「いよいよ明日だな……」
宿屋の一室で、戦士のジョーがつぶやいた。
僧侶のケイン、魔法使いのグエン、そして勇者のボクがそれにうなずく。
「長かった旅も、明日で終わりだ」ケインが続ける。「明日、魔王を倒せばな」
「この男臭いパーティも明日で解散じゃな」
年長のグエンが快活に言って笑った。
しかしボクは何も言えない。
一抹の寂しさと、何より大きな明日の不安が、ボクの気持ちを沈ませているのだ。
「装備も道具もすべてそろえた。後は明日に備えて寝るだけだが……」
そう言って、ジョーは懐から瓶を取り出した。
「今夜ぐらい、ぱーっとするか」
ケインもどこからか乾き物のツマミを取り出してテーブルに並べる。
「こら、勇者様は未成年なのじゃぞ?」
グエンがそう諌めるものの、宴の準備をとめようとはしない。
ボクは皆の気持ちを察して手を振った。
「い、いいんだ! 実はもう眠たくてさ、ボクに構わず皆で楽しんでよ」
「いいのか?」
「構わないよ。ただ、明日に支障が出ない程度にね」
皆はそんなボクの態度に気をよくすると、静かに酒をコップに注ぎ始めた。
ボクはひとり部屋を出ると、宿屋の最奥にある部屋に戻ろうとして……足を止める。
「そうだ……今日が最後の夜かもしれないんだ。今夜ぐらい、ぱーっとしたっていいよね」
ちょうど財布は手元にあった。12万ゴールド入っている。
皆のお金ではあるけれど……まあ、全部使うことはないし、ちょっとぐらい減っていても落としたと言えばいい。
町はネオンがひしめいている。
この町は魔界の入り口にほど近い町で、屈強な戦士が傭兵として雇われていることもあり、若干治安が悪い。
結果、大陸でも有数の歓楽街として知られているのだ。
「ぱーっとする、って言っても……どういう遊びがあるのかも、よくわからないや」
ボクは幼少の頃から、厳格な父の元で剣の修行に励んでいた。
15歳になって冒険に出てからも、魔王を倒すべく、少しでも魔界に近づけるよう、寄り道もせずにここまで来た。
成年の仲間達ならまだしも、未成年で正義のために生きてきたボクに、大人の町の遊びなんて知る由もない。
とりあえず、人の出入りの多い酒場に入ろうとすると……。
「駄目駄目。子供は入れないよ。教会の目があるからね」
と断られてしまう。
大きな酒場も小さな酒場もそうだった。
というのも、大陸全土で信仰されるサバルト教の教会が、大陸の人々に道徳を強いており、未成年の健全な育成を阻むものを排他しているのだ。
書物なんかも、大人向けのものは子供が買えないようになっているし、もし仮に店が売ってしまったとすれば、店主には手痛い仕打ちが待っている。
まあ、古来より奴隷制や人身売買の風習があり、魔物という危険と常に隣り合わせの大陸で、このような道徳が浸透するのは良いことでもあるのだけれど……。
「もう十一時なのに、遊べやしない……」
せっかく人々を救うべく魔王を倒そうとしているのに、その人々に邪険に扱われてはかなわない。
明日、命を賭けようというボクに、ちょっとぐらい大人の遊びを教えてくれたっていいじゃないか……。
「あら、坊や……こんな夜中にどうしたの?」
「え……?」
宿屋に帰ろうとしていた矢先、路地裏から声をかけられる。
見ると、そこには紫のネグリジェを身にまとった背の高い女性が立っていた。
中が透けて見えそうで見えないネグリジェは、スイカが入ってるかのごとく張った胸と、高価な壷を思わせる腰にかけてのくびれ、むっちりと張ったヒップと、裾から伸びる長い筋肉質な脚のラインを、未成年のボクにまざまざと見せつける。
短いネグリジェの裾から伸びる脚には光沢が走っており、どうやらストッキングをはいているようで、その足先には背の赤い高いヒールが収まっており、背の高さを際だたせる。
紫紺の長髪に縁取られた顔は、化粧により妖艶さを際だたせており、厚めの唇に塗られた紫の口紅は、微かな毒々しさと、見る者に溜飲を迫るなにかを兼ね揃えていた。
ボクはそんな彼女に見とれていたことに気付き、慌てて視線をそらす。
そらした先は、彼女の太もも……。
(ああ……光沢がまぶしい……目をそらせないよぉ……)
「ねえ、なにか悩みがあるならお姉さんに言ってごらんなさい」
そう言って、彼女はマニキュアに縁取られた長い指先でもって、ボクを路地裏へと誘った。
思考のどこかが叫んでいた――この誘いは危険だ、ついていくと取り返しがつかないことになりそうだ。
「ほら……」
しかし、彼女が妖艶に微笑んで、紫色に塗られたリップを肉厚の舌で舐め上げたのを見た途端――
――ボクは周囲の視線を気にしながら、人気のない路地裏に入っていた。
「――ふぅん。今まで遊んだことがなくて、今夜だけぱーっと遊びたい、ってことね」
「は、はい……」
彼女は指先を唇に当てながら、ボクの顔をじっと見つめている。
その唇が、指先に押されてむにゅりと歪んでいるのを見ていると、その水々しい唇に触れたいと思ってしまう。
(だ、駄目だ……ボクは世界を救う勇者の末裔なんだ。なんでこんなことで動じているんだ)
「そういうことなら、大人の遊び場に連れて行ってあげる」
「え……!」
「ちょうど私もそこに行くところだったの。私の付き人ってことなら未成年でも追い出されないわ」
ボクは素直に安堵する。
今まで三時間近く、遊び場に行くのを断られ続けていたのだ。
初めて行く大人の遊び場に心が躍る。
「じゃあ、こっちにおいでなさい」
そう言って、彼女は路地の奥へと入っていった。
人気のない暗がりを進んでゆく……表の歓楽街からは想像も出来ない暗闇は、彼女のヒールが石畳を突く音ばかりが響く。
「私の名前はユキナ。よろしくね」
「よ、よろしくお願いします……」
彼女、ユキナの後ろを歩いていきながら頷く。
高いヒールを履きながらも器用に歩くユキナは、腰を大きくグラインドしながら歩いていた。
ボクよりも背が高いこともあって、腰が揺れるたびにネグリジェの裾から臀部の底が見え隠れする。
