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バトルファック部物語02

「バトルファック部に入ってくれない?」

朝起こしにも来なければ、弁当を作ってくれるワケでもない、ごくごく普通の幼馴染にそう言われて、オレは鼻から牛乳を吹き出した。
春の日差しもうららかな土曜の午後。1年B組の教室。
今夜のディナーを物色するために軽く腹ごしらえをと、運動部の猛者に混じって学食から得た戦利品を広げた矢先の出来事である。

「イヤだと言ったら?」
「泣く」
「OKと言ったら?」
「毎朝起こしに行ったげる♪」
「マジ?」
「うん、朝練の時間に間に合うように」
「……やっぱイヤだ」
「もうちょっと話を聞いてよ(TT)」

……実はあまりいい思い出の無い幼馴染、鳥子茜(トリノコアカネ)の話によれば。
どうもこいつ、高校入学を機にと勇んで入部したバトルファック部で、新入部員にふさわしくない大活躍をしてしまったらしい。
新入りの素人娘にケチョンケチョンにのされ、泡を吹いて失神した先輩部員、同級生の女の子にアットーテキな差を見せつけられ、赤玉を絞られて保健室へ担ぎ込まれた新入部員。
彼らは自信を喪失し、あるいは屈辱にいたたまれなくなり、次々に退部届けを提出して行ったらしい。
 それにつれて女子部員も一人辞め、二人辞め……

「もう女子が3人、男子が2人しか残ってないの。夏の大会に出るには男子が一人足りないのー」
「泣くな。拝むな。それから乳を押し付けるな」

すがりついてくる豊満なカラダを押し返す。
夜の街で慣らしたこのオレを前かがみにするこの威力。確かに健全な運動部員諸君には荷が重かっただろう。

「よし分かった。毎日の弁当もつけろ。それで名簿に名前だけ貸してやる。大会にも出場してやろう」
「マジ!? やった! ……って、練習には顔出さないつもり?」
「当たり前だ。そんなダリィことしてられるか」
「えー、困る。団体戦だと試合時間で判定なのに」

茜の言うことには。
高校生の団体戦は、男子3人女子3人で、6試合各30分一本勝負(随分と気がハヤいことだ)。
相手をイかせると試合の残り時間が得点になり、その得点の大きい方が勝ち、というルールらしい。

「足手まといなんか引っ張って行ったら、余計肩身が狭くなっちゃうじゃない」
「……アホ。オレが負けるか」

真面目に部活を頑張ってるような高校生相手に。
個人営業のアマチュア売春婦どもはもちろん、本職のお姉さんだってオレのマグナムにかかればヒィヒィ泣くんだぜ?
お前はガキの頃の水鉄砲しか憶えてないのかもしれんが。

「だったら、私と勝負しようよ。私に負けたらちゃんと部活に出ること」
「へ?」
「あ、別に紫先輩……には絶対勝ち目ないだろうから……橙子ちゃんとでもいいけど」
「……片っ端から相手してやる。オレが勝ったらパシリとノートとかばん持ち、あと膝枕で耳掻きもつけろ」
「おーるおっけー♪」

茜は親指を立てて拳をオレの方にびしっと突き出すと、

「じゃ、それ片付けたら、部室に来てね」

廊下をスキップして行った。
オレはストローに唇を当てると、紙パックを握り潰して一気に飲み干した。

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