を撤回して先導する。智樹としても異論はなかった。大河内の言われ
たとおり、こちらに向かってくる女生徒へと進む。
「真田中央学園三年、大河内豊!」
「真田中央女子学園三年、御堂朱美!」
騎手同士が名乗りあい、戦いが始まった。騎馬の上で大河内は相手の唇を奪い、さらに
両手で大きな乳房を握りこむ。
「ん……ぅ……んぅ……!」
相手の女生徒はキスだけで既に顔を赤らめ、苦しげな声を漏らしている。反撃するべく
大河内の剛直に手を伸ばすが、ただ添えるだけで握ることすらできないようだった。
「ふふん、まだまだだな」
「ん、はぁ……はぁ……く、こんなことくらいで……!」
余裕の大河内に女生徒は反撃を試みる。騎馬の上で器用にしゃがみこみ大河内の剛直を
咥えこんだのだ。そそり立つ肉竿を真っ赤な舌で舐め上げ、唇でカリ首を締め付け、尿
道口を吸い上げる。彼女も騎手として今回が初陣ではあるが、今までの練習試合でこの
体勢に持ち込んで負けたことはなかった。彼女にとって必殺の体勢、それがこのフェラ
だった。
「この程度じゃ俺は倒せないな」
平坦な声で大河内が言う。その口調が示すとおり、どんなに彼女が剛直を舐め上げても
大河内は小さな喘ぎ声すら上げなかった。
「そ、そんな……!」
不安定な体勢をそう長く保つことは出来ない。彼女は呆然とした表情で大河内の剛直か
ら口を離した。
「あ、やば、先輩、もう負けちゃいそう。これは早くしないとやばそうね」
「う、あ……あ……」
智樹はまだ自分に起こったことが信じられなかった。騎手同士が掴みあうとほぼ同時に
智樹も相手の前衛とキスを交わした。前衛同士の戦い、それは騎手と同じくらい重要
だった。前衛が相手の性技に圧倒されれば、それは騎馬の瓦解に繋がる。落馬も敗北と
なる理由はそこにあった。
「ふふ、君一年だよね? 可愛い反応♪」
くすりと女生徒は笑う。ペロリと真っ赤な舌が唇の間から覗く。それだけで智樹はさっ
きのキスの快感を思い出し、ガクガクと足を震わせてしまう。
「キスだけでこんなに、とか思っちゃってる? 馬鹿だなぁ、前衛はまずキスが上手く
ないとお話になんないんだよ? 手は使えないしね」
鼻と鼻が触れ合うほどの至近距離で女生徒は得意げに話す。小振りな乳房が智樹の胸板
に押し付けられむにゅりと潰れた。
「もちろん私はキスだけじゃないよ。全身を使って君をイかせてあげる」
上では大河内が戦っている。智樹の独断でこの女生徒から離れるわけにはいかない。智
樹は何とか反撃しようと女生徒を睨みつける。
「さっきも思ったけど、君のその目、とっても素敵だよ。君はきっといい騎手になる。
でも今日はお姉さんの勝ちだね」
「馬鹿にす……んんっ!?」
智樹の反論は女生徒のキスによって遮られる。すぐさま舌が唇を割って侵入し、智樹の
口の中を蹂躙する。歯茎の裏が舐められ、舌に絡みつかれ、大量の唾液が流し込まれる。
そのどれもが智樹の官能を刺激して止まなかった。
「ん……ちゅ……んん……」
手を使えないのに、女生徒は巧みに唇を押し付け、智樹から抵抗する力を奪い去ってい
く。
「っ……!」
負けるわけにはいかない。智樹が負けてしまえば大河内も巻き込んでしまう。それは自
分を前衛に任命してくれた大河内の期待に背いたことになる。
「ちゅぷ……んん……ちゅく……」
それなのに智樹は女生徒のキスに翻弄され、抵抗という抵抗もできないままイかされよ
うとしていた。
せめて騎馬だけは崩さないように下半身に力を込めるが、舌が絡み付けれる度、また唾
液が流し込まれる度に、快感のあまり膝が笑い出す。
「んふ……♪」
キスを続ける女生徒の目がちらりと智樹の剛直を見る。その直後柔らかなふとももが智
樹の股間に捻じ込まれた。
「んぅ……!!」
むっちりとしたふとももが智樹の剛直を擦りあげる。キスで高められた智樹の剛直はそ
の刺激だけで、我慢汁を尿道口から滲ませた。
智樹は腰を引いて女生徒のふとももから逃れようとするが、既に完全に股間に入り込ん
だふとももから離れることはできなかった。逆にその動きで陰嚢が擦られ、予期せぬ快
感を受けてしまう。
「ん……ぁ……」
ふとももで股間を刺激しながら、キスも休むことなく続けられる。また密着した乳房も
智樹の性感を高めるように、むにむにと智樹の胸板を這い回っていた。手以外の全てを
使った巧みな責め。逆に智樹は無策だった。武器となりうる剛直も今では快感を生み出
す弱点に過ぎない。
「くちゅ……ん……ちゅぷ……」
全身が快感に打ち震えていた。下半身にも力が入らない。恐らく女生徒のふとももが股
