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タイトルなし 1-2

 ホリスは抵抗すらできず、ただ呆然と、自らの腰に跨[またが]ったサキュバスに見入っ
ていた。
 視界一杯に広がった純白の翼から、薄く光る羽が雪のように舞い落ちる。一見すれば翼
を背負う天使のような美貌に、悪魔のように妖しげな笑みを浮かべ、ホリスを見下ろして
いた。艶めかしい裸身を覆うのは、体のラインを隠そうともしない薄布一枚のみ。サキュ
バスの陰部にすっぽりとホリスのペニスは飲み込まれ、ぬめった愛液がからみついて卑猥
な水音を立てた。
 グチュ、グチャリ、ジュブブッ。サキュバスの腰の動きは緩慢であるにも関わらず、生
き物のように蠢く襞[ひだ]が、ホリスの亀頭を、竿を、カリ首を、激しく責め立てる。か
と思うと、柔らかく生温かい膣壁が、ホリスの分身を優しく包み込み、射精感を煽りたて
る。しびれるような快感と、とろけるような恍惚感。段違いの性技に、ホリスはただただ
圧倒されるばかりであった。
「具合はどうだ、少年。気持ちいいか? ん?」
 女性の瞳は情欲で爛々[らんらん]と輝き、口からは熱い吐息とともに小さなあえぎ声が
漏れている。
「だ、誰が、サキュ、バス……なんかにっ」
 そう言いながら、ホリスは腰に力を入れて女性を下から突き上げた。しかし、女性は笑
みを寸分も崩さずに、
「ふふっ、半端なことでは感じてやらんぞ。もっと気合いを入れろ」
 強がりを言うホリスを見透かしたように、サキュバスは言い放った。

 サキュバスは腰を止め、ホリスの躰[からだ]を視線でなめ回す。その群青色の瞳で見つ
められただけで、ホリスの心は抑えがたい官能の興奮に包まれていった。まさに、魔性の
力であった。麻布の一本たりともホリスを拘束してはいないのだが、サキュバスの眼光は
金縛りのように全身を縛り付ける。手足はおろか、指一本動かすことができない。
 そんなホリスをあざ笑うかのように、サキュバスはそのしなやかな肢体を横たわらせ、
豊かな乳房をホリスの薄い胸板に押しつけた。むっちりとした感触が、麻布の服ごしにホ
リスの胸板に張りつく。
 幼子を慰めるような手つきで、サキュバスはホリスの髪をなでる。ホリスはくすぐった
さに身をよじらせた。ホリスの反応に満足したのか、今度はサキュバスの手が唇に伸び、
触れるか触れないかの、微妙な指使いで唇をなぞってきた。ホリスの意識は快楽でもうろ
うとしてくる。片手だけの愛撫だったが、ホリスにはわずかの抵抗すら許されなかった。
 上半身だけではない。膣の締め付けはさほどではなかったが、襞の異様な動きにホリス
は完全に翻弄されていた。襞の一本一本が意志を持っているかのように、敏感なところを
巧妙に責め立てる。少しでも気を抜けば、サキュバスの柔らかい膣内に白濁液をぶちまけ
てしまいそうだった。
 このままではあっという間にやられてしまう、そう思ったホリスは、きつく目を閉じ、
息を殺して快楽を耐えようとした。すると次の瞬間、胸板から鎖骨にかけて、電撃のよう
な快感が走った。ホリスが驚いて目を開けると、ホリスの右乳首がサキュバスの白魚のよ
うな指に弄ばれていた。こねくり回し、つまんでは引っ張り、ツメを立てて軽くひっかく。
異常なまでに必要な責めだった。
「んっ、んんっ……あっ、ふあぁ、うっ……くぅっ」
 思わず、鼻にかかった、女のようなあえぎ声をもらしてしまう。それは、自分でも驚く
ほど甘ったるい声だった。

 その口をサキュバスの唇の柔らかい感触が包み込む。かと思うと、なまあたたかい液体
が口内にどろりと流れ込んできた。サキュバスの唾液だ。快楽に打ち震えるホリスの舌を
サキュバスの舌が絡め取り、弄ぶ。エスコートされるままにホリスはサキュバスの口腔へ
と導かれ、激しく吸い上げられる。サキュバスの喉が鳴るたびに、ホリスの脳裡は甘美な
官能の色で染め上げられていく。
 サキュバスの舌技から解放される頃には、ホリスの息は完全に上がっていた。
「少年……もしかして、もうギブアップか?」
 ホリスを見下ろすサキュバスからは嘲りではなく、本当に残念そうな様子が感じ取れた。
そしてそれは、どんな侮辱よりも強烈に、ホリスの自尊心をえぐった。
「まっ……まだ、まだ……くっ、ふぅっ」
 息も絶え絶えに、ホリスは言った。もちろんそれは、完全な強がりであった。もう、戦
う気力などどこにもありはしない。ただ、ホリスの戦士としての矜持[きょうじ]が、その
言葉を紡がせたのであった。
「そうか、まだまだイケルのか」
 満足そうな笑みを浮かべて、サキュバスは腰を前後左右に揺すり始めた。背中の翼から
羽がこぼれ落ちるほどの激しい愛撫だ。膣口は強く締まり、膣壁はこれまでにないほど収
縮した。体はもう言うことを聞かない。腰が勝手に動き、抽送を繰り返すだけのからくり
人形にでもなったようだ。サキュバスの体にすがりつき、我を忘れてあえぐことしかホリ
スにはできなかった。
「あうぅ、いいよっ……気持ち……いい……」
 とどめ、と言わんばかりに膣口が締まる。呼応するように、襞がざわめき、膣壁がペニ
スを吸い込んだ。白濁液を搾り取ろうと、膣全体が躍動する。
「あっ、はあっ、いいぃっっ……があっ、あああああああっっ」
 どぴゅっ、びゅるるっ、ぴゅっ、びゅくっ、びゅっ。
 下半身から突き抜けるような快感と共に、ホリスはなすすべもなく射精した。腰が情け
なくひくつき、暴力的な快楽が全身をのたうち回る。
 亀頭が破裂しそうなぐらい、猛烈な勢いで膣内に白濁液が送られていく。収縮を繰り返
すサキュバスの膣は、大量の精液を一滴ももらすことなく、飲み込んでいく。
 圧倒的な実力差。混濁する意識の中で、ホリスは激しい自己嫌悪と屈辱に捕らわれていた。

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