肉厚で丸みがかったお尻は形よく、また無防備で、その中央に走る紺色のショーツはTバックとなっており、きわどいところがもどかしくも覗けない。
「着いたわよ」
「え……あ!」
ユキナのお尻に見とれて、ユキナに声をかけられていたのに気づかなかった。
ボクは慌てて、ユキナのお尻から周囲へと視線を向ける。
路地の奥にひっそりとたたずむ、木製の家屋。
一見はよくある一軒家に過ぎない。
ユキナは断りもなく扉を開ける。
(いいのかな……)
一軒家の中は、これまた一般的な作り。
机や椅子、棚といった家具に、壁際に設置された暖炉。
ユキナはその暖炉まで歩くと、躊躇いもせず中に入った。
ボクもそれに続く……と、そこには暗闇に隠れた階段があった。
やっと人が一人通れる程度の狭い道。
それは時には下り、時には登り、時にはカーブする。
なぜ一軒家の暖炉の奥にこんな道があるのだろうか。
それを考えている矢先、目が闇に慣れてきて……。
「――――!」
ちょうど上り階段だったからだろう。
先を優雅な足取りで歩いてゆくユキナの長い脚が、香水の匂いがするほど近くにあった。
パンストに包まれ光沢を放つ脚は、紫のネグリジェと対照的に明るく、筋肉質な太めの脚を、ボクの目にこれでもかと見せつける。
また、ネグリジェの裾に隠れていた股間も、両脚が交互に組み合わされつつ前進するたびに見え隠れしていた。
紫紺のTバックの局部は、微かに陰りとなった筋が見える。
見ているだけで、頭がぼうっとしてくる……ああ、なんていやらしい眺めなんだろう……。
「よし、あとはここを開けるだけよ」
「はい……」
ユキナの言葉に対し、ボクは話半分に答える。
しかし、その後にユキナの行動にボクの意識は覚醒する。
「よいしょっと。ちょっとごめんね」
「え? ふぁああっ!」
なんと、上を見上げていたボクの顔に、その大きなお尻を乗っけてきたのだ。
鼻先にショーツの筋が当たる。
頬をむっちりとしたお尻が包み、全体重で押しつぶしてくる。
今まで冒険してきたボクに、その重さは大したものではなかったけれど……その大きなヒップに圧倒されて、ボクは動悸を激しくするしかなかった。
「真上に扉があって、錠の番号をあわせないと開けられないの。複雑な錠だから時間かかるし、通路も狭いから、少しだけ我慢してね、坊や」
「ふぁ、ふぁい……!」
もはやボクの理性はどこかへ消え去っていた。
彼女のモッチリしたお尻に指先を食い込ませ、持ち上げているふりをしながら揉みしだく。
股間に食い込んだ鼻で激しく息を吸い、匂いを鼻孔に染みこませる。
(ああ……凄い、不思議な匂い……酸っぱくて、甘くて、それでいてツンとして……ああ、頭が真っ白になっちゃう……!)
やがて……一分ほどして。
「開いた。ごめんなさいね」
そう言ってボクから身を離すユキナ。
もう、体の奥からこみ上げる熱い何かに、呆然とユキナを見上げるしかないボクに――
――彼女はフン、と嘲るような笑いを一瞬だけ見せて、扉を開けた。
そこは、今までの暗がりからは想像がつかないほどに豪奢な空間だった。
高い天井のシャンデリアは煌めき、敷かれた絨毯の毛は厚く、立ち並ぶ机には豪華な食事が盛られ、それを囲む人々は目鼻を隠す仮面をかぶっている。
城の広間を思わせる空間は、人が千人近く入れそうなほどに広く、その中央には何に使うのか知れない円形のステージがあった。
「これはこれはユキナ様。いつもの道をお使いにならなかったのですね」
「ええ。今日は少しイレギュラーがあってね」
そんな広間のただ中からはい出てきたボクとユキナに声をかける、黒ずくめの男。
彼は二つの仮面をユキナに差し出した。
「素顔はまずいですよ。これを」
「ありがとう。でも、二枚はいらないわ」
「といいますと? お連れの方ではないので?」
ユキナは微笑を浮かべながら仮面をかける。
しかしボクは素顔のままだ……大人の遊びとは、この仮面をかぶらないといけないのだろうか?
「いいのよ。彼は挑戦者だから」
「ああ、なるほど」
そう言うと、言葉少なに去ってゆく黒ずくめの男。
「あの……挑戦者って、どういう……」
「大人の遊びの参加者、ってことよ。参加したいのでしょう?」
「う、うん……でも、一体どういう遊びで……」
「こっちにおいでなさい」
ユキナに言われるまま、円形ステージまでついて行く。
そこにも仮面をかぶった人たちがたくさんいたものの、中には仮面をかぶっていない人たちもいた。
しかし、その人たちは余さず子供……ボクと同い年ぐらいの少年だった。
戸惑うボクにユキナは笑いかけると、ステージを指差した。
「そろそろ説明しないとね。ここはバトルファック闘技場……坊やが言うところの、大人の遊び場ね」
「バトル、ファック?」
「そう。ここで30分の勝負をして、一勝上げるごとに相手から10万ゴールドを奪える。逆に、負ければ10万ゴールドを失う。一本勝負ではないから、何度も勝って一度も負けなければ、一試合で百万ゴールドを得ることも難しくないわ」
「10万ゴールド! ぼ、ボク、今12万ゴールドしかないんだけど……」
「一度までなら負けられるけど、二度負ければ破産……その場合、この会場にいる人たちによってオークションが開かれるの――坊やを巡って、ね」
「そんな……人身売買、ってこと……!」
そんなこと、教会が許すはずがない。
でも――こんな隠れた場所にまで、教会の目が行き届くことはなさそうだ。
「これが、坊やの望んだ大人の遊びよ――大丈夫、坊やが負けなければお金を増やせるし、何より試合はと〜っても楽しいんだから」
「その、バトルファックって……」
「イカせあい……つまり、セックスの勝負のこと」
「せ、セックス……!」
セックス――仲間達の猥談で聞いたことはあった。
いやらしいものだということは知っていたけれど、子供であるボクには縁のないものだと思っていた。
そのセックスを、今からすることになるだなんて……!