間から抜かれたら、智樹はそれで崩れ落ちてしまうだろう。だが女生徒はあえてそうせ
ず、智樹が達するまで責め続けた。
強く舌が吸われ、ふとももで亀頭が擦られる。その瞬間、智樹の頭は真っ白になった。
剛直から白濁液が飛び出し、女生徒のふとももを汚す。
同時に智樹は膝から崩れ落ちた。前衛の智樹が倒れたことで、騎手の大河内はバランス
を崩し落馬してしまう。
「ふふ、ごめんねえ」
倒れた智樹に女生徒の声がかかる。智樹は女生徒の顔も見ることもできずに、ただうな
だれていた。
屈辱的な敗北。それが相原智樹の初めての戦いだった。
「相原、そろそろ顔を上げろよ」
敗北から三十分、智樹はまだうなだれたまま顔を上げられないでいた。
「でも、でも俺のせいで……!」
「ああ。そうだ。今回は相原のせいで負けた」
「っ……!」
面と向かって事実を突きつけられ、智樹の目には悔しさと申し訳なさのあまり涙が浮か
んだ。
「お前は一年だ。たった一度の負けでそんなに気に病んでどうする。俺だってこれまで
数え切れないくらい負けてきたぜ」
「先輩もですか?」
「当たり前だ。三年間全戦全勝の奴なんていない。大将の祐一郎だって一年のときはえ
らく負けてたぞ」
「あ、あの菅原先輩が。う、嘘でしょう!? 先輩、からかってませんか?」
「そんな無駄なことするか。一年で前衛になるってのはつまりそういうことなんだよ。
お前は祐一郎と同じ道を歩んでいるわけだ」
「俺が、菅原先輩と……」
智樹は顔を上げた。そして威風堂々と腕を組んでいる祐一郎を見る。大将……学園全員
の憧れ。その祐一郎と自分が同じ道を歩もうとしている。それはとても大それたことの
ようで、そしてとても興奮することだった。
「大河内先輩」
「なんだ?」
「次は勝ちましょうね」
「そうだな。おっと勝敗が決まったようだ」
向こうの本陣で大きな歓声が聞こえる。智樹の場所からは見えないが、どうやら智樹た
ちの真田中央学園が勝利したようだった。
「ん? さっきの奴らがお礼参りに来たようだぜ」
お礼参りとは意味が違うだろうと思ったが、智樹はあえて何も突っ込まなかった。あの
女生徒とまだ対峙する気になれず、智樹は顔を背けた。
「先程はどうも。あなたはとてもお強いんですね」
「いやいや勝ったのはそっちだろうが」
「私は綾に助けられただけですから」
「ああ、前衛の子?」
「はい、二年の美浜綾です。これからよろしくお願いしますね、先輩」
「はっは、これはなかなか骨のありそうな子だ。同じ学年でなくてよかったよ」
「ふふ、そうですね。私も助けてもらってばっかりで、頭上がらなくて……」
大河内と相手の騎手は随分と楽しそうに談笑していた。敵同士だったとしても戦いが終
わればノーサイド。だが智樹はそんなに切り替えの早い男ではなかった。
「あ〜あ、負けちゃった。まあ分かってたことだけどね。うちの学園、去年もすぐに負
けちゃったし」
「……………」
智樹を負かした女生徒、美浜綾は無遠慮に智樹の隣に腰を下ろした。
「悔しかった?」
「くっ!」
「冗談、冗談だよ!! あはは、そんなに怒んないでって」
バンバンと背中が叩かれる。
「それにこれからは一緒に戦う仲間なんだから。昨日の敵は今日の友ってね」
「まだ昨日じゃない」
昨日どころか一時間も経っていない。心の整理をするには余りに短すぎる時間だった。
「ふふ、細かいことは気にしない。とにかく仲直りしよ。はい握手」
綾が手を伸ばす。とても華奢ですらりとした綺麗な手だった。
「……………」
いつまでも気にしていたらそれはそれで気の小さい男になってしまう。綾の言うとおり
戦いが終わった以上、これからは仲間なのだ。
「よろしく」
小さくそう言って綾の手を握る。その瞬間、智樹は強い力で引っ張られ綾に抱きつくよ
うにして倒れこんでしまう。倒れこんだ智樹を優しく受け止めて、綾は片手で智樹の頭
を抱き寄せた。
「んむ……♪」
唇だけが触れ合うキス。戦いのキスとは明らかに違う感触が智樹の唇を襲う。
「ふふ、君ってすごく私の好みなんだよね。そいえば、名前なんていうの?」
「あ、相原智樹」
「そっか。じゃあ智樹、また今度一緒に遊びましょうね。何なら私が特訓してあげても
いいよ? お姉さんが一から十まで教えてあげる♪」
まだキスの余韻から抜けきれない智樹を尻目に、綾は言いたいことだけ言って走り去っ
てしまった。
そうして智樹の初陣は終わりを告げたのだった。
多分、続かない。
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