狂気と淫乱を司る精霊フレンズィー・ルードは、レイの身体に憑依し、その肉身をもって大部屋の中央で悠然と立っていた。
アーシアは背中に生えている四枚の漆黒の翼をはためかせ、シャギーショートに手入れしている青藤色の髪の毛を風に揺らしながら、狂淫の精霊を中点に旋回している。
大部屋の天井の高さは一般的な人間の建物の二階分ほどあるが、自由に飛翔できるほどではない。上昇するとすぐ天井へ到達するため、主に横方向へ荷重をかけ、翼を巧みに操って飛び廻っている。
翼をはためかせるとコンクリートの床をひと蹴りし、大きくフレンズィー・ルードの周囲を飛翔する。重力の作用によって落下すると着地し、またひと蹴りして飛んだ。
「ふん、なんのお祭り騒ぎだ。さっさと仕掛けてくるがいい。我は逃げも隠れもせん」
フレンズィー・ルードは首を一回転させながら薄ら笑いした。
アーシアとフレンズィー・ルードの双方は、全身に漆黒の波動を漂わせ、真紅の瞳を有している。狂淫の精霊が乗っ取っているレイの股間の狂塔は、天空をも貫かんとばかりに聳立していた。
「淫らに舞う嬌態をもって、我の目を愉しませる余興か?」
フレンズィー・ルードは顎を上げて嘲弄した。
元来レイの身体である。全裸なのはディアネイラに着衣を許されていないからで、成長途上で貧弱な身体を乗っ取った狂淫の精霊は、これ見よがしに大股を開いて仁王立ちしていた。
それに対するアーシアは、衣服を破かれているので半裸である。ショートカーディガンのような形状となっている紺色の布切れは、元は紺色のロングワンピースであった。前は引き千切られたので釣鐘型のふたつの果実が露出し、アーシアの動きに反応して様々に揺れ動いている。黒いブラジャーも千切られているので、ただの紐と化して風に揺らめいていた。
裾は剥ぎ取られたので下半身を晒している。黒色のガーターで白色のニーソックスを止めており、脚線が照明に照らされている。ショーツは破かれてしまったので、髪の色と同色の、逆三角形に手入れされている恥毛が曝け出されていた。
レイの身体を傷つけずにフレンズィー・ルードを斃さねばならない。銀杯色から真紅へと変色したアーシアの瞳がとても困難だと、苦しげな色に染まっていた。
(ディアネイラ様)
アーシアは、レイの危急を思念に乗せ、ディアネイラへ送った。
だが返事はない。今は自分で乗り切るしかないようだ。
「どうした、射精させれば勝てると思っておるのだろう? さっさと愛撫してみせよ」
狂淫を司る精霊は股間をひと弾きした。たいへんな硬度を保っており、壊れたメトロノームが超高速で動くかのように振動する。
「キサマっ、レイ様のお身体を乱雑に扱うな!」
フレンズィー・ルードの周囲を飛びながらアーシアが怒鳴った。
精霊は隙だらけである。どこから仕掛けてもよさそうなのだが、どう攻略するかを決めかねていた。
敵は淫気の化身である。絶頂させて淫気を放出させても、淫気そのものの存在である精霊に通用する確証などどこにもないし、通用するとも思えなかった。
五十年前に襲われた際の教訓など皆無である。捕らわれて蹂躙され続けただけなのだ。
だが迷ってもいられない。アーシアは、まずはフレンズィー・ルードを絶頂させようと決断した。物質化しているかぎりは有限であり、かならず涸渇するときが訪れる。
これは万物の理である。
アーシアはフレンズィー・ルードの背後に周り込むと、床を蹴って精霊のもとへ飛翔した。
精霊は微動だにせず、アーシアの接近を容易に許す。
完全に後ろを取ったアーシアはフレンズィー・ルードの両腕を取り、後ろへ引いた。すぐさま両手を交差させ、左手を使って精霊の両手首を掴んで拘束する。右腕をフレンズィー・ルードの股間へと伸ばすと岩石のような硬度をもつ罪塔を握り、一瞬で果てさせるつもりで上下にしごいた。