「ほら、もう試合まで時間がないわ。準備をして」
「準備って……わぁ!」
不意に後ろに気配。
見ると、メイド服を着た女性が、真後ろに立っていた。
しかも、ただのメイド服ではない……レース生地の上着はほとんど中身が透けていて、ひらひらのスカートも短く、かえって履いていないよりいやらしい。
セミロングの黒髪はストレートで、大きな瞳は猫の目を思わせる。
そんな彼女は、頬を赤く染めながら、しかし慣れた手つきでボクの服を脱がしにかかった。
「その子も、違う集まりでのバトルファック闘技場で負けたのよ。今は数十万ゴールドという借金を返すために、時給1ゴールドで働かされているの」
「1ゴールド? そんなんじゃいつまでたっても返せないじゃないか!」
「言ったでしょう。負ければオークションにかけられて、高値をつけた人に借金を肩替わりしてもらう。その代償として、買ってもらった人が許すまで奉仕を続けなければならないのよ」
そんなユキナの言葉を聞き終わる頃には、ボクはすでに裸にされていた。
ユキナの匂いを嗅いだ時に膨らんでいた股間を隠しながら周囲を見ると――
「――――!」
なんと、会場中の人々が、ボクの体をなめ回すように見ていたのだ。
今になって気づいたけれど、会場にいる人々のほとんどが女性だった。
黒ずくめの男達は主催者側の人間らしくこちらに目もくれないが、煌びやかなドレスで着飾った女性達は明らかにゲストの様相。
彼女たちは、ボクが負けた時にいくらで競り落とそうかを、そしてその後どう扱おうかを考えているのだ。
「まあせいぜい頑張りなさい。大人の遊びの始まりよ」
ユキナはそう言って微笑を浮かべると、優雅な足取りで人混みの中へと去っていった。
「せ、セックス勝負って……ボク、そんなことわかんないよぉ……」
突然訪れた窮地にボクが呆然としていると、ボクの服を脱がしてくれたメイドの女性が声をかけてきた。
「大丈夫。誘惑にかられないで、冷静に女性の弱点を責めればいいのよ」
「じょ、女性の弱点って……」
言いながらも、彼女の肢体に視線をさまよわせてしまう。
よく見れば彼女は未成年らしく、ボクと同じく肌がきめ細かくて童顔、背も低い。
しかし、その童顔には不釣り合いなほどに胸が膨らんでおり、また腰のくびれもいやらしく、低い背と相まってとても扇情的な体つきだった。
そんな彼女が、ボクの手を取ると、自らの胸元に当てた。
「駄目でしょ、この程度で動揺したら」
「ご……ごめんなさい……」
(でも、仕方ないよ……そんなエッチな服装してたら……)
そんな言い訳がましいボクの思考を無視して、彼女は女性の弱点についてボクに教え始めた。
胸は乳頭を中心にして性感帯が広がっていること、背中や首筋なども性感帯であるということ、そして……。
「股間は……」そう言って、彼女はボクの手を自らの秘部にあてがう。「ここ……ここの奥側に膣と呼ばれる穴があるの」
ボクはそれを冷静に聞いてなどいられない。
ただ、彼女の柔らかい秘部を、ショーツ越しになぞっていた。
そうしているうちに、ぼく自身の股間も膨らんできてしまう。
「ほんっとーに女性に免疫がないのね……」
そう言って、彼女は呆れたように嘆息する。
赤面して黙っているだけのボクに、膣の作りを淡々と説明してくれた。
「あの……なんで、こんなことを?」
説明が終わったところで聞いてみる。
彼女は頬を赤らめながら、伏し目がちに答えた。
「か、勘違いしないでよね。私はそういうことをされて喜ぶような痴女じゃないんだから。ただ、私みたいな人を増やしたくないの。それだけよ」
「……ありがとう。キミ、名前はなんていうの?」
「イズミ・サワタリ。キミは?」
「ボク? 勇者だよ」
「勇者ぁ?」
眉をひそめて聞き返してくるイズミの声が、歓声にかき消される。
どうやら試合がすぐに始まるらしい。
ボクはイズミを見て頷いてみせる。
イズミはそんなボクに頷き返すと、背中を叩いて勇気づけてくれた。
(そうだ――ボクは負ける訳にはいかない)
(ボクは明日、魔王を倒しに行かなきゃいけないんだ……!)
ステージに上がると、そこにはすでに仮面を外した女性が立っていた。
一見野暮ったいメガネをかけた黒髪の女性。
髪も短めで化粧も薄いのだが、どこか素朴さを感じさせる顔とは対照的に、身体にメリハリがあった。
自らの頭部とほぼ同じサイズの乳房が二つ、形よく突き出ており、それを包む服は体のラインを露わにするデザイン。
一部は軽鎧らしい固そうな生地で出来ているが、体の中心線に中身の透けるタイツ地が使われており、ヘソや胸の谷間が丸見えである。
また、股間から下は素肌が晒されており、臀部はほぼ丸見えで、ブーツまで伸びる太ももはユキナよりも筋肉質で、よっぽどフェティッシュだ。
「よろしく、坊や。私はカトレア……普段は剣士をやっているの。よろしくね」
そう言って、彼女……カトレアは手を差し出してくる。
175センチ近くある身長は、ボクを見下せるほどの高さで、ボクは圧倒されながらその手を握る。
確かに、その体は剣士として完成されており、握った手にも力強さを感じさせる。
しかし、大きな胸や腰のラインは女性らしさを際だたせており、目のやり場に困ってしまう。
(ああ……良い匂いがする……)
カトレアがニッコリ笑いかけてくるのを見ながら、ボクはそんなことを考えてしまう――駄目だ。
イズミが言っていたじゃないか。
誘惑に屈せず冷静にならなければ、負ける……!
