「練習試合?」
「はい」
「俺、退院したばっかりなんだけど」
「大丈夫です。問題ありません」
久々に部室を訪れた俺に、紫先輩は笑顔で言った。
「メインは私達女子だから」
蘇芳が素っ気無い態度で言う。
今更気にすることでもない。3日と明けず見舞いに来てくれてた時もこんな感じだった。
「オレ達の練習に付き合わせるだけじゃ、女子達の体がなまってしまうからね。
彼女達のレベルに見合った強豪を招いてお相手願うんだよ」
山吹が苦笑いで言う。
「つまり僕達男子は勝ち目なし。ただの頭数合わせさ」
藤が相変わらずの薄笑いで言う。
「波自さんにとっては初めての対外試合になります。
雰囲気を楽しむくらいのつもりで気楽にどうぞ」
そう紫先輩が締めくくって、その日のミーティングは終わった。
俺を病院送りにした張本人は、菓子皿につっぷしてヨダレを垂らしながら寝息を立てていた。
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「それでは、色城高校、対、花園学院の試合を始めます。礼!」
『『『『『『よろしくおねがいしまーす!!』』』』』』
そんなわけで日曜日。
世間一般の健全な高校生達が自由と青春を謳歌するこの日に、
俺は部活動に励むこととなったのである。
「先鋒、前へ!」
相手校の先生らしき審判の呼び出し。
そういえば、うちの部には顧問とかいないのだろうか。
「呼んでるよ、コウくん」
「……がんばれ」
「お気楽にどうぞ」
黄色い声に押されて、ベッドに上る。
対して向こうは落ち着いたもので、さっさとガウンを脱いでベッドで俺を待っていた。
……この子が、俺の対戦相手か……
今更BF選手のスタイルの良さについて言及することもないだろう。
華奢な胸の上に突き出した、軽く90を越える乳。
真っ白な双丘の上に可憐な桜色の乳首、そこに艶やかな黒髪がわずかにかかり、そよいでいる。
俺と目が合うと、軽く首をかしげて俺を見上げ、にこっと笑った。
処女のようなあどけない微笑みだった。
「よろしくおねがいします。お互いがんばりましょうねっ」
そう言ってぺこりと頭を下げる。
「あ、どうも」
俺もつられて頭を下げる。
……俺としたことが、こんな可愛い女の子を前にこんな挨拶しかできないとは。
分かってる、気遅れてるんだ。
BF部の女子達の、女としての性能に恐れを抱いている。
だから、こんな彼女いない暦=年齢の男みたいな腑抜けた初対面になってしまう。
「波自コウジ、対、吉野桜。はじめ!」
審判が手を振り下ろす。
ええい、なるようになれ。
俺は覚悟を決めて彼女… 桜ちゃんに歩み寄った。
「はひゃぁぁぁぁぁ!?」
「それまで! 勝者、吉野桜!」
試合時間25秒。失神KO負け。それがオレのデビュー戦だった。
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