互いが放出している漆黒の淫気が絡み合い、卑猥で生ぬるい感覚が溶け合う。
「おぉ……、なかなかによいぞ」
フレンズィー・ルードは両手を拘束されたまま中指を伸ばす。どこに何があるかを承知しているようで、アーシアの股間へと的確に当ててきた。すかさず精霊は中指の間接を折り曲げ、堕天した淫魔が大きく陰裂から露出させている女の芽を刺激する。
「う──っ」
アーシアはフレンズィー・ルードの束縛を解くと後ろへと跳躍した。
「何を面食らっている。当然、我も仕掛けるに決まっておろうが」
フレンズィー・ルードが綽然とアーシアへ振り返った。
狂気と淫乱の波動による愛撫は危険であった。ひと撫でされただけで背中に電気が走る感覚を味わったアーシアは、刹那の油断が命取りであると再確認させられた。
精霊は中指についたアーシアの愛液を舐めている。やはり隙だらけであるので、今度はそのまま正面から跳躍した。
フレンズィー・ルードは黒翼の淫魔が射程圏内に侵入すると、右腕を薙ぎ払った。一直線に闇の残像が引かれてゆく。
アーシアは咄嗟に翼を上方へはためかせると強引に下方向へ荷重をかけ、しゃがみ込みながら着地し、精霊の攻撃を躱した。激しく着地したので大きな音が室内に鳴り響き、豊かな乳房が上下に揺れる。大股を開いて着地したので女谷がぱっくりと割れ、漏れている愛液が床に滴り落ちた。
アーシアはしゃがんだ姿勢から右手を伸ばして罪塔を掴むと、自分の淫気を塔へ注入しながら、力を込めてしごいた。開いた両脚は丁寧に閉じ合わせる。
「ほぅ。いいだろう、達してやる」
フレンズィー・ルードは動きを止めると筋肉の足りない両腕を胸の前で組んだ。
余裕の態度にアーシアは憤懣としたが、絶頂させる大好機なので、いつでも後方へ退去できるよう翼に意識を向けたまま追い立てた。
「レイ・センデンスの聖なる種液ぞ。よもや躱しはせぬだろうな」
フレンズィー・ルードは真っ赤な舌を出して上唇を舐めながらアーシアを見下ろした。
アーシアは挑発に乗らずにしごき続ける。
「ぬぅ」
精霊が呻くと、射精した。
大量の白濁液がアーシアの顔と胸にかかる。
(確かに、逃げるわけにはいかない)
アーシアは罠だと気付いたが、射精が終了するまでは仕方ないと、吐き散らかす粘液を受け続けた。
レイから自分の精気は受けてほしいと頼まれている。臨時とはいえ、仕えている主人の要望に違背するなど許されないと思っていると、フレンズィー・ルードの右脚が動き、堕天した淫魔の腹部に直撃した。
「ぐぅ……っ」
爪先が腹部にめり込むと、その痛みでアーシアは顔を歪めた。続けて頬を張られると首を跳ね飛ばされ、顔にかかった精液が飛び散った。
「あっはあァっ」
真紅の両目を見開いて、フレンズィー・ルードは満足気に笑う。
アーシアは頬を張られ続けながらも、射精によって強制的に放出された淫気が霧散するのを確認した。だが、一度ではまったく影響ないようだ。
射精が終わるとすぐに後方へと飛び、大きく距離を開く。
張られた頬は熱を感じたが、それ以上の熱があった。一種類目は右目である。自分が応対に困窮していたときに殴打されたもので、青痣となって腫れ上がり、すでに視界を失っていた。
二種類目は鼻梁と胸元に付着した精液である。レイから受けるものとまったく同じであり、たいへんな精気を漲らせている。少ない射精回数で決着をつけないと、精気の濃度によって泥酔してしまうと思った。ディアネイラがレイを高級ブランデーに例えるのも解る話だった。
酔ったら終わりである。
だが、少ない回数では決せないだろうとも直感していた。
フレンズィー・ルードから溢れる頻闇の淫気は、強烈に揺らいでいるのである。