「用意……始め!」
黒ずくめのレフェリーが言うや否や、会場がざわつき始める。
ボクはカトレアから距離をとりながら、相手の動きを伺う。
カトレアはボクよりも大きく、組み合ったとしても筋力の差で押さえ込まれるかもしれない。
しかし、そんなボクを見てバカにしたように笑うカトレア。
「坊や、逃げていたら罰金が発生するわよ。それに、こういう事は男性がリードを取るものなんだから」
「う、うるさい!」しかし、カトレアの言う通りだった。何にせよ相手に先手を取られてはいけない状況で、こちらから攻めない訳にはいかない「――やあっ!」
相手の呼吸の隙をついて間合いを詰める。
カトレアはそんなボクの動きに単純に驚いているらしい、その隙に彼女の懐に入り込むと、大きな乳房に指を食い込ませる。
「――ふあっ!」
ボクが両乳房を揉みしだいただけで、カトレアは甘い声をもらした。
その声にボクの理性は揺らぎかけたけれど、彼女がダメージを受けているという自信に気をよくして責め続ける。
母親以外の女性の乳房にこうして触れたことはなかったけれど、激しく揉みしだくだけでこんなにも感じるとは思っていなかった。
この戦い、意外とボクが圧勝できるかもしれない。
不器用ながらも荒々しく、イズミに教えられたとおり乳房を外側から、だんだん乳首に近づくように揉み続け、時折乳首を指先で弾く。
タイツ地の服は、ボクの指の動きをダイレクトにカトレアへと伝え、逆にボクの指にもカトレアの肉感的な乳房の感覚が伝わってくる。
「ひ――ぁああああああああああああああああん!」
一分ほどしてだろうか。
彼女は身を大きく振るわせた。
「男サイド、一ポイント」
レフェリーの声。
どうやらこれで、ボクに10万ゴールドが入ったらしい。
「私、とても感じやすい体なの」 頬を赤らめながら、カトレアはボクにしか聞こえない程度の声で言った。「だから、この試合でも負けてばかり……なんとか破産は免れているけれど、これで破産が決まっちゃった……」
「え……!」
こんな闘技場に出ているからには、種銭があるものと思っていた。
「子供を養うため。仕方なかったのよ」彼女は自嘲気味に説明してくれた。「どうせ負けるんだもの。坊や、私をもっとイカせていいわよ。坊やの好きに……」
「――そんなの、駄目だ」
「え?」
「ボクだって、10万ゴールドしか余裕はないけれど……そんな、他人を不幸にしてまでお金が欲しい訳じゃない。怪しまれないよう、お互いにイカせあいましょう。最終的に引き分けになれば問題ないはずです」
――そうだ。
大人の遊びには興味があったけれど、お金欲しさに参加している訳ではないのだ。
それに、彼女には子供がいると言う……そんな女性を蹴落とすなんてことは出来ない。
「いいの?」
カトレアは火照った頬を歓喜に赤らめながらボクを見つめてきた。
ボクはそんな魅力的な顔に唾を飲みながらも首肯する。
――途端、カトレアはボクの唇に舌を突き入れてきた。
ボクの顔を抱え込み、むさぼるように口内へ舌を進入させてくるカトレアの強引さに、ボクの頭は一瞬で真っ白になってしまう。
「ん――んぅ、んちゅっ、んちゅるぅ――っ!」
「ぷぁ……いいのよ、私に体重を委ねて……これはお礼なんだから……んちゅっ――!」
口内を激しくかき回してくる肉触手――その舌は確かな熱と、とめどない粘液をたたえながら、ボクの歯茎から舌の根、喉の奥までをも進入してくる。
そして、息苦しいボクの鼻孔に入ってくるのは、彼女の汗の香り――かすかに甘いそれは、経験のないボクの股間を張り詰めさせるのに、充分すぎる刺激だった。
「ん――! んごい、んごいよぉ……んちゅるっ!」
「んぁ……じゃあ、最初は手でいじるわね」
そう言って、彼女の指がボクの肉棒の先端に振れた途端――
「――ああああああああああああああああああああああ!」
意識が真っ白になり――張り詰めた肉棒の先から何かが溢れてゆく。
(――これがイクっていう感覚なの――!)
