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タイトルなし 1-7

 快楽の余韻にひたるホリスを、フェレイアは無言で見つめていた。当然、腰に跨ったま
ま、である。鋭い眼光は変わらなかったが、軽蔑などの感情はまったく浮かんでいない。
ホリスは改めてこの厳格な教官に好意を抱いた。
「どうだ、気持ちよかったか、ホリス?」
 ホリスは無言で何度も首肯した。とっさに言葉が見つからなかったからである。
 そのようすを見て、フェレイアは仏頂面でうなずいた。一見すれば怒っているようにも
見える表情である。しかし、ホリスはわずかにフェレイアの長い耳が動くところを見逃さ
なかった。フェレイアはエルフ、それも剛胆無比で知られるダークエルフの一族であり、
エルフ族特有の長い耳を動かすのは、喜んだときのフェレイアの癖であった。

 なるほど、鬼教官フェレイアといえど、自分の愛撫に相手が満足しているさまを見るの
は嬉しいものなのだな、とホリスはひどく新鮮な感じを受けた。また、フェレイアの表情
と内心のギャップが滑稽で、思わずおかしくなってしまった。
「なんだ、ニヤニヤして。気持ちよすぎて頭がおかしくなったか」
「いえ、教官。ただ、ダークエルフの方の耳は長いという噂は本当なのだなぁ、と」
「ふん。わたしには、おまえのほうが珍しいぞ。淫魔のハーフなど、めったにいないのだ
からな」
 目を細めて、フェレイアは言った。今度はあまり機嫌のよい表情には見えない。
 ふと、ダークエルフはダークであることを指摘されるのを嫌う、とどこかで聞いたのを
ホリスは思い出した。
「わたしだから手加減でもしてやれるが、淫魔相手ではそうはいかない。上級淫魔にでも
当たったら、今の実力じゃあひとたまりもないぞ」
 声も、言葉の内容も、フェレイアの虫の居所が悪いのを示している。
 一方のホリスは、淫魔、と聞いて、先日の悲惨な出来事を思い出していた。あの、異様
に強かった「白い翼の淫魔」は上級淫魔なのだろうか。ホリスが今まで戦ってきた淫魔の
なかに、翼の白いものはいなかった。皆、「魔」の名にふさわしく、黒い翼を背負ったも
のばかりであった。上級淫魔であるとすれば、あの強さにも合点がいく。上級淫魔の強さ
といったら、新米の戦士十人が束になってかかっても、エクスタシーを与えるどころか、
ものの十分で腰砕けにされてしまうほどなのである。
「上級淫魔とは……翼が白いものなのですか」
「ん? なんだ、突然」
 なんら脈絡のない問に、フェレイアはすこし戸惑ったようだった。

「翼の白い淫魔などいない。淫魔の翼は黒と相場が決まっている。天使じゃあるまいし」
 とそこまで言って、フェレイアは言葉を切り、突然なにかを考えるような表情をした。
「教官?」
 いやに真剣な仕草で考え込むフェレイアに、ホリスは声をかけた。
「ん、いや、なんでもない。それよりも」
 と言って、フェレイアはじっとホリスの目を見据え、
「すこし昔の話をしよう。いいな、ホリス。これは、今のおまえにとって、大事なことだ」
 否定する理由はない。ホリスは頷いた。

「地上に初めて淫魔が現れたとき、国のお偉がたは頭を抱えたそうだ。今から百年以上前
のことになるがな」
 フェレイアはホリスの腰から体を下ろし、しゃべりはじめた。
「なにせ、当時は王立戦士団なんて都合のいいもんはなかったんだ。淫魔との戦いで王国
中の騎士の腰が立たなくなるのに一週間とかからなかったらしい」
 それに相づちを打ちながらホリスは、
「それじゃあ、どうやって淫魔を倒したんです」
 今、現に生きているのだから、百年前に淫魔の群れと戦った人間がいるのだろう。そう
でなければ、地上の人間の精はすべて搾り尽くされているはずであった。