淫魔は絶頂すると大量の淫気を放出してしまう。これは精霊も同じらしい。
淫魔が生きる糧として必須である精気は、絶頂して淫気が放出しているあいだは猛毒となって淫魔を襲い、消滅させる。だが淫魔には精気が存在しないため、絶頂させられた相手が淫魔であった場合は死に至らない。
よって、このままでは狂淫の精霊を屠れない。
さらに、精霊が支配しているレイの身体からは精気が漲っている。自分は絶頂できないという理不尽な状況だった。
(採れる手段は、やはり、アレしかない……)
天界より、たった一度だけの行使が許されている、
『光の力』
の、発動である。
フレンズィー・ルードを疲弊させ、確実に攻撃が入るようにしてから、自分の渾身を打ち込むのだ。
アーシアは翼をはためかせると精霊を中心に周回を始めた。
「動きに変化をつけぬとは愚かな」
「なんとでも言っているがいい。キサマは滅ぼす」
アーシアがフレンズィー・ルードの背後に周ると、やはり簡単に後ろを取らせてきた。かまうものかとアーシアは中指を突き出すと、精霊の肛門へ挿入を試みる。
だが門は固く閉じられており、指先すら入らない。
(レイ様は未経験でいらっしゃるのか──)
開発している時間はない。諦めて右腕を罪塔に向けると、しごいた。
フレンズィー・ルードは後ろ向きのまま左の肘を下げてアーシアの顔面を襲う。彼女は首を横へ倒して躱した。右肘が来ると、やはり首をすぐに倒して躱す。だが、肘を梃子にして下腕が伸び、アーシアの右肩に拳を叩き込まれた。
「あぅ……っ」
アーシアは愛撫を中断して後方へと退去した。疼痛を訴える右肩を抑え、深呼吸して沈着に努める。鎖骨が折られるかと思った。
「鬱陶しい。我は性交を所望している。次はないと心得よ」
フレンズィー・ルードは狂気の色を湛えながらアーシアへ振り向いた。今度は隙がない。
性交などに応じていたら間違いなく殺される。自分は可能なかぎり快感を受けず、精霊には極大な快楽を与え続け、屠らねばならない。
アーシアは隙を窺いながら飛翔した。フレンズィー・ルードは、にやけながらも隙を見せない。どこから仕掛けても捕らわれそうな気配があった。
アーシアは右腕を薙ぎ払って淫気の波動を精霊へ飛ばした。だが狂淫を司るだけあり、淫気は吸収されてしまう。
「何かしたか?」
フレンズィー・ルードは首を一回転させた。どうやら癖のようである。
アーシアは精霊の側面から突撃し、効かないと分かっている波動を再度飛ばす。精霊の注意が波動に向いている間に軌道を変更し、ひと蹴りして背後へと周った。距離が詰まると、間髪入れずに罪塔を握る。二度ほど上下にしごくとすぐにその場から離れて側面へと移動し、また罪塔を握って二度ほどしごく。すぐにひと蹴りして正面へ周ろうとした。
「遅い」
フレンズィー・ルードの右腕が伸び、アーシアの四枚ある翼のうち、左下の翼を乱暴に掴んだ。そのまま無慈悲にへし折る。
「きゃあああアアァァっ!!」
激甚たる痛みにより、宙に浮いていたアーシアは床へと落下した。
フレンズィー・ルードは翼を離さず、うつ伏せの状態から左の肩甲骨へ腕を添えて呻吟する淫魔を、冷厳に見下ろす。
掴まれている翼は完全に骨折し、力なく精霊に持ち上げられていた。
「うぐうぅぅ……」
気の遠くなるほどの痛みがアーシアの肉体を急襲し、彼女は切歯した。被虐に子宮が反応し、熱く疼く。
「ちまちまと動くからこうなる。こんなものは不必要だな」
フレンズィー・ルードが残酷に言い放つと、
翼を捥ぎ取った……。
ゴムが引き千切れるような、無残な音が室内に響く。
「ああうううウウああああアアアアアっ!!」
翼を一枚捥がれたアーシアは絶叫した。