ボクは、あまりの気持ちよさに、果てた後も動けずにうなだれる。
そんなボクに、カトレアは優しく語りかけてきた。
「フフ……こういうの、本当に初めてだったのね」
「う、うん……」
目を伏しながら答えるボクに、カトレアはクスリと笑ってから――白濁液にまみれ、強度を失ったボクのモノに、改めて指を絡めた。
「え――!」ボクは慌てて、体を抱えてくれているカトレアの顔を見上げる。「つ、次はボクの番じゃ……」
「疲れているのでしょう? 最後に私を同じだけイカせればいいんだから、今は私が責めてあげる」
「でも、それじゃあ……」
「何もしないでいては会場中の皆に怪しまれるわ。大丈夫、貴方がイッた回数は数えておいてあげるから」
そんなカトレアの優しい言葉に、ボクは首肯して――次第に股間からせり上がってくる快感に身を任せる。
ぬちゃぬちゃに湿ったボクの股間を、彼女の長い指先がこねくってゆくうちに、ボクの肉棒はすぐさま元の強度を取り戻す。
そんなボクの股間へと、カトレアは顔をゆっくりと近づけてゆき――。
「ふぁあああああああああああああああああああ!」
しゃぶり込まれる。
そう、それはしゃぶられる、ではない。しゃぶり込まれると呼ぶべきものだった。
決して強くなく、しかし優しくもない、ただ舌は際限なくランダムに蠢き、亀頭をあらゆる角度から責め立て、時折中身を搾り取るがごとく吸引されるのだ。
「んっ、んちゅっ……ふふ、私のこれを知ったら、皆病みつきになっちゃうのよ?」
カトレアはボクの顔を見下ろしながら挑発的に言うと、再びボクの肉棒に舌を這わせ始めた。
カリの裏を舌先がつついたかと思えば、亀頭全体に舌がねぶりつき、カリを舌の微かな振動で刺激しつつ、指で根本をしごかれる。
まるで、中身を全て吸い出さんとしているかのごとく、熟練した舌の動き。
そんな刺激を受けて、まだ童貞の少年が我慢できようはずがない。
「だ、だめ、駄目ぇ! いっちゃう、搾り取られ――ふぁあああああああああああああああ!」
腰が痙攣したと同時に果てる。
しかも、今回は前回とは訳が違う。
根本から肉棒をしごかれており、まるでポンプのごとく大量に引き出される精液を、強力なバキュームによって吸い出し、なおかつ舌を蠢かせることで果てる時間を延長させる。
ボクは先ほどとは比べものにならないぐらいの快楽に頭を真っ白にして――やがて、体の感覚が戻ってくる。
どんな魔物と戦った時も果てなかった体力が、今にも果てようとしていた。
「ご、ごめんなさい!」カトレアは涙目になってボクを見下ろしていた。「激しくしすぎちゃった……このままじゃ試合が終わっちゃうわ」
「ああ――」
そうだ、それは困る。
ボクは勇者であり、明日には魔王を倒しにいかなければならないんだ。
こんな地下の闘技場で朽ちる訳にはいかない――彼女を果てさせて、ドローに持ち込まなければならないんだ。
ボクは残った力を使って呪文を唱える。
回復の呪文――対象、自らの下半身。
途端、ボクの下半身に聖なる光が集まり出し――やがて、ボクの体力は回復する。
「凄い――」カトレアは絶句していた。「――貴方、魔法が使えるの?」
「ええ、少しだけ……でも、今ので魔法力を使い切ってしまいました」
「素敵……!」
そう言って、カトレアはボクの下半身を抱え込むと――その巨大な胸で、ボクの肉棒を挟み込んだ。
「な、なにを……?」
「貴方の番だということはわかってる。ただ、これはお礼なの……わざわざ魔法を使ってまで回復してくれた貴方へのお礼。これが終わったら、私をイカせてくれればいいわ」
そう言いながら、ボクの屹立したモノを柔らかな乳房でもって、交互に刺激を与えてくるカトレア。
その未知の感覚に、ボクは体に力を入れることを忘れ、彼女に全体重を預けてしまう。
カリの縁を押しつぶすように蠢く柔らかな乳房。
時折、裏筋に固いしこり――乳首を当てたり、また鈴口に舌先をねじ込むことで、ボクの性感を更に高めてゆく――。
(あれ……意識が……)
気づけば意識が朦朧としていた。
立て続けに脳を襲う快楽に、ボクの思考は体の制御を失おうとしていたのだ。
しかし、それが危険なことだと感じることが出来ないほどに、ボクの思考は緩みきっていた。
「今度は腋で……」
「大丈夫、まだ時間はあるわ……」
「次は太ももで……」
「いいのよ、これはお礼なの……」
「髪の毛も試してみる?」
「安心して、次こそは……」
様々な言葉が思考の表面を滑り落ちてゆく。
その全てが中へと浸透しない――しかし、ボクはそれを気にもとめないほど思考を弱らせていた。
ただ、断続的に股間から送られてくる快感に身を委ねて――。
「――試合終了! 一対十九、十八ポイントの差でカトレアの勝利!」
レフェリーの声が聞こえた途端――腰に激しい痛みが走り、嫌々ながらも意識が覚醒する。
「いたっ……ううっ……」
痛くても、そこをさすることすらできない……それだけ体力を消耗していた。
見上げると、カトレアが立ち上がりながらボクを見下ろしている。
その瞳には先ほどまでの優しさはなく、冷徹ながらも愉快さを孕んだ色合いをたたえていた。
「ご苦労様。これで子供を良い学校に入れてあげることが出来るわ」
「え……なに、が……」
身動きが自由に取れないボクの問いに、彼女は嘲笑で答えた。
「つまり、貴方は完膚無きまでに負けたのよ。女性の誘惑に屈して、ね」
それきり、彼女は去って行ってしまう。
事態をゆっくりと認識してゆく最中も、状況は猛スピードで動き出していた。
「それでは競売にかかります。一八○万ゴールドからスタートです!」
そのレフェリーの声が聞こえた途端、会場中から轟音が響き始めた。
それが、参加者の買値を叫ぶ声だと理解したのは、数分ほど経ち、二人の女性だけが競売に参加するようになってからだ。
「一億一〇九八万ゴールド!」
「一億一○九九万ゴールド!」
その声の一人には聞き覚えがあった――ボクをここまで連れてきた妖女、ユキナの声だ。
