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コンプレックス

俺の名前はリュウ、今年淫魔ハンター試験に合格した新米ハンターだ。

今回俺は淫魔ハンター協会から仕事の依頼を受け、最近頻繁に淫魔による
被害が報告されている、とある「樹海」へとやってきた。
複数の目撃情報から推察するにどうやらこの樹海を縄張りにしている
淫魔が二匹いるようだ。その二匹が結託しているかどうかは不明だが
もしも二匹同時に襲ってきた場合俺一人ではミイラ取りがミイラ状態だ。

だからハンター協会はこの任務に俺ともう一人別のハンターも
同行するよう手配をした。そしてそのもう一人の淫魔ハンター「カスミ」
が今俺の目の前にいる。年は俺と同じ18で同期生。階級も当然
同じ最下層のD級。目が若干釣り目がちで、145センチ程の極めて低い背丈と相まって実際よりもかなり幼い印象を受ける。胸は18の女にしては可哀想なくらいぺったんこで
腰まわりも大人の女性とは言えないお子様な肉付きだ。
顔立ちそのものは端整だが化粧気がないのも彼女の幼さを際立たせている。
只全体的に「強気」な印象が彼女の体じゅうからにじみ出ているのは伝わる。
それは幼い容姿と身体つきをなめられまいと普段から気を張っているせいだろうからか、初見の時の俺を見る目つきからして負けん気みたいなオーラを出していた。

「もうすぐ最初に淫魔が目撃された地点だ。気をつけろよ」

俺は方位磁石と地図を比べ見ながら「カスミ」に声をかけた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

彼女は初見のときに俺をにらみつけながら「よろしく」と言ってから今まで
俺が何を話しかけようとずっと無言だ。恐らく俺が最初に彼女を見たときに
(こんなガキが淫魔ハンター?嘘だろ)といった表情をしてしまったのを
根に持っているのだろう。あるいは過去に同じような体験を何度もして
うんざりしているか。まあ俺としては任務を全うするために必要な
大切なパートナーな訳でいざ戦闘になれば彼女に背中を預けるわけだから
できれば良好な関係を築きたい訳だがどうやら彼女にその気はないらしい。
無視を貫く態度がより幼い印象を与えていることに彼女自身は気づいているのだろうか。


・・・・・・・・・ガサガサ!!

努めて無表情を保とうとしているように見える「カスミ」の横顔を
多少興味本位で眺めていると、突如上空から木の葉の擦れあう音が聞こえてきた。
「カスミ」の頬の筋肉がピクリと動き、次の瞬間俺たちの前に二匹の淫魔が姿を現した。
俺は余りにも情報通りの場所で淫魔と遭遇したので呆気に捕られたが、逆にあまりにも
筋書きどおりなのですぐに不思議なほど冷静になれた。

「ハ〜イそこの道行くお二人さん、ちょっとお時間いい?」

淫魔の片割れの背が大きいほうが陽気に声をかけてくる。これから食事ができて
嬉しいという感じだろうか。

「私たち淫魔なんだけど君たち人間?」

背の小さいほうの淫魔が可愛らしくこう言い、
何が面白いのか背の大きいほうの淫魔が笑い出した。

「見ればわかるでしょ」

カスミがさもつまらなそうに答える。挑発に乗るような安易なハンターでは
ないようだ。

「あれれ〜君たちもしかして淫魔ハンターってやつ?ねえねえ?」

背の高いほうの淫魔が陽気な口調とは裏腹に鋭く俺たちの正体を
見破ってきた。淫魔はその知能レベルによりある程度ランク分けできる。
本当に低レベルな淫魔は言葉も喋れず人間を見つければ手当たり次第
襲ってくるし、ある程度上級の淫魔になると人間に変装して町に
忍び込み夜道でこっそりと人間を誘惑し巣へと連れ帰ってしまったりもする。
こいつらはこのあまり人の入り込まない樹海を餌場とし、来た人間を確実に
捕らえるという手法を確立しているらしいところや、こちらの雰囲気から
俺たちが淫魔ハンターだと見抜いた点から考えて少なくとも低級の淫魔ではないようだ。
かといって、以前出没した場所に再び簡単に姿を現してしまう点から見て
上級の淫魔とも言えなそうだ。つまり中級の淫魔というところか。

「マリスお姉さまどうします?逃げた方がいいのかな?」

背の低い淫魔が多少不安げな面持ちで背の高い淫魔に声をかける。
背の高い淫魔はゆっくりと俺たち二人を観察した後、クスッと笑った。

「フフ、ユリアン、心配しなくても大丈夫。多分この子たちはそんなに
強いハンターじゃないわ。なんていうのかな〜年季みたいなものがないのよね。
私が前にやられちゃいそうになって命からがら逃げたハンターはもっと
雰囲気が強そうだったもの。それに・・・見てごらんなさい、あの小さい
女のほうを!あんなちんちくりんの小娘に私たちを逝かせることなんてできるはずが
ないでしょうに!何かしらあの胸は!あれじゃ小枝も挟めないわ!
あっはははははははは!」

マリスと呼ばれた淫魔はあからさまにカスミの身体的コンプレックスを
侮辱してきた。カスミの頬が見る見るうちに赤くなっていくのが分かる。

「何よ!別に胸なんて無くったって関係ないでしょう!あんたたちなんて私の
手と口があれば簡単に倒せるんだから!胸なんて男を喜ばせるためだけの
無用の物よ!淫魔ハンターには必要ないわ!」

カスミが初めて表立って感情をあらわにした。確かに女ハンターにとって
「胸」は飾りでしかない。少なくとも対淫魔ではだ。ただ胸がないと
淫魔ハンターに「なる」のに苦労するという事実があるだけだ。
(実際毎年おおくの男子がハンター試験で女の胸に翻弄されて、挟まれて、扱かれて、
涙ながらに夢を破られている。)

「まあムキになっちゃって単純ね。体もお顔もお子ちゃまだから
脳みそまでお子ちゃまなのね。ねえユリアン?」

「ほんとですね、マリスお姉さま。あ〜んなちっちゃくて
あ〜んな洗濯板じゃ人間の男にもなめられちゃいますよね〜」

俺はそう言うユリアンと呼ばれた背の小さい淫魔を見てお前も
相当に小さいだろ!っと内心ツッコミを入れて思わず一人
笑いをしてしまった。その瞬間カスミから恐ろしく冷たい視線を浴びた。

「あんた・・・リュウって言ったけ。あとで覚えときなよ」

ものすごくドスの利いた声でカスミはこう言うとおもむろにマリスのほうへ
歩みだした。

「私がこのでかいほうやるからアンタはそのチビ相手にしてな。」

カスミはそういうともう臨戦態勢に入りマリスとの間合いを慎重につめっていった。
普通なら身長差を考慮して俺がマリスと戦うべきなのだろうがカスミは最初に彼女を
コケにした相手を自分で倒したいようだ。熱くなりすぎていないかと俺は心配になったが
二人の距離がもうバトルの間合いに入っていたので声をかけることもできない。
仕方なく俺はもう一匹の淫魔ユリアンの相手をしようとその姿を視野に納めようと
首をひねった。しかし、俺が首を捻り終えたそのときにはもうユリアンは俺のすぐ目の前まで来ていた!しまった、完全に先手を取られてしまった!!
なんとなく勢いで書いてます。
時間と気力があれば続けたいです!!

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