赤い血液が翼のあった肩甲骨のあたりから噴き出すと、脳髄に電撃が走り、アーシアは胃液を吐いた。
「んっはああ。痛かろう? 嬉しかろう?」
フレンズィー・ルードは翼を投げ捨てると、アーシアの閉じられた両脚を自分の右脚で押し広げた。開いている陰裂が濡れているのを見たフレンズィー・ルードの口元が、淫猥に歪む。
狂淫の精霊は広げた脚のあいだに自分の身体を入れると膝をついた。
アーシアは痛みで意識が跳ぶのを防ごうと歯軋りするのが精一杯で、フレンズィー・ルードの動きに抵抗するゆとりが作れなかった。そのため、精霊の顔が下がって尻肉を噛まれても、躱せなかった。
思い切り吸われ、噛まれる。痛みは感じるが、翼を捥がれた痛みのほうが圧倒的に強く、臀部に意識を向けられない。蹂躙されるがままであった。
アーシアの尻には赤痣や青痣、楕円形に血を滲ませる葉型が無数に刻まれていった。
「熱っぽくなっているではないか。それほどに悦ばしいか」
フレンズィー・ルードは中指を菊口へ挿入すると、意図的に頻闇の波動を送り込んだ。
「ぐぅ……」
アーシアは真紅の瞳を固く閉じた。快楽と痛み、出血によって頭が呆け始めている。このままでは墜とされる。意識だけは保たねばと、自分の責任感を思考に刻印し続けた。
フレンズィー・ルードの指が容赦なく後ろの門を出入りした。腸液で菊門が濡れ、意識の外から指を締める。
「足りぬか? ならば要求に応えてやろう」
フレンズィー・ルードは人差し指もアーシアの中に挿入した。彼女の尻が震え、いっそうの腸液が湧いて潤滑油となり、指の動きを援護した。
フレンズィー・ルードは指を掻き回しながら尻肉を吸い、舐め、噛んだ。
「あぁ……」
アーシアの口から甘い吐息が漏れる。快楽が痛みを凌駕し始めていた。
捥がれた翼の根元から溢れていた出血が弱まると、多少は思考力が回復したが、その回復分は直腸に響く刺激によって相殺された。
間接を曲げて腸壁を掻かれると心地よい圧迫感が脳を溶かす。意図的に送り込まれている頻闇の淫波動が自分の淫気を食い散らし、力を弱められていった。ガスが出そうになると、彼女は門を閉めて堪え、収める。
「急に締めおって。もう終わり、というわけでもなかろうに」
フレンズィー・ルードは女性心理を踏みにじり、鼻で笑ってから指を引き抜くと、その匂いを嗅いだ。
「やめ、ろ……」
アーシアは激昂し、頬を紅潮させた。顔に射精された精液が唇に垂れる。これは舐めては危険な液体なので、濡れるに任せた。
「おお、臭い臭い。ヌシの尻は臭くてかなわんな」
フレンズィー・ルードは首を擡げながら立ち上がると、アーシアの顔前に廻り、胡座した。
「自分のものだ。きっちりと清掃するがいい」
フレンズィー・ルードはアーシアの口へ強引に二本の指を突きこんだ。
アーシアは、乱暴に突き動かされる指を咥えさせられながら、憎悪の視線をフレンズィー・ルードに向けた。レイの指でなかったら噛み切っているところである。
脂ぎった食肉のような味覚と匂いが口腔に広がる。淫魔特有の、排泄物の味と香りであった。
憤怒によって意識が戻ってきたアーシアは、眼前にある罪塔へ反撃せねばと考えた。
震える右手をなんとか伸ばして力なく握ると、上下に動かす。ただし、激痛によってその動きはぎこちないものとなった。肉体が匍匐できるほどにも回復できていないので、これでも仕方ないと自分を納得させた。
だらしなく両脚を開いたままであると気付くと、アーシアは弱々しく脚を閉じる。
「ふん、まあいいだろう。咥えさせてやる」
フレンズィー・ルードは堕天淫魔の口から指を抜くと、両腕を床について胡座したまま前進し、罪塔をアーシアの頬にこすりつけた。鼻梁を濡らす精液を、亀頭を使って顔中に塗りたくる。その後、アーシアの唇を割って突き込んだ。