勇者であるボクが、一年かけて貯めたお金、十二万ゴールド
その千倍近くの金額でもって、ボク自身が競売にかけられているだなんて、想像もつかない。
やがて――。
「それでは、ユキナ様の一億二〇八〇万ゴールドでラストプライスとさせていただきます」
どうやらボクはあのユキナに買われたらしい。
夢見心地のまま、レフェリーによって抱えられ、ステージの外へと運ばれる。
途中、ボクに試合のアドバイスをしてくれたメイドのイズミが見えた。
彼女は、力なくうなだれているボクを見て――
――まるで、汚らしいものを見るかのように眉をひそめた。
◆
一年後――。
「ふふ……今日はたっぷり楽しませてね」
薄暗い寝室のドアを閉めた途端、奥のベッドから聞こえてくる声。
そこに、今日のボクを買った女性が座っているのだ。
「はい、お客様」
ボクはそう言って服を脱ぐ。
目の前にいる女性は、いつものお客様より歳は若く見える。二十代後半ぐらいだろうか。
玉の輿に乗ったのであろう、豪華な宝石やシルクのドレスに身を包みながら、ボクの裸体をなめ回すように見つめてきていた。
ありあまるお金を使って、高級男娼のボクを一晩買った、という訳だ。
「ああ、まさに理想な体ね!」女性はボクの肢体に指先を這わせた。ボクは唇を噛みしめながらその妖しい動きに耐える。「筋肉質でありながら、体毛が薄くて男臭さがない。体臭もミルクの香りで、何より顔がかわいらしいわ。感度はどうなのかしら?」
そう言って、彼女はボクの乳首に指先で触れた。
途端――。
「ふぁああああああああああっ!」
ボクは絶頂寸前まで昇り詰めてしまう。
そんなボクを見て目を血走らせる女性。
「いいわぁ! 魔法で改造しているっていうのは伊達じゃないようね。オチンチンのサイズも、発育阻害魔法で小さいまま。全身が性感帯で、すぐに果てる早漏体質。そのくせ、回復魔法を使えるから一晩中イカせても意識を失わない――男児趣味の私にとって、理想的な体だわ! しかも、そんな男娼が、実は世界を救おうとしていた勇者だなんて!」
そう、ボクが勇者であることは、ユキナに調教されてゆく際に発覚してしまっていた。
しかし、ユキナはそれを逆に利用したのだ――。
――世界を救う力を持つ勇者の『子種』としての価値を。
「あんなデブで変態の旦那の子供なんて産むのは御免よ! キミの子種で赤ちゃんを孕めば、その子は勇者としての力を受け継いでいる――最高の遺伝子じゃない! さあ、今夜はその小さなオチンチンに入った精液を、出なくなるまで私にそそぐのよ……?」
女性はそう言いながら、ボクの唇に舌を突き入れた。
それだけで全身を震わせるボク。
敏感なボクを見て興奮したのか、彼女はボクを押し倒した。
レイプ同様にボクの体中――乳首、首筋、耳の穴、お尻の穴、指先、腋――あらゆる箇所をネトネトになるまで舐められ、そのたびに我慢しきれず果ててしまう。
飛び散る精液を彼女は余さず手ですくうと、それを鼻息荒くすすりしゃぶる。
「ああ、もう我慢できないわ! このプリプリの精液で子宮を満たしなさい!」
もはやボクに人権はない――彼女はボクに覆い被さり、屹立したボクのものを膣の中へ入れ込む。
「ふぁああああああああああああああああああ!」
ボクは涙すら浮かべながら、膣の刺激にすぐさま果てる。
「ほら、もっとイキ狂いなさいな! 短小オチンポの卑しい豚男娼! 勇者なのにオチンチンすぐドピュドピュしちゃう豚男娼!」
「いやああ! やすませ――ひぁあああああああああああああああああ!」
彼女の腰の動きはとどまることを知らない。
ボクは彼女の膣の中に、リットル級の精液を注ぎ込んだ――。
◆
「予約分はあと一人、当日分が二人……これは朝までかかりそうね。肌に悪いのに、やんなっちゃうわ」
馬車の荷台で休むボクの隣で、書類をめくるユキナ。
「あと三人なんて……無理だよ……」
「あの方は過度のサドって話だものね。今度からは最後になるよう調整するわ」
ボクの弱音をユキナはさらりと流した。
そう、時給1ゴールドでボクを雇うユキナにとって、ボクの言葉など同情する価値すらないのだ。
「だって、もう立たないし、腰が……うううっ……!」
あの後、数え切れないほどセックスを強要された。
魔法力が切れるまで回復魔法を使っても、その攻めがゆるむことはなく、時間が切れた時には腰を痛めるまでに疲弊していた。
「そのための魔法でしょ?」
そう言って、ユキナは胸元から小さな瓶を取り出した。
その中では褐色の液体がゆらめいている。
エーテル――魔法力を回復させる稀少な薬だ。
一口分が一万ゴールドもするため、冒険中も手が伸ばせなかった薬。
それを、魔物を倒したこともないユキナが、まるでサイコロを弄ぶかのように指先で揺らしている。
勇者として冒険していては知ることすらなかった裏社会。
ボクはユキナの囲う男娼として、その裏社会にどっぷりと浸かりきっていた。
「前も言ったけれど」ボクは苦痛に息を荒げながら言った。「エーテルは魔法力を回復するかわりに内臓に負担をかける。これを飲み続けていたら、ボクの体は滅茶苦茶に……」
「それがどうしたっていうの?」
「――ああああっ!」
ユキナはボクの言葉を遮ると、横になっているボクの頭を踏みつけた。
こめかみをヒールの先でグリグリと潰されてゆく。
「犬の分際で言うようになったわね。犬の体がどうなろうと、飼い主がそれを望む限り酷使するのは当然のことでしょう? 普段の健康管理はしてあげてるんだから、仕事中ぐらいは気張りなさいよ」
「や、やめて……うぐうううううううっ!」
「……やだ」
ユキナは軽く嘲笑してからヒールを離す。
そして、そのヒールの先を――ボクの股間へと押しつけた。
「――ふぁあああああああああああああ!」
途端、ボクの全身を電流が駆けめぐる。
「ホント、救いようのない犬だこと!」ユキナは言いながらボクの股間を踏みにじる。「腰が抜けるまでイカされても、踏まれるだけでビンビンに戻っちゃうなんて……まるでケダモノね」