「最初は、国中の名ある遊び人や娼婦をかき集めて、淫魔と戦わせた。技術の上では淫魔
に勝るとも劣らない、海千山千の連中だったそうだ」
「それで、その人たちは淫魔に勝ったんですか」
 ホリスの表情をうかがうようにフェレイアはじっと正視したあと、
「勝ったと思うか、ホリス」
 答を出せずにホリスが黙っていると、フェレイアは続けて言った。
「……結果は全滅。完膚無きまでにたたきのめされたそうだ。女泣かせの名高い遊び人も、
童貞のように軽くひねられてしまった」
「技術の上では互角なのに? なぜです」
 それを聞いたフェレイアは、口の端をゆがめて、
「わからんか。娼婦連中にはない、われら戦士の矜持たるものが」
 そして、ホリスの腰から体をどけながら、フェレイアはさらに続ける。
「それがわからんようでは、何度やってもおまえの負けだ。淫魔のペニスによがり狂った
売女[ばいた]どもとなんら違わないのだからな」
 そういいながら、秘部をホリスに見せつけるようにして、股をゆっくりと開いていく。
自らの愛液とホリスのほとばしりでべとべとに濡れたそれが、ほどなくしてあらわになっ
た。
「次に国が動員をかけたのは、王立魔導学院、つまり魔導師だった。若い魔導師たちの手
によって、淫魔は殲滅され、王国の危機は回避された。つまり、昔は『戦士』と『魔導師』
は同義だったんだ」

 艶やかなフェレイアの肢体に気をとられながらも、ホリスはうなずいた。養成学校に入
学するまで初等教育機関にさえ通っていないホリスには、初めて耳にする歴史の講義だっ
た。
「娼婦になくて、魔導師、つまり戦士にあるもの。おまえならわかるだろう?」
「しかし教官、自分には」
 ホリスの言葉を目で制し、フェレイアは、
「それがなにかを考えながら、今度こそおまえが責めてみろ」
 と言って、股を開いて身をくねらせ、ますます扇情的な格好をした。
 ホリスが視線を落とすと、欲望のしずくを垂らし蠢く蜜壷がペニスを淫らに誘っていた。
もちろん誘われるまでもなく、さっきからフェレイアの強烈な肢体を見せつけられて、ホ
リスの股間もすでに戦闘準備は万端であった。さすがは幾人ものサキュバスを悶絶させて
きたモノだけあって、猛々しく天を向く刀身が、赤黒く膨れあがって存在感を誇示してい
る。
 否応はなかった。ホリスはなかば突進するようにして、フェレイアに挑みかかった。体
を押し倒そうと、獣性の赴くままにフェレイアの肩に手を伸ばした。しかし、フェレイア
の防御は固く、巧みに体をそらしてかわすので、ホリスの手はただただ空気をつかむばか
りだった。
 「馬鹿者」と一言つぶやくと、フェレイアは体勢を低くして、ホリスの腰をつかんだ。
伸ばしていたた手はあえなく宙を切り、ホリスは体のバランスを失ってつんのめった。瞬
間、足下に潜り込んだフェレイアに両足をすくい取られ、ホリスの視界はぐるりと反転す
る。

「痛たた……」
 不意をつかれたホリスは、非常に情けない格好でフェレイアに寄りかかった。
「やれやれ、なにもわかっていないな、ホリス。すこしお仕置きをくれてやろう」
 ひっくり返ったホリスの足を、フェレイアはひょいと肩にのせて支えた。先刻ほどのフ
ェレイアと同じ体勢、つまりはマングリ返し……いや、チングリ返しであった。
 熟練した戦士を前にして、尻の穴までさらすこの無防備な体勢は、まな板の鯉に等しい。
ホリスは、もう敗北の恐怖を通り越し、あきらめの念とともに体をフェレイアに預けた。
「尻の穴がひくひく動いてるぞ。情けない……それでも戦士か?」
 フェレイアの赤い舌が太ももをはい回った。男を知り尽くしたその舌は、微妙な力加減
で、時に柔らかく、またねっとりと、一つの生き物のようにホリスの肌を刺激していく。
蟻の門渡りをしわの一本一本をのばすような丁寧さで舐めあげ、玉袋をころころと舌の上
でころがす。緩急巧緻、変幻自在の舌技は、老練な魔術師の繰り出す技のように、抜け目
が無く、鮮やかであった。
 感じ悶えるホリスを見て、フェレイアは勢いづいた。舌は菊門を集中的に舐め、ときお
り穴の奥まで舌先を挿入してえぐる。足を支える手を片方だけ放し、ペニスにあてがう。
棒をスリスリと優しくなでながら、亀頭を素早く擦った。
 ペニス本体を突然に愛撫され、ホリスはさらに身をこわばらせる。下半身の快感が全身
を電撃のように伝わり、頭から冷静な判断力を消し去った。身は悶え、口からはよだれが
だらだらと情けなくこぼれ落ちていく。