遠慮なしに喉奥まで突っ込まれると、アーシアは咳き込んだ。だがフレンズィー・ルードは罪塔を抜かず、腰を円運動させてアーシアを犯す。
自ら快楽を求めてくるフレンズィー・ルードはアーシアへの気遣いをせずに口腔を蹂躙した。喉奥を激しく突かれ続けて苦悶したアーシアだったが、自分で責める必要がないので精霊に身を任せ、自身は痛みの回復に努めた。
翼を捥がれ、極大な疼痛が想念を砕き割るうちは、何もできはしなかった。反撃は痛みを克服してからだ。
「吸う力さえ失ったか」
フレンズィー・ルードがアーシアの頭を抱えて腰を振ると、唾液が泡を立て、淫猥に歌を唄う。
アーシアは飛びそうな意識を引き戻そうと、出血を続ける患部へ淫気を送り込んだ。淫気で冒して感覚を麻痺させれば、多少は楽になるはずである。
「ちっ、所詮はひ弱な人間か」
フレンズィー・ルードは射精感を抱くと舌打ちした。だがかまわず腰を突いてアーシアへ頻闇の波動を注入すると、彼女は噎せ返り、悶えた。
「ぐぼっ、……コホっ」
アーシアは狂淫の精霊が快楽に顔を歪ませたのを見逃さなかった。咳をしながら頬を窄めて吸引する。力が入らないので舌使いは稚拙であったが、充分に効果があった。
フレンズィー・ルードは二度目の射精をした。
「狙いはこの身体の疲弊か……。面白い、やってみせよ」
アーシアの口に、精気が充溢した精液が注がれる。あまりにも濃い精気が彼女の口腔を燃やし、呑み込んでは危険だと思ったアーシアは、罪塔を抜いて白液を顔で受けようとした。だがフレンズィー・ルードがそれを許さず、腰を突き込んで離れない。
アーシアは、精気酔いという不利を抱え込むが是非もないと、白き生命力を嚥下した。
「随分と、ウマそうに飲むものよ」
フレンズィー・ルードは罪塔を挿したままにしていた。アーシアが嚥下するたびに刺激を受けて快楽が押し寄せ、精霊の満ち足りない淫欲を補完させる。
アーシアの胃袋に精液が到達すると、焼け付く熱によって体内が燃え上がった。自然と子宮が締まり、股間から女液が溢れる。
意識は鮮明とまではいかないが、思考は可能になってきた。
フレンズィー・ルードの淫気と攻撃力は凄いが、運動能力自体はレイの身体に依存しているらしい。精霊の動きに少年の身体がついていけないようだ。事実、精霊は苛立っている。ここがつけ入る隙になりそうだった。
フレンズィー・ルードは罪塔をアーシアの口から引き抜くと、彼女の舌と狂淫の精霊の鈴口を接点に、唾液と精液が混ざった粘液の糸が引かれた。作りかけの飴細工のごとく伸び、いつまでたっても切れない。アーシアが唇を閉じると、遂に糸が切れ、床に濡れた線を引いた。
フレンズィー・ルードはうつ伏せのままでいるアーシアの下半身へと膝行していった。
逃がすものかとアーシアは腰に抱きついて罪塔を自ら咥える。放っておいたら下を責められてしまう。両腕には力が戻りきっていないので頼りない抑え込みにしかなっていないが、自分ができる責めを試み続けるのは重要だと考えた。
「なんだ? しゃぶり足りぬか?」
アーシアはフレンズィー・ルードの嘲りに対し、頬を窄めながらうなずいた。肯定しておいたほうがよさそうだと判断したからである。乗ってきてくれればこちらが責め続けられる。
「淫魔の分際で、簡単に我の聖剣が与えられると思うな」
フレンズィー・ルードはアーシアの腕を振り解くと腰を引いて罪塔を強引に抜き去ってしまった。アーシアは策略が失敗したと思うと、働かない思考力のうち、使用できる部分だけで次の手を考慮し始めた。
「咥えたければ、前口上を述べるくらいの慇懃さを見せよ。礼儀も知らん召し使いが」
「あぅ……」