「ご、ごめんなさい……許して……!」
「許して? ホントは許してほしくなんてないくせに。もっとこうしていじめられたいんでしょう? だったら安心しなさい。今夜はずっと、その粗末なオチンチンを虐めてもらえるんだから」
――ユキナの言う通りだった。
ボクはここまで疲弊しておきながら、ユキナのヒールで踏みつけられるだけで、性懲りもなく股間を勃起させていたのだ。
そして、これから会うことになる三人の客によって虐められることを、嫌がりながらも望んでいるのだ。
本当に――救いようがない。
「――停めて!」
不意にユキナが叫ぶ。
停まる馬車。
ユキナが荷台の窓から外を見ている。
ボクはその視線を追うと――心細い街灯に照らされた路地裏の手前を、少年が挙動不審な様子で歩いていた。
見たところ、良い生地のコートや革製のブーツを身につけており、お金持ちの子供であることが知れた。
「いるのよねぇ」ユキナは邪悪に笑う。「お金持ちの子供が、大人の社会に興味を持って、親の金をくすねてここらを歩き回るの。もちろん、教会の目があってどこも入れてくれない。でも、それでも興味がある――大人の淫らな世界に」
「――――」
――つまり。
少年は、一年前のボク自身ということか。
「ちょうど今日は男児趣味の婦人の集まりがあったわね――ちょうどいいわ。ねえ、この犬を客先まで運んでおいて。終了時間までには戻ってくるから」
ユキナは馬車の運転手にそう言い残すと、肩を覆っていたカーディガンを脱いでネグリジェ姿となり、馬車を降りた。
だんだんと進んでゆく馬車。
遠くなってゆく少年に、ユキナが声を掛けていた。
少年は頬を赤らめてユキナを見上げている。
彼も、ユキナの毒牙にかかってしまったのだ。
ボクはその少年の無垢な瞳を見ながら、床に転がっていたエーテルの瓶の蓋を開けた――。
◆
「ん――」
目を覚ます。そこはユキナの屋敷の地下牢であり、ボクの寝室だった。
どうやら昨日のお勤めが終わってから気を失っていたらしい。
ベッドが二つと、薄汚れた水洗便器しかない地下牢の入り口には、フレークと牛乳が入った犬用の餌入れが置いてあった。
それがボクの朝ご飯なのだ。
ボクはベッドから降りると、四つんばいになって餌入れへと舌を伸ばし――まんま犬のようにそれへとがっつく。
食器なんてものはない。
ボクはユキナにとっての犬なのだ。
そして、ボク自身もこの犬じみた生活に慣れきってしまっていた。
ただ無心にフレークを租借し、ミルクを舐め上げ、餌入れの縁まで舌を這わせる。
それを食べ終わった時に、ちょうど地下牢への扉が開く音がした。
「ついてこないで!」途端、聞き慣れた女性の声が地下牢の石畳に響く。「お勤めは終わったのよ! これから休むんだから!」
「だから、最後に俺のをしゃぶれって言ってんだよ」
その女性と言い争っているのは、ユキナの甥の男だった。
顔は醜く、体はでっぷりと太り、汗っかきで体臭のきついそいつは、しかしユキナという富豪の甥という肩書きを持っている。
その肩書きは、この屋敷の中では絶対的なものだった。
「お願い、休ませてよ……一晩中、ご主人様の客人に虐められて、眠たくて仕方ないの……」
女性の声は先ほどまでの強気とは打って変わって、懇願するような調子になっていた。
男はそこで醜く笑い声を上げる。
「だから、一発抜いたら寝かせてやるよ……ほら」
「……はい……」
ボクは痛む体を無理して起こし、扉の柵から外を見る。
地下牢に続く階段には、ユキナの甥が座っており――メイド姿の女性が、その甥の股間に顔を埋めていた。
一年前、ボクにバトルファックのアドバイスをくれたものの、ボクがその好意を無為にしてしまった少女、イズミ・サワタリだ。
彼女はユキナの夫によって買われた奴隷だった。
だからあの会場にいた、という訳だ。
そして今は、ボクと同じ地下牢で住む同棲相手でもある。
「ちゅっ、んちゅるぅ、んむぅ、ちゅるるるるぅ……!」
イズミは男の肉棒を必死でフェラチオしていた。
どうやら体臭がひどいらしく、眉を寄せながら、早く終わらせたい一心で激しく肉棒を吸い上げる。
しかし男はなかなか果てない。
イズミの頭部をがっちりと掴んで、気色悪いアヘ顔を浮かべながら涎を垂らしている。
「いいよぉ、イズミ。メイドの中でも一番の美人のお前が、父上だけのものだなんてもったいない。今度からは隠れてボクの奉仕もしてもらうからね。逃げたらユキナおばさんに言いつけるからね」
「――んふぅ、ちゅぼっ、ぢゅぼっ、ぢゅぼぼぼぼっ!」
イズミの顔から、ユキナの甥の妾になることを嫌がっていることがうかがえる。
しかし、イズミはフェラチオの動きを激しくするばかり――なぜなら、逆らえば死ぬよりも辛い拷問が待っていること、そしてこいつをイカせないと臭い体臭から離れることすら出来ないということを、諦念の域で悟っているからに他ならない。
やがて――。
「うおおお! イク! イクよ! 全部飲んで――ぅおぉおおおおおおおおおお!」
ユキナの甥は、イズミの頭を両手でがっちりと抱え込んでから腰を振る。
はき出された臭い精液――しかし、頭を抱え込まれたイズミは逃げることすら出来ない。
大量の精液を、涙すら浮かべながらコクコクと飲み干してゆくイズミ。
「ふぅ……いい子だったね。今日の夜の仕事前に、ボクの寝室に来ること。いいね?」
そう言って地下牢を出てゆくユキナの甥。
ボクはその背中に殺意を覚えながら、しかし何も出来なかった。
イズミはしばらく床で横になっていたものの、落ち着いたのか起き上がり、ボクのいる部屋の扉を開けた。
ボクとイズミはこの部屋にいなければ、この屋敷の人達によってキツイお仕置きが待っているからだ。
もはやユキナの家系の犬となったボクとイズミに、まともな人権などありはしないのである。
「お、おかえり」
ボクの挨拶に、イズミは何も答えずに向かいのベッドに座ると――突然、ボクの胸元を脚で蹴ってくる。
言葉を失うボクを、イズミは血走った目で睨みつけてきた。