「教官、ひんっ……教官っ、教官んんっ……気持ちいいです、もっと……ああっ」
 尻たぶにちゅっと軽くキスをすると、フェレイアは口を放して、
「戦士が『おねだり』してどうする、馬鹿者」
 そういうと、フェレイアは肩にのせた足を降ろして、自分の脇に挟んだ。
「さて、ここからがお仕置きの本番だ。いい夢見せてやるぞ、ホリス」
 下卑た――としか形容する方法がない――笑い声を漏らしながら、フェレイアはベッド
の端からごそごそとなにかを取り出す。
「これがなにかわかるか、ホリス」
 ホリスは、フェレイアの不気味なようすに不安になり、首をねじってフェレイアのほう
を見た。フェレイアの手には黒光りする細長いモノがついた、ベルト状の器具が握られて
いた。
「教官、それは、それだけは……教官、それだけは勘弁してください」
 と、ホリスはカタカタと小刻みに震えながら、フェレイアに哀願した。
「黒刀[こくとう]ぐらいでなにをおびえているんだ。両性具有[ふたなり]の淫魔もこの世
界にはいるんだ。今のうちに訓練しておけ」
 黒刀をすりすりと愛おしそうになでながら、うっとりとフェレイアは言った。この愛ら
しい顔をした少年を、ディルドーで犯すことが嬉しくてならないらしい。
 一方のホリスは、またこの鬼教官の不吉な噂を思い出していた。いわく、成績不振でフ
ェレイアの補修を受ける羽目になった生徒は、黒刀の制裁を受け、強烈な切れ痔に悩まさ
れたらしい。いわく、フェレイアの黒刀による激しい責め苦で尻が裂け、病院に運ばれた
生徒がいるらしい……。
 あわれホリスは、涙やら唾液やらでシーツを汚しながら、恐怖におののいていた。

「初めてなんです……教官、後生ですから。後ろは、初めてなんです」
 ホリスは自分でもなにを口にしているのかわからなくなっていた。
 しかしフェレイアはその言葉には耳も貸さず、ホリスのアヌスに指を突っ込んで具合を
たしかめていた。
「怖がるな、せいぜい壊れないように、優しくしてやるから」
 フェレイアはアヌスに入れる指を二本、三本と増やし、ホリスの反応をうかがう。
「あ、んん……話せばわかります……ああんっ、なんでもしますから」
 アヌスへの責めに絶えながら必死に懇願の言葉を並べるホリスに、フェレイアはいかに
も嗜虐的な笑みを浮かべて一言、
「問答無用」
 そして、唾液でヌルヌルのベチョベチョになったアヌスに、黒光りするディルドーをね
じり込む。
 そしてその瞬間、ホリスの全身を重い衝撃が襲った。太い黒刀が肛門を押し広げ、強烈
な苦痛と全身を揺さぶる激しい快感をもたらす。獣のような四つんばいの体勢で黒刀を抽
送され、戦う気力さえも根こそぎ消し飛んでしまいそうだった。
「あんっ、あ、あんっ……はうぅっ、くうんっ……やめ、やめ、やめて……ああんっ」
「なんだ、ホリス。素人の女みたいな声を出すんだな」
 パンッ、パツンッ、とフェレイアの下腹部とホリスの尻がぶつかる音が聞こえる。その
たびに、ホリスの全身を恐ろしい快感が貫く。

 凄まじい筋力で前後運動を繰り返しながら、フェレイアは手をすっとホリスのペニスに
あてがい、
「気持ちいいだろ、ホリス」
「そ、そ、そん……そんなわけ……ああんっ」
 なんとか抗弁しようとするホリスに、フェレイアは彼の分身を意地悪くいじりながら、
「でも、ここは嫌がってないぞ。こんなに固くなってるじゃないか」
 フェレイアの腰の動きは次第にエスカレートしていく。大粒の涙をぽろぽろ流して耐え
るホリスに、とどめとばかりに激しい腰使いで肛門をえぐる。
 快楽の波にさらわれないようホリスは必死に歯を食いしばる。背中を突き抜ける恐ろし
い快感に翻弄されながらも、ホリスは未だ戦意を失ってはいなかった。
「なかなかがんばるじゃないか。特別にもっと気持ちのいいことをしてやろう」
 そういって妖しく微笑むと、ディルドーを刺したまま、ゆっくりと体勢を変え、フェレ
イアは自分の膝にホリスをのせた。ディルドーが刺さった状態で移動するのは至難の業で
あるが、フェレイアはそれを苦もなくやってのけた。
 そして、ホリスの乳首を弄び、首をねじってホリスの舌をついばみながら、緩やかな動
きでアヌスを責めはじめた。さっきまでの激しいばかりの責めとは違って、緩急取り混ぜ
た巧みな責めでどんどんホリスを高めていく。片手の指が、亀頭を這う。その瞬間、フェ
レイアは腰を一気に突き上げた。