フレンズィー・ルードの手によって、腫れ上がっている右目を弾かれた。視神経が揺れる痛みに、アーシアは顔をしかめる。
「まだ足りない。もっと咥えさせろ……」
フレンズィー・ルードが余興に乗ってきている。これは使うべきだと、アーシアは中止した策略を再開し、畳み掛けた。
「何をだ」
「レイ様の聖剣を、だ」
「ぬぁっはああっ。聖光に包まれし大天使が何たる堕ち様よ。そこまで我を欲するかっ。ならばヌシは心身を我に燔祭せよ。とこしえに味わわせてやろうぞ」
フレンズィー・ルードが哄笑した。
「そのお体は、あくまでもレイ様のものだ。キサマこそ控えろ」
アーシアはフレンズィー・ルードの腰を再度抱くと、問答無用と罪塔を咥えた。
今度は抜かれずにすんだので、アーシアは愛撫を開始した。ここで三度目の射精をさせてしまいたい。
フレンズィー・ルードに巻きつけた両腕に力が入ると、狂淫を司る精霊が憑依しているレイの身体を拘束する。
「ぬぅ、このまま果てさせるつもりだな」
フレンズィー・ルードは腰を引いたが、アーシアは罪塔を深く呑み込んでいるので離れない。何度も頬を打擲されたが、吐き出すつもりなど毛頭なかった。首が吹き飛ばされそうになると、自分の歯で罪塔を傷つけまいと、唇を腔内へ巻き込み、罪塔と歯のあいだに挟んでクッションにする。
そして、吸った。
「使えん身体めっ。もう終わりか」
フレンズィー・ルードはアーシアに裏筋を舐められると三度目の射精をした。
アーシアは精霊を見上げながら一滴残さず搾り取ろうと強く吸引する。フレンズィー・ルードは強制的に大量の淫気を放出させながら、発汗を始めた。
確実に疲労してきていると分かると、アーシアの戦意が増した。淫気の化身とはいえ、レイの身体を使っている以上、自分本来の実力は出し切れないようである。
ただ、二杯目として飲み込んだ生命力によって、否応なしに肉体が燃え、膣が痺れた。
レイの力に感嘆しながらも、アーシアは、恍惚とするのはすべてが解決してからだと念じた。
レイさえ救えれば、あとは自分が狂ってどんな罪を負おうがかまわない。
「ええい、離れろっ」
フレンズィー・ルードは胡座していた膝を使ってアーシアの頭を蹴る。こめかみに直撃したため目に火花が飛び、アーシアは呻いて罪塔を口から零してしまった。
アーシアがかぶりを振っているあいだに、フレンズィー・ルードは居場所を変更した。
「しまった……」
アーシアが気付いたときにはフレンズィー・ルードは下半身へと移動を終え、四つん這いに尻を抱え上げられた。アーシアは咄嗟に両脚を閉じたが、力づくで抉じ開けられてしまう。
「このまま果てさせてやる」
フレンズィー・ルードはアーシアの股間に顔をうずめると、陰裂への攻撃を開始した。
すでに濡れそぼっている膣内へ舌が挿し込まれると、のた打ち回ってきた。
「あうぅ」
罪塔を挿入せずに堕とすつもりらしい。アーシアを襲う快楽は大きく、自然に喘いでしまった。防御せねばと両脚を閉じようとしたが、太腿を抑えられていて微動だにしない。
フレンズィー・ルードは口を陰裂に押し付けると、淫らに音を立てて吸った。その音にアーシアの脳が痺れる。吸引する力が徐々に強められ、少々の痛みを覚えた。
フレンズィー・ルードの左の中指が女の芽をこすり、右手は親指を菊の蕾へと埋没させながら、残りの指と掌で右側の尻肉を揉みしだく。
「はああぁんっ」
アーシアは甘い声をあげながら首を反らせた。張り詰めた緊張感が破砕しそうになり、口を引き結んで快感に耐える。
一方的に責められ続けてはいけないと姿勢を変えようとするが、両脚を抑えられているので身動きが取れなかった。捥がれた翼の痛みが邪魔をして、腕は自分の体重を支えるだけの棒と化している。