「なんで助けなかったのよ……勇者なんでしょう? 魔法でどうにかなったんじゃないの?」
「魔法力が残ってないんだよ……それに、あそこでユキナの甥に手を出したら、二人ともただじゃ済まないよ」
「それが永遠の愛を誓った相手に言う言葉な訳?」
イズミは、ボクの胸を踏む足に更に力をかける。
狭い地下牢、ボクは冷たい石畳を背に、イズミの素足でもって肺を圧迫されてゆく。
――そう。ボクとイズミはこの狭い地下牢で過ごすうちに、肉欲とは違う恋愛感情を抱くようになった。
それは吊り橋効果に近い、異常な状況だからこそ産まれる連帯感に近いものではあったけれど、毎晩傷ついて地下牢で休む二人にとって、お互いがオアシスのような存在となっていたのだ。
しかし、時が経つにつれ、彼女はボクに対し暴力を振るうようになっていった。
「ご、ごめん……だから、これ以上は……」
「ふざけんじゃないわよ」イズミは顔を伏しながらつぶやく。それはボクに対してではなく、自分自身、もっと言えば世界に対しての文句だった。「なんで私がこんな目にあわなきゃいけないのよ……普通の生活したいだけだったのに、不甲斐ない親のせいで家追い出されて、妹助けるために単身でお金稼ごうとしたら、騙されてこんな所でコキ使われて、息の臭い男どものモノしゃぶらされて、やっと休めると思えばブタみたいな男にまた迫られて……毎日食べられるものと言えばミルクとフレーク。体臭がつくからってお肉も食べられない。へんてこな魔法で胸とお尻ばかり大きくなって、こんなんじゃ屋敷を出たところで娼婦ぐらいにしかなれやしないじゃない。その上、はじめて好きになった男がこんなヘタレだなんて……!」
苛立ちが沸騰したのだろう。
イズミはゲシゲシとボクの胸や腹部を力一杯踏みつけてくる。
「やめて! いああっ、ふぐううっ!」
ボクは身をかがめて耐えるけれど、もともと疲れ切った体に防御する力など残っちゃいない。
イズミの理不尽な怒りを受け止めるボク……しかし、ボクを踏みつけてくるイズミの脚を包むストッキングに、自然と目がいってしまう。
フリル地でモノトーンのメイド服にあう、縁にリボンの通った白いストッキング。
肉付きのいい太ももは、そのストッキングに締め付けられて、なんともフェティッシュな様相を呈していた。
また、そのストッキングの奥――スカートの奥の暗闇から覗く、ストッキングと同じ生地の白いショーツ。
ぷっくりと膨らんだ恥丘と、その中央をうっすらと走る筋に、ボクは踏みつけられながらも見入ってしまう。
「――なに覗いてるのよ!」
ボクの視線に気づいて、更に怒鳴り声を上げるイズミ。
「ご、ごめんなさい……!」
そう言って謝るけれど、イズミは許してくれない。
イズミはうずくまっているボクの前に立つと――
「許す訳ないでしょ、この犬!」
――昨晩だけで百度以上酷使されたボクのモノへと、ズボン越しに足先をあてがった。
「ふぁああああああああああああああああああああああああああ!」
途端、ボクは盛大に果てる。
商売相手ではなく、愛している女性に踏まれたことから、ボクの射精もいつもより長引いていた。
「この役立たず! 犬勇者!」しかし、イズミはボクの股間を踏みつける動きを止めようとはしない。精液にまみれてヌチャヌチャとネトつくズボンの中、ニュルニュルと逃げるボクのオチンチンをイズミの足先は逃がさない。「なにが愛してるよ! 本当はこうされたいだけなんでしょ! メイド服着た女の子に、ストッキング履いた女の子に、オチンチン踏み踏みされてドピュドピュ出したいだけなんでしょ!」
「ち、ちが、ひぐうううううううううううううう!」
ストッキングをはいた足先が、カリをがっちりと捕まえた。
腰を引きながら果てるボク。
しかしイズミの足は更に奥へと踏み込まれてゆく。
「大体ね、矛盾しているのよ」冷たい目でボクを見下しながら、容赦なくオチンチンを踏みつけてくるイズミ。「回復魔法を使えるなら、攻撃魔法も使えるのでしょう? だったらなんであの会場で使わなかったの? 魔物を倒し続けてきた勇者が本気で逃げようとすれば、武装すらしていない人たち相手に負ける訳がないじゃない」
「それは――」コリッ、と裏筋を爪先で踏まれる。「――ひぐうううううううううっ!」
「この牢屋だってそうよ。本気で世界を救う気があるなら、魔法を使ってこの屋敷から出ればいいのに、それをしようとしない。ただ、イカされてフニャフニャになったオチンチンを回復させて、すぐビンビンにさせるだけ。ホントは世界を救う気なんてないんでしょう? ホントは女性にオチンチンをい〜っぱい虐められたいんでしょう? 踏まれてしゃぶられて挟まれて入れられて、オチンチンをグチャグチャにしてほしいだけなんでしょう?」
「言わないで――」筋の根本から竿へと、中身を押し上げるように踏みつけられる。「――ひあああああああああああああああああ!」
「毎晩毎晩、綺麗でスケベな淫乱熟女に無理矢理犯されて、幸せなんでしょう? 私に告白したのだって、奉仕してくれるはずのメイドに逆にイジメられたかったんでしょう? ホントはただの変態犬勇者なんでしょう? ワンワン鳴いてドピュドピュ出したい、救いようのない変態犬勇者なんでしょう?」
「――――!」
もはや言葉もなく、盛大に果てるボク。
それでもイズミはボクのオチンチンを逃がさない。
ボクは昨晩以上に白くなった意識の中で、イズミの言葉を聞くことだけに集中していた。
「私も救いようがないけど、アンタみたいなクズよりマシよ。これから毎日こうしてあげるわ。アンタに主従関係を植え付けてあげる。――どんな熟女に抱かれようと、いくらユキナにイカされようと、アンタの本当の主人はこの私よ。アンタの本性を知ってるこの私よ。わかった?」
ボクは首肯しながら、白む意識に身を委ねていた。
その意識は、確かな幸福感に満たされていた――。
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