第二話「好敵手」
男子次鋒、マッハピストンの涼は試合前の精神統一に余念が無かった。
相手は、入学以来の宿敵―梓。入学して初めてのBFで情けなく気絶させられてから、
彼は梓を超えることを学生性活の目標としていた。
一年の5月。1ヶ月、梓にリベンジするためだけに、必死で努力した。あっさりと返り討ちにあった。
9月。地獄の夏合宿を経て、ついにリベンジに成功した。梓はそのとき、初めて彼の名前を覚えてくれた。
嬉しかった。今まで一方的にライバル視していた自分が、ようやく相手に認めてもらえたような気がした。
10月。今度は逆に、梓にリベンジを挑まれるようになった。
それからふたりは、互いを倒すためだけに、自分を高めていった。勝って、負けて、勝って、負けて。
お互いだけを見て、技を磨いていったふたりは、いつしか学園でも共に四席まで上り詰めていた。
そして―今日。男女対抗戦のこのリングこそ、一つの決着とするのに相応しい。
彼らは、そう思っていた。
「さあ、決着をつけようか、梓。」
「ああ。こてんぱんに負かして、完璧にケリつけてやるよ、涼。」
勝負は本番―互いの最も得意な形で、と彼らは先に取り決めていた。そしてもう一つ―
「約束、忘れてないよな?」
梓が言う。約束―負けた方は勝った方の命令を、何でも一つ聞かなければならない、という約束。
字面だけ見ると子供の罰ゲームのようだったが、彼らにとっては重大事だった。
どんな無茶な命令でも、彼らは自分自身のプライドのためにそれを守るだろう。
奴隷になれと言われたらなるだろうし、学園を辞めろと言われたら辞めるだろう。
死ね、と言われたら死ぬかもしれない。
彼らはそこまでの覚悟を持って、この最終決戦に臨んでいた。
「もちろん、忘れるもんか。…じゃあ、始めよう。」
涼は決意と共に答え、梓はこくりと頷く。
男女対抗戦次鋒戦、涼対梓の戦いが、始まった。
涼は、梓のナカに、自分自身を深く突きこむ。
「くっ…」
思わず、声が漏れる。何度戦っても、慣れない感覚。
ぎちぎちと締め上げる膣壁。ぬるぬると絡みつく襞。そして、梓の自慢の、カズノコ天井。
初めて戦った時は、この名器に5分ともたずに搾り出され、その後騎乗位で気絶するまで犯された―
だが、今はあの時とは違う。
涼はゆっくりと腰を前後させ始める。何度も何度も戦い、完全に覚えている。
始めはゆっくり、最後は激しく。梓が一番感じるリズム。梓の一番感じる角度。
殺人的な名器の感覚に耐えながら、涼は腰を動かし続けた。
相手のことを誰よりも良く理解しているのは、梓も同じだった。
涼の動きに合わせ、腰を左右に艶かしく動かす。時折きゅっ、きゅっ、と締め付けを強めると
涼の腰がぴくんっ、と跳ねる。
互いに互いの手の内を知り尽くしている二人の戦いは、まさに互角の熱戦だった。
相手の攻めのタイミングをずらし、かつ自分が反撃する―BFの基本とも言える
この攻防が、極高レベルで繰り広げられる。
互いに好敵手として認め合う二人だからこそ出来る、プロでもそうはお目にかかれない
極限の攻防―
戦いを見守る生徒たちは、歓声を送るのも忘れ、ただこの戦いに見入っていた。
「はっ、はっ、くっ、うん…」
「ふうっ、ん、あはっ…」
互いの口から喘ぎが漏れ始めたころ、誰もが決着が近いことを悟った。
「最後だ、梓―!」
先に、涼が動いた。腰を、徐々に激しく、深く打ちつけていく。
ぱん、ぱん、と乾いた音が響く。音の間隔はどんどん短くなり、秒間1回を超えてもなお加速を続けていた。
マッハピストン。
涼が血のにじむような思いをして会得した必殺技であり、最早彼の代名詞ともなっている技である。
「あっ、んっ、あ、あ、あ、あ、あぁっ…」
梓の口からは抑えきれずに嬌声が漏れ出す。女子の応援席から悲鳴が上がる。だが―
「ふ、うぅ…くはっ!」
涼の方も、無事ではなかった。学園でも1、2を争う梓の名器に、高速でピストンを繰り出しているのだ。
涼のペニスからは我慢汁が溢れ出し、梓の愛液と混ざり合い、ぐちゅぐちゅと卑猥な音を立てる。
互いに、限界が近い。
涼は思う。これでイかせられなければ―負ける。
梓は思う。ここで耐え切れば―勝てる。
それは、この技―マッハピストンの性質上の判断であった。
確かに強力な技であるが、マッハピストンには欠点がある。
体力の消費が大きすぎるのだ。一度腰を止めてしまえば、しばらくは動けない。
故に必殺技。逆に言えば、必殺技でなければ使えない技―
お願いだ、早く、イってくれ…!