もがこうとするとフレンズィー・ルードの顔が股間に深く沈み、舌がより奥へと侵入する。下手に動くと快楽が倍増するばかりであった。とはいえ、このままでもいずれは絶頂させられてしまう。抵抗しなければならなかった。
フレンズィー・ルードは顔中を愛液にまみれさせながら愛撫を続けた。女の肉丘からはみ出している親指の先ほどもある大きく膨張した肉芽は、指の愛撫を敏感に受け止めさせられていた。小陰唇を噛まれると愛液の粘度が高まった。歯形が無数に刻まれている尻肉を揉む手は、快楽を防御している壁を次々と蹴散らし、無防備状態を完成せんと残酷に動いている。直腸を抉る指によって頻闇の波動に侵され、小刻みに痙攣して脱腸しそうであった。膣内に挿されている舌は蚯蚓がのたうつごとく膣壁を蹂躙し、とめどなく愛液を湧かせている。
「あはぁ……ん。感じす、ぎる……」
アーシアは腹の底から吐息をつかされた。三枚だけになってしまった漆黒の翼は力を失って床に垂れ下がっている。
微醺に彩られた肌は乳白色から薄紅色へと変わっていた。
なんとかしなければと、アーシアは虚脱している全身に活を入れ、多少の復活を果たした右腕を頼りに、目一杯にフレンズィー・ルードの下半身へと伸ばした。
胡座しているフレンズィー・ルードの脛に手が当たると、罪塔を捜してほうぼうへと手をまさぐる。太腿を見つけると手を左右に振った。近くに目標があるはずだ。
「ちっ、鬱陶しい女だ」
フレンズィー・ルードはアーシアの股間から顔を上げると彼女の尻を叩いた。アーシアが痛みで呻いている隙に膝立ちとなり、後ろの門へ罪塔をあてがうと、そのまますぐに挿入した。
「あ、ん……。すご……い……」
「ふん、予定が狂ったが、まあいい。抉ってくれる」
フレンズィー・ルードはアーシアの肉感的な腰を掴むと、乱暴に腰を振った。
直腸が圧迫され、アーシアはくぐもった声を漏らした。
精霊は一方的な愛撫を嫌い始めたようだ。だからこそ手によるしごきを躱して挿入してきたのだろう。アーシアは肛門を閉めて一気に搾った。
「ぐっフゥ〜。なかなかにいい責めだ。我も享楽を返杯してやろう」
フレンズィー・ルードはアーシアの背中に覆いかぶさってくると、腰の打ちつけは続行したまま両手をアーシアの乳房へやり、揉んだ。そして、左肩に噛み付いて歯形を作る。
背後を取られたままではなすがままである。自分は肛門を締めるくらいしか満足な攻撃をおこなえない。だが完全に拘束されてしまっているので姿勢の変更が利かなかった。機が訪れるまでは、このまま耐え続けるしかなさそうだ。
肌色の乳首をこねられると、アーシアは四つん這いになっていた両腕に力を入れ、小さく震えつつ、耐え忍ぶ。左肩は何箇所も噛みつかれ、歯型を刻まれていった。
とめどなく溢れる蜜液が腿を伝って白いニーソックスを濡らす。
「さあ、たっぷりと喰え」
フレンズィー・ルードが四度目の射精をした。
尻の穴に精液がぶちまけられ、直腸を燃やす。あまりに鋭敏になった腸は、罪塔が律動し、粘液を迸るすべてを知覚した。腸の空間を雫が舞い、腸壁に当たるとねっとりと濡らす場面が、アーシアの脳に、映像として鮮明に映し出してきた。
フレンズィー・ルードはアーシアを解放せず、そのまま尻を突いてきた。精液まみれとなった後ろの穴は空気が漏れる音と共に白い泡を立てる。菊の口は苦しそうに形を窄めていた。
乳肉は無遠慮な力によって赤くなっていた。一度目の射精で受け止めた体液は、透明に変色して濡れ光っている。狂淫の精霊は、執拗に乳房を捏ねた。
「精液に濡れ汚れるのは好きか?」
フレンズィー・ルードはアーシアの右肩を噛みながら不遜に笑った。
「ああ、そうだ、な。レイ様からいただく精気は……、あまりにも美味だ」