「ひやうっ……ふああんっ、でるっ、でるうっ」
 ホリスの表情がかたくこわばり、亀頭がふくらんだ。
 どぷっ、びゅっ、びゅるるっ、どくっ、どくんっ。
 ペニスから白濁した液が一気にほとばしった。粘着質のそれは高く舞い上がり、ホリス
の顔にべっとりとかかった。ホリスの胸を、下腹部を、白濁液が汚していく。
 あいだを置かず、フェレイアはディルドーを抜き取り、自分の腰からベルトを外した。
力の抜けたホリスを難なく抱きかかえ、大の字で寝そべらせる。フェレイアはその上に覆
い被さって、自分の体全体でホリスの精液をふき取った。
 精液がちょうどローションのような役割を果たし、ぬめった感触が敏感になったホリス
の全身を襲う。気持ちがよすぎて、ホリスは思わず身震いした。
「よく頑張ったな、ホリス。わたしの黒刀技にあれだけ耐えられれば、十分合格だ」
 その言葉が嘘か本当かはわからないが、ともかくも今日フェレイアにほめられたのは、
これが初めてだった。男をイカせたあとの、フェレイアの機嫌の良さが手伝っているのだ
ろうが、イカされてほめられるというのも変な気分ではあった。
「さて、いい子にはご褒美だ……そして、これで終わりだ。しっかりと感じろ」
 そうだ。もう二回イッてしまったのだった。これで出してしまえば、なにもかもが終わ
り。よくてペニスが使い物にならなくなるか、最悪腹上死と言うことも考えられる。フェ
レイアは、言ったことは確実に実行することでも有名だった。そしてそうなれば、あのサ
キュバス、戦士の誇りをズタズタにし、母の形見を奪ったサキュバスと、もう二度と戦う
ことはできない。
 そうだ、サキュバス。
 先日の、サキュバスに与えられた屈辱がありありと蘇る。時間が経って恐怖が薄れ、悔
恨だけが胸の中にわだかまっている。この戦いに負けてサキュバスから逃げるのは、死よ
りもずっと苦しいことに思われた。ましてや、フェレイアの絶技に翻弄されるがまま運命
を受け入れるなど、耐えられなかった。せめて一矢報いようと、自尊心の命じるがままに
起きあがろうとホリスは動いた。

「うっ……ああぁ……」
 しかし次の瞬間、ホリスはその内心とは裏腹に、情けない声を漏らすハメになった。ホ
リスの意志などにはお構いなしに、フェレイアの膣がホリスの下半身を喰らっている。ヌ
ルリとした感触がペニスを襲い、思わず身もだえした。亀頭はおろか、棒のなかばまです
っかり陰部に飲み込まれ、仰向けのホリスにフェレイアがまたがるマウンドポジションを
完全にとられている。
 ヌプッ、グチュ、グチャ……。
 すばらしい締め付けだった。淫魔のように、襞が意志を持ってからみついてきたりはし
ないが、鍛え上げられた腹筋から繰り出される締め付けは、気を抜くとすぐに暴発してし
まいそうだった。さらに、膣内のなま暖かさ、柔らかさといったら、昨晩の淫魔もかくや
という具合だった。
「ふふ……さあ、すぐにイッてもいいんだぞ、ホリス。おまえの熱い精液を注いでくれ」
 そういいながら、見透かしたような目でホリスを見下ろす。膣内の締め付けはいっそう
強くなり、カリ首を、根元を、凄まじい強さで圧迫してくる。
 ホリスはあがいた。なんとか抜こうと、もがき、身をくねらせたが、フェレイアの膣は
手でペニスを押さえているかのように、くわえて放さない。どころか、そうやって逃れよ
うとするやいないや、お仕置きとばかりに強烈な締め付けがホリスのペニスを襲うのだっ
た。

