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捕食者とその男

 目の前には糸一つ纏わない身体がそこにあった。
 どこまでも抜けるような白い肌。形の良い二房の膨らみには一つずつ淡い色の小さな突起ある。
 すらりと伸びた脚をつま先からたどれば、二つの接続部分に女性にしかない入り口が少し光っているように見えた。
 どこまでも、ただ男性の欲望を駆り立てる身体を持つ彼女はそこに存在していた。
 
 吸い込まれそうな瞳と眉と唇が優しく笑みを浮かべた。
 俺の下半身は彼女へと歩み寄る。一歩、また一歩彼女へと。彼女へとあと一歩、もう一歩歩み寄れば、その二房を味わえる、あの入り口を味わえる、そしてこの唇を味わえる。
 欲望が高まる。心臓が唸る。下半身に血液が溜まり掌より大きくなる。
 彼女がそっと俺を抱き寄せた。とたん、あの二房が胸板に広がった。俺もそっと身体に腕を周す。

 あごを引けば魅力的な唇が見えた。それはまるで物欲しそうに俺を誘惑してくる。俺はその誘惑に負けないように彼女の唇に栓をした。彼女の口内からの柔らかい肉の塊が、俺の口内の肉の塊と絡み合う。
 俺は栓を外した。お互いの肉の塊から混合液が滴となり、二房、へそ、女性の入り口を伝い身体から床に落ちる。

 混合液を追うように舌で降り、右房の突起を口に含んだ。突起を吸い搾ると口の中にほのかに、淡い香りと甘い味が拡がった。いつまでも吸い続けたい。これさえあれば生きていける。不思議と唇と下半身から脳へとそんな指令が伝わった。

 いつのまにか、下半身からは止め処なく乳白色が裏側を伝っていた。

 俺は仰向けにした彼女をその下半身で一思いに貫いた。彼女は思いの外、優しく俺を受け止めて終着地点へと誘う。
 肉の壁がうごめく。1段2段3段と下半身を締め付け、腰の前後運動を少しずつ緩めさせる。

 彼女の瞳と眉と唇は微笑んでいた。先ほどから一言も言葉を出さなくても彼女の言わんとしている事はなぜだ変わる。そう、次にしなくてはならないことを俺の身体は知っている。

 そう、次に俺がしなくてはならないことは、乳白色を大量に彼女へと注ぎ込む事。なのに俺の下半身からは液は出て行かない。

 彼女の瞳と眉と唇は微笑んでいた。だが、先ほどの笑みとは違う笑み。まるで獲物を捕らえた獅子のような誇らしげな笑み。

「これであなたは私の餌」
 硬く閉ざしていた口からは脳髄に澄んだ音が響き渡った。

 1段そしてまた1段、ゆっくりと下半身を縛っていたものが外される。最後の1段が外されたとき、下半身からは液が噴出した。
液は、入り口から垂れることなく全て彼女の中に吸い込まれていく。最後の1滴が搾り取られようとするとき―ガクン―身体に力が入らないことに気が付いた。
 鼓動がまた速くなる。掌に良くないときに流れているものを感じる。肘、股、わきの下が寒い。何も考えられない。いつのまにか快楽から恐怖へと感情が移り変わっていた。

 最後の1滴が吸い取られる。彼女は満足した顔を見たのが最期だった。

「ごちそうさま」
 
 彼女が消え去った後には、骨と皮だけの男性の遺体が床に転がっていた。
 初めまして、春田です。
 駆け出しですが、少しずつ成長をしていきたいと思います。
 辛口コメントでも、コメント頂けるなら嬉しいです。

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