余裕のあるところを見せつけるため、アーシアは返答してやった。実際は精気酔いで頭が呆け始めており、幾らか和らいだとはいえ、翼を捥がれた患部が激痛を訴えて思考力を奪っている。
「ならば、その望みを叶えて進ぜよう」
フレンズィー・ルードは上体を起こすとアーシアの腰を掴み、猛烈に腰を振った。
単純に前後に動くフレンズィー・ルードの腰とアーシアの尻が、ぶつかり合うたびに大きな肉の拍手を合唱する。
そしてフレンズィー・ルードは五度目の射精を迎えた。
射精する際に罪塔を引き抜き、アーシアの臀部にかけていった。左右の紅く熟れた桃へ白い粘液が付着する。その粘度は非常に高く、アーシアは染み渡る熱気に喘いだ。
「さて、そろそろここを喰らおうか」
アーシアが姿勢を変えようとすると、フレンズィー・ルードはすかさず彼女の背中を殴った。動きが止まったのを見計らって、アーシアを四つん這いにさせたまま尻を抱え、膣内へと挿入した。
「く……っ」
とてつもない耐久力である。まったく疲労していないと錯覚するほどに狂気と淫乱を司る精霊はアーシアを責めてくる。相当量の淫気を失っているはずなのに、フレンズィー・ルードの自我は揺らがない。
さすがは淫気の塊であると認めざるを得なかった。すべての淫気を放出させようとしたら、どれだけ削らなければならないのか想像すらつかない。むしろ、限界などない気がする。単純に性戦だけをしているだけならば、自分が先に果てるのは自明であった。それ以前に、数えきれぬほどの射精は、レイの身体が耐え切れないだろう。肉体に死を与えてしまっては、フレンズィー・ルードを斃せてもレイは帰ってこれなくなってしまう。それでは意味がない。そのまえに決着をつけなければならないのだ。
アーシアは押し寄せる快楽に顔を弛緩させていたのに気付くと、慌てて気持ちを引き締めた。
捻じ込んでくる罪塔の快楽に膣が自然に反応し、締めつけていた。肉の拍手が耳に心地よく響き、アーシアの心を失墜させようと嗾けている。
フレンズィー・ルードが腰を突くと乳房が前に揺れ、腰を引くと後ろへ揺れる。その揺れている感触も悦楽となった。
岩石のような硬度の罪塔は、破滅の凶器となってアーシアを抉っている。
フレンズィー・ルードは発汗しながら首を一回転させ、「グっはああ〜っ」と会心にほくそ笑む。
「虫唾が走る。笑うな……」
アーシアの言葉とは裏腹に、股間は洪水を起こしていた。内側の肉ビラが膨張するときは、陰茎の挿入を手助けをするために峡谷を押し開く役割が与えられる。だが、その小陰唇でさえ、突きこまれる罪塔に惚れ込み、その唇を淫らに罪塔へと巻きつけて、咥え込んでいた。
陰核は挿入運動の際に痛みを発しないよう、快楽に肉体を染める役割を有している。そのため、罪塔から受ける刺激を簡単に受け入れていた。むしろ支援して感覚を倍増させており、耐えてばかりの使えない主人アーシアへ反乱し、精神の破壊をおこなった。
膣は離れたくない恋人にすがるように、懇願の抱擁をする。淫らな谷が涎を沸かせるのは、罪塔だけは失いたくないと訴える涙であった。
子宮は憤懣やるかたない怒りを覚えている。まだ成長が途中であるレイの肉の塔は、自分に拝謁する資格がない。長さが足りないのだ。ほかの器官が彼に惚れて厚遇しているさまを見せつけられている女王は、早く来い、ここに我がいると、激しく手招いていた。
肉体はほぼ籠絡させられていた。アーシアが意識を向けないと、勝手に別行動を取ってしまう。アーシアは歯噛みする思いとなったが、精神だけはもっていかれぬよう努め、後ろから突かれ続ける状態を、ただひらすらに堪えた。
背徳の薔薇 堕天使の性戦 了
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