 たまらなかった。ホリスは身を起こし、フェレイアの豊満な褐色の体に抱きついた。失
神しそうな快感に身もだえし、快楽の海でおぼれまいとフェレイアの背中にすがりつく。
「さて、ラストスパートだ。遠慮はいらん、たっぷりと出せ」
 グチュッ、ヌチュッ、パンッ、ジュプッ、キュッ。
 フェレイアはついに腰を激しく動かしはじめた。玉がすぼみ、亀頭がものすごい勢いで
ふくらむのが、自分でもわかった。
「ふあっ、あ、あ……いくっ、イク……うう、ああぁ」
 ホリスの苦悶の声を聞いてか、焦らすように腰の動きをゆるめて、
「おいおい、ホリス、入れてから一分も経っていないぞ」
 口の端を侮蔑的にゆがめて、フェレイアはホリスを見下ろす。目は笑っていない。
「くそっ」と悪態のひとつでもつこうとしたが、ちょうど同時にフェレイアが腰をくねら
せたため、「くうんっ」と、犬の鳴き声のような声がのどから漏れた。
「はっ。物欲しそうな声だな、ホリス。のぞみ通りにしてやろうか」
 まるでホリスの腰の上で踊っているかのように、腰をぐりぐりと押しつけ、その淫らな
舞にあわせて膣をリズミカルにキュッキュと締め上げる。
 もう立て続けに二度出しているというのに、射精感は我慢の限界に達していた。瞬間、
膣口が締まり、子宮まで吸い込まれるような吸引がペニスを襲ったため、あえなく出しそ
うになった。鍛え上げられた戦士の筋肉でなんとか耐えたが、すこし出してしまった。

「んふふ、ホリス。苦しそうな顔だな。すぐに楽にしてやるぞ」
 心底楽しそうに笑うフェレイア。淫魔に負けず劣らずのサドっ気である。
 刹那、膣の締め付けが強くなった。それも、今までとは違い、局部的にではなく、二枚
の板でペニスを挟み込むような、全体への、強力な圧力。
「おうっ」思わず、ホリスはうめいた。
 その声を聞いて、いっそう勢いづいたフェレイアは、緩急入れ替えながら、時に激しく、
時に優しく、射精を誘導するような責めをしはじめた。
「あと何秒持つかな、『一分半の』ホリス……」
「そ、そんなこと」
 パンッ、パツン、パンッ。
 フェレイアとホリスの下腹部がぶつかる、乾いた音が部屋に響く。
「ほら、だせっ。全部吐き出せ」
 また、精液を吸い出そうとするかのような、膣の吸引がはじまった。下半身を痛みにも
似た快感が駆けめぐる。
 ダメだ、やっぱり強すぎる。教官をイカせようなんて、無謀だったんだ。ホリスはあき
らめて、快楽に身をまかせようと全身から力を抜いた。
「そうだ。そうやって身をまかせて、なにもかもはき出して、戦士なんかやめてしまえ」
 戦士をやめる。そしてまた、サキュバスから奪われ続ける生活に戻る。
 はっと、ホリスは我に返った。

「……嫌です。僕は、もう、戦士をやめることは、ああっ」
 フェレイアの愛撫に遮られ、ホリスは言葉を最後まで紡ぐことはできなかった。しかし、
それでもう十分だった。
 涙でかすれた視界にぼんやりと浮かぶフェレイアをきっ、と見据える。ギリギリと音が
するぐらい歯を食いしばり、脳裡に張りつく桃色のもやを追い払う。
「教官、まだ僕は戦えます。まだ、負けていません」
 ぴりぴりとしびれる手を伸ばし、フェレイアの乳房をわしづかみにする。ぞっとするほ
ど柔らかい乳房、そして恐ろしいぐらいに吸い付く柔肌。消耗し尽くした体では力も入ら
ず、細かい技巧も使えない。ただ、懸命というだけだった。
「無駄な抵抗、だな」
 あえぎ声のひとつも漏らさずに、フェレイアはぼそりとつぶやいた。
 軽蔑しきった表情、声色、そして瞳。フェレイアの絶対に見せることのなかった、心底
冷えきった態度だった。
 ぷつん、というなにかが切れる音を、ホリスは耳の奥でたしかに聞いた。
 堰を切ったかのように、熱い感情が腹の底からとめどなくこみ上げてくる。畜生、こん
畜生っ。ホリスは我を忘れて、フェレイアの肢体に飛びかかった。乱暴にフェレイアの体
をひっくり返し、のしかかった。冷静な意識は沈んでいき、真っ赤な激情が全身を駆り立
てていく。
 意外にも、フェレイアは、今まで見たこともないような優しい笑みを浮かべて、
「まったく、世話を焼かせる」
 自分の口から発せられる野獣のような咆吼を、なにか遠くにいるような気分で聞いてい
た。

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