願うように腰を振り続ける涼。
「あ!うあっ!あん!」
梓は肌を上気させ、口を半開きにしながら喘ぎ声を上げ続ける。
しかし、その目にはしっかりと意志の炎が燃えていた。
「は、あああああっ!」
気合と共に、涼がラストスパートに入る。
「ひあああああああああああ!」
梓が悲鳴を上げる。
―勝った。
涼が、勝利の雄叫びを上げようとした、瞬間。
「あ、あたしはっ!負けられないんだよぉっ!」
ぎちぃっっ!!
梓が、万力のような力を込めて、涼のモノを圧迫する。
「うっ、あっ!?嘘、だろ…っ!?」
腰から、一切の力が抜ける。
ぐるりと反転する視界の中で、涼は自分の敗北を悟った。
「はっ、はっ…へへっ、あたしの勝ちだな、涼?」
梓は涼の耳元に口を近づけ、悪戯っぽく言う。
「…まだ、僕はイってないよ」
負け惜しみだった。下半身はもうほとんど動かない。
手を使えば、あるいは梓をイかせることは出来るかもしれないが、彼女がそれを見過ごすわけはないし―
なにより、プライドが許さなかった。
2人の決着は、本番以外にありえない。
「んー、あたしもさっさと楽にしてやりたいんだけどね。あんまり激しく動くと…んっ、あたしのほうがイっちゃいそうだし」
そう言うと、梓は両手で涼の腕を捕らえ、ゆっくりと腰を動かし始める。
「だから、ゆーっくり気持ちよくしてやるよ。」
「あ、うあ…」
ゆっくりとした責めでも、梓のナカは十分に気持ちよかった。
およそ抵抗というものができない涼のペニスはあっという間に高められ、ピクピクと痙攣し始める。
「お?もう限界か?だらしないぞー、涼?」
梓は揺るがない勝利を手にした者の優越感に浸る。
涼はそんな梓の責めに対して、最後まで抵抗の意志を失わないことぐらいしか、できることが無かった。
「…なー涼、イかせる前に訊いときたいんだけど、もし勝ったら何を命令するつもりだったんだ?」
唐突な梓の問いに対して、涼は少し戸惑ってから、おずおずと口を開いた。
「…梓に…僕の…その……彼女に、なってほしかった…」
「へ?」
「お、おかしいかよ!前からずっと、僕は君が…あぅ…」
涼は、顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「いや、おかしくない。だって、あたしも…、同じこと、考えてたから。」
涼がなにか言う前に、梓は涼の唇を自分の唇で塞ぐ。
「好きだよ、涼。最後はあたしの必殺技で負かしてあげる。」
一旦口を離してそれだけ言うと、再び、今度はより深く涼の唇を奪い、腰を激しく踊らせる。
梓の必殺技、オクトパス・ダンス。名器の襞の蠕動運動と、熟練の腰使いによって、
まるで蛸の足が絡みつくかのような感触を与える奥義である。
「んんんんんんんんんんんんんんんんっ!!」
びゅうううーーーーーーーーーーーっ!
口腔をしゃぶり尽くす梓の舌。いつの間にか背中と後頭部に回されている梓の手。
そして今まさに自分の精液を汲み上げている魔性の膣。
全身を愛しい女性に支配されながら、涼は梓が与えてくれる快楽にすべてを委ねた。
涼が全てを出し切った後、しばらく余韻を愉しんでから、梓は名残惜しそうにペニスを引き抜いた。
「へへ、これで恋人同士だな、涼。」
自分を見下ろして微笑む梓は、眩しいほどに魅力的だと、涼は思った。
男女対抗戦次鋒戦
×涼−梓○(オクトパス・ダンス)
男子0−2女子
第二話 了
Please don't use this texts&images without permission of いろは.